※この作品はR-18です。

ユー・アー・マイ・スペシャル   作:グリム・グリルグリン・グリーングリップ

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 呪術廻戦(原作)、完結おめでとうございます。賛否ありそうなエンディングだけどスペクタクルでスペシャルな物語でした。Thanks! 今はただ、先生に感謝を。 
 今回は文字数がだいたい二話ぶんくらいあります。長いけど楽しんでもらえると嬉しいです。































 あと直哉弁ムズ過ぎひん??




16 最っ高♡♡

 

 

 

 10.

 

 

 

 その日は。特に変わった予兆も無く、よくある、よく晴れた猛暑日だった。

 

 特級呪術師である五条悟と夏油傑は任務で関東を離れており、フリーの坂本も、福岡で発生した呪詛師絡みの集団失踪事件解決のため九州へ飛んでいたので、高度に戦闘可能な呪術師は、呪術高専東京校から軒並み出払っていた。

 偶然の計画だったのか、それとも誰かの入れ知恵があったのかは、禪院真依には判らないが。

 

 人員の空白を刺すタイミングで、禪院家の使者が、術師で構成された私兵部隊「灯」を伴って東京校に来訪した。そして夏休みということで東京校に預けられていた、禪院真依の身柄の返却を要求したのは、誰にとっても青天霹靂の事態だった。

 

 高専は混乱し、当然ながら禪院真依は「嫌です」と拒絶したが、既定事項であるとしてまったく聞き入れてはもらえず。

 学長の夜蛾正道が「保護責任者である坂本に確認を取るので一旦お帰り願う」とその場を収めようとしたが、使者は“これは禪院家の問題であり高専は口出し無用である”との一点張りで取り合いもせず。

 “呪力のない欠陥品は不要である”と二重三重の意味で使者から罵倒された禪院真希は、妹を連れ去ろうとする「灯」をやっちまおう(・・・・・・)としたが、それは相手に口実を与える悪手だとして控えさせられ。

 

 禪院真依は、おとなしく車に乗るしかなかった。呪具も荷物を持ってゆくことは許されず、護衛と称する監視役の「灯」に捕まり、逃げることもできず。

 二年ぶりに戻ってきた禪院家は、家を出る前と何一つ変わっていなかった。景観も、働き手も、何もかもがほんとうは淀んでいて、腐っているのがわかる。擦れ違う女たちが、廊下の脇に、神妙な顔をして控えている。見せかけのように着物だけが綺麗で、仮面の裏では好奇と猜疑の眼差しで探ろうとしているのが、わかりたくもないのにわかってしまう。

 そうして禪院真依は座敷で待っていた父と母に再会し、見合い(・・・)の話を告げられた。

 

 意味が理解できず、唖然とする禪院真依に、母が語った。相手はどこそこの血筋であり、これはいい機会なのでせいぜい気に入られるように励みなさい、と。

 

 そんなのいやですっ。叫んだ瞬間、張り手が飛んだ。

 

 弁えろ。子が親に歯向かうな。時代錯誤の(まげ)を結った父は、容赦なく禪院真依の頬を張ると、怒鳴るように言った。外で暮らし、何を学んだかと思えば。驕ったか、真依。

 

 喉が引き攣る。躰が震える。首元まで、泥がせり上がってくるようだった。

 

 己の領分を思い出すまで反省していろと、無理やり結界の敷かれた拘禁部屋に放り込まれた。出してと叩いても誰も開けてくれない。そこにいるのに誰も話を聞いてくれない。鉄格子の窓から、足音が離れてゆくのが聴こえる。

 やがて、叫び声は掠れた。

 

 真希はどうしているだろう。別れ際の様子が思い浮かぶ。菜々子は。美々子は。みんなは。

 きっとおじさまが、助けに来てくれるはず。それまで我慢すれば。

 

 本当に(・・・)

 

 本当にそう? 禪院家の決定だと、あの使者は言っていた。父も、母も、既に決まったことのように話していた。本当に、助けてくれるの? わたしなんかのために(・・・・・・・・・・)

 御三家を敵に回してまで(・・・・・・・・・・・)

 

 しゃがみ込む。闇に埋もれる。うだるような暑さに、汗が噴き出している。冷房なんて無い。掃除などされているはずもないため、塵と埃と、過去に(とざ)された誰かの血痕が残っている。

 目が、回りかけている。これは悪い夢ではないのか。何度も思いながら、指を噛んだ。早く目覚めなくては。瞼を瞑った。必死に指を噛んだ。噴き出す痛みが、現実となって滴る。口のなかに、汗とぬるい鉄の味が広がった。そのぬめる(・・・)ような鉄の味は、まるで塞がりかけの瘡蓋の下から滲み出すように、かつて屋敷で味わった生々しい記憶と感情を呼び起こした。

 

 夜になる。

 明かりは無い。喉が渇く。空腹。そういえば昼間から、何も食べていない。

 

 何も考えたくない。その一心で、目を塞いだ。耳を塞いだ。眠ろうとする。眠ってしまえれば、次に目を開けたときには、すべての悪いことは終わっているかもしれないから。瞼を開けばベッドの上で、彼が隣に寝ていて、やさしい手つきで髪をとかしてくれる。寝ぼけたのか、とからかうように笑いながら。

 目を開けた。拘禁部屋。鉄格子。誰もいない、自分ひとりだけの暗い場所。―――。淡い期待が霧散する。どれだけ繰り返しても、現実が変わることは無かった。沈殿する闇に引きずり込まれ、呼吸(いき)のしかたを忘れそうになる。込み上げてくる嗚咽の抑え方を、思い出せなくなる。

 

 静けさを破るように、障子が開いた。父と母が立っている。

 父に、圧し掛かられた。暴れようとして、組み伏せられる。

 父が言う。いうことを聞け、真依。

 母が見ている。いうことを聞きなさい、真依。

 服を引き裂かれる。

 

 目が覚めると、朝だった。

 

 躰を見下ろす。服は昨日から変わっていない。破けてもいない。

 鉄格子から差し込む光が、細長の毛虫が這うのを照らしている。

 指の傷が固まっていた。夢だと気づく。喉が枯れ、汗も涸れていた。

 

 逃げなきゃ。意識のうわべで、そう思った。呪具を構築して結界ごと破壊してしまえばいい。ちからが尽きる前に。ひあがってしまう前に。今ならまだ間に合う。何度も考えたことだった。でも、壊して――そのあとは?

 どこへ逃げるというのか。逃げれば禪院家から追われることになる。おじさまは、そんな私を受け入れるだろうか。もし、受け入れてくれなかったら。

 父と母の視線を思い出す。どうしようもなく、躰が重かった。ちからを入れようとしても、砂のように崩れてゆく。起き上がることすらできない。(しお)れた泡のような心で思う。私は、どうなるのだろう。

 せっかく“ひなた”に出られたのに。せっかくみんなと笑って暮らせたのに。せっかく――おじさまと出会えたのに。父母(あのひと)たちの言うように、どこの誰とも知らない男のもとに差し出されるの?

 (つい)えそうになりながら。震える呼吸(いき)をして。こぼれるような声で、願った。

 

 “あいたい(たすけて)

 

 

 絶望を噴き飛ばす、けたたましい音が響いた。

 

 

 鐘の音。緊急事態を知らせる、警鐘が打ち鳴らされている。部屋の外が、急に慌ただしくなった。廊下を走る音。(とき)。野太い悲鳴も。

 禪院真依は。意識の遠い場所で、それを感覚した。不測の何かが起きている。誰かが戦っているのか。

 廊下が軋む。だんだんと近づいてきている。足音が止まった。滲み出す呪力の気配。

 次の瞬間、結界が蒸発(・・)した。

 鉄格子の扉が重々しく開かれ、光が差し込んでくる。

 

「ふざけた結界だ」

 

 影が、呟くように言った。

 

「よう。迎えに来たぞ、真依」

 

 ぼんやりとしていた視界が、声に引き上げられて、焦点を取り戻す。

 

 いつもの仕事着(スーツ)姿の坂本が、そこに立っていた。

 

「一日でずいぶん(やつ)れたな」

 

 おじさま。

 

 膝をついた坂本が、未だ呆然としている禪院真依の、涙の乾いた跡に触れた。指先から、心地よいちから(・・・)が全身に流れ込んでくる。結界の作用により(くろ)みかけていた意識と呼吸の気怠さが取り除かれ、指の怪我にも〈反転術式〉を施した坂本は、汚れや臭いを厭わずに禪院真依を抱きかかえた。よく頑張ったな。そう微笑んでくれて。

 

 外は明るく、広く、少し風が吹いていた。廊下や庭には、死屍累々とばかりに男女区別なく、禪院家の人間たちが倒れている。警鐘も、何時の間にか止んでいた。

 

「誰も死んじゃいないさ。滑って転んで、頭を打っただけだ」

 

 冗談めかすような言葉とともに。止める者のいない路を、抱えられながら歩いてゆく。どこか非現実的で、此処には自分たちしかいないかのような錯覚すら覚える。これは都合の良い夢なのではないか。そんな想像に駆られて、禪院真依は坂本に手を伸ばした。

 触れられる。淡い夢のように擦り抜けることは無く、たしかな熱を持つ実体として、彼はそこに存在していた。幻ではなく。

 

「おじ、さま」

 

「うん?」

 

 禪院真依は。ようやくこれが残酷な空想ではないことを認識し、「っ、」涸れたはずの瞳から、とうとうと安堵がせり上がってくるのを感じた。

 

「めいわく、を」

 

「いいんだ」

 

「ごめん、なさい」

 

「俺も、遅くなって悪かった」

 

 ふるふると、かぶりを振った。少しでも疑ってしまった自分が恥ずかしかった。疑う余地などなかったのに。いつだってこの人は味方だった。いつだって大切にしてくれた。慈しんでくれた。導いてくれた。

 今みたいに、助けてくれた。この人は。――この人こそは。

 

「気にするなって言っても気にしちゃうか。でも、これくらいにしておこう。そもそも真依は、謝らなきゃいけないことはしていないんだし。俺も、せっかくなら、謝られるよりはな」

 

 坂本の苦笑に、禪院真依は、せいいっぱいの笑みを作って言った。

 

「ありがとう、ございます」

 

「ああ。……真希たちも心配していた。早く連絡してやらなきゃだけど」

 

「待て、下郎」

 

 鋭い声が聞こえて。禪院真依は、身を竦ませた。

 振り返った先に、二人の男が立っている。

 

 禪院甚壱。筋骨隆々の偉丈夫。その隣には、禪院真依の父である禪院扇が、肩を怒らせながら並んでいた。

 

「やっとお出ましか。――大丈夫だよ、真依」

 

「オマエ()本物か」

 

 禪院甚壱の問いかけに、坂本はうっすら笑みを返した。

 

「陽動としては上等の分身だったでしょう。勿論、手加減はしていた。その証拠に、誰も死んじゃいないはずです」

 

「そんなことはどうでもいい。禪院家敷地内への侵入、一族への攻撃。どう弁明するつもりだ」

 

「さてね。見りゃわかると思いますが」

 

()れるな。所詮どう言い繕おうとも、性根は呪詛師に過ぎんということだな。ならば」

 

「真依は俺の弟子ですよ。俺の弟子ってことは、俺の身内ってことです。身内を攫われたんなら、取り戻すのは当然のことでしょう」

 

「ふざけたことを」

 

ふざけちゃあいない(・・・・・・・・・)

 

 低く、地を這うような声をして。

 

ふざけているのは(・・・・・・・・)おまえだよ(・・・・・)、禪院扇。俺の身内に手ェ出しやがったんだ。それなのにどうしておまえらがまだ生きてるのか、疑問に思わなかったのか?」

 

 配慮(・・)してやったんだよ。禪院真依には一度として向けたことのない嗤笑を浮かべて、坂本が言った。まだわからねえのか、ここまで脳みそ沸いてるとは思ってもみなかったな。

 

「貴様」

 

伝達役(メッセンジャー)なんざ一人で事足りる。だがそう(・・)しなかったのは、たかだか呪術師一匹に入り込まれて壊滅したなんて悪評が立てばあんたらの商売の邪魔になるだろうと思ったからだ。直毘人さんとのこともあるし、なんなら知った顔もいる。だから流血は避けて意識を奪うだけにした。みんな羽毛で撫でたみたいにキレイな顔で眠ってただろう? ずたずたに引き裂いてやってもよかったんだぜ。俺は、そう(・・)してやってもよかったんだ」

 

「増長が過ぎるぞ小僧。兄に気に入られただけの分際で、この私と対等のつもりか。思い上がりも甚だしい、やはり猿の仔は躾が為っておらん。だから言ったのだ、こやつをのさばらしては禪院のためにならぬと。それをあの兄は」

 

「言いたいことはそれだけか。猿みてえにおもちゃの棒切れ(・・・)振り回すしか能のない、皺くちゃの老いぼれが。この期に及んで大した耄碌ぶりだ、呆れを通り越して憐れみさえ覚えるよ。あんたを可哀そうとは微塵も思わねえがな」

 

 待てオマエら、と禪院甚壱が制止しようとするが。禪院扇が鯉口を切ると、坂本は獰猛に笑みを深めた。

 

「いいぜ。やるかい(・・・・)?」

 

 表面上の慇懃を捨てた坂本は、普段は体内を〈領域〉に見立てることで隠形を成しているという本来(・・)の呪力の、そのちから(・・・)の一端を表出させて、わらいかける。

 その絶大な余波に。禪院真依はかつて〈天与呪縛〉から解放された際の、天蓋を塞ぐ無数の扉と一面の燃え盛る花畑のなかで体感した、異質でおどろおどろしい奔流を思い出した。

 

「俺はぜんぜん構わねえよ。あんたらがやりたいっていうんなら、やろうか。俺の配慮の何もかもを無視して、この屋敷ごと地図から消して、今からあんたらが積み上げてきたモノぜんぶ台無し(・・・)にしてやろうか」

 

 坂本の放つ凄絶な呪力は、抱えられている禪院真依にだけは影響を及ぼしていない。卓抜した呪力量と切れ目ない精緻な呪力制御を目の当たりにした禪院甚壱と禪院扇は、額に滲んだ汗を拭うことすら忘れて、自身も呪力を纏うことで対抗しようとしている。

 

「どうした。突っ立ってねえで、来いよ。禪院扇。威勢がいいのは口先だけか?」

 

 本気なのか。坂本の、嚇怒に凍てついた横顔を見つめながら思った。本当に彼は、禪院家をそう(・・)するつもりなのか。

 

 ――「おじさんはさ」

 

 禪院真依の脳裏に、かつて家入硝子と交わした言葉が想起される。

 

 ――「普段は、いかにも人畜無害ですよーって顔してるけど。本気でキレると、周りにあるものを焦土にしようとするトコあるよね」

 ――「そう、なんですか?」

 ――「真依は見たことない? まあ私も、見たのは子供のときの一回だけだけど」

 

 紫煙を吐きながら。家入硝子は、遠くを見るように語っていた。

 

 ――「いつもは抑え込んでるんじゃないかな。おじさんの根底には、なんていうか、常に“瞋”のようなものがあって。それでいつもは抑え込んでいる蓋が、いざ吹き飛ぶような状況になると、おじさんは周囲を焦土にして解決しようとする。“96時間”のリーアム・ニーソンみたいに。いや、この例えはちょっと違うか」

 ――「それって、ヤバい人なのでは」

 ――「そうだよ。おじさんって呪術師のなかでも、わりとトップクラスでヤバい人だよ。元呪詛師は伊達じゃない。だからもし、おじさんが本気でキレるようなことがあったら」

 

「……付け上がるなよ、(わっぱ)

 

「扇、待て」

 

「言わせておけば聞くに堪えぬ雑言、狼藉の数々。こうべを垂れるでもなく、この私を愚弄して挙句のうのうと生きて帰すなど、あってはならぬ。身の程を知らぬ斯様な愚物は、此処で(むくろ)を晒すべきなのだ」

 

「尻尾が震えてるぞ」

 

「貴様は」

 

「そういや禪院家だと呪力の無いやつは()って呼ぶんだったか。ならあんたは()じゃなくて、犬っころ(・・・・)だな。弱い犬ほどなんとやらだ。そうやってずっと、老い先短くなるまできゃんきゃん(・・・・・・)吠えてきたのか?」

 

「坂本、それ以上煽るな」

 

「“意気地も、見栄も、情けも、色も、光も、威勢も無い”。華だってないし、おまけに相手の力量や思惑も測れない。現当主さまの弟がそんなざま(・・)だなんて、あんたこそ、身の程ってもんを知るべきだろうよ」

 

「――下郎!」

 

 飛び出すように引き抜かれた白刃が、呪力の灼熱を纏った。「もはや一片の慈悲もくれてやると思うな、その舌の根ごと焼き尽くしてくれる…!」

 

「待て!」

 

 死ねい――!!

 

 禪院扇の絶叫を、坂本が嘲笑(わら)い飛ばす。

 禪院甚壱が制止した直後。苛烈な威圧と悪辣な皮肉に耐えかねた禪院扇が、地を蹴るよりも先に。

 

 

「なんや、えらいことになっとんな」

 

 

 ぱん、と柏手(かしわで)が響くと。

 唐突に。いつの間にかこの場に現れていた、狐目の青年が言った。

 

「誰か説明してくれへん?」

 

「……直哉」

 

 一触即発の空気は、霧散したわけではなかったが。動きが止まった。禪院家次期当主筆頭候補にして特別一級呪術師でもある禪院直哉は、坂本たちを見比べると、場違いに軽薄な笑みを浮かべる。

 

「直哉。貴様この急事に何をしていた…!」

 

「やあ、直哉君。久しぶり」

 

「ほんまに久しぶりやね、坂本君。で、どういうつもりなん? 任務終えて帰ってきたら誰も出迎えに来んで、どいつもこいつもぶっ倒れとるしそのくせ一人も死んどらん。んで庭先でバチバチやっとるやろ? 冗談ちゃうんかて驚いたわ」

 

「そいつは悪かった。なにせ弟子が誘拐されたもんでね、慌てて取り戻しに来たってわけさ」

 

「へえっ、そら物騒なこともあるもんやね。なにしてんねん、甚壱君?」

 

「……俺は、さっき扇から聞かされた」

 

「はァァァ? このことパパは知っとるんか、扇のオジさん?」

 

「真依は私の娘だ、何故やつに(おもね)ねばならんっ。貴様は」

 

「あー、こらあかんわ。なんもわかっとらんやん」

 

 禪院直哉はせせら笑うと。坂本に抱えられている禪院真依を値踏みするように見やってから、あほらし、と鼻を鳴らした。

 

「わかったわ。んで、やろう(・・・)しとったっちゅうわけやね。ええんちゃう、好きにやりよったら。俺はパスやけど」

 

「直哉、オマエ」

 

「貴様、腑抜けたか…!」

 

「一緒にせんといてくれる? 俺は止めへんだけや。文句あんなら術師らしく挑めばええやん、おひとりサマで。勝ったらオトコあがるで、扇のオジさん? 死んでも知らんけど」

 

 どうぞどうぞと言わんばかりに、馬鹿丁寧に恭しく手の平を向けると、禪院直哉は口端に嘲りをたたえて距離を取った。

 

 激突必至だった空気が、禪院直哉の登場によって出鼻をくじかれ、僅かに潮目が変化している。

 今しかない。禪院真依は、意を決して言った。

 

「おじさま。降ろしてください」

 

 坂本は、悪辣な皮肉をぶちまけたのが嘘のように平然とした顔で、意外そうに見てくるが。禪院真依は身体がふらつくのを堪えながら、自分の足で立つと、禪院扇と向かい合った。

 全員の視線を感じる。恐ろしさは、消えたわけではない。それでも。

 坂本であれば、禪院真依という足手纏いを守りながらも、この場の三人を圧倒できるかもしれない。だとしても。

 禪院家はどうなろうと構わない(・・・・・・・・・・・・・・)けれど。それをすれば、坂本の立場が悪くなるのは明白だった。

 だからこそ。今こそ。

 

「お父さま」

 

 涙をぬぐい、わたしが自分の口で言わなくては。

 

「私は、禪院には戻りません」

 

 あれま、と茶化すように禪院直哉がわらう。禪院扇の双眸が、ますます憤怒に歪むが。

 

「術師は続けます。でも、私は」

 

「この出来損ないがっ、育ての恩を忘れたか!」

 

「あんたは育てちゃいねえだろう」冷め切った声が、憤怒を遮った。「この子は自分で強くなった、おたくらの手を借りずにな。それをさも手柄みてえに言うのは恥の上塗りだってことさえ分からねえ凡夫か、あんたは」

 

 殺気を血走らせる禪院扇は、しかし睨み、歯軋りするだけで、それ以上は何もしてこない。

 

「……私は、あなたの道具じゃない。あなたとは血が繋がっているだけで、それ以外には何の関係もない。あなたを親だと思ったことは一度だってない。あなたに私の人生を左右される(いわ)れは、何一つない」

 

 禪院真依も、屹然と、赤い目で()め付け返した。禪院扇が再び口を開こうとする前に、術式を奔らせる。

 

「【プラズマストライカー】」

 

 呪力を振り絞って構築したのは、“惑星冒険ARPG(ラチェット&クランク FUTURE2)”に登場する架空兵器。

 玩具(がんぐ)そのものである見た目に、禪院甚壱が顔をしかめ、禪院直哉は嘲笑おうとしたが。怒鳴ろうと禪院扇が反応するよりも早く、禪院真依は引金を絞った。

 赤白い灼光が迸り、険しい双眸が見開かれる。

 

「認めてください。さもないと、次は頭を撃ちます」

 

 顔面から半センチ横。敢えて外した弾道の軌跡が、陽炎に揺れている。劈いた赤雷の威力は、命中すれば術師であろうと一溜まりもないことを理解したのか、禪院扇の口が戦慄(わなな)いた。

 残弾はまだある。どんなに速く動こうと、外すことのない距離だった。

 

「どしたん、訊かれとるでオジさん。ぼけっとしとらんで、はよなんとか言えや」

 

「……不遜であろう、落伍者風情が。……この、――慮外者、役立たずめが!」

 

 相変わらず、禪院扇の顔は憤怒に歪んでいたが。思案ではなく、煮えた蟠りを肚に呑み込むための沈黙のあと。

 拳が真っ白になるほど握り締めていた刀から、灼熱が消失した。憤懣やるかたない様子で鞘に納め、今すぐ出て行け、と吐き捨てるように言い、踵を返す。

 

「二度と禪院の敷居を跨ぐな、痴れ者ども。私の前から、疾く失せよ!」

 

 父親から――そういわせることを望んだとはいえ――本当にその言葉を引き出せたことに禪院真依が内心で驚いていると。「扇さん」鼻息荒く立ち去ろうとしていた後ろ背に、坂本が呼びかけた。

 

「あとでやり返そうだなんて、考えちゃいませんよね」

 

 不意に。鳴っていた蟲の(おと)が、途絶えた。

 

「扇さん。わかってますよね」

 

 禪院扇の足が、凍ったように止まっている。

 

 さながら太陽が沈んだように、辺りが暗くなっている。「………、」夜ではない。実際は、雲の影に隠れたに過ぎない。しかしそう錯覚してしまうほどの、か(ぐろ)く巨きな気配が、気が付くと場を支配している。

 

「もしそう(・・)なら、そのときは俺もそれなりの対応を取りますよ。追い回されたり、周りでうろちょろされる生活は嫌いなんでね。そのときは、今回みたいに穏便に済ませる気はない」

 

 禪院扇の比ではない(・・・・・・・・・)。あらゆる瞋恚を真っ黒に塗り潰す、まるで海底(みなそこ)に引き摺り込まれたような途方もないちから(・・・)の重圧に。

 誰もが押し黙り、息を咎められ、しんと静まり返っている。先ほどの示威行為があそび(・・・)に過ぎなかったことを理解せしめる、“現代最強”に肉薄し得る夥しい「呪」を溢れさせた坂本だけが。

 炯々とわらい、穏やかさを貼り付けて、よく響く声をして続けた。

 

「よく覚えておいてくださいね、大事なことですから。こっちに手を出さないんなら、俺は口は挟まないし、今日のことは忘れる。だが手を出そうっていうんなら、あんたには、俺の安心のためにも“いなくなって”もらうしかない。その過程で何人が“お釈迦”になっちまおうと、俺にはそうする覚悟があるってことを、よく覚えておいて(・・・・・・・・)ください」

 

 禪院扇は。背中を向けたまま、縫い付けられたように動かない。

 

「扇さん。わかりましたか?」

 

 敵意を向けられていない禪院真依ですら、胃が潰れ、窒息してしまいそうな無音のなかで。

 

扇さん(・・・)

 

 くぐもった、(しわが)れた声で。わかった、とか細く呟いたのが聞こえた。

 

「わかってくれたんですね。よかった(・・・・)。なら、いいんです」

 

 どうぞ、お急ぎなんでしょう。興味を失った口調で坂本が言うと、場を浸していた、か黝い気配が霧消した。引き留めてしまって悪かったですね、もう行ってくださって結構ですよ。

 禪院扇は、立ち尽くしている。どんな形相をしているのかは見えない。()まっていた家電がゆっくり動き出すように、禪院扇はのろのろと、覚束ない足取りで離れていった。

 

 日差し。暗澹とした雲に呑まれていた太陽が、再び顔を覗かせている。

 

 禪院真依は手元から〈プラズマストライカー〉を消滅させると、そろそろと息を吐いた。力を入れ過ぎていたせいで、腕が震えている。あの(おとこ)は、最後までこちらには何も言わず、振り返ることもしなかったが。それでもあの男の呼吸が、(かじか)むように恐怖に千切れていたことに、禪院真依は気付いていた。

 

「コワいなあ、坂本君」

 

 気を取り直したように、けらけらと禪院直哉が肩を揺らした。顔は引き攣り、冷や汗を搔いていたが、こちらはあくまでも余裕を装っている。

 

「キレッキレやね。ええわ、やっぱカスどもとはちゃう。てか、真依ちゃんのことそないに気に入ったん?」

 

「手塩にかけた、俺の弟子さ」

 

「ふーん、えらい大事にしとるみたいやね。よかったやん真依ちゃん、虎の威借りても怒られへんお優しいご主人サマで。それに比べてアレはあかんわ、逃げっぷりもしょーもないチョンマゲとかホンマぶさいくで(かな)んなァ。血管ブチ切れよったらええのに。ああはなりたないわ」

 

「おい、坂本」

 

 まだ残っていた禪院甚壱が、凄みながら近づいてくる。やくざだろうと道を譲るコワモテの顔立ちは、坂本の重圧の一端を味わったばかりで感覚が麻痺しているのか、怖いとは思わなかった。

 

「今のは本気か?」

 

「ちょいちょい甚壱君。俺が話しとるんやけど?」

 

「後にしろ。どうなんだ、坂本」

 

「俺が、伊達や酔狂で言ってると思いますか。だとすれば、あんたは俺のことをなにも分かっちゃいなかったってことになるな」

 

「なんだと」

 

「甚壱さん。あんたにもひとつ教えておこうか」坂本は、口もとだけでわらった。「俺は一度する(・・)と決めたことは、必ずする(・・)ことにしていてね。自慢じゃないが今まで破ったことは一度だって無い。これから先も、違える気はない」

 

禪院(われわれ)と戦争になってもか。たかだか、こんな小娘ひとりのためにか?」

 

「この子を引き受けるとき、そうする(・・)と決めた。そしてこの子は俺の弟子だよ。むしろ、やらない理由があるか?」

 

「オマエにとって、それほどの」

 

「信じられないのなら、もう一度試せばいい。そのときは、店仕舞いの準備をしておくんですね」

 

 体躯から覇気を滲ませ、禪院甚壱は、禪院真依を庇うように立つ坂本を見据えたが。坂本は泰然と動かず、先に逸らしたのは、禪院甚壱のほうだった。数年前まで禪院家に出入りしある程度信を築いてきた坂本との関係を天秤にかけているのか、思案するように顎髭をぼりぼり弄ると、苦い顔で嘆息する。

 

「俺は、オマエと事を構えてまで、あいつを庇う気はない。少なくとも、今回の件に関してはな」

 

「ほう。いいんですか」

 

「お互い“不幸な行き違い”があった、ということだ」

 

(アレ)のことはどうするのかと、訊いたつもりなんですが」

 

(アレ)の処分も、追って伝える。今日はもう帰れ」

 

「真依も、連れて帰っていいですね?」

 

「もとより当主が認めたことだ。好きにしろ」

 

「わかりました。ご迷惑おかけします」

 

「思ってもいねえことを。それとアイツに、あまり火に油を注ぐようなことは言うんじゃねえ。アイツの沸点の低さは知ってるだろうが」

 

「それは失敬。どこぞの馬鹿がこんなことをやらかさなけりゃ、俺も大人しくしてたんですがね」

 

 禪院甚壱が、じゃっかん(もとから)老けた顔で立ち去るのを見送ると。「空気読まへんねんもんなあ、甚壱君。顔もアカンし」坂本は妙にそわそわしていたもう一人に、ところで直哉君、と先んじるように訊いた。

 

「君、少し変わったな。前に見たときよりも、呪力のムラが無くなってる」

 

「おっ、目ざといやん。そーなんよ半年くらい前やろか。〈領域〉使うてくる呪霊とやったんやけど、そんときにな、〈黒閃〉が出よって」

 

「そういえば、高専から受ける任務を増やしてるらしいね。補助監督からそんなようなことを聞いた気がする」

 

「そやで。前に坂本君、言うとったやろ。強なりたいんなら死線くぐるんが一番エエって。今の俺は、前の俺とはちゃう。そやさかい、手合わせしてくれへん?」

 

「だからそわそわしてたのか。今すぐは、無理だな」

 

「今やないよ、俺も万全とちゃうし。どうせあとでパパに呼ばれるやろ、そんときにどうです?」

 

「それなら」

 

「ほんまに? おおきに」

 

「いいさ。君のおかげで、扇さんをやらずに済んだわけだし」

 

「やっぱ、本気やったんやな?」

 

「冗談だよ。そういうことにしておいたほうがいいだろう」

 

 馴れ馴れしさに怒るでもなく、坂本は静かに笑い返した。

 

うひっ(・・・)。そうやね、そういう人や、坂本君は。――ほな、さいなら。次に会うのが楽しみやね」

 

 狐顔をにんまりと崩して。禪院真依には今も昔も軽んずる一瞥を釘を刺すように寄越した禪院直哉は、るんるんとした足取りで、路に転がっていた下人を「邪魔やカス」と蹴り飛ばしつつ、屋敷へと消えて行った。

 

 嵐が過ぎ去る。禪院真依が、どっと倦怠を肩に感じていると。ぽん、と手が置かれた。

 

「帰ろうか。真依」

 

「はい」

 

 頷いた。張っていた気が緩んだせいか、そのとき、ぐぅ、と腹の虫が鳴った。

 

「その前に、どこかで食事にしよう」

 

「…………はい」

 

 気恥ずかしくなりながらも。禪院真依は、歩き出した坂本の隣に並んだ。

 探るように、彼の手に、自分の手を重ねる。瞳の奥を読んだように、坂本は、そっと握り返してくれる。

 意識を回復しつつあった、下人たちの視線。特に女たちから嫉妬と羨望と憎悪の入り混じった感情を向けられながらも、それらの卑屈を意に介さず、堂々と顔を上げて彼と一緒に出てゆく。

 

 車は、開け放たれたままの正門に停められていた。

 

「【油煎呪法(アブラカダブラ)】」

 

 門を出ると、坂本は空いている手を屋敷へかざした。ぶわりと着香した風が吹くように、彼の意思に依って為される術式の効力が禪院家の敷地内を隅々まで駆け巡る。坂本の痕跡、それら残穢のすべてを蒸発(・・)させた坂本の表情には、これといった変化は無かったが。屋敷の人間が、坂本の術式干渉に気づいて再び肝を冷やしているさまは、容易に想像がついた。

 

 嫉妬と羨望と憎悪を寄越してきた“落ちぶれた”女たちは、屋敷を出てしまえば、もう目にすることは無い。車が走り出し、屋敷を遠く置き去りにしてゆく。助手席に座りながら、ふと母の顔が過ぎった。なんとなく思い出したというだけで、心に引っ掛かるものはなにもない。次いで(おとこ)の怯える姿が浮かび、あの(おとこ)に生まれて初めて言い返してやった高揚と達成感がいくらか尾を引いたが、しかしそれらを上回り、禪院真依の心を最も深く満たしていたのは別の感情だった。

 

「だいじょうぶだってば。もう切るから」

 

 坂本から借りた携帯で姉たちに無事を伝え、「ぎゃーぎゃー」捲し立ててくる三人に喜びよりも心労が(まさ)って通話を終えると、ふぅと息がこぼれた。やかましい会話が漏れ聞こえていたらしく、坂本は口元を綻ばせている。

 携帯を返すと。それからしばらく、禪院真依はステアリングを握る坂本を見つめた。ラジオからは、音量を絞ったパーソナリティのリスナーメールを読み上げる声がしている。少しすると、ジャミロクワイの「ユー・ギヴ・ミー・サムシング」が流れ始める。

 

「熱視線だな」

 

 見つめ過ぎていたためか、坂本が苦笑していた。その横顔と、変わらない声音に触れて。禪院真依は胸に募るのを抑えられなくなった。

 

「おじさまは、すごい」

 

 ちらと横を見た坂本は、そういえば、と思い出したように口を開いた。

 

「真依。さっきは、扇さんによく言い返したな。あれは快哉だった」

 

「おじさまのおかげです」

 

 言い返せたのも。こうして落ちぶれずにいられるのも。すべて。

 

「君の頑張りの結果さ」

 

「……それでも。おじさまがいたから、できたんだと思います」

 

「そうか」 

 

 感謝している。今日のことだけではない、今日までのことすべてに対して。

 

 始めは、憧れだった。強くてやさしくて、なにより個として認めてくれる人。私がわたしでいることを許してくれる、姉以外では初めて心を許せた相手であり、鬱屈する灰色の箱庭に差し込んだ、あたたかな色彩そのものでもあった恩人。

 時間を積み重ねるほどに惹かれていき、気が付くと、好きになっていた。外の世界を見せてくれて、欲しいものがあるのなら、手を伸ばしてもいいのだと教えてくれたのもこの人だ。離れたくなかった。だから繋がりが失われかけたとき、当主の誘いに乗って、迷わずにこの人のもとへ行った。その選択は、間違いなく正しかった。

 

「そいつは、光栄だな」

 

 この人の傍にいられることが嬉しくて、この人の教えで成長を実感できるのが、たまらなく誇らしい。それが、厳密な意味での恋だったのかはわからない。今となっては客観視は難しい。けれど姉の〈天与呪縛〉が完成したのを境に、その想いが深化(・・)したのは確かだった。あのとき(・・・・)からだ。花畑に佇む彼の姿を目にしたとき――まるで彼の存在が「魂」に焼き付いたかのように。いつの間にか、もはや、恋ではなくなっていた。それ以上の、もっと根源的で、特別で、自己の保存に直結するような深刻な“なにか”が胸の裡に生じ、育まれていった。

 多くのものを与えられ、大きなものを注がれて、そうして育てられたのだ。この人に。今の禪院真依(わたし)は、この人のおかげで生きていられる。あの日、屋敷を(たず)ねてきてくれて、わたしたちを見つけてくれたから。わたしたちを受け入れてくれたから。

 この恩に報いるには、どうすればいいのだろう。菅田真奈美。家入硝子。彼の周りにいる、オトナの女たちの顔が浮かんだ。あの人たちと比べて、自分には何ができるだろう。年齢。能力。品格。足りていないことはわかっていた。それでも。

 ねえおじさま。どうすれば私は、もっとあなたに近づけるのかな。どうしたら私は、ずっとあなたの傍に居られるのかな。どうすれば私は、ちゃんとあなたに相応しくなれるのかな。

 

 

 “誓います”

 

 心の片隅には、いつも拭いきれない闇があった。守られて、育てられて、助けられてきた。欲張りな願いを、恥知らずなわがままを許されて。挙句に強引に繋がり(・・・)さえ叶えて貰っておきながら、なのに消しきることのできない、一抹の不安があった。

 あなたに相応しくない私は、いつか、あなたに見限られてしまうのではないか。

 不安になるのは、自分に自信がないせいだ。あなたの冷たい眼差しと、あなたの去った世界を考えるだけで、心が砕けてしまいそうになる。そんなことありはしないと知っているのに。臆病で、小心で、情けない、疑り深い私がいた(・・)

 

 けれどあの日、あなたの“覚悟”に触れて。それを知ったうえで、未だに恐れている自分に、どうしようもなく腹が立って――許せなくなった(・・・・・・・)

 だからこそ。

 

 禪院真依は。家と学校を行き来する日常に戻ってから三日三晩、考えた。

 坂本に相応しい存在になるために。二度と自分が揺らがずに済む方法を。

 

 そして辿り着いた。一つの答え(・・)に。

 

 “わたしのココロも。カラダも。タマシイも”

 

 それ(・・)は、己の生涯を賭すような誓約。ともすれば“呪い”に区分される祈り。

 ねえおじさま。禪院真依は、明瞭に澄んだ心のなかで呟く。わたし、あなたのもの(・・)になりたい。あなただけのもの(・・)に。

 

 禪院真依を引き受けたとき、彼にそんなつもりはなかっただろう。迷惑だと思うかもしれない。責任を感じてしまうかもしれない。知れば、止めようとするだろう。しかし思いついてしまった時点で、もう“それ”以外の答えは、禪院真依の眼中には無かった。

 

 だってあなたのいなくなった世界では、わたしは生きていけないから。あなたなしでは、わたしはもう禪院真依(わたし)ではなくなってしまって、きっと狂ってしまうだろうから。

 

 このこと(・・・・)を、坂本に告げる気はなかった。誰にも――姉にも言うつもりは無い。たとえこれ(・・)が、呪術師にとっては致命的な効力を発揮する〈縛り〉であったとしても。たとえこれ(・・)によって、己の生涯が決定づけられてしまうのだとしても。

 知らなくていい、と禪院真依は思う。恩を返したいと言う口で、更に押し売り業者のように受け取って欲しいと求めるのは、卑小なりに、ちっぽけな意地が許さなかった。だからこれは、ばかな私が勝手に誓って、勝手にそうするというだけの話で。

 あなたに落ち度はない。しいて言うなら、こんな激重感情拗らせ女を惚れさせたのが運の尽きってことかしら。

 

「おじさま」

 

 “すべて”

 “あなたに捧げます”

 

死んでもいいわ(あいしてる)

 

 誓う(・・)

 斯くして望月の夜に、禪院真依の覚悟(こたえ)は、確定(・・)した。

 

 一度は厄介の極みである〈天与呪縛〉から解放されておきながら再びしかし今度は自らの意思で縛られることを是とした禪院真依は、己の生殺与奪の権を与えられる側の当人が与り知らぬままに坂本へと奉げ、実在理由の中核を“坂本への想い”で生涯(・・)固定する〈縛り〉を結んだことで、その〈縛り〉の副次効果も相まってより順調な成長曲線を描くようになった。

 

 月日は流れる。苦楽、病める時も健やかなる時も。

 

 術師としては、呪力操作を向上させたり。拡張術式に依らない呪具作成の幅を広げたり。結界術を習得したり。苦手な近接格闘術や、戦闘の勘を鍛えたり。

 学生としては、年間成績で学年上位十名に名を連ねたり。下級生の女子から告白されたり。不良と手を組んで“四姉妹”をどうにかしてやろうとしていた不逞の輩を表沙汰にできない方法で安全に始末したり。

 

 裏と表、共に着々と進歩を重ねるうちに――ついに、高校生になった。

 

 

 ん”ぅ”っっ♡♡ ん”ぅ”ぅぅっっ♡♡ ォ”ッ♡♡ お”お”ぉ”ォ”――――――っ”っ♡♡♡

 

 

 待ち望んでいたそのとき(・・・・)は、ついに訪れた。

 

 ぶしぃぃぃ―――――っっ♡♡♡♡

 

 ベッドの上で。彼の匂いに包まれながら。

 

 へこっ♡♡ へこっ♡♡ へこっ♡♡ へこっ♡♡

 

 裸になって。生まれたままの姿で、彼の腕に抱かれながら。

 

 

「ま…まい…♡♡」

 

 びくびく♡♡アヘトロ顔でアクメ階段を乱高下する禪院真依の傍らでは、その痴態を食い入るように見つめる、禪院真依と同じ顔をした(かたわれ)の禪院真希が、くちゅくちゅ♡♡自分の指で性器を慰めている。

 

 

 

 11.

 

 

 

 小学生の頃。禪院真希は、坂本と“約束”を取り交わした。個々の時差こそあれど“四姉妹”は全員坂本と同じ約束をしていたし、坂本本人がどう考えていたのかは別として「本番は高校生になってから」という言葉を忘れたことは無く、その日が到来するのをずっと待ちわびていた。

 

 高校生になってから最初の休日の二日間、坂本の家に帰ってきた“四姉妹”は、改めて彼に約束の履行を求めた。

 坂本は当初ハイクラスのホテルを取ろうとしたが、禪院真希たちは、しかし小綺麗なルームではなくいつもの見慣れた坂本宅で“本番”を迎えることを希望した。それは“四姉妹”がいなくなったのと引き換えに、坂本宅での菅田真奈美の気配(におい)が相対的に増したことに気づかされたからであり、できる限り自分たちもこの機会に自分たちという雌の記憶(におい)(こす)り付けておきたいという思考が四人とも働いたためだった。

 

 …ぁ”ぃ…ぐっ♡♡♡ ィ”ぃ”ぃぃ~~~~~………っっ♡♡♡♡

 

 とはいえ万事が滞りなく進んだわけではなく、最たる問題として「誰が一番手になるのか」という部分は、実は当日直前まで決まっていなかった。理想を言えば、一人ひとりしっぽり(・・・・)向き合ってイチャイチャしながら蕩けるような初体験を遂げたいというのが四人の偽らざる本音だったが。時間の拘束を許されたのは二日間のみであり、かといって同じ年数を横一列に並んで待たされた身としては今さら誰か一人だけが抜け駆けするというのは気に食わないし、納得もできず。

 お父さんに選んでもらう? と菜々子が思いついた口ぶりで言ったこともあったが、それはそれで選ばれなかった側の三人に苦いものが残りそうだし、姉妹間で仁義なき戦いが勃発しかねなかったので、結局は「無し」と流れて。

 最終的には一日目と二日目を姉妹組で分け、どちらが先になるのかは、色々あって“じゃんけん”で決めることになった。

 相手の手を見てから遅れずに出せる動体視力と身体能力を持つ禪院真希に掛かれば、検証にハイスピードカメラを使うでもない“じゃんけん”の勝敗は、勝負に持ち込んだ時点で初めから決まっていたともいえる。

 

 ぷしっ♡♡ ぷしゅ――――っ♡♡♡

 

 見事“権利”を先取した禪院真希は、自身のマン穴をにゅぷにゅぷ♡♡弄くって右手がどろぉ…っ♡♡と糸引くほど汚しながら、涙ながらに何度も快楽(オーガズム)を訴える禪院真依(いもうと)とそのカラダを丁寧(・・)(ほぐ)してゆく坂本を食い入るように見つめて、ぞくぞくぞく…っ♡♡と背筋を震わせた。

 

 寝室には、発情したメスったるい臭いが籠っている。色白できめ細やかな肌は淫靡に恥じらみ、中学生時代クラスでも有数のサイズだった禪院真依のEカップ越え乳房は、坂本に巧みに揉み(しだ)かれてもにゅもにゅ♡♡かたちを変えている。あられもなく膨れた乳首と乳輪は、吸われたり甘噛みされたり舐め這わされたりで増々ぷっくり♡♡とんがり勃起し、ズル剥けクリトリスは指先でかりかりっ♡♡ 洪水が起きている雑魚まんこは手マンでぐしょぐしょ♡♡ じゅぷじゅぷ♡♡執拗に掻き回されたことで、禪院真依の艶冶(えんや)な肢体は号泣さながらに汗と愛液でてらてら濡れ光り、へっこへっこ♡♡全力受け入れ態勢で坂本にアピールしている。

 

 れちゅ…れろぉ…っ♡♡ んむっ…はむっ…♡♡

 

 合間に坂本が舌を入れると、禪院真依はひしと縋り付くような舌遣いで粘膜を絡ませ、じわぁ…♡♡と愛液を追加した。ますますシーツに濃縮された淫臭が広がってゆく。坂本から与えられる刺激すべてに反応し、振り落とされないよう必死になって受け止めようとする健気な姿には普段のつっけんどんな妹の要素はどこにもなく、しかし禪院真希にも、それを揶揄えるだけの余裕は残っていなかった。

 

「…ふーっ♡♡ ふー…っ”♡♡…」

 

 なにせ直接愛撫されているわけではないにもかかわらず、禪院真希は妹のドスケベな痴態と坂本の強烈フェロモンに当てられて、ぴくぴく♡♡軽イキしてしまっている。完全な〈天与呪縛〉が成立したことで地続きの繋がりは絶たれたとはいえ“一卵性双生児”という似通った「魂」ゆえの呪術的〈共振〉も影響してか、今は殊更にイキやすくなっており、自分の指でシテるだけですらこうなのに。

 この調子で坂本に触られて、あまつさえ本番を迎えたらどうなってしまうのか。そのおそろしい答えは、ハジメテが痛くないようにと徹底的にぐちゅぐちゅ♡♡ ぷしゅぷしゅ♡♡ほぐされにほぐされ続けている禪院真依のひっでえ~~~~♡♡ありさまだけで、察するに余りあった。

 

 完全に骨抜き(・・・)にされた妹から目を逸らせないまま、とある情景が、ふっと蘇る。あれは夏か、それとも秋だったか。家で一緒に料理をしていたとき。魚の下処理を面倒臭がった禪院真希に、坂本は諭すような口調で言っていた。料理っていうのは、下拵(したごしら)えが肝心なんだよ、真希。

 

 がくがくっ♡♡ がくっがくっ♡♡ ぷしし―――っ♡♡♡

 

 キスで塞がれながらお腹をとんとん♡♡された禪院真依が、またしてもムチムチのエロ尻をヘコつかせて、ガクガク♡♡イキ散らかしている。

 ごく…っ♡♡と喉が鳴っていた。これ(・・)も、そうなんだ…♡♡ 唾を呑む込む音がやけに大きく響き、興奮の一言では言い表せない感情を制御できず、無意識に呼吸が早まってしまう。くわえて愛撫に専念していた坂本が、快楽に汗ばむ禪院真依の耳元でこしょこしょ囁くと、いよいよ禪院真希の心臓は鈍い痛みすら伴って高鳴った。

 

 初物の食材(・・)をやわっこくする下準備が終わり、バキバキに勃起したオスフェロモンのむらむらしいデカペニスが、できあがった(・・・・・・)禪院真依の(つゆ)だくほやほやマンコにあてがわれる。

 

 …真依のやつ、ほんとうに…♡♡

 …ししょーに、たべられちゃう(・・・・・・・)んだ…っ♡♡

 

 ぴとっ♡♡とあてがわれた亀頭が、にゅぷっ♡♡と割れ目へ圧し入り、ずにゅぅぅぅ…っ♡♡♡と押し進められる。

 そして、―――どちゅっ♡♡♡

 

「―――――――――――オ”ッ”ッ”♡♡♡♡」

 

 ぷしぃっ♡♡♡

 

 みっちみちに狭い、ド湿り開発済みまんこを一気に押し広げられて。「…~~~っオォ”ォ”…♡♡♡♡」禪院真依はベッドから背中が浮くほどの、股座から脳天まで衝き上げる極大の衝撃に両目と口をかっぴらき、しなやかな脚を爪先(つまさき)までピンっ♡♡と伸ばして、…ひゅーっ♡♡ ひゅー…っ♡♡とろくなアヘ声すら上げられず、デカ乳を重たげにふるわせた。

 

 ………ォ”…♡♡♡ ……ほ”っ♡♡♡ ……ふ…っ”♡♡ ……ん”…ぉ”…♡♡

 

 禪院真依が処女喪失アクメから帰ってくるまで、坂本はじっと動かないながらも、破瓜の痛みを上書きする正のエネルギーを緩やかに注いでゆく。虚空をたゆたっていた禪院真依の焦点が彼方から戻ると、気遣うようなストロークで、ゆっくりと律動が始まった。

 

 にちゅっ…♡♡ にちゅ…っ♡♡ ぐにゅ…っ♡♡ ぐちゅ…っ♡♡

 

「…オ”っ♡♡ ……おじ…さま…♡♡」

 

 ずちゅっ…♡♡ ぱちゅ…っ♡♡ ぬちゅ…っ♡♡ ずちゅっ…♡♡

 

「…わたし、なれてる…?」

 

 雌の媚肉と雄の筋肉が擦れ合う最中、悦びに蒸せる呼気の合間に。禪院真依は、湿った喉を震わせた。

 

「わたしの、おまんこ…っ♡♡ …おじさまのかたちに……ちゃんと、なれてる…?」

 

 禪院真依は。複雑に滲んだ、潤んだ双眸で見上げている。坂本は微笑み、耳朶に口を寄せると、あまくあたたかい、それでいて偽りない肯定を囁いた。

 

「…うれしい…♡♡♡」

 

 とけた糖蜜のような(いとけな)い顔で、禪院真依も微笑む。

 

 んちゅっ♡♡ ちゅっ♡♡ 愛しさが溶け出したような口づけが交わされる。ちゅう…ちゅむ…っ♡♡ ちゅっ…んちゅっ……わたしは、おじさまのもの…♡♡ わたしは…おじさまだけの…♡♡ ちゅぷっ…れろぉ…♡♡

 

 禪院真依と坂本は、舌で歯のかたちを確かめ合うように深く撫ぜ、濃密に唾を絡める。坂本のもの(・・)になれた禪院真依は涙に蕩けていて、密着する坂本の双眸にも、禪院真依しか映っていない。

 

「ナカに…♡♡」

 

 ぐぐぐ…っ♡♡と押し込まれる。根元までぜんぶ挿入(はい)ったことで、必然的に子宮穴(ポルチオ)を押し上げられた禪院真依が、何度も膣イキを繰り返しながら、上擦った、媚びり尽くした声でねだった。

 

「おまんこの…いちばん奥に…♡♡」

 

 通じ合う二人の姿に。

 

「だして、おじさま…♡♡」

 

 禪院真希は、こぼれるように呟いていた。「ま…まい…♡♡」お先(・・)を譲った手前、邪魔するわけにもいかなかったが。目元が熱い。わけもなく、感傷が込み上げてきて、視界がぼやけてしまう。

 

「…ししょー…♡♡…」

 

 こぼれた愛液が内股を伝い、冷たさを意識する。うめくような声だった。苦しいのか。悔しいのか。羨ましいのか。寂しいのか。自分でもわからなくなりながら、鼻をすすったとき。

 真希。そう呼ばれた。

 

 苦笑するように、坂本が見ていた。おいで、と子供にそうするように言う。律動が止まり、禪院真依も。なにか悟ったように、おねえちゃん、と呼んでくる。

 二人してわらってるのか。違うことくらい、禪院真希には直ぐに分かった。弱さを見られた気恥ずかしさに駆られ、なんだよ、とかすれた声で睨みながら、坂本ににじり寄る。

 

「ん…っ♡♡」

 

 抱き寄せられた。囁かれ、撫でられる。禪院真希は逆らわず、素直に顔をうずめ、坂本に撫でられた。指と声を感じながら、匂いを嗅ぐ。自分が認め、自分が許した、唯一のつがいにして徒党のあるじ(・・・)たるオスの臭い。体温。鼓動。それと触れている。それに()れられている。たったそれだけで、不思議なくらいに、沈みかけていた気分が安らいでくる。

 

 …なきむし♡♡

 うるせー…♡♡

 

 だるだるのでろでろにトロけているくせにしっかり煽ってくる禪院真依に言い返すと、ぎゅっと坂本に抱き着いた。刺々していたいやなものは消えている。我ながらおかしいもんだ。私ってこんなにやすいやつだったか? でも、と思う。そんな自分も、今はキライじゃない。

 おねえちゃん、と再び呼ばれたとき、禪院真依の笑みは穏やかになっていた。

 

「一緒だから」

 

 手を伸ばされる。禪院真希は、おずおずと握り返した。

 仲間外れじゃない。だから、ちゃんと見てて。そんな言外を聞き取った禪院真希の前で、ピストンが再開された。

 

 ずっちゅ♡♡ ずっちゅ♡♡ ずっちゅ♡♡ ずっちゅ♡♡

 

 見目そっくりの妹が、きゅうきゅう♡♡オスを蜜壺で締め付けて、オスの意のままにメスを全開にして淫らに喘がされている。「ししょー…♡♡ ししょー…っ♡♡」禪院真希はぎゅうっ♡♡と妹と同じEカップ越えの双乳を圧しつけ、坂本の肌の熱を感じながら、無意識にオス媚び声を大きくしてしまう。坂本の指でくちゅくちゅ♡♡秘処をいぢめられ、がくがく♡♡脚をふるわせながら、求めているしあわせの頂きへと駆け上がってゆく。

 

「…おっきぃ”の…おっきいの”くる…っ♡♡ おじさま…わたし――…っ♡♡♡」

 

 特大アクメ到来を禪院真依が訴えると、坂本はがっしり抱き起こし、対面座位になった。素敵なオカズ(・・・)を間近にして我慢の限界を超えていた禪院真希は、つよつよ手マンされながら坂本の舌にしゃぶりつき、坂本も片手で愛撫しながら禪院真依への正のエネルギーを調節することで、三人一体となって一つの結果へと昂まってゆく。

 

「んぢゅっ…んぢゅる♡♡ んぢゅるるっ♡♡ ししょーっ♡♡ …ぁ”ぃっ♡♡♡ ぃく…♡♡♡ ぃ”――――♡♡♡♡」

 

「あ”っ♡♡ あ”っ♡♡ あ”っ♡♡♡ おじさまっ♡♡♡ おじさまっぁ”―――オ”ッ”♡♡♡♡」

 

 結果の訪れは、三人同時だった。

 

 ごちゅんっ♡♡♡

 びゅくびゅくびゅるるるぅうううぅぅぅぅぅ~~~~~~~~~~っっ♡♡♡♡

 

 オ”ぉ―――っ♡♡♡♡ ほっ”ぉ”ぉ”ぉぉぉっ♡♡♡♡ お”ぉ”ぉ”ぉォォォ~~~~~~~っ”っ♡♡♡♡

 

 肉襞と最奥(しきゅう)をオスチンポで力強く抉じ開けられ、びゅぶっ♡♡♡ どぷぷーっ♡♡♡と常人を遥かに超える量の熱々スペルマをノーガードで受け止めた禪院真依は。防音結界が無ければ確実に近所に聞こえるようなオホ声と共に、安産型のむちケツをがくがくがくがくっ♡♡♡と痙攣させた。「ォ”…♡♡♡♡」坂本に抑えつけられたまま、どくっ…♡♡ どくっ…♡♡となおも止まらない(なっっが)~~い射精をぶちまけられると、「…ォ”…♡♡♡♡」ついには理性のかけらもないアヘ顔で、本日最大級のアクメ痙攣を迎えて。

 

「――――――ォ”っ”♡♡♡♡ ……ォ”…ォ………っ♡♡♡♡」

 

 ちょろろ…♡♡とイキ潮以外のものも噴き溢しながら、不意にカラダからくたっと力が抜けた。坂本の肩に頭を乗せたまま、口端からよだれをこぼし、意識を飛ばしている。

 

「ふーっ♡♡ ふ…っ”♡♡ …は…っ”♡♡ は…っ”♡♡……」

 

 禪院真希も、ぶししーっ♡♡とマーキングするようにほかほかの絶頂汁を撒き散らしてしまい。禪院真依が味わった爆弾級のオーガズムほどではなかったおかげで、なんとか息を整えていると。

 気絶した妹をそっとベッドに横たえた坂本と、目が合った。

 にゅぷ…っ♡♡と引き抜かれた膣穴からは、ごぼっ♡♡と半固形のザーメンが逆流している。くらくら(・・・・)するような精臭に塗れたデカマラは、依然デカデカと屹立しており、むしろ巨きくなった印象さえあった。

 

「…わたしは…」

 

 禪院真希は。自分の番が来たことを理解して、とっくにカラダの芯では認めてしまっていることに気づきながらも、奮い立つように言った。

 

「わたしは、まけねえからな…!」

 

 

 どちゅっ”♡♡ どちゅっ”♡♡ どちゅっ”♡♡ ごぢゅっっ”♡♡♡

 

 

「~~~っ”♡♡♡ ~~~ッッ”♡♡♡ ~~~~~ッッ”ッ”♡♡♡♡」

 

 突き上げられて。

 組み伏せられて。

 

「――ぉ”ぉ”ッ♡♡♡ ん”ぉぉっ”♡♡♡ ~~~~ん”ぉぉ”ぉ”ぉ”~~~~~っっ♡♡♡♡」

 

 揉みしだかれて。

 抱きつぶされて。

 

「ん”んぅ”ぅ”ぅぅっっ♡♡♡♡ …~~~~イ”っでるっイ”っでるぅぅぅぅ――――――♡♡♡♡」

 

 びちゃっ♡♡♡♡ びしゃっ♡♡♡♡コントロールを失って噴き出す愛液で、結合部はずぶずぶにぐちゅつき、シーツはびしょびしょになっている。

 

 むり”…っ♡♡ むり”ぃ”ぃっ♡♡ むり”だこれっっ♡♡ あたまがアクメでちかちか弾けるなか、“ばれてんだもんっっ♡♡♡”と禪院真希は言葉にならない嬌声(ひめい)を上げる。ばれてるっっ♡♡♡ ししょーにわたしのよわいトコっっ♡♡♡ ぜんぶッッ♡♡♡♡

 むり”っ♡♡♡ かてないっ♡♡♡ このオスに――メス(わたし)がかてるわけねえじゃん♡♡♡♡

 

「むり”ぃ”ぃぃぃぃっ♡♡♡♡ ま”けぇ”ぇ”ぇぇぇぇぇぇっ♡♡♡♡」

 

 びゅくびゅくびゅるるるぅうううぅぅぅぅぅ~~~~~~~~~~っっ♡♡♡♡

 

「ホォ”オオオオッ”―――あ”あ”ァあ”ああああ~~~~~~~~~~っっっ♡♡♡♡」

 

 七度目の激重アクメを迎えた禪院真希に後ろから覆い被さり、当然のように子宮穴をぶち抜いた坂本は、一度目と変わらない量のつよオス精子をぶびゅるる~~~っ♡♡と流し込み、じたばた♡♡震えているカラダが動かないよう上から抑えつけた。

 射精が収まると、なけなしの自信を粉々に磨り潰されている禪院真希の頭を撫で、多分にあまやかす情語を鼓膜に流し込む。もはや囁かれるだけで甘イキするくらい蕩けている禪院真希は、もちろんぴくっ♡♡ へこっ♡♡と反応しながらも、夢心地の余韻のなかにいた。

 

 かてっこない…♡♡ まける…♡♡ つよすぎる…♡♡ すごすぎる…♡♡ ししょー…♡♡

 ……ぁ…♡♡ なでなで…♡♡ うれしい…♡♡ やさしい…♡♡ すき…♡♡ ししょー…♡♡

 

 …かてなくっていい…♡♡ ししょーなら…♡♡ …ししょーだから…♡♡

 …わたしは…ししょーのだから…♡♡♡

 

 ぷしっ♡♡

 

 剥き出しの魂に彼の指痕が加えられてゆくような。“尊厳破壊後よしよしナデナデ”の相乗効果で、ぶっ壊されたちんけなプライドがつがい(・・・)の掌で好き勝手に固め直されてゆくことにたまらない歓びと興奮を覚えながら、禪院真希が、とぷんっ♡♡と子宮(ナカ)でせーしが重たく揺れるのを感じ、何処に出しても恥ずかしくないチン負けメス顔でふにゃふにゃになっていると。

 

「ひっどい顔ね、真希…♡♡」

 

 ゆっくり身体を起こした禪院真依が、にたにた笑いながら、四つん這いで禪院真希を見下ろした。

 

「おじさま、きれいにしますね…♡♡ あー…むっ♡♡ ちゅぷ♡♡ ぢゅぢゅずずず…っ♡♡」

 

 禪院真依はとろんとした目付きになると、躊躇せず、射精直後でもまったくチン圧の減らないイチモツへ唇を落とした。亀頭の先っぽにちゅーっ♡♡と吸い付き、カリ首の周りを丹念に舐めしゃぶり……、坂本に撫でられると見るからにでれでれになりながら、愛おしそうに「ちゅっ♡♡ ちゅっ♡♡」とお掃除フェラを施してゆく。

 

「…ずりーぞ…♡♡」

 

 そんなふうに見せびらかされて、黙っていられるわけもなく。禪院真希もいそいそと四つん這いで近づくと、坂本の股座に顔を寄せ――「ふぉ”ぉ”ぉ”ぉ”~~~~…っ♡♡♡」――超人(フィジギフ)メスには特効の激濃ゆスメルで嗅ぎアクメしつつも、甘露をすするように、舌のうえにぱんぱんに膨れている超重量(ドデカ)陰嚢(キンタマ)を乗せて、あ~~むっ♡♡ ぢゅむ”っ♡♡と口いっぱいに頬張った。

 

 ちゅぷっ♡♡ はゅぷっ♡♡ ずゅぢゅっ♡♡ ぢゅちゅるるる…♡♡

 ぐぽっ♡♡ ぢゅぽっ♡♡ んぢゅっ♡♡ もごっ♡♡ じゅぞぞぞぞ…っ♡♡

 

 っ”…ぷはぁ……♡♡

 

 お掃除が終われば。

 禪院真希と禪院真依は競うように横並びに寝転び、くぱぁ…♡♡とお股を広げる、ド下品ハメ待ちポーズで坂本を見上げた。

 

「ししょー♡♡」

「おじさま♡♡」

 

 ……………きて♡♡♡

 

 壁紙に交尾臭がへばりつくような淫猥空間のなかで。堕ち済み双子JK弟子のチン媚びアピールを一身に受けた坂本は、ビキビキビキ…っ♡♡と股間を猛り立たせて――

 

 

 嬌声は終わらない。

 月が見下ろす長い夜は、長針が一二時を回っても賑やかに続けられ、尽きるまで眠ることは無かった。

 

 

 

 

 

 

「―――」

 

 朝陽の気配。

 瞼越しに、うっすらと感覚する。

 

 慣れ親しんだ部屋。隣では、慣れ親しんだ存在が寝息を立てている。

 

 時計を見た。

 普段よりも、だいぶ遅れている。寝過ごしたらしい。学校がある日なら起こされている時間だったが、昨日は最後は失神して終わったこともあり、気を遣われたのだろう。

 身体を起こす。とうぜん、裸だった。そして汚れはどこにもなく、臭いも含めて綺麗になっている。

 

 ちょうど妹も身じろぎし、薄目を開いた。同じく服は着ていない。覚醒前のぼんやりした眼差しで、なにかを探すように目を動かし、それから、こちらを向いた。

 

「…おじさまは?」

 

 

「おはよう」

 

 リビングでは、ラフな格好をした坂本が寛いでいた。テーブルには坂本の作った朝食が、ラップをかけて置かれている。

 声を掛けようとすると。一緒に寛いでいた菜々子と美々子が、弾かれたように立ち上がった。

 

「おは――」

 

 挨拶すらスキップして、ぐいぐいぐいっと左右から詰め寄ってくる。

 

「どうだった!?」

 

 開口一番に、そう訊かれた。

 

「………、」

 

 禪院真希と禪院真依は。顔を見合わせると。 

 

 溜めるように、ひと息を開けて。まったく引き締まらない、双子でそっくりな表情を浮かべてから、答えてやった。

 

 

「「……最っ高♡♡」」

 

 

 

 

 12.

 

 

 

 呼び出し音が、鳴っていた。

 

「坂本さん? 悪いんだけどさあ、今から言うところに急いで来てくんない? ちょっぱやで!」

 

 平日の午後だった。

 電話の主には、まったく悪いとは思っていない軽い口調で告げられたが。坂本は切れた携帯を見下ろし、ひとまずため息を吐くと、告げられた、呪術高専と秘密裏に繋がりを持つというその病院(・・)へ向かった。

 

「よっす。坂本さん、おひさー」

 

 そこでは坂本を呼び寄せた張本人である五条悟と、もう二人。深刻な顔をした伏黒恵と、彼の付き添いである来栖華(くるすはな)の姿が揃っていた。

 

「坂本さんっ」

 

 パイプ椅子に座っていた伏黒恵が、坂本に気づくと慌てて立ち上がり、言葉に詰まるように口をわななかせる。病院特有の消毒剤のにおいが残る病室。そのベッドでは、見覚えのある少女が眠りについていた。

 

「お願いします」

 

 三〇二号室。電話では、五条悟は「それ」が誰なのかを言わなかったが。坂本はネームプレートに書かれていた名前を見た時から、状況を理解していた。

 

 勢いよく頭を下げられる。頭を下げたまま、堰を切ったように言われる。

 

「――津美紀(・・・)を、助けてください」

 

 

 

 伏黒津美紀。伏黒恵の唯一の家族である非術師の義姉が、何者かに呪われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





・犬っころ … きゃんきゃん吠えていたが、わからされた。

・ドブカス … 原作と比べてけっこう頑張っている。俺もあっち側に立つんや…!

・顔がアカン … 顔がアカン。

・禪院家の皆さん … いろいろあったが誰も死んでいないので何の問題もない。ヨシ!

・禪院真希 … メス臭ドスケベ肉厚ムチムチむっつりデカチチJKヒロイン。最っ高…♡♡な初体験を遂げた。ちゅきちゅきオスに組み伏せられて負けメスアクメするの気持ち良すぎだろ!!

・禪院真依 … メス臭ドスケベ肉厚ムチムチむっつりデカチチJKヒロイン。最っ高…♡♡な初体験を遂げた。記憶の放棄すら可能とする〈縛り〉を用いて「生涯を捧げる」宣誓は重大であり、故に得られる法悦は何物にも代え難い。

・坂本(10代) … 元呪詛師。業界に深く通じる者には“火葬屋”の名で知られる。裏社会時代の恩師から依頼され、やむを得ず“癒し手”を巡る騒動に参加した。いざこざに乗じて少女を誘拐するが、恩師殺害の罪を着せられたために少女を連れて逃避行を繰り広げ、敵対する呪術師、呪詛師、暴力団、賞金稼ぎ、華僑、国内外の宗教団体といった数々の追跡者を焼滅させた。だいぶイキっていた時代。



・坂本(10代)イキリ台詞抜粋 … 「消えちまう人間ってのは、この業界じゃ珍しくない。あんたのほうが詳しいだろう」「ピザ屋の店員にでも見えるのか。悪党だよ、君を誘拐しに来た」「俺は紳士って柄じゃない。ただ、あんたが気に食わないだけだ」「おかしなことになってるな」「くだらねえ」「いいぜ、撃てよチンピラ。ちゃんと狙え。ほら、ここだよ、ここ」「残念でした」「対価を得るからこその、仕事さ。ここから先は仕事じゃない。だから、俺の好きにさせてもらう」「そんなに頼んでも食べきれねえだろ。まだ頼むのか?」「いいんじゃないか。素材がいいからな、よく似合ってる」「紐無しバンジーだ。しっかり掴まれ」「貴重な経験だな?」「何事にも終わりはある。“夜明け前が一番暗い”んだ。大事なのは、おまえがどうしたいかだ」「どっちを選んでもいい。最悪、海外に()けりゃいいしな。世界を旅するのも悪くはねえさ」「ああ。俺のちからを見せてやる」「ハロー、悪党のクソ蛆虫ども」「店仕舞いの準備をしろ。くだらねえ馬鹿騒ぎは、今日で終いだ」「出口はない、何処にもな。ここがおまえらの墓場ってわけだ」「ぜんぶ“お釈迦”になっちまったなあ?」「まあ、こんなもんさ」「これが最良だ。そうだろう?」「いい子だ。またな、硝子」。
◆たったの二週間の逃避行。しかし少女(13)にとっては…。

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