※この作品はR-18です。

ユー・アー・マイ・スペシャル   作:グリム・グリルグリン・グリーングリップ

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18 私も

 

 

 

 16.

 

 

 

「俺はドライブの時は曲を流す派でね。音楽が好きなんだ、ここに来るときも流してた。マリリン・マンソンのビューティフル・ピープル、フー・ファイターズのオール・マイ・ライフ――」

 

 伽藍洞のトンネルに響く男の声には、静かな熱が滲んでいる。

 

「リンキン・パークのギヴン・アップ、ディスターブドのインディストラクティブル。あとは、これも古い曲だけどオジー・オズボーンのミラクル・マン。八八年の悪党に休息なし(ノー・レスト・フォー・ザ・ウィケッド)ってアルバムに収録されてる。楽しい曲だよ、聴いてると気分が上がる。特に今日みたいな、特別な日にはうってつけ(・・・・・)の曲だ。ちなみに“悪党に休息なし”ってフレーズは、元々は旧約聖書の言葉なんだ。イザヤ書に出てくる。君は読んだことあるかな、聖書を? 世界で一番売れてる本だよ。小説として読むと、けっこう面白い。これでもかと神さまの理不尽な振る舞いが出てくる。まあ、たいがい理不尽なもんだよ、神さまってやつは」

 

 男と対峙する、ヒトの姿を取る継ぎ接ぎの人ならざるそれ(・・)は、ヒトにしては特異な“魂”を持つ男の饒舌な独白を聞きながら、ぱちぱちと目を瞬かせている。

 

「でもこれも、ある意味では“お導き”ってやつなのかな。君に会える保証は無かった。俺の“記憶”には穴がある。すべてを網羅しちゃいないし、今じゃ霞みたいに、なんとなくしか思い出せないことも多い。それでも、これだけは忘れなかったんだ。“主人公(・・・)が登場したあと、何処かの映画館で事件が起きる”。何処の映画館で起きるのかは曖昧で分からないから、ここ数か月はずっと神経を尖らせていた。その甲斐はあったよ、ようやく」

 

 そこまで堰切るように言うと。男は突然、はたと口を噤んだ。

 

 いきなり火が落ちたような沈黙。

 

 爛々とした“魂”の代謝を見物していたそれ(・・)が首を傾げると、含羞(はにか)み気味に俯いた男は。喋り過ぎたな。自嘲するように、ぼそりと言った。

 

「悪いね、この状況に少し興奮していて。つまり俺は、君に感謝しているんだよ。信じられないだろうが、そいつを先に、どうしても伝えておきたかった」

 

 向ける眼差しは、あくまでも親しげだった。恐れや怒りはまるで含まれていない。それ(・・)が、それ(・・)の犠牲者である“改造人間”を包蔵(ストック)している体内から取り出して指の間で弄んで見せても。

 それ(・・)が、男の澄まし顔を歪めてやろうと“改造人間”を瞬間膨張/射出してみても、男の“魂”に曇りはなかった。

 

「【油煎呪法(アブラカダブラ)】」

 

 無色透明が揺らめく。不意を突くはずだった巨腕の如き“改造人間”が油体(ゆうたい)に叩き潰され、轟音と震動が、湿ったトンネル内に反響する。

 

「“蓋覆(ふくがい)”・“鎮魂(ちんこん)”」

 

 忽(たちま)ち“改造人間”は無残に蒸発(・・)するが、男の立ち位置は変わっていない。それ(・・)が驚きに声を上げる眼前で、淡々と反転の呪詞を紡いでゆく。

 

「“祭神(さいじん)の竈(かまど)”」

 

 男が、やおら腕を持ち上げた。男の二本指が、人類を象徴する発明品の一つである銃(どうぐ)さながらのかたちを取り、それ(・・)を指し示す。

 

 それ(・・)は、男から発される術式の“起こり”を感覚し迎え撃とうとするも、それでもまだ慌てていなかった。

 男の最大火力がそれ(・・)の想定をどれだけ上回っていようとも、存在の秘奥たる“魂”に干渉されでもしない限り――それこそ“現代最強”の力押しでもなければ――それ(・・)は生得術式〈無為転変〉の効果によって何度でも再生できる。撤退の優先度は必然の慢心によって軽視され、それ(・・)は眼前の呪術師を実験体にしてやるべく“呪い”の本能の赴くがままに、かたちを変化させようとして。

 

 男の口元が、弧を描くのを見た。

 

「【無行万象(むぎょうばんしょう)・載(サイ)】」

 

 “改造人間”よりも速く。光よりも遅い速度で射出された油体が、それ(・・)の胴部に着弾する。

 

「―――」

 

 それ(・・)の躰には、何も生じていない。着弾しても爆散はせず、囂々と燃え盛るでもなく、激しい光を発したりもせず。油体は溶けるように消えている。

 それ(・・)は喜悦に歪んだ笑みをして、直ぐにでも飛び掛かれる姿勢で構えている。

 

「油断し過ぎだ」

 

 それ(・・)は喜悦に歪んだ笑みのまま。しかし、一歩も動かなかった。

 

「お仲間から、俺のことを聞かされてなかったのか」

 

 何も起こらない。男の声だけが響く。

 

 それ(・・)は何もせず、棒のように突っ立っている。わらいながら。微動だにしていない。

 

 男は腕を下ろすと、蝋(ろう)のように笑顔で固まっているそれ(・・)を見据えた。虹彩異色(オッドアイ)の双眸は、反応を失っている。極度の焦りから継ぎ接ぎの体表に冷や汗が吹き出すこともなく、存在の秘奥たる“魂”に干渉しなければ突破できない〈無為転変〉の防御を貫通(・・)されたことを今さら察して苛立ちにくすんだ水色の長髪を掻き毟るでもなく、それ(・・)の口から、幽かな、もはや声ですらない息がこぼれ落ちる。そしてその息を最後に、ついには、それ(・・)からは何の音も発されなくなる。

 

「日に三度しか使えない、とっておきでね。〈無量空処〉を参考に作ったはいいが、使う機会が無くていつもは〈縛り〉の肥やしになってる。ちゃんと効いてくれてよかったよ」

 

 それ(・・)は何も起こせない。“改造人間”を取り出すことはおろか、呪力を奔らせる行為さえも。指先にほんのちょっとの力を加えることすらも。不能にされている。

 それ(・・)は、“あらゆる熱量存在(エネルギー)の変動を否定する”〈術式反転・無行万象〉の作用によって躰(うつわ)はもとより物事を判別する思考の源泉――精神そのものに不燃性(・・・)を付与され、理性も本能も滅滅と停止し、喜怒哀楽痛痒(つうよう)恐懼絶望を感じることもない、何をされようと何を言われようとも反応できない、ひたすら笑顔で立ち尽くすだけの置物(オブジェ)と化している。

 

 ただの一撃で。

 まさに一瞬にして。

 

 目まぐるしい想定外の攻防も、劇的で情緒的な叫びも無い。必定の決着がついていた。

 

「名前、聞きそびれちまった。まあいいか。生まれてきてくれてありがとう、名無しの呪霊くん」

 

 今はただ、君に感謝を。

 

 男は。そう呟いてから、ふっと遅れておかしさが込み上げてきたというように、喉の奥でわらった。もう聞こえちゃいねえか。目的を遂げ、敗北を理解する機会すらも奪われた笑顔のそれ(・・)を油体で包み込むと、丁寧に、ポケットに入る大きさになるまで折り畳んでから、スーツを翻(ひるがえ)す。

 

 足音が響く。

 足音が響く。

 

 出口へと向かう、男の軽快な足取りを引き留められる者は、誰もいない。

 

「いい天気だ」

 

 青空だった。

 

 外の眩しさに目を細めた男は、〈呪霊操術〉の使い手に連絡を取ると、その場を立ち去った。

 

 

 あとには、静寂だけが残されている。

 

 

 

 

 17.

 

 

 

 呪術高専東京校で教鞭を取っている夏油傑は、ときに呪術師として、もしくは人生の先達として、生徒から相談を持ち掛けられることがある。

 

 その日も、さる任務での失敗のせいで悩みを抱え込んでいた生徒と対話し、その不安に寄り添い、問題解決への一助を担った夏油傑は、気が付けば二〇代も後半に差し掛かろうという年齢になったことで、ふと己が歩んできた人生の轍について思いを馳せた。

 それらは、決して楽しい内容ばかりではない。これまでに経験してきた様々なことのなかには、厭なものを目にする機会も多々あった。そして特に記憶に残り、夏油傑の道筋に大きく影響した「転機」が、いくつかある。

 

 まず一つは、高専にスカウトされたことだろう。幼少の頃は、他の人間たちと違って呪霊を視れてしまう自分こそが間違っているのだと周囲に壁を感じていたが。呪術師という希少な仲間と出会えたことで、夏油傑はそれまで内に秘め続ける他なかった孤独から初めて救われ、自分を肯定することに自信を持てるようになった。

 

 高専繋がりで云えば、やはり五条悟という親友を得られたことも「転機」に当たるだろうか。高専に所属する上澄みの呪術師をして比肩する者のいなかった夏油傑が、初めて己に匹敵し凌駕し得る存在を知ったときはたいそう驚かされた。いざソイツと対面してみれば、まさかいきなり喧嘩を吹っ掛けてくるトンでもねえ問題児であったと知った衝撃は、未だに記憶に焼き付いている。

 のちにその問題児と盟友の間柄になるなんて思ってもみなかったし、あるいは五条悟が未来で教師をしていることを当時の夏油傑に教えれば、冗談も大概にしろ世の中の真面目な先生たちに失礼だろと怒り出すかもしれなかったが。それはそれで、他愛ない笑い話の一つではあった。

 

 そして――ある任務での失敗。守ると決めたはずの少女を守れず、その少女が最期まで大切に想っていた家族も、むざむざと死なせてしまった。忘れてはならない「転機」。取り返しのつかない敗北と、少女の死を望んだ非術師たちの、慚愧の欠片も無い醜悪な様を見せつけられて。

 弱者救済という崇高な理念に感じていたはずの誇らしさは疵と共に色褪せ、大切な仲間の死という澱みが心の底に溜まり続ける日々。親友は一人で“最強”になり、自分だけが、立ち直れずに取り残されているという焦燥。思い返せば、初めての挫折だったのだろう。無根拠に自分を信じられなくなった。なまじ優等生であったが故に致命的な失敗は起こらず、けれど立場がおもてに弱さを出すことを許さず、倦み、くたびれ、“呪い”を呑み込みたびに少しずつ、されど着実に、喉咽(のど)は絞(せば)められていった。

 

 ――「や。久しぶり、五条悟君」

 

 彼(・)が高専にやってきたのは、そんなときだった。

 

 ――「邪魔すんな、傑!」

 

 ――「初めまして、坂本です」

 

 激昂する五条悟に対し、不敵に白い歯を見せて笑った男。直後に校庭で五条悟と渡り合い、誰も届かなくなったはずの“最強”に傷を負わせるというありえざる衝撃的な結果を証明した、元呪詛師の一般人。

 

 ――「あとで少し、話せないかな?」

 

 喧騒から連れ出された夏油傑は、いくつかの質問に答えることになった。普段の授業風景や、生徒同士の仲の良し悪しや、教師陣のサポート体制、高専から見た現在の呪術界の情勢について等々。どれも身構えていたのが拍子抜けな普通の内容ばかりであり、どうも坂本は、五条悟の尊大な振る舞いを見て「義娘が本当に此処で世話になっても大丈夫なのか」心配になったようだった。

 幼い娘が二人いることを差し引いても、夏油傑の考える(元)呪詛師らしからぬその様子に戸惑いながら、とはいえ警戒はしつつ、話せることは真面目に答えてゆくと。

 

 ――「なるほどね。まあ、そんなもんなのかな」

 

 いちおうは納得したらしく、聞き終えて苦笑した坂本に、今度は夏油傑が訊き返す番だった。元呪詛師ということだが、何の仕事に就いているのか。「税理士だよ」意外だった。あれほど卓越した戦闘スキルを持つ術師の選んだ職場が、よりにもって税理士?「そんなに可笑しいかな。数年前に独立して、今は自分の事務所も持ってるんだぜ。染み(・・)ひとつない、クリーンな仕事さ。最終的には畳むつもりでいるけどな」五条悟との関係は?「昔、一度だけ会ったことがあってね。それだけだよ。それ以上は、本人に訊いてくれ」

 

 そもそもなぜ呪詛師なんかに?

 

 ――「俺はガキの頃に呪詛師に売られてね。そいつの復讐の道具として育てられた」

 

 そこから羅列された内容は、ひとりの幼い少年に突如として降り掛かった、鍛錬とは名ばかりの、憎悪に満ちた拷問の如き凄愴な一〇年間だった。

 聞くだけで胸糞が悪くなる、大人であっても耐えられはしないだろう地獄に放り込まれ、何故この人は狂わなかったのか。平然と語る坂本を見ながら思う一方で、しかし夏油傑には、聞き逃せない言葉があった。

 呪霊を食べさせられた(・・・・・・・・・・)、と。確かに坂本はそう言った。最悪な味で、何度も死にかけたが、やっとの思いで解決方法を編み出したと。何気ない口調だったが、夏油傑は、思わず話を遮って訊いていた。

 解決したとはどういうことか。「反転術式でね。あとは結界術で、呪霊を」呪霊を?「無味無臭に変えた」そんなことが。

 そんなことが本当に出来るのか。もし、嘘ではなく、本当に可能だというのなら。

 

 ――「それは、私にも出来るんでしょうか?」

 

 出した声は、掠れていたかもしれない。坂本は〈呪霊操術〉の使い手をまじまじと見つめると、暗澹たる苦悩に射した希望を見透かしたように、にやりと笑った。

 

 ――「教えようか。勿論、タダ(・・)ってわけにはいかないが」

 ――「そんなに警戒するなよ。俺は悩める青少年からふんだくる(・・・・・)ような、阿漕(あこぎ)な暴利屋とは違う。こう見えて、意外と良識派なんだ」

 ――「これから長い付き合いになる。仲良くしようぜ、夏油傑君」

 

 〈縛り〉を交わした。交流が始まると、少ない時間を使って行う修練は、そのすべてがスムーズにとは運ばなかったが。ひと月が経つ頃には、望んでいた「結果」に指を掛けることができるようになった。そのうち親友や教師陣にはできない相談をするようにもなり、そうして対話を繰り返していると、一時は萎びかけていた“呪術師で在り続ける理由”が再び夏油傑のなかで息を吹き返し始めて。気づけば成果の甲斐もあってか、いつしか挫折した自分を、前向きに受け入れられる心の変化が起きていた。

 

「よう、夏油君」

 

 未だ道半ばであるし、常に正解を選べてきたわけではない。拾えたもの。取りこぼしたもの。忘れたもの。失えないもの。後悔には事欠かない。それでも、悪くはない(・・・・・)、と思う。紆余曲折を経て、こうして母校の教壇に立つ立場になり、仲間である若者たちを守り導けるようになった今の自分の在り方は。夏油傑にとって、それほど悪いものではない。

 これを「妥協」と捉えるか、「成長」と判じるかは、それこそ人によって分かれるだろう。だが本心に近いところでそう思ってしまう、ある種の凡庸な自分のことを、夏油傑は、赦せるようになっていた。

 

「突然で申し訳ない。君にお願いがあってね」

 

 もし自分を赦せずに呪術師を続けていれば、いずれどんな選択を辿ったのか。きっと、遠からず破綻していただろう。どういった破綻の仕方になっていたのかは、当時の腐りようを考えれば、だいたい想像がつく。

 坂本との邂逅は、やはり夏油傑の、大きな「転機」だったのだろう。坂本は、最初こそ胡散臭くて信用するのにだいぶ躊躇したが、新たな価値観を考えるきっかけをくれた人物であり。〈極ノ番〉といった切り札の改良に、手を貸してもらった恩もある。

 

 だからこそ。夏油傑は、仮に坂本から頼られた際には、それを断らないと決めていた。

 

 

「――前に言っていた“借り”、返してもらえるかな」

 

 

 ビルの解体跡地に集まっている。昼間であっても、周囲に人影は無い。

 

「おいで(・・・)」

 

 夏油傑は〈呪霊操術〉下にある「ツギハギ」の呪霊を出現させると、降ろされた「帳」のなかに揃っている顔ぶれを見回した。

 

「準備はいいですか」

 

「ああ」

 

 一歩前に臨んだ坂本が、頷く。

 

「やってくれ」

 

 一週間前に連絡を貰ってから、呪詛師や呪霊を使っての検証は済ませてあった。問題はない。夏油傑は「阿弥陀如来」の掌印を組むと、意識を集中し、呪力を漲らせた。

 

「【領域展開】」

 

 

 空間を遮断する結界が展開され、夏油傑と坂本の姿が消える。

 五条悟は親友たちを呑み込んだ〈領域〉の前で腕を組むと、ちらと隣に視線をくれた。

 

「緊張してんの?」

 

 話を振った相手は、五条悟の揶揄然とした素振りを、気にも留めていなかった。五条悟が携帯食を取り出してヤンキー座りで暇を潰し始めても何も言わず、かといって「帳」を出て行くでもなく、事態の行方を愚直に待ち続けている。

 

「―――お」

 

 夏油傑の〈領域〉が、崩壊した。

 

 結界の破片が飛散し、再び現れた二人は、傍(はた)から見れば結界に呑まれる前と何も変わっていない。しかし呪力の織りなしを解析できる五条悟の〈六眼〉には、坂本の身に起きた変化(・・)が、正確に映し出されていた。

 

「ふうん」

 

「どうですか」

 

 坂本は自分の掌を動かしながら、どこかぼんやりとしていて、反応が鈍い。

 

「坂本さん? どこか問題が――」

 

 すると何を思ったのか、坂本は見下ろしていた左手を顔に近づけると、鋭く歯を突き立てた。え”、と目を瞠った夏油傑をよそに、ぐちり(・・・)、と噛みちぎる音がして。

 

「………、」

 

 周りに絶句されながらもごもご(・・・・)と口を動かした坂本は、しばらくすると、含んでいたものを唾とともに吐き捨てた。喰いちぎった血みどろの親指がころころと砂利にまみれ、途端に、噴き出した炎に呑み込まれる。融け崩れる親指をぼうと眺めている坂本の、白い骨が露出した粗雑な第一関節の切断面からは、鮮やかな赤がぼたぼた(・・・・)と地面にこぼれている。

 

 

 ――「〈天与呪縛〉を解く方法はない」

 

 “医学ではどうにもならない”

 “外に助けを求めても無意味”

 “あるいは”

 

 “呪術を極めれば解決が拓けるやもしれぬ”

 

 

 唖然とする夏油傑の前で、坂本は、目を閉じた。

 

「そうか」

 

 濡れた唇を、歪めて。噛み締めるように笑いながら。「そうか。これ(・・)が、痛みってやつか」ゆっくり〈反転術式〉を行使すると、自身が喰いちぎった親指で、口端の血を拭(ぬぐ)った。

 

「夏油君」

 

「あ、はい」

 

「悪くない。いいや素晴らしいよ。おかげで、歌でも一つ歌いたいくらいに、いい気分だ」

 

「そうですか。上手くいってよかったです、あの、ところで」

 

「ありがとう。本当に、ありがとう。君には感謝してもしきれないな」

 

「いえそれは、いいんですが。あの、……どうして、指を?」

 

「ちゃんと治ったのか、確かめたくってね」

 

「だからって、普通は噛みちぎったりしないと思うんですが。痛くないんですか?」

 

「痛いよ、勿論」

 

 坂本は、満面の笑みを浮かべて言った。

 

「じくじく(・・・・)してる。それに、不味い」

 

「あーあー、坂本さんさー。あまりに蛮族過ぎて傑ってば引いちゃってるじゃん」

 

「驚かせちまったか」

 

「ていうか、そんなに確かめたいんなら言ってよ。〈蒼〉くらい貸したのに」

 

「そうだな。次があったら、〈赫〉も頼むか」

 

「おけまる。サービスしちゃうよぉ~~~?」

 

 おけまるじゃないが?? 夏油傑は、盛大な溜息をついた。もう何からツッコめばいいのか分からない。痛覚を確かめる方法なら頬を抓るとかあるだろう。なんで指を噛みちぎるみたいな発想になるのか。何か不備があったのかと本気で焦ったじゃないか。というか悟も醬油を貸し借りするみたいに気軽に大量破壊兵器を渡そうとするんじゃあない。言っても疲れるし更に調子に乗ってふざけ倒すだけだろうから言わないが。

 

「問題がないならそれでいいです。あと、メカ丸が呆れてますよ」

 

 怒涛の捲し立てを呑み込んだ夏油傑は、先ほどから固唾を吞んで見守っていた、もう一人の参加者を見やった。「そうだな」坂本も、愉快そうに肩を揺らすと、この場にいるもう一人の呪術師に笑いかける。

 

「見ての通りだ。俺を縛っていた諸々の〈呪縛〉は解除された。成功だ、実に晴れ晴れとした気分だよ。それで、君はどうする? ――与幸吉君」

 

 傀儡越しに参加していた(・・・・・・・・・・・)与幸吉は。求め続けていた「奇跡」の実現を目の当たりにし、他の二人からも水を向けられると。

 

「俺ハ……」

 

 長年の溜め込んだ感情が混淆(こんこう)する沈黙のあとに、ひとつの、重大な決断を下した。

 

 ―――。

 

 与幸吉と新たに交わされたその契約(・・)が、のちに呪術界の潮流に不可逆の変革をもたらすものだと完全に理解している人間は、この場には一人しかいなかったが。

 

「てか坂本さんさあ、こういうのってもっと事前に共有しておくべきじゃね?」

 

 邪魔者の横槍も無く、かくして無事に契約が結ばれると。これまで事情(・・)を伏せられていた、単独で国家転覆が可能であるところの特級呪術師の一人が、口を尖らせて言った。

 

「サプライズってやつさ。君が得意にしてるやつだよ、それを真似してみたんだ」

 

「ええー僕の真似にしちゃクオリティ低いでしょ。僕そんな下手なことしないし」

 

「悟、君どの口で言ってるんだい。ついこの間も、新人の子を泣かせて学長がキレたばっかりだろう」

 

「いやー、そりゃアッチの手際がタルかったから」

 

「悟」

 

「アーアー、聞こえナーイ。そういやボク今日は耳が日曜日だったワー、なァんも聞こえないデース」

 

「あのあと、伊地知が飲み会で泣き上戸になってたよ」

 

「え。待って傑、僕その飲み会誘われてないんだけど」

 

「耳が日曜日なんじゃなかったのか。それよりも、坂本さん」

 

「ねえねえ飲み会」

 

「黙ってたのは悪かったよ。筋道が立つまではおいそれと口にできなかった。その詫びってわけじゃないが、実は提案がある。恵君のことでね」

 

「ちょっとちょっとー、無視しないでよねー」

 

 年甲斐もなくぶうたれてしまった五条悟は、ともあれ坂本の提案(・・)には、前向きな様子で「いんじゃね」と返事をしたが。夏油傑は、神妙な面持ちになっていた。

 

「上手くいけば、君たちの計画の役にも立つだろう」

 

「こっちにはメリットしかないし、仲間が強くなってくれるのは大歓迎だね」

 

「だが、失敗したときのリスクが大き過ぎないか」

 

「そこら辺は僕らでどうにでもできるし、坂本さんも手伝ってくれるんでしょ。僕だけでもヨユーだろうけど」

 

「俺は提案した側だからな。フォローはするさ」

 

「ならいいじゃん。つうか坂本さんさ、他になんかヤバいこと隠してたりしないよね? あとから出されるとダルいし、あんなら今のうちにゲロっちゃいなよ、ユー」

 

「隠してることか。有るか無いかで言えば、たくさん有るな」

 

「たくさん」

 

「というと?」

 

「悪いが、話す気はない」

 

「オ―――――イオイッ、オイオイオイオイッ、オイッ」

 

「坂本さん」

 

「君らの不利になることじゃないさ。俺はこれでも、けっこう君らに賭けてるんだぜ」

 

「ならせめて、コトを起こす前に相談して欲しいんですが」

 

「そのときがきたら、おいおいな」

 

 三者の――京都校の生徒からすれば尚のこと――物珍しいやり取りに、傀儡の機械眼がちかちか点滅している。

 話にひと段落がつき、夏油傑は疲れ交じりの息を吐くと。メカ丸、と半ば放置されていた与幸吉を呼んだ。

 

「私は正直、直ぐに君を許すだとかは言えない。情状酌量の余地があるとはいえ、実際に被害が出ているわけだからね。だが決断をした以上は、これからの働きで証明して欲しい。君のことを信じて、仲間だと思ってくれている子たちのためにも」

 

「そーいうこと」

 

 五条悟は傀儡の首に腕を回すと、これから忙しくなるよ、と頭をぺちぺち叩きながら言った。

 

「今まで黙ってたぶん、ごりっごりに働いてもらうからねー? あ、破ったら針千本マジで飲ますから。そのつもりでね、メカ丸」

 

 飄々とした口ぶりに、一瞬だけ冷気のような威が込められる。与幸吉は、傀儡越しでありながら蒼い瞳に気圧されたように、重々しく頷いた。

 

「おし。そんじゃ、行こっか」

 

 もう一度ぺちりと頭を叩くと、囲っていた「帳」が上がった。夏油傑が頷き、坂本もそれに続くと、全員で解体跡地を後にする。

 

 

 

 18.

 

 

 

 獣の巣のように、臭っていた。

 

 ぱちゅっ…ぱちゅっ…♡♡ ずちゅっ…ずちゅ…っ♡♡

 

 ベッドにはキャミソールや下着が脱ぎ捨てられ、床には空のペットボトルが転がり、蒸れ蒸れしい淫気が籠っている。

 

 あむっ♡♡ …はぷ…ちゅぷ…っ♡♡ …ぢゅむっ…ちゅう…っ♡♡ れろぉ…♡♡

 

「イけっ♡♡」

 

 菜々子(おんな)が言った。

 

「イっちゃえ…♡♡」

 

 美々子(おんな)が言った。

 

「イッちゃいなさい♡♡」

 

 禪院真依(おんな)が言った。

 

「イッちまえ♡♡」

 

 禪院真希(おんな)が言った。

 

「…イけ♡♡」

 

 家入硝子(おんな)が言った。

 

 

「――だめ”……そこ”…ぉ”ぉ”ぉ”♡♡ ほっ”っ”♡♡ ほぉぉ”っ”っ”♡♡ ひゅ”ゅ”♡♡♡ ぇ”ゅ”ぃっ―――――♡♡♡」

 

 

 マゾマゾしい嬌声を取り繕う余地もない菅田真奈美(おんな)に、唯一である坂本(おとこ)が言った。我慢するなよ。耳朶の奥に流し込むように。やさしく、あまくサディスティックに、あつくとろかすように囁く。イけ(・・)。攻め立てる彼と、彼に絡みつく裸の女たちと、快楽に悶え狂う菅田真奈美を組み敷いている女たちに「くすくす…♡♡」見下ろされながら。

 

 突き上げられる、―――ごちゅんっっ♡♡♡

 

「―――――――――――ぴ”ょ”っ”っっ♡♡♡♡」

 

 びゅるるる~~~~~~~~っ♡♡♡

 

「ん”お”ぉ”ぉ”ぉっっっ♡♡♡♡ ほ”お”お”お”おォ”ォ”~~~~~~~~~~~~~~っ”っ”っっ♡♡♡♡」

 

 最深部(いきどまり)まで抉じ開けられ、ぶびゅるる~~~っっ♡♡♡とポルチオ直出し射精を浴びた菅田真奈美は。押し寄せるスペルマと奥イキでがくがくがく♡♡♡♡っと熟れた四肢を震わせ、汗玉にぬめるドスケベ長乳を揺らし、ぴーんっ♡♡と爪先を伸ばすと、ヘコつき著しい股ぐらから「ぷししーっ♡♡」と負けメス宣言汁を噴いてしまう。

 

 うわ…えろ~…♡♡

 すっごい…オホ声…♡♡

 潮…噴き過ぎでしょ…♡♡

 やば~~~~…♡♡

 おーおー…♡♡ …こりゃまた…♡♡

 

 大人の威厳もへったくれもないお手本のようなガチイキ声を迸らせ、どぷっ…どぷっ…♡♡とあつあつ精液を注がれ終わる頃には、結合部は理知的とは対極にある、漏れたてほかほか♡♡液でびしょびしょにぐず濡れていた。

 

「マナミばっかりずるーい♡♡ …ほーら、どいたどいた~♡♡」

 

 朝からヤリ続けている菅田真奈美は、連続絶頂の余韻と蓄積した疲れもあって、直ぐには起き上がれない。しかしマン肉は「ぎゅ~~っ♡♡」と貪欲にだいしゅきかれぴチンポに縋り付いて独占を主張し、ところがそうは問屋が卸さねえとばかりに女たちの手によって「ぬゅぽっ♡♡」と引き抜かれてしまうと、半ば放心中の菅田真奈美は更に「ぉ”っ♡♡」と追い打ち甘アクメをキメた。

 

 おとーさん、私がきれいにしてあげるね♡♡ れろぉっ…じゅぷ…っ♡♡

 すんすん…ォ”っ♡♡ …ったく、オスくせえんだよ、師匠のチンポは…♡♡ んべぇっ…んぢゅるっ♡♡ むぢゅっ…れろ…♡♡ どろどろだし…ったく…♡♡ ずゅぷ…ぢゅぷ…っ♡♡

 あむっ♡♡ ぐゅぷっ…ちゅぶ…♡♡ れりゅ…んふふ♡♡ …おじさま、すてきです…♡♡

 

 んちゅ…お父さん…♡♡ ちゅむ…あむ…っ♡♡ はぷ…っ♡♡

 

 すかさず競うように、菜々子と禪院姉妹がオスフェロモンの濃く滴るデカマラにトリプルお掃除フェラを施してゆく。そんな三人を尻目に美々子は現役JKの柔乳をすりすり♡♡押し当て、坂本の肩に手を回してぷるぷるの唇を捧げると、ベロキスの蜜音を夢中で奏で始めた。

 

「大丈夫か~?」

 

 息を整えながら膣内(ナカ)の精子を感じていた菅田真奈美を、家入硝子が覗き込んでくる。あっちはまだまだやる気だし、これが若さか? などと嘯きながら、家入硝子はじゃっかん呆れ気味な顔で、ベッドの上で坂本に密着する四姉妹の乱れようを見やった。

 

「ま、それを言うならおじさんのほうもか。私たち全員を相手にしておいて、スタミナどうなってんだか」

 

 んぷっ♡♡ んじゅっ♡♡ ちゅぢゅ…っ♡♡ ちゅっ♡♡ …れろぉっ♡♡

 

 全員の休日が重なったことで実現した、“丸一日ぶっ通し汗だく7P(ななぴー)セックス”は、少し前から順調に夜の部に突入していた。

 

 朝は正常位で禪院真依と菜々子と美々子を、後背位で禪院真希と家入硝子と菅田真奈美をパコった坂本は、その勢いを萎えさせることなく朝食中も、朝食が終わったあとも、ハメる穴を次から次へと変えて媾(まぐわ)いを続行し――

 

 菅田真奈美と家入硝子に耳舐めされながら、立位キスハメで菜々子と美々子を交互に犯してほとんど同時に絶頂させたり。

 立ちバックで禪院真依と禪院真希のEカップ越え乳房をガラスに押し付けながら、菜々子と美々子に尻舐めタマ吸いご奉仕されつつアクメ痙攣する禪院姉妹まんこにナマ出し射精したり。

 背面駅弁スタイルで菅田真奈美を持ち上げて空中おまんこ開帳させながら、出し挿れ結合部を四姉妹に吸い付かせた状態でオホ声潮噴きアクメを披露させたり。

 対面座位で家入硝子とキスハメ零距離えっちをしながら、ぎゅうぎゅうに密着する全員とお口セックスしてキスだけで発情メス全員をイカせたり。

 

 目隠し状態でご奉仕され、どのメスの指フェラや玉フェラやチンフェラなのかを的中させたり。

 

 メスフェロモンたっぷりな菅田真奈美と禪院真依のデカ乳に吸い付きながら、おまんこ丸見え尻並べした菜々子と美々子と禪院真希のトロ穴を後背位でパワフルにハメ犯したり。

 菅田真奈美に膝枕されながら家入硝子と禪院真依に媚びちゅぱ乳首責めをされ、トリプルフェラしている菜々子と美々子と禪院真希の顔面にあつあつ濃厚ザーメンをぶっかけて仲良く舌で舐め取らせたり。

 

 中学校時代の制服や学園祭で使ったメイド服姿に着替えた四姉妹と、ギャルちっくなイチャらぶナカ出しダブル姉妹丼制服セックスをしたり、ドスケベ清楚なメイドおまんこハーレムご奉仕オス媚び敬語セックスをしたり。

 

 いつもお勤めご苦労様な家入硝子を嫉妬メス勢にガン見させながら囁き耳舐め褒め褒めASMRセックスでとろっとろのでれっでれになるまで蕩かし尽くしたり。

 

 挿入中は“好き”しか言ってはいけないルールで誰が一番ザコメスなのかを競いながらチンハメ交尾し、時間内で達する回数が一番多かった菅田真奈美に罰としてセックスコス用のどぎついマイクロビキニを着せて全員でかわいがったり。

 逆に一番がんばっていた禪院真希へは種付けプレスしながら「隠さないでいいよ」「もっと聞かせて、真希のかわいい声」と耳が孕むようなご褒美あまサド囁き鬼畜ピストンを流し込んで負けメス根性を強制フィーバーさせたり。

 

 なんだかんだ最終的には全メスが外ではぜったいに着られないチン煽り性能が高すぎるマイクロビキニに着替え、坂本はバキバキに勃起した昂ぶりを全員のパコ穴に突っ込んでどろどろの汗だくになるまで注ぎ込んだりし――

 

 れろぉっ♡♡ ちゅっ♡♡ ちゅぢゅ…っ♡♡

 

 思い返してみても。今日は本当に、“丸一日ぶっ通し”という表現に嘘偽りなく、朝からずっとセックスしかしていなかった。

 

 んじゅっ♡♡ …んぷっ♡♡

 

 文字通り朝から晩までなので、ここに至って女たちも、流石にスタミナの底を露わにしつつある。一方で常に誰かしらとくんずほぐれつハメている坂本は、相変わらず弾切れ(・・・)とは無縁の、精力旺盛な絶倫っぷりを顕示し続けていたが。菅田真奈美は、気付いていた。

 術式を遣うまでもなく、このメンツで一番坂本と長く付き合っているのはだて(・・)じゃない。無限にも思える彼の体力は、確実に減っている。あとどれくらいで底をつくのかは分からないものの、決して無尽蔵などではない。勝算はある、このままいければ――

 

「――ひゃっ♡♡ な、なにっ♡♡」

 

 いきなり、つん♡♡とクリトリスを弄られた菅田真奈美は、予告なしの刺激に虚を突かれ、思わず少女のような声を出してしまった。

 家入硝子は菅田真奈美の文句を何処吹く風と聞き流し、それよりも菅田真奈美の膣内(ナカ)から逆流していたザーメンを指先ですくうと、あーむ♡♡と口に含んでいる。ぢゅぞぞ…ちゅぽっ♡♡と指についた、ちっとも薄まらないオス精子を艶(あで)やかに舐め取り、次いでぺろりと唇を舐めると。

 

「……もったいない」

 

 菅田真奈美は。家入硝子がにんまりと悪戯に笑った瞬間、次に何が起きるのかを察して慄(おのの)いた。

 

「ま、待って」

 

「のんじゃお」

 

 脚を開かされ、まだ回復し切っていないため抵抗できない菅田真奈美の無防備まんこに、家入硝子が顔を近づけてゆく。

 まって♡♡と止める間もなかった。

 

 はぷっ♡♡ ぢゅるるるるぅ~~~~~~~~~~っっっ♡♡♡

 

 雌穴に吸い付いた家入硝子は、淀みなく正のエネルギーを出力した。

 

 ホォ”オオオオッ”♡♡♡ なぃぃ”っ―――あ”あ”ァあ”ああああ~~~~~~~っっ♡♡♡♡

 

 いくら加減されていようが、今の全身よわよわ性感帯状態の菅田真奈美が〈化楽転変(けらくてんぺん)〉に耐えられるはずもなく。

 ぢゅず…ぢゅる…ぢゅじゅりゅりゅりゅ……♡♡ 吸われ舐められ啜りしゃぶられ、部屋中に「えげつね~~~♡♡」マゾメス声とアクメ潮を撒き散らした菅田真奈美は、アヘ顔でそのまま意識を彼方へと飛ばした。

 

「おとうさん、いれるね…♡♡」

 

 家入硝子がもったいない精神を発揮して逆流スペルマを味わっていると、その頃にはすっかり綺麗になったペニスに、今度は嬉々として菜々子が跨り、義父に雌(おんな)を仕込まれて成長したデカ乳輪のエロ乳房を弾ませながら、ぱちゅんっ♡♡ ぱちゅんっ♡♡ 騎乗位えっちでパパつよチンポにデカ尻肉を打ち付け始める。

 

 お”っ♡♡ お”っ”♡♡ ――ぃ”ぐっ♡♡♡ ひぐっ”っ♡♡♡ ふう”ぅ”っっ♡♡♡

 

 坂本も禪院真依を顔面に騎乗させると、禪院真依のとろとろの湿潤地帯にねちっこいクンニ攻勢を仕掛け、速やかにチョロメス腰ヘコ反応を引き出してゆく。美々子は騎乗位パコパコに没頭する菜々子(あね)のピン勃ち乳首を「れろれろ♡♡」しながら絶頂を援護し、禪院真希も禪院真依(いもうと)の唇を奪うと、姉妹レズべろちゅーで早く自分の手番が来るようにと容赦なく愛撫を強めた。

 

 んぢゅるっ♡♡ ぢゅるむっ♡♡ …イけっ♡♡ とっととイけよっ♡♡

 アン”タがっ、…んぢゅるっ♡♡ 先にイキなさいよっ♡♡ れちゅっ♡♡ …ちゅ”うぅぅぅぅっ♡♡♡

 

 れろれろれろ…♡♡ ちゅむっ♡♡ ぢゅちゅっ♡♡ ちゅーっ♡♡

 ~~~ぁ”っ♡♡♡ や”♡♡ イ”ぃ”――――っっ♡♡♡

 

 ぷしっ♡♡♡♡ ぷしし―――っ♡♡♡♡

 

 

 菅田真奈美の意識が彼方から戻って来て、繰り広げられる淫靡な宴に復帰しても。長い夜は、まだ〃々終わらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 懐かしい“光景”を見ている。

 夢であると、直ぐに分かった。

 

 

 斃れている菅田真奈美(わたし)を、誰か(・・)が抱えている。

 斃れている菅田真奈美(わたし)の頬を、ぽつぽつと雫が濡らしてゆく。

 

 雨ではなかった。

 斃れている菅田真奈美(わたし)を抱えている誰か(・・)の瞳から、雫は落ちている。

 

 斃れている菅田真奈美(わたし)を抱えている誰か(・・)が、慟哭している。

 斃れている菅田真奈美(わたし)を抱えている誰か(・・)の慟哭が、焦土と化した無人の街に響いている。

 

 “■■■■■■■■(■■■■■■)”

 

 言葉は聞こえない。

 

 “■■■(■■■■■)”

 

 呪(のろい)しか聞こえない。

 

 街の残骸は誰か(・・)の呪(のろい)に呑みほされ、あまねくすべてのものは焼き尽くされてゆく。

 

 その怨嗟は、愛する人を喪った“絶望”の裏返しだった。

 その誰か(・・)は、星を焼き尽くすほどに愛していたのだろう。

 

 

 若き日の菅田真奈美は、呪詛師としてルーキーを脱したある時期から、この“光景”を夢に見るようになった。

 

 菅田真奈美の生得術式は“未来”を「予測」する。入力値が多いほど「予測」の精度は増し、入力値が少ないほど「予測」の精度は下がる。入力値の不足した像(イメージ)は“未来”に起こり得る可能性の断片/信頼性に欠ける確率に過ぎず、時として菅田真奈美当人でさえも、自分が何故その“未来”を「予測」したのか解析できない場合がある。

 あの“光景”もそうだった。あれは何なのか。あの“光景”に出てくる誰か(・・)とは何者なのか。“菅田真奈美(わたし)”とはどういう関係で、そもそもどうして“菅田真奈美(わたし)”は斃れていたのか。

 仕事の邪魔になるほど頻繁ではないとはいえ、訳が分からないというのは紛れもなくストレスであるし、自分の死を何度も視るのは気分のいいものではなかった。でもどうすることもできない。悩みつつ仕事をこなしていたある日、ところが偶然かはたまた運命のいたずらか、菅田真奈美は悩みの種である謎の正体と遭遇した。

 

 情報屋の仕事で、まだ少年である呪詛師と、二度目に会った時だ。

 その少年を目にした瞬間、菅田真奈美は、あの“光景”を幻視した。

 

 もしかして(・・・・・)、この子が。直感が奔る。秒で確信を抱いた自分自身にまず困惑し、しかし直感を軽視せずに、菅田真奈美は警戒しながら、会話のなかで少年を深く観察した。

 この子が、本当にあの“光景”の、誰か(・・)の正体なの?

 信じられないという思いがあった。だって見た目だけなら、普通の少年だ。呪詛師の時点で普通の定義からは逸脱しているけれど、だとしても――こんな陰気で、根暗そうな子供が?

 注視する。五感で情報(におい)を解析し、生理的内面を測定し、「予測」の精度を高めてゆく。すると、すればするほどに、夢のなかの誰か(・・)と、目の前の少年の像が重なっていって。

 

 やっぱりこの子(・・・)だ。間違いない。菅田真奈美は断定し、そこからの動きは早かった。

 

 ――「ねえ。私、あなたとはもっと仲良くなれる気がするの」

 

 菅田真奈美には夢がある。このクソったれな世界で、最期の瞬間に「私は満足!」と言い残せるような人生を送るという、ささやかだが譲りがたい夢を大事に育てている。

 

 ――「改めて自己紹介をしましょう。私は、菅田真奈美」

 

 あの“光景”を夢に見るようになって。菅田真奈美は、ひとつ疑問を抱(いだ)くようになった。あの“わたし”は、どうも“恐怖”していなかったように思う。死にゆく身体を誰か(・・)の腕に抱かれていた“わたし”は、死に際でありながら、どうやら心を満たされているらしかった。自分のことだからだろうか、それが真実であると分かる。どうしてあの“わたし”は、あんなにも穏やかな気分で死んでいけたのだろうか。

 今際の際に、まるで幸せな気持ちで死んでいけるなんて。あの“わたし”を、それほどまでに満たしたのが、この少年との“未来”だというのなら。

 

 興味を惹かれた。裏の世界を生きる住人として、菅田真奈美はそれまで誰かを遣うことはあっても、本当に相手を懐深くまで引き入れることは避けてきたが。ここは逃すべきではない、そう思ったから。

 

 偶然か運命か出会えたこの少年のことを。その日、菅田真奈美は、はっきり自分のものにすると決めた。

 

 ――「坂本くん。私と手を組まない?」

 

 そうして。先輩(センパイ)として助け、後輩として助けられるようになって。ふとしたきっかけでからだを交わす間柄にまでなり、比翼の鳥のように――クソったれな世界を一緒に生き抜くこと二〇年近く経った、現在。

 

 あの“未来”の自分がどうして満たされながら死んでいったのか。今の菅田真奈美には、なんとなくわかるような気がしていた。

 

 

 

 

 

 

「―――」

 

 ぼんやりと、意識が浮上する。

 

 身体が重かった。疲れが蓄積している。

 

 たいへんな宴だった。しかし不快さは無い。肉体に残された疲労は、心地よさをむしろ感じさせてくれる。

 

 静かだった。女たちは、みな眠っている。

 同じベッドで。一か所に集まるようにして。

 

 ふと、隣が気になった。

 

「………、」

 

 坂本が。目を閉じて、横になっている。

 呼吸は穏やかで、菅田真奈美がどんなに視線を注いでいても、目蓋を開くことは無い。

 

 眠っている。彼が。

 どんなときでも眠らず、直ぐに目を覚ましてしまうはずの彼が。

 

 今まで一度も寝る姿を見せたことのなかったはずの彼が、穏やかに眠っている。

 

 菅田真奈美は。そのことに気づくと、息を呑んだ。息を呑んだことで、驚いた気配が坂本に伝わらないよう、自制しながら。そろそろと息をついて、不思議な心持ちで、菅田真奈美は初めて目にする、坂本の寝顔を見つめた。

 

 眠っている。やっと(・・・)、眠れているのね。

 

 六人がかりで。丸一日をかけて、無尽蔵にも思える昂ぶりを鎮め切ったことで、ようやくあらわれてくれた。彼の寝顔。

 

 かわいい寝息。見入っていると、何故だか、頬がほころんでしまう。あたたかいものが胸に広がって、見つめているだけなのに、心が満たされるような気持ちになる。

 

 頑張った甲斐があった。いつまでも眺めていられる。無言で、そうしていた。――そうして、いたかったのに。彼の目元が、微かに光った気がして。

 ふわりと、情報(におい)がした。嗅ぎ慣れた情報(におい)。それは奇しくも菅田真奈美がよく覚えている、よく知り尽くしている、忌まわしい情報(におい)だった。

 

 穏やかに眠るはずの坂本の頬が。ひと筋、音もなく濡れてゆく。

 

 歪(ひず)んでゆく。痛みに呻くように。悪い夢に魘(うな)されるように。彼の表情から、やっと得た安寧が失われてゆく。

 

 思わず出そうになる声を、菅田真奈美は抑え込んだ。じっと見つめる。胸に募(つの)るものがある。

 

 悪夢。起こすべきだろうか。でも、と躊躇いがよぎる。ようやく眠りにつくことができたのに? ずっと努力してきて、けれどずっと諦めていて、それでも本心ではずっと願っていた、彼のささやかな望みだと、私は知っているのに?

 

 起こしてしまえば、彼は察してしまうだろう。私が起こした理由を。そしてそうなったとき、彼は傷付くかもしれない。これまでは張りつめていたから見せずに済んでいた“隙”を、気を緩めたが故に隠せなくなった己のことを、彼は心のどこかで憎悪(・・)するようになるかもしれない。

 

 表には出さないけれど、己の“弱さ”を人一倍に嫌うひとだから。己の“弱さ”を誰かに、ましてや自分が大切にしている相手に知られたと知ったとき、それは彼にとって“よくない疵”になるかもしれない。

 

 ずっと一緒にいたからわかる。長所も、短所も。強いところも、そうでないところも。

 お互いに知っている。ずっと近くで見てきたんだもの。

 

「…大丈夫よ」

 

 数瞬のあと。菅田真奈美は、囁くように言った。

 

「私がいる。大丈夫だから」

 

 起こさないでいい。あなたが見せてくれたあなたの“弱さ”は、心のうちにしまっておこう。あなたの知らないあなたの“弱さ”を知るのは、私だけでいい。

 

 そっと胸に抱き寄せる。共感と、哀しみと、いとおしさが込み上げてくる。髪を撫でながら。どうか、あなたを苦しめる悪夢にも届きますようにと、そう祈りながら。肌を触れ合わせて。

 

「守ってあげる」

 

 あなたのように戦えないわたしには、これくらいしかできないけれど。あなたは必要ないと言うかもしれない、でもね、今だけは。

 

 

 夜が明けるまでは

 

 

 

 わたしにも、あなたを守らせて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝陽がやってくる。

 此処にはもう、悪夢は無い。

 

 

「おはよう」

 

 菅田真奈美は。

 

「よく眠れた?」

 

 少し、照れくさそうに笑った彼に、口づけして言った。

 

 

「私も」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





・ツギハギ … 有効に活用された。以降は本編に登場しない。

・最強 … いい空気を吸っている。マブダチと共に腐敗した総監部の一掃計画を企てている。

・最強のマブダチの前髪の塩顔イケメソ教師 … 学生時代、坂本から独自の結界術を教わった。その際に「夏油傑は呪術師で在り続ける」という他者間の〈縛り〉を結んでいる。高専教師として若者を守り導く充実した日々を送る一方で、マブダチと共に腐敗した総監部の一掃計画を企てている。

・(元)裏切り者 … 特級呪術師と契約を結んだ。喜べ少年、君の願いはようやく叶う。

・坂本 … 三〇年に及ぶ呪縛から解放された。チートは据え置きであるため、戦闘力はそれほど低下していない。マジカルチンポは生来のものなので、本日も健在だった。

・菜々子 … チン負けアクメした。

・美々子 … チン負けアクメした。

・禪院真依 … チン負けアクメした。

・禪院真希 … 頑張ったものの、チン負けアクメした。

・家入硝子 … チン負けアクメした。

・菅田真奈美 … 献身が報われた。正妻の座は譲れない。らぶらぶ幸せチン負けアクメした。



・あの“光景” … “未来”に起こり得た可能性の断片。最後の枷を喪った坂本が“紙細工の世界”を絶尽するべく「呪霊」へ転化し、それを阻む呪術師勢力が激突した結果――致命的な地軸変動(ポールシフト)が発生。文明は崩壊し世界は呪いの蔓延る暗黒時代(ポストアポカリプス)へ突入してしまうという、最悪のもしも(イフ)の一つ。
◆この√は「坂本と繋がりの深い異性が菅田真奈美のみ」且つ「五条悟が封印された状態」で渋谷事変以降に“菅田真奈美が死亡した”場合、確率で解放される。破滅√エンディングのイメージ曲はディープ・パープルの「ユー・キャント・ドゥ・イット・ライト」かフランク・シナトラの「ザッツ・ライフ」。
◆本編ではフラグを折られているため発生しない。







・黒幕 … まだ諦めていない。自分を信じて『夢』を追い続けていれば、夢はいつか必ず叶う!

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