ユー・アー・マイ・スペシャル 作:グリム・グリルグリン・グリーングリップ
4.
玄関に鍵をかけると、坂本は菅田真奈美と共にセダンに乗り込んだ。窓を開け、シートベルトを確認してから車を出し、駅前まで走らせる。
助手席に座る菅田真奈美はノースリーブのマキシワンピース姿であり、昨日の晩とは異なる服を着ていた。泊まった翌日にいちいち着替えに戻る面倒を嫌った菅田真奈美が、坂本宅のほとんど手付かずなクローゼットを見て持ち込んだものであり、今ではクローゼットの半分は女物で埋まっている。
八月も下旬に差し掛かり、気候や情勢に合わせて流動する「業界」の裏話や噂話をぽつぽつ喋り合っていると、駅前のロータリーに到着した。
「ねえ」
シートベルトを外した菅田真奈美は、何故かすぐに車から降りようとはせず、ちらちらと意味深に坂本を見やる。
「うん?」
「あの」
「ああ」
「ええと」
もじもじとしつつ、じゃっかん体温の上ずった息を吐くと。
菅田真奈美は、じっとり下から見上げるように言った。頬を赤らめながら。
「次は、ちょっと期間が空くわけじゃない? その、だからね……」
ずちゅっ♡♡ じゅぷっ♡♡ ちゅぷっ♡♡
ちゅむっ♡♡ はゅぷっ♡♡ ぢゅむっ…♡♡ ちゅっ♡♡
車のなかに、熱帯びる粘膜を擦らせ合う、淫らで湿った音が響く。
坂本は菅田真奈美と唇を絡ませ、彼女の反応を探りつつ口腔の性感帯を愛撫し、菅田真奈美も場所が場所だけに外から見られる可能性を十分に知っていながら、坂本と唇を絡ませる遊びに夢中になっている。
ずぢゅっ♡♡ ぢゅちゅるるるる…♡♡ ぢゅっ♡♡ ちゅっ♡♡ ちゅっ♡♡ ……んくっ♡♡
味わうように目を閉じ、そして恍惚と見開いた菅田真奈美は、唇を瑞々しく濡らしながら、ふと坂本の股間の膨らみに目をやった。
「もしかして、感じてくれた…?」
味覚がなく、触覚もない。それらについて菅田真奈美に話してはあったが、どれだけ重症かまでは坂本は教えていなかった。単純な理由で、
坂本にも三大欲求はあるし、なかでも性欲は特に強めという自覚がある。〈天与呪縛〉でその辺りも強化されているのか、デカチンだし絶倫だし精液もたいへんオス臭いしで抜群にえちえちだと評判が宜しい。そんな坂本がセックスを希望する相手は、まずそもそも〈天与呪縛〉の認識障害で
菅田真奈美は術師であり世代も近く、性格も(坂本に対しては)難が無く美貌にも優れている。そんな人物からの好意を、かつての坂本ならば気にも留めていなかったかもしれないが、今は違った。まあそうだな、と気負わせないための配慮くらいはする。
「ふーん…? そうなんだ。私とのキスで、おっきくなっちゃったんだ…」
にやにや。にまにま。菅田真奈美はそう余裕ぶって笑い、すり…すり…♡♡と坂本の股間を撫でているが。そんな彼女のショーツは実は早くも愛液で濡れつつあることを、坂本は〈天与呪縛〉で強化された嗅覚で気付いていた。
「してあげましょうか?」
電車は?
「まだ時間あるから、大丈夫よ。…せっかくだし、してあげるね…」
ごそごそ。がさがさ。
助手席から坂本の股間を覗くように屈んだ菅田真奈美は、まずはジッパーを下すと、昨夜ぶりに対面する自身をさんざんハメ泣かした肉棒を鼻先にかざすや、「ォ”…♡♡ ~~くっさ…♡♡」とぼそぼそ呟いた。
そして竿の部分をそっと両手で握り、陶然としながら亀頭に「ちゅっ♡♡」と唇を捧げて――その瞬間、じわ…っ♡♡とどこかで何かが滲み出す音が滴り――続いて鈴口にも「ちゅっ♡♡」と敬愛を示すように恭しくキスを落とす。
髪をかき上げ、それから肉厚の唇で「ぐぽっ♡♡」と亀頭を含み、カリ首の周りを「れろれろろ…♡♡」と舌先で舐めあげると、熱くぬめった口腔の奥へ導くように、ぢゅっぽ♡♡ぢゅっぽ♡♡と頬張ってゆく。
じゅぶっ♡♡ ぶゅぽっ♡♡ ぢゅぼぽっ♡♡ んれろろぉ…っ♡♡
坂本は股間に顔を埋めている菅田真奈美の頭を撫でながら、もう片方の手でワンピースを捲り上げると、露出した黒いレースショーツに指を滑らせ、程よく引き締まった臀部を撫ぜつつ、くちゅ…っ♡♡と秘部に指を挿れた。
ふぅぅぅ…っ♡♡ ぐゅぽっ♡♡ ぐゅぽっ♡♡ ぢゅぽっっ♡♡ んくっ♡♡ ぢゅぞぞぞぞ…♡♡
案の定ド湿り尽くしている。坂本は菅田真奈美の濡れざまから導き出される発情度合に苦笑しながら、正のエネルギーを彼女の敏感な部位に流し込み、彼女自身の快楽と感度を高めてゆく。
実際のところ坂本には「触覚」がないため、それらの行為が直截的な快楽に繋がることはないが。興奮した雌が発するフェロモンや視覚的刺激がもたらす満足感は、坂本を興奮させる要素として有効に作用していた。
そして坂本は「触覚」がないからこそ“行為の結果として生じる肉体の快楽そのもの”を重視していない。〈天与呪縛〉という難儀な体質で坂本が「快楽」と結びつくためには、あられもない媚態やフェロモンといった視覚や嗅覚への刺激に加えてそれらとは別方向の、肉体に因らない欲求を満たす必要があり、それを満たす行為こそが相手側の“もっと
「イキそう…?」
さしずめ“イチャラブからしか摂取できない栄養素”とでもいうべき
その残念な事実を菅田真奈美が知れば、あれだけ練習したのに実は気持ちよくなかったってこと!? とそれまでの秘した努力を馬鹿にされたと感じて機嫌を損ねるかもしれなかったので、坂本は今のところ口にはしていなかったが。
「ん…♡♡ いいよ、のんであげる…」
とはいえ、たとえ機嫌を損ねようとも菅田真奈美が坂本を喜ばせるために苦心した事実は変わらないし
ぶぼっ♡♡ んぼっ♡♡ じゅぼっ♡♡ じゅぽっ♡♡ んじゅっ♡♡ ぶぽっ♡♡ んぽっ♡♡
竿をしごき上げる動きが早まるのに合わせ、坂本は菅田真奈美の感度を弄りながらクリトリスを弾くと、駆け上がる快楽に身を任せた。
びゅぶっ♡♡ びゅるるるっ♡♡
どぷっ♡♡ どぷっ♡♡ どぷぷ…っ♡♡
ぶしぃぃぃっっ♡♡♡と手にアクメ潮がかかるのを感じながら、坂本専用のお口まんこに吐精してゆく。勢いよく大量にぶちまけた精液を何とか受け止め、こく…♡♡こく…っ♡♡と必死に嚥下している頭をナデナデすると、同時に絶頂していた菅田真奈美がまたぴくんっ♡♡と身体を震わせた。ジトデレた目を坂本に向けてから、…ごくん…っ♡♡とすべてを
んれれれれ~~~~♡♡ んじゅっ♡♡ ちゅるるるる……ぢゅっ…ぽっ♡♡
カリ首や裏筋、尿道にもお残しがないよう舌とバキュームで丁寧にお掃除を終えると、何かを待つように坂本を見上げた。
「気持ちよかった」
ありがとうと素直に礼を言えば、菅田真奈美は一瞬「むふー」とでも言いたげなドヤ顔を見せたが。
坂本が「時間は?」と訊くと、思い出したように慌てて身繕いを始めた。
「じゃあ行くわねっ」
「ああ。気を付けて」
車を降りたその背に、声をかける。
「また連絡する」
「……うんっ」
菅田真奈美が見えなくなると、坂本は車を発進した。
窓を開け放ち、ラジオを点ける。
カーステレオから流れ出したマイ・ケミカル・ロマンスの「ウェルカム・トゥ・ザ・ブラック・パレード」を流し聞きしながら、ほとんど信号に引っかかることもなく、三〇分ほどで住宅街にやや近い場所に建つ、税理士の看板が掲げられた事務所に到着した。
賃貸の事務所で従業員は雇っていないため、午前中に終えなくてはならない要件を処理し終えると、坂本は
助手席に置いた鞄にはひと月前に届いたハガキが入っており、ちょうどひと月前は自宅を空けていた時期であったため、気が付くのが遅れてしまったという事情がある。坂本の、とっくに存在しないとばかり思っていた坂本家宛てに
5.
五時間ほど車を走らせたのち、残り一キロメートルになると道幅が狭すぎて車が使えなくなったため、そこから先は徒歩で山道を進むと、坂本は都会の喧騒から離れた限界集落に辿り着いた。
蝉の声に出迎えられる。村名の書かれた看板を通り越し、村役場を探した。田園と電柱、あとは民家くらいしか目立つものがない。ありふれた田舎の光景ではあったが、どことなく妙な雰囲気がある。
寂れた役場を見つけると、まさに入り口に施錠しようとしている職員がいた。近づいて声をかけると余所者である坂本に渋い顔を向けたが、ハガキを見せて要件を告げたところ、案内してくれるという。
へえ、■■。わざわざ車で? 遠かったでしょう。
ここらは滅多に人が来ないもんでね。ご覧の通り、森と畑で、あとは何にもなし。若い子なんてみんな出て行っちまう。
枷場さんにね、こんな親戚がいるなんてね、知りませんでしたよ。亡くなってから分かったもんでね。電報送ってもぜんぜん来ないもんだから忘れかけてましたよ、昨日電話もらってそれでやっと思い出したくらいですし。まあ、海外に行ってたってんなら仕方ないか。遠いもんね。お仕事で?
追及をのらりくらりと躱しながら、寂れた民家を通り過ぎたとき、坂本は足を止めた。
どうしました、あっちですよ? 職員の声を聞きながらも、寂れた民家の向こう側に続く山道に、視線を凝らす。
「あの道は」
はい? なんです?
並みの術師では気が付けない、呪力感知に優れる坂本だからこそ違和感を捉えられた、微かな。
「失礼、お聞きしたいんですが」
日が傾きつつある。
「この村。何か、おかしなことが起きていたりしませんか?」
職員の顔色が変わる。どうして、そうお思いで? 声に、明らかに警戒が乗っている。
「仕事柄、そういったことに多少は知識がありましてね。ですので、もしかしたら相談に乗れるかもしれません」
坂本が呪詛師として訪れたのなら、黙っていただろう。だがとうの昔に途絶えたはずの、蜘蛛の糸のようにか細い関係とはいえ、自分の親戚が暮らしていたらしい村だった。
家を見せてもらう代わりに、相談くらいならば受けても構わない。坂本は、そんな感傷めいた気分になっていた。
深いため息。目元には大きな隈が出来ている。ええ、まあね。お察しの通り、困ったことがおきてまして。疲れ切った声で、職員が言った。
「神隠し、ですか」
九年前の春。六年前の春。五年前の夏。二年前の夏。ここ一〇年間で、五人が失踪したり首無しの変死体で見つかっている。そしてつい先日、六人目の変死体が出た。
「その遺体は、どちらで見つかったんですか?」
職員の指先が、残穢の漂う山奥を指し示した。
「――あちらには、何が?」
坂本は。
親戚宅への訪問は後回しにし、死体が見つかったという山道を登ることにした。もともと今日は民泊で一夜を明かす予定であったし、もし失踪や変死体が呪霊の仕業であった場合――十中八九、呪霊に間違いないと思われるが――このまま放置していると、寝ている最中に被害が及ぶ可能性もある。
やがて一〇分も歩くと、現場に辿り着いた。
死体こそないが、残穢がこびりついている。更に痕跡を辿って奥まで行くと、鍾乳洞が現れた。
「なるほど。
残穢は、鍾乳洞の暗がりへと続いている。
坂本は中指と人差し指を立てると、呪文を諳んじた。
「【闇より出でて闇より黒く、その穢れを禊ぎ祓え】」
黒が、黄昏の空に広がる。
結界である“帳”が周囲を覆い、非術師の認知と立ち入りを禁じる。
「さっさと終わらせるか」
坂本はわらうと、鍾乳洞の暗がりに踏み込んだ。
呪力を回し、術式を唱える。
「【
6.
「は?」
坂本の前で、二人の子供が身体を寄せ合っている。
六歳か七歳くらい、一〇歳にはなっていないであろう女児二人が、物々しい檻のなかに閉じ込められ、額や細腕に青あざを浮かべて。薄汚れた、洗濯もしていないのだろう簡易な衣類を身にまとい、怯えた表情を坂本に向けている。
坂本の〈天与呪縛〉――非術師をぺらぺらのキャラクターに映し出す認識障害は、二人には現れていない。
つまり彼女たちは、呪力を扱う才能を持つ、呪術師ということになる。
「これは、なんですか」
自身を折檻部屋に連れてきた男を見やり、坂本は低い声で言った。
激おこ