※この作品はR-18です。

ユー・アー・マイ・スペシャル   作:グリム・グリルグリン・グリーングリップ

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07 シュラバって言うんだよね


 

 

 

 1.

 

 

 

 父が嫌いだった。何かにつけて「出来損ない」と蔑み、理不尽に怒鳴り叩いてくるあの男が嫌いだった。

 母が嫌いだった。姉と一緒に虐められていても黙って見ていて、常に悪いのはおまえたちなのだと言ってくるあの女が嫌いだった。

 屋敷(いえ)が嫌いだった。禪院家に非ずんば呪術師に非ず。呪術師に非ずんば人に非ず。そんな言葉が罷り通るような狭くて閉じた世界が、幼い禪院真依(ぜんいんまい)のすべてであり。

 その認識に変化がもたらされたのは、屋敷の外からやってきた人間を見たときだった。

 

 禪院の兵が戦っている、しかも相手は禪院の人間じゃないらしい。見に行こうぜ、真依。そんな話をどこかで聞きつけたらしい、双子の姉である禪院真希(ぜんいんまき)に無理やり連れ出されるかたちで、術師向けに開放されている鍛錬場を覗いた。

 そこで禪院真依は、術式を行使して波状攻撃を仕掛ける「(あかし)」の部隊を転がし、傷一つ負わず、逆に軽々と沈めてゆく男を目にした。

 

 一目で彼が禪院の人間でないことは分かった。「灯」の面々が胴着の格好なのに対し彼だけがスーツ姿である点もそうだったが。彼の纏っている空気(・・)視線(・・)が、まず違った。

 だからなのだろう。わたしに戦いかたをおしえてくれ――おしえてくださいっ。戦い終えた彼が一人になる瞬間を狙って、禪院真希が突撃した。付き合わされた禪院真依は姉の着物の裾を掴んで、初めて傍で彼のことを見上げた。

 彼は明らかに戸惑っていた。俺は、本業は税理士なんだけどな。苦笑いを浮かべる彼には、しかし侮蔑や嫌悪といった冷ややかな感情は見られず。暫くして交流が始まってからも、それは変わらなかった。

 

 ――「真希はまず、身体の構造を認識するところからだな」

 

 月に二度禪院家を訪れる彼に何度目かの突撃をしたのち、根負けさせて弟子入りを叶えた禪院真希が与えられた目標は、肉体を十全に操れるようになることだった。呼吸と思考に伴う血管や筋肉の動きを細部まで掌握し、力の伝達を阻害する無駄を削ぎ落とし逆に力の伝達を収束加速させることができれば、最小最速の働きで最大の結果(ちから)を生み出せるようになる。それを会得した頃には感覚の幅も広がっているだろうから、その原理を肉体の外部へと応用すれば、究極的には呪霊の動きすら捉えられるようになるだろう、と彼は言った。

 

 まずは呼吸法から、さっそく言われたことを生き生きと実践し始めている姉の隣で、彼は〈構築術式〉を見せ終えた禪院真依にも目標を与えた。

 

 ――「真依はとりあえず〈縛り〉を結んだ方がいいな。〈構築術式〉は燃費が悪いんだろう。何でも作れる幅の広さが逆に枷になっているから、一日に術式で作れる個数の制限とか、作れる対象の種類の制限とか、まずはその辺りを詰めようか。それから術式への理解を深めていこう」

 

 たった一つの骰子(さいころ)を作るだけで息を切らしている禪院真依に対して、しかし彼は怒らず、蔑まず、失望しなかった。大丈夫だよ。笑いながら言った彼の双眸には、双子を否定し見下す色がなかった。一朝一夕で出来ることじゃあない、そう焦らないでいいさ。

 

 閉じた世界がすべてだった禪院真依にとって彼の存在はあまりにも新鮮で、その交流はいつも明るく、瑞々しく。やがて家のなかでは姉以外――父や母や親戚――からはついぞ与えられることのなかった、あたたかなものを彼に見出すのは必然の流れだった。

 

 ――「いつも修行修行修行ばかりじゃあ気が滅入るだろう。たまには羽を伸ばさないとな。いつも頑張っている君らへの、ささやかなご褒美ってやつさ」

 

 時には、屋敷の外に連れ出されることもあった。一応は修行の一環という(てい)なので、常に呪力操作や肉体把握を意識するようにという条件はあったが。そういう日は、それでも屋敷での生活とは比べ物にならないくらいに姉妹ともども甘やかされた。

 屋敷よりも大きくて広々とした建物がたくさん並んでいるのを見た。生演奏イベントのステージを近くで見学した。色とりどりの様々な、あまくておいしい西洋的なお菓子を食べた。イルミネーションの美しい水族館や、圧倒される蔵書量の図書館にも行った。

 

 友だちもできた。坂本菜々子と坂本美々子。禪院真依と同じく双子で、しかも同い年で、そのうえ術師でもある彼女たちと一緒に、カーステレオから流れてくる曲を大声で歌ったりした。スガシカオの「コノユビトマレ」だったり、スーパーフライの「恋する瞳は美しい」だったりを。ヘッドレストモニターで、アニメ映画を観たりすることもあった。趣向の凝らされた動物園で、みんなで記念撮影することもあった。

 日が暮れるのはあっという間で、帰る時間が近づくといつも憂鬱になった。帰りたくないと思っても、それ以上のわがまま(・・・・)は迷惑になると分かっているから言えるはずもなく。

 けれど別れ際に「しっかり訓練しておくように」またな(・・・)、と言ってくれるからこそ、禪院真依は修行を続けようと思えた。

 

 ――「弱いなあ。君ら、ほんまにあの人の弟子なんか?」

 

 嫌なことがあったり。

 

 ――「みじめやね。なんであの人はこないなカス(・・)に構うんやろか? 残酷なことしはる、雑魚はどんだけ気張ろうが雑魚やのに」

 

 辛いことがあった日は、親には内緒の「ご褒美」だといって買ってもらった、普段は見つけられないよう押し入れに隠してある甘い香りのするリップクリームを寝る前に取り出して、こっそりと眺めるようになった。使ったのは今までに一度だけだ。減るのがもったいないからと、しかもちょっとしか塗ったことは無かった。そのことを知っている姉に、からかわれたこともあったが。そういう姉だって、お揃いで同じように買ってもらったリップクリームを大事に持っているのは知っていた。

 

 ――「なあ真依ちゃん。雑魚が夢見るんは哀れやで?」

 

 それは、間違いなく支えだった。

 

 ――「天地同根(てんちどうこん)万物一体(ばんぶついったい)

 

 かつて行き詰まりを感じ、思い悩んでいた時に禪院真依が意を決して相談すると、技術以外に、そんなアドバイスをもらったことがあった。

 

 ――「昔、(じょう)法師っていう坊さんが残した言葉だ。天も地も人も根っこは同じであり、であればこそ、この世のすべては我と一つであるのだ、と。まあそういう意味なわけだが」

 

 なんかえらそうなこと言ってんな。離れで積んだ(かわら)を相手に零距離発勁(はっけい)の練習をしている姉が突っ込むと、彼は「そうだな」と苦笑して。

 

 ――「実際、偉い坊さんだったのさ。この言葉の後ろに、一切衆生(いっさいしゅじょう)不撰貴賤(きせんをえらばず)と続けたのが天草四郎で……」

 

 アマクサシロウ? 禪院真依の疑問符をつけた呟きに、彼は頷いた。

 

 ――「救済とか平等とか、信仰とか。色んなものを背負って戦ったはいいが、内通者のせいで最後は率いた軍もろとも根切りにされて死んだ男だ。いや、少年かな。俺よりも若かったらしいし。ああでも元服はしていただろうから、当時の基準なら成人になるのか。戦じゃあ何万人と死んで、呪霊になっていてもおかしくはない男だけど。まあそっちはどうでもいい、脱線したな。つまり何が言いたいのかというと、今の真依に必要なのは、万物一体を逆転させた認識だ」

 

 首を傾げる禪院真依に、彼は暴論とも呼べる真理を告げた。この世のすべてが我と一つということは、逆を言えば、我はこの世そのものである(・・・・・・・・・・・・)ということなのだと。

 我がこの世そのものであるのなら、即ち我の意思ひとつでこの世を動かすなど容易いことなのだと。

 

 えらそうな坊さんよりも偉そうなこと言ってるじゃねーか、と姉に再び突っ込まれてしまうが。彼は笑って話を続けた。

 

 ――「とんち(・・・)めいて聞こえるが、術師にとってはあんがい馬鹿にできない考え方なんだよ。もちろん肇法師はそういうつもりで言ったわけじゃないだろうけどな。この世の大部分は物理法則に支配されている。俺も、真依も、真希も。他の連中もだ。俺たちを縛るのは重力、光、熱、時間、質量、色々とある。けど呪力というやつは、この法則を捻じ曲げることが出来る。例を挙げると、そうと念じるだけで〈無限〉を生み出せる“最強”とかな。真依の、無から有を生み出す〈構築術式〉だってそうだ。つまり俺たち術師は最初から、俺たちの意思ひとつでこの世を捻じ曲げることができる、万物一体のとんち(・・・)を体現しているんだよ」

 

 私は呪力ねえけどなー、と今度はむくれてしまう姉だったが。

 

 ――「唯我独尊になれとまでは言わない。実力を伴わない傲慢は滑稽なだけだからな。ただ、自分なら当然のようにできる(・・・)と信じ切れるのは大事なことだ。一度そうと決めてしまえば、むしろ人間はできないことのほうが少ない。術師ならば尚更だ。真依に足りていないのは、自分に対する自信だな」

 

 自分を信じられるか? その問いに、禪院真依は俯いてしまう。しかし彼は、そんな禪院真依を咎めなかった。

 

 ――「自分を信じられないなら。他に信じられるものを見つけるんだ」

 

 どうやって?

 

 ――「外の世界を見たり、自分の内側を見つめ直したりしてな。揺るぎないものを見つけるんだ。そうすることで、迷いを捨てられる。迷いを捨てることで、得られるものもある。これは何も〈縛り〉に限ったことじゃない」

 

 揺るぎないもの。

 

 なんだったら俺でもいいぜ、と。冗談めかして彼は言ったが。

 禪院真依は頷いていた。積み重ねてきた時間と信頼が、想い募らせていた思慕と憧憬が、疑問を挟む余地も無く、禪院真依を頷かせていた。

 

 ――「俺もそうだった。そうすることで、自分を信じることができた。だからな、できるよ。真依にも。きっとな」

 

 頭を撫でられる。大きな手だった。ししょー、私は? どこか不満そうに訊いてくる姉に、彼は小さく笑って言った。「見込みのない奴を弟子にしたりはしないさ」と。

 

 ――「君たちにはそれ(・・)ができる。真依も、真希も。君らにはその才能があることを俺は知っている。ただ、最後は自分で掴まなくちゃいけない。欲しいものや、成し遂げたいことがあるのなら。何よりもまず、自分で手を伸ばさないとな」

 

 九八八。九八九。

 九九〇。九九一。

 

 刃先に縦積みした硬貨を落とさないよう、均一の速度で木刀を振っている姉は、彼がこの離れを訪れなくなってからも毎日欠かさずに素振りをしている。愚直に、彼の最後の言いつけを守り続けている。

 

 振り上げる。

 振り下ろす。

 

 ねえ、と声をかけた。「いつまでそうしてるの?」

 

 禪院真希は答えない。聞こえていないはずが無かった。つまりは、無視している。

 唇を嚙んだ。

 

 彼が禪院真依たちの前に現れなくなってから、ひと月が経っていた。

 理由は分かっている。

 

 ――「何してるんだ、直哉君」

 

 その日は、禪院真依と禪院真希の、八歳の誕生日だった。

 ケーキの箱を手に提げて現れた彼は、いつもの離れで、禪院直哉に嬲られている双子を目の当たりにして。

 見られたくない、知られたくないと隠し続けていた光景を暴かれた禪院真依は、痛みと恐怖に押し潰されそうになって。

 

 ――「見てのとおりや。鍛えとるんやろ? 俺も手伝ったろか思てな」

 

 ――「ストレスは、悪い側面ばかりじゃない。人を奮起させるためには必要な要素だ。だから今までは適度な鞭として見逃していた。傷はあっても重症だったことは無かったからな。人サマの家の事情だ、おいそれと口を挟むわけにもいかない。その子たちも、俺には隠そうとしていたし。育ち始めていた意気地を、憐れんで摘み取りたくは無かった。そのぶん俺が飴をやればいいと、そう思っていた。……けどな、」

 

 やっぱり目の前で見せつけられると、虫唾が走るんだよ。

 

 ――「めっちゃ喋るやん、自分。怒っとるん? いややなあ、かるーく遊んどっただけやんか。そない怖い顔せんといてや、俺も困ってまうで」

 

 禪院直哉がわらうと、彼もわらい返した。

 

 

 少し、俺と遊ぼうか。直哉君。

 本気とちゃうよな。

 だから、遊び(・・)をだよ。

 

 

 鍛錬場で、二人が戦った。

 

 決着は、早々についた。

 

 ――「ありえへん。なんで呪力が、練れんのや……!?」

 

 ――「経絡を乱した。丹田に余韻があるだろうが、暫くすれば治るから心配はいらない。総評として、術式に頼り過ぎるせいで基礎的な呪力操作が疎かになっている。君の悪い癖だな、前にも言わなかったか? それはそれとして、負けたんだから〈縛り〉を結ぼうか。約束は守らないとだぜ、直哉君」

 

 しかし。禪院家次期当主の有力候補である禪院直哉を相手に、訓練ではない私闘をおこなった。その狼藉を、彼を日頃から気に入らない親族衆から責められたことで、彼は禪院家の敷居を跨ぐことを永久に禁じられた。

 

 ――「ここで会うのは、今日がたぶん最後になる。直哉君とは話をつけたから、虐められることはもうないだろう。直毘人さんにも言っておいた。……真依、真希。いいかい、これからも鍛錬は続けるように。術師をやっていれば、そのうち会えるさ。それまで二人とも、仲良くな」

 

 去ってゆく背を引き留めることは出来なかった。またな(・・・)。いつもならそう言ってくれるはずの言葉も、無かった。

 

 あれから一か月。禪院真依の世界は、再び閉ざされようとしている。陽だまりのようなあたたかさを持つ記憶は、その熱を、幻であったかのように失いつつある。

 

 だからこそ。

 禪院家現当主の禪院直毘人に姉妹ともども呼び出され、人払いされたのちに言われた内容に、禪院真依は言葉を失った。

 

「どういう意味だよ、ジジイ」

 

「聞こえなかったのか。あの男のもとに行く気はあるのか(・・・・・・・・・・・・・・・)と、そう訊いたんだが」

 

「きこえてるよ。どういう風の吹き回しかってきいてんだよ、ジジイ。あんたがあの人を追い出したんだろうが」

 

 ぐびりと瓢箪に入った酒を呷りながら、禪院直毘人が愉快そうに肩を揺らした。

 

「何がねらいだ」

 

「あやつ、今でこそ坂本を名乗り、市井の暮らしをしておるが。あやつの呪力、あやつの才能、捨て置けるものではない。あやつは……あやつこそは――まぎれもない祭上(さいがみ)の寵児、その血の秘術と怨讐を一身に受け継いだ最高傑作であろうよ。かつて加茂の一門衆であった頃とは比べ物にならぬほどのな」

 

 ぐびり。

 

「我ら禪院は、常に強者の血を取り入れることで栄華を誇ってきた。祭上ならば、一度は滅びたとはいえ血筋にも申し分はあるまい。ましてやあれほどの才を持つ者ならば、文句なぞ付けられまいて。気性も、多少思い切りが良すぎるきらいはあるが、内に引き込めるのなら悪くはない。加茂はうるさく言うだろうがな」

 

 ぐびり。

 

「あの男のもとに行きたいのであれば、俺が許可しよう。家中の反発は俺が説き伏せる。あの男のもとで(まじな)いの何たるかを学んでくるがいい。あやつは、オマエたちをどうにか(・・・・)するすべにも心当たりがあるらしい。いずれにせよ悪い結果にはなるまい。その代わり、オマエたちは――」

 

 ぐびり。

 

あの男に抱かれ(・・・・・・・)あやつの種を孕んでこい(・・・・・・・・・・・)

 

「ふざけんなよ」

 

 低い声で、禪院真希が言った。

 

「おまえらはどこまで私たちを……っ、――真依?」

 

 そんな、今にも飛び掛かりそうになっている姉の裾を引くと。「ま、真依?」何故だか顔を強張らせている彼女の視線を感じながら。深く息を吸って。

 あの人の教えを反芻して。

 

 ――「欲しいものや、成し遂げたいことがあるのなら」

 

「おじいさま。その言葉」

 

 ――「何よりもまず、自分で手を伸ばさないとな」

 

「二言はありませんね?」

 

 禪院真依は。嫣然と。

 

 上座で酒を食らっている禪院直毘人に、わらいかけた。

 

 

 

 2.

 

 

 

 湿った肉の擦れ合う音と、低く唸りにも似た雌の鳴き声が響く。

 

 …ぱちゅんっ♡♡ ぱちゅんっ♡♡ ぱちゅんっ♡♡ ぱちゅんっ…♡♡

 

 完熟と呼ぶには些か肉付きの細い脚を開かせ、スカートをまくらせて(あら)わにした秘部に覆いかぶさっている坂本は、快楽を押し殺しながら洗面台のふち(・・)を掴んでいる家入硝子に、いったん抽送を止めて被虐心を煽る内容を囁いた。

 

 おずおずと顔を持ち上げた家入硝子が、正面の鏡のなかに、オスに後ろから抵抗できない体位で着衣チンハメされている無防備な自分を見い出した瞬間、肌はますます羞恥に赤らみ、首筋から蜜ばんだフェロモンがこぼれ出し、ぎゅぎゅぎゅ~~っ♡♡♡とナカの締め付けも追い詰められたようにきつくなる。

 それを見計らったタイミングで、ぞりっ♡♡と膣壁をこそぎ(・・・)上げると、泣きぼくろの目元が甘イキにとろけ果て、食いしばり切れなかった嬌声が放たれた。

 坂本は仕上げにもう一突き捻じ込むと、メスの最奥へ腰を密着させ、溜めていた熱を迸らせた。

 

 ごちゅんっ♡♡ びゅるるる~~~~~っ♡♡♡

 

 ん”ぉ”ぉっォォ”っっ♡♡♡♡ …ほ”ォ”~~~~~~…ぉ”ぉっ”………っ…♡♡♡♡

 

 家入硝子の絶頂に合わせ、どくっ…♡♡ どくっ…♡♡と子宮にじかに吐精してゆく。

 

 ポルチオごと押し上げられた背筋はぷるぷる♡♡仰け反り、汗蒸れた桃尻はぴくぴく♡♡震え、小鹿のようにがくがく♡♡と脚を揺らした家入硝子は、ぷしぃ…っ♡♡♡♡とアクメ潮を噴きこぼし、膝上まで下ろしていた白ショーツと黒タイツに、ぱたぱたと汁を降らせてしまう。

 坂本は力が抜けそうになった細身の体を抱き留めると、腕のなかで吐息を乱している彼女を案じた。エクスタシーの余韻が少し収まってくると、家入硝子は緩慢にかぶりを振り、ぴくんっ♡♡と身をよじらせる。

 

「…だいじょうぶ。これくらい、ィ”っ♡♡ …ぜんぜん、ヨユーだから。おじさんは、まだ、っ”♡♡ …おっきい、ままだし……」

 

 そう言って、鏡越しに熱の冷めやらぬ視線を向けられる。上衣は高専職員の制服なのに下は愛液でトロついた股間をモロ出しという、脱ぐ手間と時間すらも惜しんだが故の、いち早く結合してチンハメこーび(・・・)がしたいからこその煽情的な媚態(なり)であり――なおかつそんな恰好で誘惑してきたのが普段はダウナーな雰囲気で知られている家入硝子という二段構えのドスケベな事実は、否応なく坂本のオトコの部分を刺激して何度でもイキリ勃たせる威力を持っていたが。

 

 ずっと抜かずに萎え知らずのデカチンで膣を圧迫占拠しているので、何か喋ろうとするたびに白い喉から「ん”っ♡♡」と甘イキ声を漏らしてしまう家入硝子は、とはいえあまり逢引に時間を割けないからと部屋に入って玄関を締めた直後にベロキスからの手マン愛撫コンボで一度アクメしており、そこから一〇分と空けずに立て続けに四度目の深イキを迎えたこともあって、はたから見ると体力が尽きかけていた。

 

 本人は、あくまでも「まだまだヤレますよ~~?」という余裕綽々な態度を崩そうとしないが。

 

「ん”っ♡♡ …ていうか、おじさんって……わりと、制服フェチ…だったりする…?」

 

 ――「やだっ♡♡ へんなこえ、へんなこえでちゃうから…っ…やめっ、おじさっォ”ッ”♡♡♡ ふゅ”ぃ”いいいぃ”~~~~~っっ♡♡♡」

 

 かつて破瓜に臨んだ際には辛い記憶が残らないよう十分に配慮し、痛みを忘れるほどの快楽をもたらすべく正のエネルギーをふんだんに駆使して入念に丁寧に絶頂へ導いた結果、

 

 ――「へんだってっ♡♡ へんだってこれっ、とまんないの…っや”ぁらっ♡♡ おじさんっ…おじさ――んぷっ♡♡ んぢゅるるむっ♡♡ んちゅっ♡♡ ちゅむっ♡♡ ……れちゅるっ…はぷ……♡♡ あむ…ちゅぷ…おじしゃ……んちゅ……んちゅっ……ちゅ……ぷぁっ……♡♡…」

 

 ――「…うん。……キスしながらが、いい………ぎゅー…ってして……キスしながら……いっしょに…イこ…♡♡♡」

 

 ――「ん”んぅ”っっ♡♡♡♡ ん”んぅ”ぅ”ぅぅっっ♡♡♡♡ ん”ん”ん”んんんんんぅ”ぅぅ~~~~~~~~~っ”っっ♡♡♡♡」

 

 ――「っはぁ…♡♡ はぁ……♡♡ んくっ…♡♡ ………ありがと、おじさん………………………んっ………ちゅ…ぱ……っ♡♡……」

 

 無事に盛大な祝アクメ仰け反り潮噴きナカ出しベロキス同時絶頂初体験を心ゆくまで経験させたのが功を奏してか、現在も性行為に対する忌避感は見られないし、坂本に手ずから開発され坂本に馴染むよう使い込まれた肉体は昔よりも更に魅惑的に成長していたが、それでもこれまで坂本が完全に満足するまで致した(・・・)ことはなかった。

 こなれた程度では、とうてい()たないのは誰よりもわかっているはずだ。しかし最近になって体力の限界を超えてでも坂本と繋がる回数を増やそうと健気にアピールしてくる辺り、対戦戦績で負け越していることとは別の、もう一人への対抗心のあらわれでもあるのだろうと、坂本は薄々ながらに勘付いていた。

 

「…いくら安全な日だからってさ…ひとのナカに…濃いの出し過ぎ……っん”っ♡♡ …はぁ…こんなに出されると、せーえきでナカ…重いんだけど…? …んむっ…♡♡」

 

 坂本は軽口を続けようとする唇を塞ぐと、舌を絡めながら家入硝子の乳房を制服越しに揉んだ。「ん”っ♡♡ ちょっと…シワになっちゃうじゃん、もう…」呆れつつも口調に滲む喜悦を隠しきれていない家入硝子に、本当に続けていいんだなと念を押すと。

 「くどいよ、いいかげん」と言った彼女の返答は、やはり健気なものだった。

 

「まだ出したりないんでしょ? ……なら、もっとして(・・)。もっと、キモチよくなろう? それで……もっと、ナカに出していいから」

 

 どことなく母性的でありながら、同時に、どこまでも蠱惑的な女の媚笑。

 坂本は再び顔を寄せると、深く、貪るように。家入硝子と唇を交わした。

 

 そして動こうとする間際に。「あ、でも」ふと家入硝子は、下から窺うように、小さな声をして言った。

 

「できれば……その。今度は…」

 

 まるで恥じらうように。

 

「…かお見ながら、したい。……です」

 

 そんなふうに。あざといのに無自覚な上目遣いで、そんな要望をされてしまったら、坂本としては受ける以外の選択肢があるはずもなく。

 

 脱衣所で。廊下で。寝室で。トイレで。リビングで。

 

 結局この日は防音用の結界を敷いていなければとんでもない事態になったに違いないくらいの盛り上がりを見せ、限られた時間を目一杯使って家入硝子に天国の階段を昇らせること計一三度、自身も三回射精すると、坂本は結局は失神してしまった彼女をベッドに運んで。

 身体に付着したものや部屋に飛び散ってしまった汚れや臭いを――すべて意のままに(アブラカダブラ)、と魔法の言葉さながらに――拡張術式で綺麗にまとめて処理してから、書置きを残し、合鍵で鍵を掛けて立ち去った。

 

 そうして菜々子と美々子を回収して、自宅に帰ったところで。

 

 泊まりに来ていた菅田真奈美に、じぃー、というびみょうな眼差しを向けられることになった。

 

「それ」

 

「うん?」

 

「首のところ」

 

 手鏡を渡される。言われて映してみると、坂本の首筋に、唇を強く押し付けたような跡が残っていた。

 

「………、」

 

 誰がどう見ても、キスマークだった。もしかすると帰りがけに高専の何人かに見られたかもしれない。

 

 坂本と家入硝子の関係を察している人間は、少数とはいえ、いないわけではなかった。直接訊いてきたのは夜蛾正道くらいだが、夏油傑も――彼が教師になってからは会う機会が増えたこともあり――なんとなく気づいている節はあった。そんな夏油傑と同じく、しかし彼よりも遥かに軽率な動機で教職についてしまった五条悟は、仮に気づいているなら絶対に面白おかしく揶揄しにくるはずなので今のところは知られていないというのが坂本の予測だったが。是非ともそのまま蚊帳の外でいてくれと、偽らざる本音で思いつつも。

 ともあれこの気まずい状況、さて何と説明したものかと言いあぐねていると、ぴろん、とメールが着信した。

 

 隣に座って依然「じぃー」と無言の圧力をかけてくる菅田真奈美を尻目に、坂本がメールを開くと、差出人は家入硝子であり、次の予定が事務報告書のように記載されていた。

 

「それ、今日行ったところの()?」

 

「まあ、そうかな」

 

「かな?」

 

「いや。そうだけど」

 

「かわいいの?」

 

「あー、うん」

 

「どんな子なの?」

 

「えーと」

 

「写真ある?」

 

「写真?」

 

「見せて」

 

「いやあ」

 

「見せられないの?」

 

「本人の許可とかは」

 

「今ここで訊けば?」

 

「ええ……」

 

 さしずめ浮気を問い詰められている男女のような構図に、坂本は内心で首を傾げていた。親しい関係なのは間違いない。でも俺たちって別に夫婦ではないし、だいたい恋人だったことすら一度もなかったはずだよな?

 確かに過去には、坂本側から交際を申し込んだこともあったが。

 

 呪詛師の現役時代、難儀な〈天与呪縛〉の影響で深い対人関係を結べなかった坂本にとって菅田真奈美は数少ない信用の置ける存在であり、加えて容姿端麗で頭も切れる限られた異性でもあったから、関わるうちに彼女に対して自然とそういう(・・・・)情を持つようになった。しかし業界のセンパイである菅田真奈美から「私たちは呪詛師よ。そういう契約は結びたくないの」と断られていたため、からだを交わす間柄になったあとでも、互いに都合の良い関係性(セックスフレンド)より先に進んだことは無かった。

 

 だからこそ。以前「愛してる」と菅田真奈美から言われたとき、期待しなかったといえば噓になる。だがその後、他ならぬ本人から「友だち(・・・)として、だからね。誤解(・・)しないように」と念入りに釘を刺されてもいた。

 関係性を変えないのが菅田真奈美の――センパイであり、初恋の相手でもある彼女の――望みであるのなら。坂本は、自分を納得させていた。たとえ比翼連理になれずとも、親友であり続けられることに違いはないのだから。

 

 そうと決めたにもかかわらず、なぜ自分は浮気を問い詰められる男のような立場になっているのか。それともこれは、友人間で起きる嫉妬ってやつなのか? そもそも親友と呼べるほどの仲の人が(ほぼ)いない坂本には、判断が至難すぎる。

 

「なによ」

 

 じろり、と睨まれる。坂本が本気で困惑していることに気づいたのだろう、ぼそりと呟かれる。〈天与呪縛〉で強化された聴力であれば十分に聞き取れる音量で。

 

「私で童貞捨てたくせに」

 

「それ関係あるか、今?」

 

 挙句に、露骨なため息を吐かれた。なんで??

 

 その末に。

 

「なら、いいわ。その子に伝えてくれる?」

 

「はあ――?」

 

 

 

 3.

 

 

 

 敷き詰められた砂利に、セダンで乗り上げる。

 

 エンジンを回したまま停めると、駐車場には既に待ち人の姿があった。

 

「お姉ちゃん」

 

 防寒着を着込んでいる菜々子と美々子が、後部座席から待ち人に手を振った。すると助手席に座っていた菅田真奈美が、無言で車を降り、ばたんとドアを閉めると、待ち人のもとまで歩き出した。

 

「ねえねえ、お父さん」

 

 車内では、先ほどからザ・ビートルズの「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」が流れている。現実逃避気味に蒼穹を眺めていた坂本は、後ろから菜々子にせっつくように言われ、生返事を返した。

 

「どうした」

 

 車の外では、二人の女が、笑顔で向き合っている。

 

 

「初めまして。情報商材会社の社長をしています、菅田真奈美と言います」

 

「初めまして。高専で医師やってます、家入硝子です」

 

「こうして会えて、とても嬉しいわ」

 

「私も、とても楽しみにしてました」

 

 

 千葉県にある日本有数の遊園地を訪れる前に、坂本たちが高専に寄ったのは、今回の旅行に彼女も参加することになったからだった。

 

「あれってさ。シュラバって言うんだよね」

 

「………、」

 

 二月。寒波は未だ衰えず、春の影も見えず。

 

 

 しかし天気は、忌々しいほどに快晴だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 修羅場やね





















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