ユー・アー・マイ・スペシャル 作:グリム・グリルグリン・グリーングリップ
4.
平日だというのに、大した盛況ぶりだった。
入口に列を為す客たちに内心で引き気味だった家入硝子は、いざ自分たちもゲートを潜り抜けてみると、視界に飛び込んでくる、
「すごい人の数。ちょっと、よいそう」
「ほんとにね。多すぎない? 美々子、つるしちゃう?」
「おいおい」
こらこら。見渡す限りに広がる非術師を目にした美々子と菜々子が、さっそく呪詛師認定まっしぐらな発言をして、坂本にたしなめられている。頭を「わしゃわしゃ」され、二人が「わぁー」「きゃー」と燥いでいると、菅田真奈美が手を鳴らした。
「ほら三人とも。予定は組んであるんだから、テキパキ動きましょう。どこを見に行くにしたって、どのみち並ばないといけないのだし」
「はーい」
あなたもそれでいいわよね。話を振られた家入硝子は頷くと、動き出した一行に並んだ。
「菜々子たちって、普段からこういうとこ来てるの?」
「んー、けっこう来てるよ。今までに三回、四回くらい?」
「四回目だな。真奈美は」
「私は今日が二回目よ。前にあなたたちと一緒したのが一回目」
「へー。じゃあ私がこのなかだと一番新参ってわけか」
夢の国へようこそ! ツアーをガイドしているキャストの声が聞こえる。
少し歩くと、華やかな衣装を着た王子と王女が、親子連れらしき家族と写真撮影をしていた。近くには遊園地オリジナルの被り物をした男女もいる。お揃いのマフラーを巻いた菜々子と美々子は、坂本の手を引くとカップルの後ろに並び、坂本も慣れた手つきでカメラを取り出している。
一見するとありふれた、どこまでも平和な家族風景を眺めながら「おじさんってわりとちゃんとパパやってんだなあ」と家入硝子がなんとなしに感心していると、隣に菅田真奈美が立っていた。
「意外って顔してるわね」
「……まあ。高専での振る舞いとか、知っているんで」
「一時期に比べれば、随分と安定したわ。最初の頃は敵意が先走って、術師以外とは話もままならなかったから。あの子たちも、術師と非術師の区別を学んで、少しは大人になったということかしらね」
坂本について訊かれているのかと思ったが。双子の話題だったらしい。
「家入さんからすれば、彼のほうが意外だったかしら」
一瞬返事が遅れたことで、見透かしたように言われる。牽制のつもりなのか。わたくしのほうが彼のことをよく存じておりますのよ、とでも言うような。それにしては言葉の節々に毒や塩気が足りていなかった。
高専の駐車場で顔合わせした直後は、お互い
人の
呪術師という異質な常識の枠組みで生きているとはいえ、一般的な感覚を併せ持つ家入硝子には、だからこそ菅田真奈美の意図が測れずにいた。
坂本たちが戻ってくる。ほら見て、と菜々子が家入硝子にかざしたのは、チェキで取った写真だった。坂本が持っているカメラとは違い、こちらは菜々子本人が持ち歩いているものだという。
とりあえず「イイんじゃない」と褒めてみると、菜々子は胡乱げに目を細めた。
「お姉ちゃん、なんかテキトーに言ってない?」
「んなことないよ。味があってイイじゃん」
「そーおー?」
「よく撮れてるし、才能あるんじゃない?」
「そーかなー?」
「二人とも。マウンテン行くんでしょう? 並んでる人、増えちゃうわよ」
「そーだった」
いこいこ、と双子は子供らしく溌溂に進んでゆく。坂本をぐいぐい引っ張りながら。そして坂本は、完全に家族サービス中の父親みたいになっている。
めんどくせー、と家入硝子は小さく笑った。
「声に出てるわよ」
横からの視線。菅田真奈美。やはり、何か企んでいるようには見えない。余裕のつもりなのか。もしくはそうと振る舞うことで、油断させるのが狙いなのか。
それとも。
喫いたくなり、指がジャケットに伸びかけたところで、思い出した。今は煙草は持っていない。出かける時に、置いてきていた。
めんどくせー。心のなかで呟いた。まあここには、もっと「めんどくせー」やつがいるんだけど。
「硝子」
坂本が、足を止めていた。
「なんでもなーい。靴紐が緩んでただけ」
でもせっかく来たんだし、楽しまないと。言い聞かせるように、家入硝子は前を向いた。その様子を菅田真奈美がひそかに注視していることには、ついぞ気が付かないまま歩く。
それから一行は、マウンテンの名前の付くアトラクションを制覇したのち、呪霊の実物を知っている身としてはだいぶファンシーな仕上がりのお化け屋敷を体験した。
正午を回るとレストランで割高な昼食を取り、午後から始まる
今度のは回転する激しい系のライドであり、三人制限であったため、家入硝子は遠慮することにしたが。すると菅田真奈美も辞退したので、坂本と双子は、ほとんど順番待ちも無く施設に消えていった。
自然と二人きりになる。家入硝子は近くにベンチを見つけ、座って待つことにした。菅田真奈美は傍で販売していたコーヒーを二つ買うと、片方を渡してくる。
「どうも」
素直に受け取った。菅田真奈美は静かに微笑むと、隣に二人ぶんのスペースを空けて腰を下ろした。
手が温かった。風が無く、ダウンジャケットの中に着込んでいるとはいえ、流石に二月の空気は冷たい。菅田真奈美はコートを着つつも、リブニットのタートルネックとチュールスカートという装いをしていて、それでも寒がっている様子は見られなかった。
沈黙が降りる。三人が戻ってくるまでの間、他の客たちの笑い声が、やけに大きく聞こえた。
「“癒し手”」
「―――」
ぽつり、と。
何の前置きも無く、菅田真奈美が言った。
5.
「そんなに警戒しないでよ。こっちに害意はないんだから。でもそんな顔もできたのね、あなた」
「少し驚いただけです。昔について知っている人間は、あまりいないんで。どこかで会ったことありましたっけ」
「いいえ。会ったのは今日が初めてよ」
身体に力を籠めたのは、寒さのせいだけではない。淡々とした声音の菅田真奈美に、気づかれないように息を吸った。強張りを解く。だが、警戒は解かなかった。
「家入硝子。高度な反転術式を他者に出力できる高専の希少な呪術師、兼お医者さん。過去にはカルト教団≪救いの匣≫の巫女、あるいは“癒し手”とも呼ばれていた」
「よくご存じで」
「言ったでしょう、情報商材会社の社長だって。情報を扱う業界人で“癒し手”を知らないのはモグリよ。あの事件には私もいくつか関わったし。今だと、ほとんど“
ちらと隣を窺う。菅田真奈美は、家入硝子を見ていなかった。紙コップを両手で持ち、立ち昇る白い湯気に、ふうふうと息を吹きかけている。
「個人的にも気になって調べたことがあるの。
「そんな時代もありましたね」少し、笑ってしまう。「今ではすっかり、
笑えてしまう自分が、ちょっと可笑しかった。視線を落とし、家入硝子は両手で持っていたコップに口をつけた。「……熱っ、」思ったよりもホットだったので、顔をしかめてしまう。
「それが理由なの?」
「え?」
唇を舐めていると、菅田真奈美が言った。
「あなたが、彼に……」
何を言わんとしているのかは、想像がついた。「好意を寄せている?」
言葉の先を取ると、菅田真奈美が口元をほころばせた。
「そう。つまり、あなたは――」
「彼を愛しているのか、って?」
「―――、……そうね」
苦笑が、大きくなった。
「事件はひと月と経たずに収束した。あなたたちが関わった時間はそれこそ、その半分にも満たないでしょう」
「だから納得がいかないと?」
「まさか、一目惚れだなんて言わないでよ」
「違いますよ」
「なら?」
家入硝子は、笑顔で言い切った。
「教えません。秘密なので」
彼と過ごした、たったの二週間の逃避行。檻の外の
私と彼だけが覚えていればいい。他の誰も知る必要はない。驚きも。喜びも。憎しみも。誰かの生も。冷たい死も。それがありふれたことであったとしても、すべて私たちだけの“秘密”だった。
教えるわけがない。この
「でしょうね」
菅田真奈美も、それ以上は追及してこなかった。
「それに、仮に一目惚れだったとしても。別におかしくはないでしょう。世の中には、植物園で一度擦れ違っただけなのに、そこから九年間もお互いを想い続けるような医者と人妻だっている」
「泉鏡花ね。大昔の
「よくご存じで」
「さっきも言ったでしょう、情報商材会社の社長だって」
「最近の社長さんは物知りなんですね。なんでも知ってそう」
「何でもは知らないわよ。知ってることだけね」
「へえ……」
「まあいいわ。端的に訊くけれど。別れる気は、ないのよね?」
「はい。菅田さんには悪いですけど」
「悪いと思ってるくせに、別れる気はないんだ」
「……はい」
「そう」
菅田真奈美は。
「なら、しかたないわね」
この期に及んでも、不思議なくらい落ち着き払っていた。
立場は伝わったはずだ。宣戦布告のつもりだった。私はあなたたちの間に割り込んであなたたちの関係性を壊しかねない存在なのだと。それを聞かされて――なのに、なぜ。
「怒らないんですか」
「うん?」
「叩かれるとか。刺される覚悟とかも、一応してきたんですけど」
「あなた、ずっとそんなこと考えてたの?」
言の葉にも双眸にも、憎しみはおろか、棘の一つすら見当たらない。それどころか家入硝子が抱える負い目を見透かしたかのように、菅田真奈美は穏やかな笑みを崩さずにいる。
胸がざわついた。どうしてそんな、波立たぬ眼差しでいられるのか。自分に自信があるからか。自分に自信があるから、そんなふうに笑顔を浮かべていられるのだろうか。
「必要だと思ったのよ」
柔らかい声だった。
「あの人には、あなたが必要だと。だから、あなたに怒ったりはしないわ」
「どういう意味ですか」
「彼が欲しいの?」
「………、」
「彼を独占してしまいたい?」
唇を噛んだ。
「ひとつ、勘違いしているわ」
「なにをですか」
低い声が出た。菅田真奈美は、わらっていた。
「選ぶのは彼よ。私じゃないの」
でも、やっぱり間違ってなかったわね。どことなく茶化すような口ぶりをして、菅田真奈美は立ち上がった。
「私としては、そこまで反対じゃないのよ。やっぱりどうしても、一人だと限界があるから」
視線の先で、双子が手を振っていた。坂本もいる。
「それって、」
「教えません」
秘密だから。そう言って、意味を訊き出すよりも早く、菅田真奈美は双子たちと合流してしまう。
家入硝子は。菜々子と美々子に挟まれている坂本と、その隣に並んでいる菅田真奈美の姿を、ぼんやりと見つめた。どこからどう見ても――術師であるとか、血の繋がりであるだとかに関係なく――ごく普通の、珍しくもない家族だった。それはかつて、家入硝子がついぞ与えられなかったものでもある。だから自分はありふれたその光景に、感傷めいたものを抱いてしまっているのだと家入硝子は理解している。
だからこそ、蛇蝎の如く忌み嫌われる行為をおこなった私は非難されるべきだと、後ろめたく思っていたのに。
「疲れたのか。それとも、また靴紐がほどけたのか」
坂本が、手を差し出していた。差し伸べられた手を見て、家入硝子のなかで、いっそう強く募る想いがある。
“それ”はあたたかくて、どろどろしてて、せつなくて、にがくて、お世辞にもきれいとは呼べないもので。
たぶん言葉に置き換えてしまえば、
菅田真奈美が、こちらに笑みを向けていた。彼女はどうして私を責めないのだろうか。ふと考えてしまう。自信があるのだろう、自分に。積み重ねてきた関係性に。それは間違いない、と思う。
大人のオンナだった。見た目もそうだし、会話の運び方もそうだし、服のコーデからしても、菅田真奈美はオトナの女性だった。私なんかよりも。よっぽど、彼の隣が似合っている。
「べつに?」
出そうになった言葉を、家入硝子は呑み込んだ。私を選んでほしい、私だけを見てほしい、だなんて。言えるはずがなかった。たとえ盲目でも、勝ち負けの分別くらいはつく。
だけど。
本当に――めんどくさいし、わずらわしいし。かしこくないとわかっているのに、そのくせ後生大事に抱え込んで、“それ”を消してしまえないことも知っている。
「面倒くさいなって」
小さくわらった。ほんとに、めんどくせー女だ。私って。
「そうかい」
「……うん」
手を引かれる。何も訊かれなかった。
坂本は、何故かそのまま歩き出した。「え。おじさん?」ゆっくりした歩幅で。周りに人がいるのに。手を握られたまま。
温かい手だった。決して強い力ではない。振り解こうと思えば、簡単にできる。ただ、ちょっと困惑してしまう。
「嫌か?」
「そういうんじゃないけど」
菅田真奈美と目が合うが。意味深に笑うだけで、何も言ってこない。
お姉ちゃん、お父さんと手ぇつないでるー。菜々子が言った。そういうときもあるのよ、と菅田真奈美がたしなめている。本妻の余裕ってやつ? なし崩しに繋いだまま歩く。そういえば人前で手を繋いで歩くのは久しぶりだ。今日は予想できないことばかりが起きて少し緊張してしまう。手汗とか掻いてないよな。大丈夫だよね?
煙草が吸いたくなった。へんに気取って置いてこなければよかったと後悔する。口寂しいな。「キスしたい」なんとなしに思い浮かんだ。煙草がダメならキスでもいい。それなら我慢できる。まあここじゃ無理だろうけど。
「硝子」
迂闊にも。実は声に出ていたと気づいたとき、坂本が足を止めていた。
…んちゅ…んむっ
…ちゅっ…あむっ…ちゅぱ…っ…
「……んっ、」
唇が離れる。
いきなりすんなバカ。セクハラだぞ。言おうとして声が
「したいって言ったろ」
「…………………ほんとにするか、ふつう?」
しかも人前で? ほんと急すぎる。
「俺もしたくなったんだ、急にな」
「―――そ」
菅田真奈美を見る。くすくす口元を綻ばせている。それで本当にいいの? ていうか一瞬で顔が熱いんだけど。
「私もするーっ」
「菜々子には早いわよ」
「菅田さん」
「んー?」
「いいんですか」
「んー、いいんじゃない?」
あっけらかんと言われる。それで本当にいいの?? やはり揶揄うのが目的なのか。どちらにせよ、ため息が出てしまう。いつの間にか美々子が傍に来て、こちらを見上げていた。不安の入り混じった子供の瞳。何かをおそれているような。家入硝子は、なんとなく理由を察した。
「……
美々子が笑みを見せ、空いている家入硝子の手を握った。こうなると、今さら大人げなく振り払うわけにもいかない。手が塞がっているので叩いてやることもできず、家入硝子は、せめてもの抗議として坂本を睨みつけた。
「なんだよ」
「わからいでか」
「なんだそれ」
おじさん知ってる? こう見えて私って罪悪感とかかんじないタイプじゃないんだよ。なのにこういうことされたらさ、ますます諦められなくなるの、わかんないのかな~~~~~? わかんないんだろうな~~~~~~。
「私、はなしたほうがいい? お姉ちゃん」
挙句に、一〇歳も年下の美々子にも言われてしまうと、もう。家入硝子としては、完全にお手上げだった。
露骨にため息を吐く。最低限の意思表示として、それくらいはしておきたかった。
「……わかったよ。このまま行こう」
結局、次のアトラクションでも繋いだままになったが。
予定していたコースの大半を回り終えて、夜のパレードを見物した頃には、家入硝子が抱えていた当初の負い目や居心地の悪さは
言葉にこそされていなかったが。それでも、近くで接し続けていれば分かることもある。菅田真奈美の暗黙の
「すごかったね、お姉ちゃんっ」
「お姉ちゃんは、楽しめた?」
双子からの問いかけに対して。そうだねえ、となんだかんだで煌びやかなパレードを楽しんだ家入硝子は、まあまあかな、と肩をすくめてみせた。
「悪くなかったよ」
ただし、家入硝子がセンチメンタルな気分でいられたのは、このときまでだった。
――「やっぱりどうしても、一人だと限界があるから」
ホテルで夕食を取り終えて、くたくたに疲れ果てた子供たちが眠りについたあとには。菅田真奈美の真意を
「じゃ、ヤリましょうか」
防音と防震の簡単な“結界”が張り終わると、菅田真奈美が嫣然と微笑んで言った。
「風呂は」
「あとでいいわ。家入さんは、先に入っちゃう派?」
いきなりの急展開。可能性として頭の隅に考えてはいたが、少なくともまだ心構えができていない家入硝子にとっては、突然の流れであり。
「…え?」
予約した部屋は五人以上の宿泊にも対応しているため寝室は二つあり、ベッドは四つ完備されている。その内一つは菜々子と美々子が一緒に使い、風呂に入る前に坂本曰く「朝までぐっすりコース」で寝入ってしまっていた。
だから、期待しなかったわけではない。
…ちゅっ♡♡ れろ…はぷ…っ♡♡
しかしいざ目の前で、人目も気にせずディープなキスが始められてしまうと。表向きダウナー系で通している
んむっ…はむっ…♡♡ れちゅ…れろぉ…っ♡♡
菅田真奈美が、坂本の首の後ろに手を回す。身体同士を密着させ、坂本も菅田真奈美の腰に手を置くと、赤い舌を絡ませ合い、熱い吐息を
「わ、――――ゎ…」
坂本の指が、ボディラインを際立たせていた
あむ…っ♡♡ …はぷ…ちゅぷ…っ♡♡ …ちゅぱっ♡♡
「…ふふ…♡♡ 思ったよりも混乱してるわね。先に、シャワー浴びてきたら?」
はらりとスカートが床に落ちる。身に纏う衣服を脱ぎ捨て、赤いブラと黒のパンストのみになった菅田真奈美が、家入硝子を流し目に見やった。
彼女の笑みと坂本の視線に耐えられなくなり、「……っ、」家入硝子は逃げるように浴室に飛び込むと、大きく息を吐いた。
「まじか」
まさか
「とりあえず……シャワー浴びよ」
服を脱ぎ、水栓を捻った。
「あっ、やば」
着替えを用意していないことに気づくも、時すでに遅く湯は噴き出しており。しかも勢い余って頭からシャワーを被ったせいでメイクまで落ちてしまい、「………、」家入硝子はバスチェアの上で、しばらく頭を抱え込んだ。
幸いタオルとバスローブを見つけられたし、元々メイクは薄めなのでこの際すっぴんでも十分リカバリーできる範疇だと自分を納得させてみたものの、シャワーを終えて洗面台の前に立つと、鏡には明らかに緊張したダウナー系女史の姿が映っていた。
そりゃそうでしょ、だって普段のエッチとは状況が違い過ぎるし。
それでも。脳裏を過ぎったのは、菅田真奈美の挑発的な笑みだった。ここが岐路だと思う。なら、引きたくない。諦めたくない。怖気づいて、負けたくない。
欲しいものがあるのなら、手を伸ばしたって良いって言ったのはおじさんなんだからな。
身体を見下ろした。バスローブの着方ってこれで合ってるよね? 映画でくらいしか見たことがないので、不安が残りつつも。家入硝子はつけ直した下着の上にバスローブを羽織ると、いざ深呼吸をして坂本たちのもとに向かった。
「よしっ」
“結界”の敷かれた寝室に踏み入る。途端に先ほどまで存在していなかった嬌音が、家入硝子の耳朶を盛大にぶち震わせた。
ぉぉぉ”っ―――ほっ”ぉ”ぉ”ぉぉぉっ♡♡♡ …お”っ♡♡ お”っ♡♡ お”ぉ”ぉぉォォ~~~~~~~っ”っ♡♡♡
開幕エゲつないまでのオホ声。うゎ…ヤっバ~~~~…っ♡♡ じゃっかん及び腰になりながら窺うと、ベッドに四つん這いになった菅田真奈美が、破かれたパンスト越しにぐしょ濡れショーツをずらされてハメハメ♡♡後背位で坂本のオスマラに貫かれていた。
艶のあるボリューミーな髪を振り乱し、すらりとした色白の背中に汗玉を浮かべ、ブラの剥かれた色素濃いめの乳房をばるんばるんっ♡♡揺らしながら、腰を打ち付けられるたびにぶるぶるっ♡♡とムチ尻を弾ませて、お”ぉ~~~~っ♡♡ お”ぉ”ぉぉ~~~~~~っっ♡♡とメス泣き声を上げている。
ぎゅっとシーツを掴んで何とか耐え
菅田真奈美が絶頂を繰り返しているのは一目瞭然であり、鬼畜めいたピストンの打ち込みと同時に、ぶしっ♡♡ ぷしーっっ♡♡と惜しげもなく噴き溢れたまん汁が、おニューなシーツに新たな染み跡を増やしていた。
来たか、と。不意に律動を止めて坂本が振り向くと、家入硝子は目が合った瞬間、ぶるっ♡♡とふるえ、じょわ…♡♡とカラダの奥からナニかが染み出すのを感じた。そして敗北アクメを迸らせていた菅田真奈美のまんこ穴から、…ぬぽっ♡♡とフェロモンの滴る
心臓が激しく高鳴る。思わず唾を呑む。うぉ…デッカ………♡♡ 相変わらず規格外にそそり勃つ肉竿に視線が吸い寄せられ、身動き取れないでいると、家入硝子は近づいてきた坂本に、為すすべなく抱き寄せられた。
「…おじさ…、…んっ♡♡ ちゅっ…ぢゅうぅっ…れろぉ…っ♡♡」
粘膜を触れ合わせ、舌を絡め取られる。昼のときとはまるで違う舌遣い。坂本に
堕ち済みメス特有の「あっ♡♡」だったり「ん”っ♡♡」だとかの媚び声が
びくっ♡♡と意志を離れてカラダが跳ね、まって…っ♡♡と懇願するも聞き入れてもらえず、ぐちゅぐちゅ♡♡指でナカと
抱き締められているから抜け出せず、弱点箇所は本人以上に隅々まで把握されてしまっているため、もはや勝機などない。呆気なく快楽の
ん”ん”ぅぅ~~~~~~ぅっっ♡♡♡♡ ―――――っっはあぁぁぁ……っ♡♡ ……は…っ…♡♡ …はっ…♡♡ ……は…ぁっ…♡♡
倒れそうになるのを、腕に支えられる。腕に縋りながら荒れた息を整えようとしていると、坂本の指が、バスローブの結び目に伸びた。ぱさり、と身を包んでいたローブが床に落ちる。愛液で水没したショーツとブラしか着けていない状態になり、羞恥と興奮と快楽で頭が沸騰しそうになる。そんな家入硝子に、坂本が微笑んで言った。どうしてほしい? オスの低い声で。脳にじかに流し込むように、加虐に富んだ、囁くような声色で。
これから自分に待ち受けることを理解した家入硝子は、ぞくぞくぞく…っ♡♡とふるえあがりながら、
「……して」
視界の端にいるアクメ放心中の菅田真奈美を一瞥して。込み上げる
彼に見下ろされ、彼に
家入硝子は、濡れた瞳で坂本を見上げた。
「して、ください」
やさしく微笑まれる。
そして、
「―――――――――――オ”ッ”ッ”♡♡♡♡」
爪先から脳天までを、快楽で貫かれた。