そこのオタクくん座談会来ない? ~秘密のギャル本さん~ 作:馬門戒明/輪島ライ
総合商社に務めている父親の転勤の関係で、俺は高校2年生にして大阪府内の男子校から東京都内の共学高校に転校する羽目になった。
前の高校ではパソコン研究部にしか入っていなかった陰キャ中の陰キャの俺が、共学の高校に途中から入って馴染めるはずもなく……
「うわっ、本当に来たんだ。ごめんねー、私たち
「はあ……」
いかにも文系っぽい眼鏡っ娘が放課後に近くの公園まで来てくださいと言ったから約束通り行ってみると、そこでは根性の悪い女子グループが待っていて彼女らに命令されていたらしい眼鏡っ娘は遠巻きに俺を見ていた。
また嫌がらせかと落胆したがこの高校では陰キャに人権などなく、俺が大して気にしていない素振りを見せると女子グループはキャハハと笑いながら立ち去っていった。
眼鏡っ娘は申し訳なさそうに俺の方に何度も振り向いていたが、彼女は彼女でいじめられている側の陰キャなのだろう。
苛つきながらも自販機でジュースを買ってベンチに腰掛けたまま飲んでいると、また同じクラスの女が近づいてきた。
もうちょっと偏差値が高い高校には絶対にいないような金髪ロングヘアのギャルは確か
日焼けサロンで焼いているらしい小麦色の肌をした空本はベンチにもたれている俺をにやにやしながら見ると隣に腰掛け、俺はこんなギャルと座高がほぼ同じであることに劣等感を感じた。
「そこのオタクくんさあ、どーせまたエーコたちに嫌がらせされてたんでしょ? あーしもあの子らあんまし好きじゃないんだよねー」
「嫌がらせも何もねえよ、俺は暇を持て余したクズどもに遊ばれてただけだ」
「まーたカッコつけちゃってえ。寂しいんでしょ? だってオタクくんって同じクラスの陰キャのことも一方的に見下してるもんねぇ」
「よく分かったな。ああそうだ、俺は高校生にもなって男だけでつるんで特撮とかポケモンの話で盛り上がってる連中は好きになれない。俺が思うオタクとあいつらが自認してるオタクは違う」
「へいへい、大阪星光学院のガリ勉くんは偉いですねー。それよりさあ、オタクくん暇なら座談会来ない?」
「座談会?」
空本はギャルに似合わない単語を口にするとバッグからパンフレットを取り出し、そこには「グレートサクリファイス学会」という名前らしい新興宗教団体の説明が記されていた。
「このサークルはね、やがて世界に訪れる大いなる破滅から自分たちの身を守るための宗教団体なんだよ。皆で集まって世界の終わりに備える方法について語り合って、そこで会員同士で仲良くなるの。高校生は会費無料だからオタクくんも来ない?」
「宗教ってそうなのか?」
「そうだよ。あーしオタクくんとなら一緒に座談会で話したいなって思ってる。もちろんその後のイベントも」
「で? これに入信したら絶対に幸せになれるとでも言いたいのか?」
「絶対なれるっ! って言えるかはビミョーだけど、あーしは誘う相手をちゃんと選んでるから。このクラスではオタクくんが3人目かな」
「ふーん……」
空本は危なそうな新興宗教の信者だったらしいが、今のつまらない人生を嫌々生きていくぐらいなら少しは刺激が欲しいと思った。
「じゃあさ、空本は俺がこれに入信したら俺の彼女にでもなってくれるのか? それとも俺をセフレにでもするのか?」
「オタクくんとならいいよ、あーし普通に経験あるし。何なら今日来てくれたら気持ちよくしたげる」
「……本気で言ってんのか? じゃあ今から行ってやるよ。言っとくけど俺は童貞だからな」
「やったれムンムン、かましたらあ! って訳でオタクくんは今日からうちのサークルの会員ね。16時ちょうどにここの公民館に来てちょー」
空本は俺にパンフレットに書かれた会場の地図を示すとさっさと歩いていき、俺は本当に行くかどうか迷ったがもうどうにでもなれという思いで約束の時間に公民館に行った。