最弱の魔族「趣味は読書、好きな食べ物は特にないです。」 作:夢馬
夜、賑やかな街の路地裏で、冒険者らしい逞しい体を持った大男が私を乱暴に押し倒す。
目はギラギラと開かれ、股には大きな指みたいなのがピクピクと動いているのが見える。
私の肩に大きな力が篭もる、痛い。私の目に男の生暖かい息が激しく当たる。
男は私が着ていたローブを無理やり脱がすと、私の股にその大きな指を突っ込んだ。
皮膚を強く抓られたような鈍い痛みをかんじる、男はさらに興奮したのか、息を荒らげて腰をなんどもなんども打ち付け始めた。
人間の男が、なぜこうなるのかはわからないが、いつみても滑稽に見える。この行為が生殖のためであるというのはわかるけれども、私は子供を産めないのだ。馬鹿だなぁと思う。
1時間ぐらいすると、男は満足したのか、倒れていた私の腹を思いっきり踏みつけて、路地裏から出ていった。
私は倒れたまま、吐いていた。内臓が破裂しているような気がする。暗い路地裏に吐かれた吐瀉物には血が混じっていた。しかも、股の痛みと、そこから垂れる液体の感覚が気持ち悪い。
肩には痣ができているし、石の上に叩きつけられた背中がずきずきと痛む。
私は魔族だ。人間ならばこのくらいの怪我で死んでいるのだろうが、ご覧の通り私はまだ生きている。だが、私は最弱の魔族なんだろうと思う。こんな程度の怪我が治るのに1週間はかかるからだ。まぁ、それでも住処に帰れるぐらいの丈夫さはあるんだけど。
魔族の私は、気づいた頃?というより私が生まれた時、この街からちょっと離れた森の中にいた。
なんで生まれたのかわからない、なんどここにいるのか、ここがどこなのかもわからなかった。知り合いの魔族によれば、そんな状態でも、ある欲望みたいなものは持って生まれてきているらしいけれど、私にはそれすらもなかった。
というより、私の魔族らしいところと言えば、頭に生えるくすんだエメラルド色の捻れた小さな角と、この無駄に頑丈な体だけだ。
一般的に魔族は人間よりも魔力量もそのコントロールも上手いというが、私の場合、魔力量は普通の人間ぐらいだし、コントロールも上手いとは言えない。
まぁ、そんな私が魔獣や人間がうろつく外で生きていけるわけはなかった。でも、ひとつだけ、私には優れたところがあった。私は雄から非常にモテる。まれに私を見た雄は気が狂ったように盛って、そのまま私を犯してしまうほどだ。
その事に気づいたのは、生まれて何度目かの夜を迎えた頃に、森を出て散歩していたときに、近くを通りかかった冒険者パーティの男たちに襲われた時だった。
たしか、男3人と女1人のパーティだった思うが、その内の女と結婚していた男が野獣のように私を襲うの見て、女が殺す気で攻撃してきたので、人生(?)で初めた命の危険を感じたのを覚えている。
まぁ、そんな1番無防備といえる交尾の時の人間も、対して強くない聖職者の女の人間相手に命からがら逃げるしか無かった私だ、あちらこちらをなんの目的もなく歩いていたたどり着いていたら、死んでしまう。
森からちょっと離れたところに、この街があってよかったと思う。
といっても、街に潜伏していると言った方が正しいんだけど。
門番が男でよかった。私が夜、この街の門に来た時、門番男が私を犯していなかったら、私はこの街に潜伏することはできなかっただろう。一応、角あるし、商人でもなさそうな私を街に入れてくれるとは限らなかっただろう。もっとも、私はそれなりに可愛らしい見た目をしているので案外、許されたかもしれないけれど。
門番の男が満足して、疲れているところのスキをついて、門をくぐり抜けて侵入できたのだ。
こんなチャンスを生かさない訳にはいかない。
門番の男も、自分の失態をそうそう報告できるはずがないんだし、暫くはここで暮らそうと思ったのだ。
でも、どうやら私の雄からモテるという変な能力?はこの街では得になることもあれば、損にもなる。
貧困に喘ぐ少女の真似をすれば、優しい人間から助けてもらえる。体を売ればこの街で生きていくために必要なお金が稼げる、情報も知れる。
だが、今日みたいに人間の男から襲われるときもある。あの暴力を振るうことが好きな男に襲われることも増える。今はまだ大丈夫だが、あの冒険者パーティの時のような危ない目に会わないとも限らない。
気をつけなければ、私は最弱の魔族なのだ。
魔族とバレていないだけでもキツいのに、魔族とバレたら何をされるのかわからない。
私はほかの魔族のように、上手く嘘さえ付けないのだ。
痛む身体を引きずり歩きながら、誰にも見つからないように、私は静かに住処に向かっていった。
私の住処は、この街の外れ、東側の、いわゆる貧困地区の近くにある。
治安も悪く、で歩けば襲われるこの地区ぐらいしか、身寄りがなく魔族の私が溶け込める場所はなかった。
しかし、今晩は誰にも襲われることはなく家に帰ってこれた。流石にこんな重体で襲われるのは厳しかったし辛かっただろうから、幸運だった。
私は扉に鍵をかけた。別に私の身体がどうなろうが、死なない限りは治るからいいが、物だけは盗られたら戻ってこないし、やはり入念にしておくに限るのだ。
私の住処は、まぁ大体150cmぐらいの私がギリギリ縦に3人ぐらい寝ころべるぐらいの小屋みたいな家だ。壁が薄いから、寒いこの地方の夜は凍えるはめになるし、雨漏りもするし、床はよく軋む。
私は結構、本を読むことが好きなので、本を多く置いている床はすこし沈んでいる。家具みたいなものだ。あとは小さな机ぐらいしかない。
寝床は薄いぼろ布が敷かれた、ないよりマシ程度のものだ。
正直、口に血がへばりついて嫌な感じだし、体がベタベタするし、股も気持ち悪いので水浴びがしたいところだが、もう今日は寝ることにする。
ぼろ布の上に寝転がった時、私の角が壁にコツンと当たった。
真っ暗な部屋の中、机に置いてある本に目が向いた。
魔族の危険性について書かれたものだ。
もう1つ幸運なことがあった、私は自分自身のこと、魔族のことについて早めに知ることができたことだ。
ひっそりと生きていこう、寿命が私にあるのかわからないけれど。
そういえば、ほかの魔族は眠ったりするのかしら?とそう思いながら、私はじくじくと痛むお腹に擦りながら眠りに落ちた。
ぼちぼち曇らせます、書いていきます。いいね、お気に入り、コメントお願いします。