最弱の魔族「趣味は読書、好きな食べ物は特にないです。」 作:夢馬
清々しいお昼の間に本を読み、夜には不気味なほど真っ暗な貧困区域に行く。
そこには皮膚が異様に盛り上がった人や、指が腐り落ちている人、眼球がない人、言葉が喋れない人、てんかん持ちの人が沢山居た。骨が浮きでた人と、筋肉が浮き出た人が同じぐらいいるような、そんな汚物と腐敗臭と死臭に噎せ返るような世界がそこにある。
私はそこに自宅より広いぐらいの質素な診療所を立てた。なんか後から教会みたいな感じに勝手に改修されていたが。
そこで私は、そんな可哀想で醜い人たちを「癒して」いた。
私は診療所の木製の頑丈なベットに座って患者を待つ。
ここに入ってくる人達の、私に対する態度は多種多様だ。
ある人は下卑た目でニタニタこちらを見つめて、乱暴に、自分の欲望を満足させて帰るし、ある人は不安そうにこちらに体を委ねる。人によっては、私を崇拝しているのではないかと思うような態度をとる人もいる。
ここ最近で、私は自分のあの雄を狂わせる能力を制限できるようになった。今の私は、例え私のような豊満とは決して言えないような小娘でも興奮できるぐらいに効力を制限している。
交尾の経験がなくておじける人には、この制限を緩めて、私を襲わせたりもする。その間に、私は魔法を使って彼らを癒す。
健康な人も少なくない回数でやってくるが、健康診断とか、潜在している病とかを治してやっている。
彼らはその代わりとして、私に僅かなお金や食べ物や、自分で作った道具とか家具とか装飾具を渡す。なんにも渡さない人も少なくないけれど、1日に十何人から数十人が私の元にやってくるので、それなりの稼ぎにはなっている。
意外にも彼らが作る物は、結構上等で高く売れるし、家で使えるやつは使わせてもらっている。
なによりも、大半の人は癒した後、涙を流しながら私に感謝するのだ。
多分、私の特性がよりそうさせるのだろう。対価が貰えるんだし、別にそんな泣くまでもないと思うが...まぁ悪い気はしなかった。
ちなみに、女もやってくる。
その時は、まぁ想像してください。自分でいじってみても。あまり気持ちよくないし、なんか自分のしっぽを追いかける犬のような感じがして好きじゃないんだけど。
雌にも効果あるのかしら?
未明に仕事を終わらせて、家に一旦帰ってあと、私は身体を洗いに、街から少し離れた湖にいく。あの診療所にも、そもそも貧困区域には身体を洗えるほどの水はないし、あそこに行くのは週に一回ぐらいなので、汚れを落とすためにわざわざ行く。
「身体を綺麗にする魔法」とかあればいいのになぁ、と思う。
「ホコリを払う魔法」は使えるんだけど。これを使うと、古本が綺麗になるし、部屋も掃除する必要がないので、重宝している。
ついでに洗濯するために替えの服といくつか服を持っていく。
「服を綺麗にする魔法」とかあればいいのになぁと、また魔法について思う。すっかり生活魔法を収集するのが好きになってしまった。
旅とかに出たいなぁ。でもここでの生活、気に入ってるし...
そうこう考えているうちに目的地に着いた。
並々とした水面が黒く輝いていた。
そういえば、私は非常に夜目がきくし、耳も良い。まるで夜に生きるためのように。だから、少し明るい程度とはいえ、まだまだ暗いこの時間帯でも、動いたものとかにはすぐ気づける自信がある。
だから、私の後ろにいるのは間違いなく只者ではない。そして、私は彼女のことを知っている。
「ソリテール、久しぶりだね。」
「そう?1年もたっていないと思うけど。」
「あなたって、つくづく変よねぇ。」
「そう?まぁ、君と比べたら私なんて虫けら以下だってことは認めるけれどね。」
私は水浴びをしながらそう答えた。
彼女との出会いは、この街にきて、暫くの頃だった。
確か、路地裏でちょっとヤバめな男に襲われた時に、あまりにも酷かったから魔法を使って反撃してしまって、相手を逃がしてしまった時だった。
もし、あの男が警備兵に報告したらまずいと思って追いかけようと思った時に、彼女は現れた。
彼女は男の腹を思いっきり殴り、気絶させたあと、私の方を向いて、目を細めて言った
「どうする?」
私は困惑していた。明らかに私より強い魔族が突然現れた、有無を言わさせないような圧で私に話しかけてくるのだから。
情けないことに声を出そうとしても、出なかった。
「あなた、かなり若い魔族だと思うわ。でも、言葉は喋れるよね?」
「そう、緊張しなくていいわぁ。私はあなたに危害を加えたりはしないわよ。ちょっとお話したいだけ」
「そ、その男は逃がしてやってくれ」
「やっぱり喋れるよね。そうしてもいいけど、多分、この男は言いふらすと思うわよ。」
「わ、私は、記憶を消すことができるから、殺さなくてもいいんだ。」
彼女はそう私が言うと、今度は笑みを浮かべ始めた。
まるで、新しい玩具を見つけたかのような、そんな期待と歓喜の裏に残酷さが隠れているような、ぞっとするような笑みだった。
「ソリテール、それが私の名よ。あなたは?」
「フェーラァ」
「フェーラァ、ね。ふふふ、覚えておくわ。記憶を消せる魔法なんてものを持っているのも珍しいし。また、会いましょう。」
そういった後、路地裏の澱んだ空気を押しつぶすような風が吹いて、私が一瞬目をつぶったあと、ソリテールの姿はなかった。
私と、治療した方がいいであろう、倒れた男がそこに残った...
その後、彼女はちょくちょく私に会いに来て(図書館から帰ったら家に彼女がいた時は驚いた)話しをしたりした。優しかなにかはわからないが、私が若い魔族だというので、色々タメになる情報や、魔族とは何かみたいな話をした気がある。
だが、ここ2ヶ月ぐらいは会っていなかった。
「フェーラァ、あなたって本当に面白いわ。人間の男を誘惑して殺す魔族はいるけれども、貴方みたいに、誘惑して人を助ける魔族は初めて見た。」
「そう。お金がいるし、魔法の研鑽にもなるからしているだけだよ。」
正直、私は彼女を恐ろしく思っている。多少変なことを言っても殺しはしないだろうが...
適当に話を合わせておくのに限るだろう。
「本当にそれだけ?仕事中のあなた、とても面白い顔をしていたわよ。」
だから、どこか心が動かされそうな彼女の言葉に気をつけねばならないだろう。本能が、彼女の言葉に注意しろと騒いでいた。
雑魚魔族ちゃんの名前がついに明かされました。
フェーラァ ちゃんです。
ちなみによく彼女は路地裏で襲われていますが、あの街の1部の男たちには路地裏に出現する、襲ってもなにもしない美少女という形で有名になっています。
変に知識もっちゃったからね、結構、人間に対して恐怖を持っています。
でも、可哀想で醜い人間には慈しみみたいなのを持ってしまっているので、つくづく変な魔族ですね。
ソリテールは、毎回彼女が襲われた後に会話してきます。見る、のが趣味なんでしょうか。
ちなみに、ソリテールも結構、本を読むらしいです。実はフェーラァちゃんの街の図書館で用を終えた後に、彼女に気づいたらしいです。
フェーラァちゃんは、せめて本の話をして欲しいと思っているらしいです。