最弱の魔族「趣味は読書、好きな食べ物は特にないです。」 作:夢馬
性と生
「魔族は人間の言葉も表情も上手く使える。でも、貴方みたいな表情の使い方をしている魔族は少ないわ。」
「貴方はまるで、あの人間たちを安心させるみたいに表情を使う。別にこれは珍しいことではない。でも、ただ安心させるだけで使うのは珍しい」
「私にはそんなつもりはないよ。ソリテール、君が言ったんじゃないか。魔族は人の心をわからないんだろう?」
「えぇ、そうよ。私たち魔族は、普通は人の心をわからないし、普通は人を殺そうとしてしまう本能をもっている。」
「じゃあ、」
「でも、あなたは違う。」
何が違うのだろう?私だって、魔族だ。確かに身体は弱いけれども、角だってある。
人の感情だって、私は本を読んで知ったものでしかないと思うのに。
「私だって魔族だよ。君にこの角を見せただろう?君が見たいと言ったんじゃないか。」
ソリテールとは一糸まとわぬ姿で、湖で身体を洗いながら話していた、私は濡れた髪の毛を掻き分け、エメラルド色に光る角を見せた。
「えぇ。そうね、あなたはどこから見ても、私たちと同じ魔族と思うわ。」
「でも、まるで、貴方は人間みたいよ?人間と魔族の違いについて話す時、貴方、魔族らしくないことばかり喋るし」
「普通ね、魔族は感情がわかるなんてそうそう言わないわ。やっぱり異物感みたいなもの、絶対に分かり合えないものがあるものよ。たとえ、人間と長い間付き添っても。」
「貴方が人間の感情はわからなくもない、って言った時は驚いたわ。そして、魔族がどんなものかも知らない貴方に、私たちのことを教えた時の、あの時のあなたの怪訝そうな顔...私の友人に見せたかったな」
ソリテールが妙に興奮して話すのをよそに、私を服を着て、帰る準備をし始めた。持ってきた古い服を洗い始めた。
「あんまり私のお話には興味が無いのかしら?ねえ、貴方は、私が魔族と人間の共存を望んでいると言ったら、どう思う?」
ジャバジャバと、ゴシゴシと服を洗う。3着ぐらいしか服は持ってきていないため、すぐ終わりそうだ。
だが、私はあえて服を必要以上に洗う。ソリテールの言葉をかき消すように、彼女の言葉にのめり込みすぎないように。彼女のおぞましい顔を見ないように...
私はそっけなく答えた
「人間と魔族、それぞれが違う場所で、住み続ければいいと思うよ。」
ソリテールは私がそう言うと、満足したのか私の前から立ち去った。
私は歩きながら考える。私は未だに彼女のことがわからない。なぜ、あんなにも魔族と人間の共存について話すのか、なぜ、私を変な魔族と思うのか。
いや、彼女の言っていることは間違いでは無いのだろう。私は彼女以外の魔族と出会ったことは無いが、彼女みたいなのが魔族だとするならば、私は、確かに変な魔族なのだろう...
帰る道は昇る太陽の光で照らされていた。道の先は、埃にまみれたガラスのような、そんな街に繋がっていた。
起きた頃には、既にお昼を回っていた。仕事終わりは体を休ませるために長時間寝ることにしている。
寝る前に少し読んだ本が開かれたままになっていた。
体を起こして、伸ばすと、私はその本の続きを読もうとした。
頭に入らない。私が読んでいる本は、私が大好きなサスペンスものなのに、文字がするりするりと流れていくだけだ。
こういうとき、私は頭をかなり使う本を読むことにしている。そうしたら集中せざるを得ないからだ。
この間、図書館で借りたかなり、古く分厚いぼろぼろな『魂の魔法』という魔法書を読む。
...毎度、思うが、あの図書館にある魔法書はあまりにも多種多様で、良質なものが多いように思える。ある本には、内容が不確かな、または嘘っぱちと言っていい魔法書が多くて困る、みたいなことが書かれていたが、私の経験上、そのような事はあまりない。
今度、あの図書館自体について、あの男に聞いてみようか。
それにしても、「魂」か...本には死者復活の魔法などがあった。正直、かなり胡散臭そうである。まぁ、あまりないと言っただけで、この本のようにデタラメな本もある。
だが、その中の一節に私は目をひかれた。そこにはある魔法が書いてあった。
「魂を転生させる魔法」
私はポツリとそう呟いた。
魔法は発動しなかった。というより、書かれている内容は「枝を踊らせる魔法」の亜種みたいなものに過ぎなかった。
魔法はイメージの世界だが、当然、そのイメージを支える骨格みたいなものが必要になる。魔法陣とかの図形はその例だ。
だから、ただイメージだけで魔法ができるという訳では無い。
だが、私にはなんとなく、「魂を転生させる魔法」が使えるような気がしたのだ。
あの晩、ソリテールは私を魔族らしくないと言った。そして、私はたびたび自分以外の誰かの意識が、近くにあるような気がしていた。
交尾の時に感じる、あの気持ち悪さがその初めだったような気がする。あとは醜い人間どもを癒した時の、あの胸がほっとするような、奇妙な感覚、どれもが異質であるが、どれもが馴染み深いような感じがしていた。
あの時のソリテールとの会話は、どうも私に大きな影響を与えたらしい。私は、仕事以外のときは、魔族や人間ついて研究するようになった。
色々と私の疑問点や違和感、そしてソリテールとの会話を辿りながら、熱心に私は研究した。
偶にソリテールと会話したいと思ったぐらいには。だが、ここ数ヶ月、彼女は私の前に姿を現すことはなかった。興味を無くしたのだろうか。まぁ、やはり彼女と遭遇することがないことはいいことだろうと思う。
そして、1つの予想ができた。
もっとも、この予想を証明することは限りなく難しいだろう。あんな魂の魔法と偽ったものではなく、本物の「魂の魔法」が必要になるからだ。しかも、もしこの予想が正しいものだと証明できてしまったら、私は...
とりあえず、私はこの予想を紙に書いて留めておくことにした。
それが、どんなものであろうとも、考えるだけなら別にいいだろうと思った。
魔族はその長い寿命(あるのわからないが)で、何か一つの魔法を極めあげるらしい。だが、私はそんな恐ろしい魔法とかではなく、ちょっとした回復魔法と、色んな生活魔法使えればそれでいいのである。
平穏が1番だ。
私は予想を紙に書いたあと、その紙を『魂の魔法』の適当なページに挟んだ。
「
予想
魔族は死産の子の魂が元になっている。
」
フェーラァちゃんは、男と交尾することに対しては気持ち悪さしか感じていません。まぁ正直それだけです。そして、仕事上、女とするときには気持ち悪さを感じていません。なんででしょうね。