※この作品はR-18です。

エンゲージリング   作:伊駒辰葉

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エロシーンはありません。
フリはあるんですけどもw


エンゲージリング 20

 変だな、と真也は呟いた。耳ざとくそれを聞き取ったらしい。立城が不思議そうに真也を見る。

 

「ん、ちょっとな」

 

 言葉を濁して真也は改めて立城を見た。身体の線を殺さないよう気遣われているのだろう。肩から胸、腰のラインがはっきりと出ている。膝丈のスカートの裾はふわりと広がり、柔らかなイメージを生み出している。それが立城の顔立ちととてもよく似合っているのだ。

 

「どうもありがとう。真也」

 

 にっこりと笑って立城が礼を言う。真也は我に返って慌てて頷いた。ワンピースをまとった立城はどこからどう見ても女にしか見えない。女の身体になっているのだから当然と言えば当然なのだが、元々が男であったことすら忘れてしまうほど、真也の目には立城が魅力的に見えたのだ。

 

 見とれてたなんて言えるかよ。真也は憮然とした顔を作って立城から目を逸らした。相当に嬉しいのか、立城はその場でくるりと回ってスカートの裾を翻した。目の端にスカートを捉え、真也はのろのろと顔をあげた。そこで笑みを浮かべた立城と目が合ってしまう。

 

「そっ、それよりどっかきついとことかないのか?」

 

 無意識のうちにせりふが棒読みになってしまう。だが立城はさして気にも留めなかったのだろう。胸や腰を一通り触ってから首を振る。

 

「ううん。平気だよ。下着も服も丁度いいよ」

「へえ……。下着はともかくワンピースがそこまで合うとはなあ」

 

 そう言ってから真也は下着と服を手に入れた経緯を話した。ある程度は知っていたらしい立城も、麗花がワンピースを譲ってくれた辺りのくだりになるとさすがに驚いたようだ。目を見張って自分の姿を見下ろす。

 

「もしかしてこれ、真也の彼女にサイズを合わせて注文したんじゃないかな」

「は?」

 

 まさか、と笑って真也は立ち上がった。だが真也は内心では立城の言ったことも一理あると思っていた。麗花は派手ないでたちからは想像しにくいが、とても人に気を遣う性格をしている。きっと麗花はホテルに向かう道中の真也に会った時のことを気にしていたのだ。

 

 麗花も真也もあの場で会ったことは気にしていない。あの界隈で顔見知りに遭うことはそんなに珍しくないからだ。特に麗花は商売柄、あの手の場所によく出入りしている。そうなるとどうしても知った人間に遭遇する確率が上がるのだ。

 

 だが美鈴は違う。真也を相手に処女を捨てようとしていたくらいだから、当然、ホテルに入るのも、あの界隈に近づくのすら初めてだっただろう。そんな場所で別の、しかも真也の知り合いらしい女と会ったのだ。気にしないはずはない。

 

 美鈴の体型は麗花より立城に近い。目分量で測ったためもあるだろう。服は偶然にも立城にぴったりのサイズになっている。が、麗花は本当は美鈴に贈るためにわざわざ服を仕立てたのだ。

 

 そこまで考えて真也はため息をついた。麗花には申し訳ないという気持ちでいっぱいだが、美鈴に対してはうっとうしいとしか感じない。疲れた息を吐いた真也を立城が呆れたように見る。

 

「仮にも彼女なんだから」

「彼女なんかじゃねえよ。したそうに寄って来たから何となく付き合うことにしただけだ」

 

 思考を勝手に読まれていたことを突っ込む気にもならず、真也は低い声でそう告げた。立城は何も返事をせず、ただじっと真也を見つめている。真也は舌打ちをして立城の脇を過ぎた。待つように言い置いて自室に入る。

 

 美鈴は体型だけでなく面差しも立城の雰囲気に近い。顔立ちはもちろん全く違うのだが、柔らかいイメージが似ているのだ。だから麗花はワンピースをあの色とデザインに指定したのだろう。

 

 だが立城が女性の身体になったのは美鈴と事を終えた後だ。だから違う。真也は自分の考えを内心で否定しつつ机に近づいた。折角の楽しい気分が台無しになった気すらしてくる。

 

 引出しを開ける。ピンク色のケースを取り出して真也は部屋を出た。リビングに戻ると立城は大人しくさっきの場所に立っていた。

 

「そういえば気になってたんだけど」

 

 戻ってきた真也に立城が困ったように笑いながら声をかける。何だ、と無愛想に答えた真也に立城が続ける。

 

「うん。ショーツがないのはどうしてなのかと思って」

「ああ、あるぜ」

 

 そう言いながら真也はジーンズのポケットを探った。小さく丸められたショーツを取り出す。安心したように立城が伸ばした手を避け、真也はショーツをポケットに戻した。

 

「何で納めるの」

 

 軽く真也を睨みながら立城が腕組みをする。背中に回していた手を出しながら真也は小さく笑った。ピンク色のケースを立城の目の高さにかざす。それを見た立城が息を飲んだ。

 

「まさか」

「折角きれいなカッコしてるんだからさ。出かけようぜ」

 

 そう言いながら真也はソファに残っていたビニールの袋を取り上げた。麗花に選んでもらった染髪料を取り出す。唖然とする立城を横目に真也は笑って見せた。

 

「とりあえず髪は何とかしなきゃな。あと角もか。ま、そっちは帽子で隠せばいいかな」

 

 沈んでいた気分が徐々に浮上する。真也は見た目にもはっきりと楽しそうにしていた。立城が眉を寄せて深々と息をつく。呆れているらしい。

 

「せっかく下着と洋服がコーディネートされているのに……帽子?」

「心配するな。帽子も買ってある」

 

 手にしていたものをソファに投げて真也は立城に近づいた。すっかり諦めたらしい。立城は大人しく真也に背を向ける。手早く立城の服を剥ぎ取り、真也は早速バスルームに向かった。




若い男の子なので!
いやまあ、二人とも人間かどうか微妙なんですけど……。
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