紫の髪が焦茶色に染まる。染髪料を使い切ったところで真也は再びリビングに戻った。頭にタオルを巻いた格好で立城がそれに続く。下着を着けた立城をソファに座らせてドライヤーを髪に当てる。真也は先ほどまでの不快感をすっかり忘れ、立城の髪を乾かすことにしばし専念していた。
ワンピースを纏った立城が静かに真也の正面に立つ。不安そうな顔をする立城に真也は笑いかけた。
「だーいじょうぶだって。んな、緊張しなくても」
「……全く、ろくなことを考えないね、真也は。どうして昨日の今日でそんな元気があるの」
どうやら麗花とホテルに赴いたことを揶揄されているらしい。真也は苦笑しながらピンク色のケースを開けた。立城の前に片膝をついて座す。
「ほら、スカートあげて足開け」
言われるままに立城がスカートをたくし上げる。軽く開いた腿の間に手を忍ばせ、真也はひっそりと笑った。下から上に向かって腿を撫でる。
「何だ。濡れてるじゃねえか」
股間に触れた真也はそう言って立城を見た。立城は唇を軽く噛んで横を向いている。その頬が微かに赤くなっているのを真也は見逃さなかった。恐らく何をされるかを予想した段階で身体が反応し始めたのだ。いい傾向だな、と内心で呟きながら真也はするりと指を滑らせた。
「あっ」
掠れた声を上げて立城が小さく震える。滲んだ愛液が垂れて流れないうちに真也は指を膣口に入れた。膣内で軽く指を動かす。感じ始めて間もないためか、分泌された愛液の量はさほどではない。
「あ、う、動かさないでっ。汚れちゃうよ」
立城は苦しそうに言いながら嫌がるように首を振った。時折、ベルトを巻いた下腹がひくつく。真也は立城の反応を見ながら膣内をしばらく弄った。
「よし。中でもきっちり感じるようになってんな」
頷いて指を引く。指が抜けた瞬間、立城はぶるりと身を震わせた。それを横目に笑いながらティッシュで指を拭う。だが立城はそんな真也を見ているだけで文句は口にしない。
「抵抗しないって約束だもんなー」
「そうだね」
笑い混じりの真也の言葉に立城が静かに応える。だがその頬はまだほんのりと赤く染まっている。喉の奥で笑いながら真也はケースからローターを取り上げた。指で陰唇を割り開いてローターを膣口にあてがう。
「あっ、くぅ」
眉を寄せて立城が声を漏らす。真也は股間を覗きこみながらしかめ面になった。どうやらまだ完全に開ききっていないらしい。ローターは膣口に挟まったところで止まっている。試しに指で軽く押してみるが、動かない。無理やり入れることは出来るかも知れないが、そんな真似をすれば膣内が傷付く可能性がある。
「仕方ないな。そこに座れ」
「え」
立城は驚いたように声を返したが、すぐにその場に腰を下ろした。スカートを踏まないように注意しながらじゅうたんの上に座る。膝を折り、足を開いた立城の秘部が丸見えの状態になる。
「うお、勃っちまった」
「えっ!?」
つい正直に告げた真也に立城が慌てたように声を返す。その反応が面白くて真也はしばらくくすくすと笑った。股間を隠そうとした立城の手を握る。
「心配しなくても挿れやしねえよ。ほら、手どけろ」
「う、うん……」
恐々と立城が手から力を抜く。真也は立城の股間に手を寄せ、膣口に挟まったローターを軽く指先で弾いた。途端にびくんと立城が身体を震わせる。
「あ、わりい。響いたか」
「もう。わざとでしょ」
「んでもさっきよか緩んでるだろ? ほーら、入った」
ローターを膣内の奥に押し込みながら真也は立城を伺い見た。これ以上、感じまいとしているのだろう。立城は目を閉じて唇を噛んでいる。だがそれは逆効果だ。視界を閉ざせば嫌でも感覚は鋭くなる。真也は口許を嗤いの形に歪め、じりじりと指を膣の奥へと進めた。
細いコードの先についた小さなコントローラーを微振動にセットした状態でストッキングのベルトに挟む。立城はそこで焦ったように目を開けた。
「ま、まさかこのまま?」
「そりゃ当然。おっ、帽子も被んなきゃな」
戸惑う立城をリビングに残し、真也は自室に入った。帽子の入った箱を取り上げる。もしかしたら立城が拒絶するかも知れないと帽子だけはリビングに残しておいたのだ。だが立城はどうやら髪を染めたり角を隠したりということに抵抗はないようだ。ほっと息をつきながら真也は部屋を出た。
立城がいつの間にか立ち上がっている。元通りにワンピースの裾が降りると股間の様子は綺麗さっぱり隠れてしまう。傍目にはごく当り前の姿にしか見えない。だがその実、立城の膣内にはローターが入っているのだ。それを思った真也の背にぞくりとした快感が走った。
「ほら、帽子。あとな、これと」
帽子の入った箱と丸めたショーツを渡してから真也は再びビニール袋を取った。目的のものを出して立城に差し出す。真也が帽子の箱の上に追加で置いたそれは生理用ナプキンだった。
「こっ、これをまさか僕に着けろって言うの!?」
「だってさー。あるってるうちに愛液だらだらになんの、目に見えてっじゃん。服、汚すの嫌なんだろ?」
「で、でも」
服や下着はともかく、生理用品には抵抗があるらしい。困惑する立城に真也は拗ねてみせた。抵抗しないって言ったじゃん。何度かそう言うと立城はやがて諦めたように肩を落とした。
箱に入っていたのはつばのついた帽子だった。それをかぶってしまうと立城の角は完全に隠れる。しかも麗花に見立ててもらっただけに服によく似合っている。トータルで見るとさながらどこぞのお嬢様といった態だ。だがそのお嬢様な格好をした立城はショーツと生理用ナプキンをそれぞれの手に持ち、しばし動きを止めた。
「んあ? なんだよ。まだごねるのか」
「違うよ。どうやって着けるのかと思って」
どうやら生理用ナプキンの入ったビニール袋に書かれている説明を読んでいるらしい。早く連れ回そうと気が急いていた真也は立城の手から生理用ナプキンを奪い取った。指で強引に袋を破って中身を取り出す。
「うわ、ちっちゃ!」
「へえ。初めて見たけど、小さいものなんだね」
小分けにされたナプキンを片手に真也はまじまじと立城を見た。ローターを仕込まれている割には平然としているように見える。試しに、と真也は立城の尻をするりと撫でてみた。その途端に立城が息を飲んで声を殺す。どうやら感じていない訳ではないらしい。そのことを確認した真也はにやにやと笑った。
「もうっ。いいから貸して」
今度は立城が真也の手からナプキンを奪い取る。小分けにされたナプキンはビニールのシートに包まれている。シートを剥いた立城はそこでまた手を止めた。
「……なんだ? テープ?」
「そうらしいね」
ナプキンの片面には接着力のあるテープが付けられている。もう片面には何もない。真也はしばしナプキンを睨むように見つめ、ぽんと手を叩いた。
「テープでアソコに貼るんじゃないのか?」
「……そんな真似をしたら痛いと思うよ。局部にテープなんて貼らないよ、普通」
「……じゃあ、どうするんだ」
そんなこと知らないよ、と呟いて立城は床に手を伸ばした。真也が放り投げた生理用ナプキンのパッケージを取る。説明部分を読もうとした立城が眉を潜めてため息をつく。どうした、と問いかけた真也の目の前にパッケージが突き出される。何も考えずに破ったために説明部分は無残に裂けていた。しかもビニールなだけに裂けた部分が不規則に伸びている。印刷された文字は伸びきって、その部分に最早なにを書かれていたのか判らない。
やれやれと呟いて立城がショーツを広げる。股布の部分にナプキンを貼り付けたのを見て、真也は思わず感嘆の声を上げた。
「ショーツに挟むんだから、テープを貼り付けるのは局部かショーツの股部分のどちらかでしょ?」
そんなに感心するほどのことじゃないよ。そう付け足して立城はショーツに足を通した。片足を上げた時、ふとその顔が歪んだのを真也は見逃さなかった。唇で嗤いながらのんびりと立城を見やる。いつもよりゆっくりした動きで立城はショーツを身につけた。
ナプキンの謎。
男子には未知の世界では、と思ったので書いた記憶があります。