早起きをしたおかげで時間はたっぷりあった。真也は立城の手を引いてまずはバスに乗った。ローターのせいで大きく動くことが出来ないのだろう。立城は時折、足を止めかける。だが真也は問答無用で立城の手を引っ張った。
平日の昼間ということもあってか、バスの中には人は少ない。座席に着く時にも立城の様子はいつもとは違っていた。息を殺し、俯きながらそっと腰掛ける。そんな立城の隣に陣取った真也はわざと乱暴に腰を下ろした。ボックス席のシートが大きく揺れる。目を見張って息を詰めた立城を余所に、真也は腕を伸ばして立城の肩を抱いた。しっかりと腕で肩を抱えると、立城の身体の震えが直に伝わってきた。
「あんだよ。もう駄目なのか?」
「違うよ」
立城は即答してみせたがまだ俯いている。真也は帽子のつばを指で押し上げ、立城の耳に唇を寄せた。
「座ると響くんだろ」
真也が囁いた途端、立城がびくりと身体を震わせた。ローターの振動は極小にセットされている。が、座る体勢になると膣内が尻の肉に押されて潰れ気味になる。狭い膣の中に仕込んでいるのだ。肉を伝ったローターの振動が、立っている時より如実にクリトリスに伝わるのは目に見えている。
目的地は街の中心地だ。立城の耳元に散々に嬲る言葉を浴びせてから、真也はバスを降りた。半ばふらつきながら立城もバスを降りる。改めて立城の手を引こうとした真也は妙な感触があることに気がついた。
「んー?」
眉を寄せて手を持ち上げる。握った立城の左手の薬指にはくたびれ果てたばんそうこうが貼られていた。
「あ、これ、この間のか」
「うん……まだ傷が完全に消えてなくて」
俯きがちに立城が答える。真也はしばし立城の手を見下ろしてからため息を吐いた。別に金に困っているわけでなし、新しいのを貼ればいいだろう。そう告げた真也に何故か立城は答えない。怪訝に思いつつも真也は立城の指からばんそうこうを剥がし取った。現れた白い指の根元に切り傷がある。
「血は出てないな、さすがに」
「……うん」
小声で答えた立城を見つめ、真也は唐突に方向を変えて歩き出した。慌てた声を上げて立城が真也を追う。手を繋いでいるために半ば引っ張り回されているという感だ。だが真也はそんな立城を振り返りもせずに一直線に目的の店に向かった。
人通りの激しい道の端に建つコンビニエンスストアでばんそうこうを買う。道に出た真也は箱を開けて真新しいばんそうこうを一枚取り出した。
「ほら、手だせ」
「あ、うん」
言われるままに立城が左手を出す。真也は無言で薬指の根元にばんそうこうを巻きつけた。絞め過ぎないように注意しつつばんそうこうを留める。
「出来たぞ。ったく、これっくらいの傷、消せるだろが」
小声でそう告げてから真也は改めて周囲を見た。行き交う人々を眺めてから立城に目を戻す。立城は左手を大事そうに右手に包み、じっと手を見下ろしていた。
「治癒に力を割いたら戻るのが遅くなるから」
「ふうん」
そんなもんかね、とぼやき気味に呟いた真也の手を立城が取る。どこに連れて行ってくれるの、と微笑む立城に真也は思わず見入ってしまった。周囲を行く人々に比べても立城はやけに整った容姿をしている。だが真也が見とれた理由はそれだけではなかった。
なんか変な感じ。胸中で呟いて真也は歩き出した。
「余裕あんじゃんよ。じゃあ、のんびり買物にでも行くか」
丁度欲しいもんあるしな。からかい気味にそう言いつつも真也は納得できない何かを胸に抱えていた。
時折、垣間見える立城の苦しむような表情に満足感を覚えつつ、真也は色んな場所を歩いた。映画に本屋、喫茶店にレストラン。ウィンドウショッピングを混ぜながら真也は立城を連れまわした。そのうちに段々と立城の口数が少なくなる。
「元気ないなあ。どした?」
理由ははっきり判っていたが、真也はわざと意地悪くそう訊ねた。立城が何でもないと首を横に振る。真也はにやりと嗤って立城の手を握っていた手を解き、細い腰を抱いて身体を寄せた。腕の中でびくんと大きく身体が震える。息を詰めた立城が微かに呻いた。
「いったな?」
「う……うぅ」
力なく呻いて立城が小さく頷く。俯けていた顔を上げ、立城は潤んだ眼差しを真也に向けた。賑やかな周囲の人々の声や明るい店内の音楽が遠くなる。真也は魅入られたように立城を見つめた。甘く強い快楽が身体の奥からこみ上げてくる。だが真也は欲求を必死でねじ伏せた。
「もう……駄目……。真也」
掠れた声で囁いて立城が真也に寄りかかる。デパートの中を行き交う人々には仲のいいカップルと映るのだろう。誰も二人を気に留めない。真也は素早く周囲を見回してから立城に首を振った。
「もうちょっと我慢しろ」
そう言い置いて真也は早足でデパートの地下から抜けた。肩を抱いて歩く立城は殆ど真也にすがりついている。地上に出た二人は人の波をかき分けるようにして駅方面に向かった。
街の中心である駅は周辺地区より一際混雑している。特に夕暮れ時の駅内は仕事帰りの人々が多く行き来しており、気をつけて歩かなければすぐに人にぶつかってしまう。真也は幾分か速度を落としてゆっくりと人の間を抜けていった。俯いた立城がよろけつつ真也の脇を歩く。無意識なのだろう。時折、苦しそうに顔を歪めてはため息をつく。すっかり蕩けた膣内の様子を想像しつつ、真也は口許に嗤いを浮かべた。
まあ、エロいのは真也だと思うんですけどね!w