でも今までの話を考えるとエロシーンにカウント出来ない気がします(汗)
その日は昨日までの天気が嘘のように朝から暗く曇っていた。分厚い雲からは今にも雨が落ちてきそうだ。真也は窓の向こうの空の様子をぼんやりと眺めていた。
結局、前の晩に我慢出来ずに二度ほど立城を抱いた。疲れているだろうに立城は一切抵抗しなかった。だがやはり体力を相当に消耗したのだろう。事を終えた後、立城は真也のベッドでそのまま眠ってしまった。
隣に眠る立城の横顔をしばし見つめ、真也はそっと息をついた。布団からはみ出している肩は細い。毛布を引き上げながら真也はまた窓の外に目を移した。
今日で五日目だ。初めて立城が女性になった日のことを思い出しながら真也はゆっくりと指を折って数えた。一週間すれば元の男の姿に戻れるのだと立城は言っていた。それが本当だとするとあと二日もすれば立城の身体は元通りになるのだろう。
不意に立城が身じろぎする。立城は真也の腕を枕にして眠っている。寝返りをうった立城をじっと見つめ、真也は口許を少しだけ緩めた。
疲れてるからやだって言えよ。欲望を堪えきれずに立城を抱き寄せつつも真也は心の底ではそう思っていた。そうすれば止めるのに。だがそう思っている時に限って立城はやめてくれとは言わないのだ。切ない目をしていた立城のことを思い出して真也はそっと息を吐いた。
人が聞いたら不道徳だと言われるだろう。真也と立城は紛れもなく血の繋がった兄弟だ。例え立城が人ではなかったとしても、元々は同じ親から生まれている。そして今は姿を変えてはいるが、立城は元は男なのだ。ぼんやりと考えを巡らせながら真也は何気なく立城の頭に手を伸ばした。茶色に染めた髪の間に小さな角が覗いている。角を指でそっと撫ぜて真也は静かに立城の髪に唇を寄せた。
最初は気心の知れた相手だからだと思っていた。これまで得たことのない満足感を得られたのも、何もかもが判らなくなるような快楽を得られたのも、全ては気兼ねしなくていい立城が相手だからだと思っていた。
違う、と真也は小さく呟いた。伸ばしていた左腕を持ち上げ、両腕でそっと細い身体を抱きしめる。熟睡しているのか立城が起きる気配はない。真也はしばらく立城の髪に顔を埋めて息を潜めていた。立城の髪や身体からはいつもほんのりとしたラベンダーの香りがしている。その香りを静かに吸い込む。
立城が目を覚ました時、真也は既にベッドを出ていた。
「あ……れ? 真也?」
掠れた声で立城が呼ぶ。ベッドに寄りかかって本を読んでいた真也はその声に腰を上げた。
「おう。目が覚めたか」
「珍しいね。僕より早起きなんて」
そう言って立城が微笑む。うっとりとした顔つきに見えるのは寝起きだからだ。そう自分に言い聞かせて真也は無言で頷いた。
朝食はトーストにハムエッグ、野菜サラダ、コーンスープだった。ありあわせで作ったからとはにかむ立城に首を振り、真也は黙々と朝食を片付けた。新聞を片手で広げて記事を斜めに読む。いつもより無口な真也に気を遣ったのか、立城も余計なことは喋らなかった。
洗濯に掃除と朝から立城は目まぐるしく働く。家事をしている立城をまじまじと見るのは初めてだ。真也はリビングで本を読みながら時折立城の姿を目で追った。立城は相変わらずシャツ一枚で家の中を歩いている。よほど注意しようかと思ったがやぶへびになりそうなので止めた。
真也の視線に気付いているのかいないのか、立城はいつものように洗濯と掃除を済ませてリビングに戻ってきた。立城がリビングに姿を現したと同時に真也は本を閉じて立ち上がった。不思議そうに立城が真也を目で追う。リビングのドアのところまで移動してから真也は振り返った。
「昨日の服、クリーニング出すだろ?」
「あ、うん」
それだけの受け答えの後、真也はリビングを出た。ワンピースは寝室の椅子にかけてある。立城の寝室に入った真也はワンピースを手にしたところで動きを止めた。乱れていたベッドシーツはきっちりと張り替えられている。並んだ二つの枕のカバーまで新品同様だ。真也は何気なくシーツに手を伸ばしかけて慌てて自分を制した。無意識のうちに立城の気配を求めてしまうのが嫌でも判る。小さな舌打ちをして真也はワンピースをさらうように取り上げて寝室を出た。
所在なげに佇む立城と出くわす。驚いて目を見張った真也を立城は物問いたそうに見つめていた。上目遣いの表情を見止めた途端、真也の心臓は大きく跳ね上がった。必死で自制するが鼓動がどんどん速くなる。
「もしかして僕、何かまずいことでもしたかな」
途惑いがちに見上げる立城から目を逸らして真也は舌打ちをした。自分が原因で真也の機嫌が悪くなっていると勘違いしたのだろう。立城がごめんと小声で詫びる。それを聞いた真也は歯を食いしばって俯いた。
何も考えずにいれば良かったのかも知れない。好き放題できると単純に喜んでいればよかったのだ。
「えっ」
立城が焦った声をあげる。真也は手にしていたワンピースを床に放り出し、立城を抱き寄せた。驚いたのか立城は身動き一つしない。
「ちくしょ……何でだよ」
「……真也? どうしたの、一体」
苦悩に呻いた真也の背を立城が優しく撫でる。だが真也は質問には答えなかった。立城を片腕に抱いて寝室のドアを開ける。真也は大股で寝室に入ると立城を両腕に抱え上げてベッドに放り投げた。クッションの効いたベッドの上で立城の身体が軽く弾む。
真也が珍しく葛藤してますw