疲れ果てた二人はその日、夜まで眠っていた。先に目を覚ましたのは真也だった。腕の中で眠る立城を軽く揺する。立城は瞼を擦りながら弱々しく笑った。
「おはよう」
「おはよーはねえだろ。夜だぞ、もう」
苦笑しながらそう返して真也はベッドを降りた。体力を相当に消耗したのか立城の足元はふらついている。真也は立城を支えながらゆっくりとバスルームに向かった。
立城の身体を優しく洗い流しつつ真也はふと訊ねた。
「なあ……。こんな疲れてるのに元に戻れんのか?」
「あ、うん。大丈夫。それは」
そう答えた立城の背中をスポンジで擦りながら真也はこっそりとため息をついた。もちろん、立城が男に戻っても交わることは可能だろう。だが形のいい乳房や女性器は失われてしまう。
それから二人は殆ど口を利かなかった。真也は口を開けばこのままでいろと言ってしまいそうで口を閉ざしていた。風呂から出た時点で深夜近くなってはいたが、立城はいつもと変わりなく料理を作り、二人で向かい合って食事をとった。
丸い月が天頂に差し掛かる。せめて戻る前に一緒に寝たいと思い、真也は自分の寝室に立城を招きいれた。立城も大人しく真也に従ってベッドに入る。真也もベッドに入って立城を腕に抱いた。
眠ってしまうのが勿体無くて真也は眠気を我慢した。窓の外の月を時折眺め、真也は何度目かの欠伸を噛み殺した。その時、腕に抱いていた立城がふと顔を上げた。
「……なんだ。起きてたのか」
「うん」
頷いて立城が真也の首に腕を回す。軽く口づけを交わしてから立城は小声で告げた。
「記憶、うつしてなかったから」
「あ、ああ。そっか。言ってたっけ」
初日のことを思い出して真也は答えた。記憶を写すのはいつもしていることだ。特に気構えすることはない。だがこの時の真也は嫌な予感を覚えてすぐには頷かなかった。立城はじっと真也を見つめて黙っている。
「写すだけだよな」
「そう、うつすだけ」
訊ねた真也に立城が頷く。そうだ、何も気にすることはない。立城に外の情報を写し取らせるのはいつもしていることだ。問題はどこにもない。理由の判らない不安を抑えて真也は判ったと頷いた。
目を閉じる。いつものように口づけを待っていた真也の耳に微かな呟きが届く。だがそれが何かを聞き取る前に、真也の唇に立城の唇が触れた。唇を開いた立城が真也の口の中に舌を入れる。真也もそれに応えて立城と舌を絡ませた。
不意に強烈な眠気に襲われる。違和感を覚える間もなく、真也は眠りに落ちていった。
すみません、短いですね!(汗)