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小さなエレベーターに乗り込んで三階に向かう。真也は美鈴の肩をしっかりと抱いて目的の部屋に入った。内側から鍵をかけて灯りを点ける。すると美鈴が感嘆の声を上げた。
「すっごーい。きれい!」
「そりゃあ汚いとこですんの、やだし」
思わず本音を言ってしまってから真也は美鈴の様子を伺った。だが美鈴は部屋を探検するのに忙しいらしい。さっさと部屋の奥に入ってしまう。やれやれと肩を竦めて真也も廊下の奥に進んだ。
靴音が響くリノリウムの床を真也は何気なく見下ろした。白と黒のチェックボードのような床は磨き抜かれている。下手をすると鏡のようにスカートの中まで覗けてしまいそうだ。天井にはこちらは本物の鏡が全面に張られている。ベッドはダブルサイズよりも若干広いかも知れない。真新しいシーツのかけられたベッドに早速上って美鈴は枕元を珍しそうに見ている。
「なに、これ」
「あー、有線だよ。有線放送。知らないか?」
言いながら真也は片手を伸ばして枕元のスイッチを操作した。歌謡曲や演歌、ジャズ、クラシックとチャンネルごとに違う曲が流れる。それが何故か面白かったらしく、美鈴はしばらく嬉しそうにチャンネルを回していた。
ベッドの側にはテーブルと椅子が置かれている。こちらもやはり白と黒のツートンカラーでデザインされたものだ。真也は椅子に腰を下ろして美鈴を眺めた。四つんばいの格好でベッドに上っていることを美鈴本人は自覚していないらしい。短いスカートからは下着が覗きそうだ。
美鈴は春らしい明るい空色のニットスーツを身につけている。ぴったりとしたデザインだからなのか、身体の線は制服の時よりもはっきりと判る。髪はいつものようにポニーテールにされているが、結んでいるのは見慣れない青いリボンだ。きっと新調したに違いない。首筋から背中、くびれたウエストから丸みを帯びた腰を見たところで真也は薄い笑みを口許に浮かべた。美鈴が一体、どんな反応をするのかに多少の興味が湧いたのだ。
白いストッキングに包まれた腿が少し動く。美鈴が手を伸ばして有線のチャンネルをいじったのだ。そしてその手が枕元に置かれた別のものに伸びる。こっそりと音を立てないようにしている美鈴を眺めながら真也は軽く笑った。慌てたように美鈴が振り返る。その手にはきっちりとコンドームが握られていた。
「備え付けのだろ? んな、珍しいか?」
「だ、だって! 見たことないし!」
既に美鈴の顔は真っ赤に染まっている。大事そうに両手に握ったそれをまた枕元に戻す。今度は美鈴はベッドを降りて壁際に歩み寄った。大きなテレビが備え付けられている。だが美鈴の目的はテレビではなかったらしい。その隣に置かれた棚状の自動販売機を不思議そうに見つめている。
まるで玩具でも見つけた子供だな。最初にこの部屋を訪れた時、真也も今の美鈴と同じように部屋中を探索した。その時に一緒だったのがさっき会った麗花だったのだ。麗花は面白がって色んなものを触る真也を子供みたいだと笑った。
あの時の麗花さんがこんな気分だったのかな。そんなことを思いながら真也は椅子を降りた。足音を殺して美鈴に近づく。美鈴は真也が近づいていることに一向に気付かず、熱心に自動販売機の小窓を覗いている。
「色んな道具が入ってっだろ?」
「ひゃっ!」
慌てた悲鳴を上げて美鈴が振り返る。真也は美鈴を胸に抱きこむ格好で壁に腕をついた。美鈴の細い肩に顎を乗せて自動販売機を覗き込む。密着すると美鈴の心臓の鼓動までが感じられそうだ。それほど美鈴は身体を強張らせている。
「大崎。下着とか持ってきたか? なかったら買ってやるけど」
「いっ、いい! あるから!」
「もしかしてめちゃくちゃ緊張してないか?」
美鈴の声は完璧に裏返っている。真也はくすくすと笑いながら両腕をゆっくりと美鈴の胸に回した。緊張に強張った美鈴の身体を柔らかく抱きしめる。自動販売機を覗くために美鈴は腰を屈めている。その姿勢のまま、美鈴は半ば硬直していた。
剥き出しになった首筋に唇をつけて深く息を吸う。ごく微かに残った石鹸の香りに目を細め、真也は美鈴のうなじに唇を押し付けた。美鈴が息を飲んでぴくりと震える。
「あの! お風呂! 入ってもいい!?」
裏返った声で美鈴が訴える。真也は顔を上げて美鈴を解放した。笑いを浮かべて顎をしゃくる。それまで硬直していた美鈴は呪縛がとけたように身を翻した。ベッドに放り出していた鞄を片手に別のドアに向かう。
「そっちはトイレ。シャワーは向こうだ」
「えっ、あ、そ、そうなの?」
トイレのドアを開けかけていた美鈴が慌ただしくバスルームに向かう。美鈴がバスルームに消えるのを目で見送ってから、真也はおもむろに部屋を横切った。丁度、この部屋のサイズは真也の私室と同じ程度だ。なのに大きなベッドがあるためか、自分の部屋よりは少し狭く感じられる。何しろ真也の寝室は自室とはまた別にあるのだ。ふうん、と呟きながら真也は天井を見上げた。
部屋のサイズを目で測るには天井を見るのがいいんだよ。いつか聞いた立城の言葉を思い出しながら真也は納得して頷いた。確かに家具などがない方が部屋のサイズがわかりやすい。
そうしている内にバスルームからは水音が響き始めた。真也は部屋の隅のカーテンのかかっている場所に向かった。部屋のデザインに合わせた黒いカーテンを無造作に引く。すると硝子張りになったバスルームが現れた。
「覗けるようになってるんだが……言ってなかったな、そいえば」
意地の悪い笑いを浮かべて真也は大きな硝子窓から美鈴の様子を眺めた。まさか真也が見ているとは思っていないのだろう。美鈴はシャワーの下に頭を突っ込んで髪を洗っている。
「82のBってとこか? ウエストは……思ったよりけっこう肉ついてんなあ……。65かな? ヒップはまあ88ってとこだな」
安産型、と呟いて真也はにやりと口許を歪めた。髪をすすぎ終えた美鈴は今度はタオルを片手に身体を洗い始める。バスルームからこの窓は鏡にしか見えない。壁一面の鏡を奇妙に思っただろうが、美鈴自身は覗かれていることには気付いていないのだろう。大胆に股間にタオルを持った手を突っ込んでいる。
「おーお。豪快だなあ。ま、よく洗ってくれた方が俺としてもありがたいけどな」
何しろ相手は初めてなのだ。出来るだけ痛みを少なくするためには念入りに愛撫しなければならない。手間なんだよな、と呟いて真也は欠伸をかみ殺した。腕の時計を見ると既に十時を回っている。いつもなら風呂上りにビールを飲みながらテレビでも眺めている時間だ。
やがて美鈴がバスルームを出る。その時には真也は何食わぬ顔でカーテンを閉めていた。じゃあ、交替、と言葉を残してバスルームに向かう。扉を開ける手前で真也はふと振り返った。
「そうだ。バスローブついてたろ? 着ないのか?」
「え、どこに?」
戸惑ったように美鈴が言葉を返す。ほんのりと赤く染まった頬が初々しい。真也はバスルームに入って網棚の上のバスローブを一枚取り上げた。ベッドに腰掛けている美鈴に手渡す。
「俺はそのままでもいいけどな。でもどうせ脱ぐだろ? さすがに服着て流血はちょっとな」
美鈴はシャワーを浴びる前の格好に戻っている。焦る美鈴を残し、真也はバスルームに入った。手早く服を脱いで棚の上に乗せる。シャワーを浴びている間に真也は先ほど見た美鈴の裸体を思い出した。
「まあ……大丈夫、かな」
さすがにここまで来てやる気が萎えるのもつまらない。勃起したペニスを見下ろし、真也はよしと頷いた。
初体験の女の子に割と酷いw
というか、真也はこういう性格です……(遠い目