※この作品はR-18です。

エンゲージリング   作:伊駒辰葉

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TS警報! です!
まだエロシーンはありません。


エンゲージリング 6

 恥ずかしそうに周囲を伺いながらホテルを出た美鈴の様子はそれなりには新鮮だった。駅で別れた美鈴を思い出しながら真也は一人、エレベーターの中で笑った。マンションの最上階に向かうエレベーターには今は真也一人しか乗っていない。

 

 マンションの階層を示す文字盤を見上げていた真也はふと眉を寄せた。確かに美鈴の反応はそれなりには新鮮だった。これまでに交わった女性たちと比べても、処女だっただけに初々しい反応とも思えた。

 

「でもそれだけ……なんだよな」

 

 そう呟いて真也は寄りかかっていた壁から背中を引き剥がした。軽い音と共にエレベーターの扉が開く。何となく振り返ってエレベーターを見送ってから真也は玄関に向かった。

 

 麗花が以前、笑っていたことがある。真也君っていつも淡白よねえ。言われたことはその通り事実だったので反論はしなかった。だが何故、熱中できないかと真也自身も気にはなっているのだ。

 

 男性として機能はしている。交わって射精することは可能だ。あらゆる手管も様々な女性と交わるうちに自然と覚えた。反応は個人個人で違ってはいるが、性的に感じる場所を探るのは得意になった。中には乳房などより背中が感じる女性もいたが、その時も問題なくセックスすることはできた。

 

 なのに何故か満足出来ない。真也はいつの間にか考え事をしながら玄関先に佇んでいた。考えているために自然としかめっ面になる。

 

 クラスメイトなどの同年代の女子生徒たちのことを子供だとも思わない。女として年齢を重ねてはいないが、その点については真也も同じだからだ。だから多分、美鈴のことも子供っぽいからという理由で熱中できなかった訳ではないのだろう。

 

 じゃあ、なにが気に入らないんだ? そう自問して真也は思い切り眉を寄せた。目を閉じてこめかみをかく。だがどれほど考えてもこれといった答えが出ない。

 

『何でドアとにらめっこしてるの?』

 

 不意に聞きなれない声が聞こえてくる。真也は驚いて辺りを見回した。だが見える範囲に人影はない。怪訝に思いながら再びドアを見た真也の耳に笑い声が届いた。

 

『僕だよ。ほら、さっさと入って』

 

 声と共に玄関が開く。そこでようやく声の主が立城だということに気付く。真也は慌てて家の中に駆け込み、一目散に居間を目指した。

 

 見慣れない女が一人、居間にいる。誰だ、と怒鳴りつけようとした真也は振り返った女を見て息を飲んだ。よく考えればすぐに判った筈なのだ。女の髪は紫色をしている。頭には角もあるし、瞳の色も紫だ。

 

「た、立城?」

「うん。試しに遊んでみたんだ。どうかな?」

 

 そう言って微笑むと立城はくるりとその場で回ってみせた。動きに合わせて髪が揺れ、男物のシャツの裾が翻る。真也は口を押さえてその場にへたり込んだ。

 

 家を出る前までは確かに男だった。混乱する頭を押さえて真也は必死で考えを巡らせた。だがいくら考えても立城が急に女になっている理由が判らない。床に手をついて呻く真也に笑みかけて立城はソファに腰を下ろした。

 

「そんなに驚くことかな。ちょっと性別を変えただけだよ」

「ちょっと!? ちょっとってお前な!」

 

 普通は出来ないんだよ、そんなこと! そう叫びそうになって真也は慌てて口を押さえた。人間でないことを立城自身は気にしていないらしい。だがあえてそれを思い出させるようなことを口走ることはない。

 

 それに、と思いつつ真也はちらりと立城を見た。立城はシャツを一枚だけ着ているだけで他は何も身につけていないのだ。

 

「女の人の身体なんて見慣れてるでしょ?」

 

 女性に変わったからなのか、立城の身体はいつもより一回り小さくなっている。普段、男の時ですらちょっと見るだけでは女性とも勘違いできる優しい顔が、女性になったことでやけに魅力的に見える。艶やかな唇にシャツを通しても何となく判る二つの乳房。きっと手触りも心地いいに違いない。無意識に見えない部分を想像しかけて真也は慌てて首を振った。

 

「……どうしたの、一体。そんなに変かな」

 

 さすがに真也の反応を奇妙に感じたのか立城が不思議そうに問う。

 

「変って言うよりだな。何でいきなり女になってるんだよ」

 

 呆れた、という口調で真也はそう言って腰を上げた。出来るだけ立城を見ないようにしてソファにどかりと腰を下ろす。立城は自分の姿を見下ろしてにっこりと笑った。テーブル越しに真也に笑みかけながら首を傾げる。

 

「昨日、制服を借りたでしょ。あれがけっこう新鮮でね。たまには女の人の身体で色んな服を着てみようかと」

「色んな服なら男物でもいいだろが」

 

 真也が帰る時間を予測していたのだろう。テーブルには紅茶とチョコレートが乗っている。横目にちらりと立城を伺いながら真也はチョコレートに手を伸ばした。包みをむいて口に放り込む。いれたてらしい熱い紅茶を啜ってから真也は立城にしっかりと目を向けた。立城は困ったように微笑んでもう一つのカップを手に取る。




立城はりゅーじんなのでTSは出来るのですが……。
この頃はちょっとアレなので……。
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