デカパイエルフに産まれたからにはエッチな目に逢いに行く。 作:伊倉米磁
11階。
床や壁は板張りのくせに、前世の名作アクションアドベンチャーのような大胆な構造の迷路が広がっている。
階段の周りだけ崖から突き出したような足場になっていて、洞窟というのも違和感があるくらいだだっ広い岩壁の空洞が広がっていた。
目の前すぐの崖に打ち込まれるように媚薬の染みた縄が渡され、向こう側へと数十メートル伸びている。
下は全く見えない。完全なる闇が広がっていた。
向こう側には洋館のような見た目の大きな建造物があり、縄は開け放たれた正面の門扉に入っていくようだ。
前世の記憶はこの光景をゲームのダンジョンのようだと思って面白いと感じているのだが、ケティはそれよりも早く新しいエッチな敵が見たい一心だった。
「ねーミラ、出口ってどっち?」
「多分、なんだけど……ほら、この縄の下。向こうの建物の窓に明かりが付いているでしょ。あの辺りが、次の階への階段だと思うのよね」
そっと木床の端に立ち、断崖絶壁の下を覗き込んでみる。
館っぽい建物のくせに高層ビルのように長く下へと建物が続いている。
建物の外には地面が見えず、完全に暗闇にしか見えない。
建物の下端は見えるのに、その下にあるべき地面というか基礎部分が見えないので、あの暗い所は問答無用で入り口に戻されるのではないかとケティは考えた。
「これって、下落ちたらどうなるの?」
「落ちたことがないから分からないわね。あの館の中にも似たような暗闇があって、近道にはあのロープが張られてるわ」
「近道がしたいなら媚薬まみれになるしか無いってことかあ。それは良いんだけど……でも近道出来るならやってみよっか。まず、私が一人で飛んでみるね」
「気をつけてね? 死なないって話だから多分平気だと思うけど……」
「うん、気をつけるよ」
こんな所で死んでは笑い話にもならない。元の位置に戻ってくるか、1階に戻るかだとは思うが……
落ちると敗北扱いでぐちょぐちょに凌辱されるならまだしも、そんな事をしても時間を無駄にするだけだ。
そう思いつつ、暗闇の大穴へと飛び込んだ。
ケティの靴裏と背中から吹き出した気流が小さな身体を宙に浮かせる。
慎重に出力を操作して、前に進みつつもほんの少し落ちていく軌道を取った。
目標にしている明かりの点いた窓がどんどん近づいてくる。
間近に見ても、のっぺりとした一枚の壁に凹凸のない窓が点々と並んでいるだけだ。
(さすがに侵入は無理かな……)
現在、ケティは両足の裏と背中という3点の魔法を同時発動している。
魔法の内容自体は一定の力で風を吹かすだけなのでなんとかなっているが、ここから魔力の刃を追加して攻撃を加えるのは厳しい。
窓に触れられる近さまで来たが、やはり取っ掛かりはない。
木枠とガラスのようなデザインだが、これまでダンジョンの建材を傷付ける事は出来ていないので、窓も壊すのは難しそうだ。
ごつごつ、と飛んだまま手をついて叩いてみるが、はめ殺し窓になっていて開きそうにない。
結局ミラのところまで飛んで帰った。
「無理だった。入る所がないよ」
「そう……でも、中に入ってからなら近道出来る所も多いはずよ」
「大人しくそっちの道を探すよ。……これ、帰る時もこの迷路通るんだよね?」
「ええ、そうなのよ。ローパーやフェアリー、キラービーも出るから時間がかかってねえ……」
ハチの魔物はキラービーという名前で良かったらしい。
こんな狭くて暗い所で、しかも見づらい罠まである所を抜けていくのは骨が折れそうだ。
やっぱり飛ぶための魔法を使えて良かったとケティは思った。
「よし、そうと決まれば、ミラ、私の背中に乗って。頑張って向こうまで飛んでいくから」
「だ、大丈夫? 私のほうが体格が大きいけれど……」
「へーきへーき」
ミラは165センチ程度の身長に豊満な胸や尻を持っており、体重もそれなりにあるはずだが、ケティの目算では大丈夫のはずだった。
おずおずと、バックパックを前に回してしゃがんだケティに負ぶさるミラ。
魔力で筋力を増強しつつ慎重に立ち上がると、まずは垂直に浮かび上がってみた。
「う、結構感覚が違うかも」
「頑張って、ケティ」
そう言って背中からギュッと抱きしめてくれるミラに励まされ、ケティは気合を入れて水平移動を始めた。
「うっ……く……」
水平に吹かせている背中からの風を強くしすぎると前転するように身体が回転してしまう。
しかし背中からの風が弱すぎれば移動が遅すぎて集中が切れるリスクが高まる。
女性であり軽めと言っても、バックパックよりは重い人を背負っているのでちょうどいい出力を探るのには苦労した。
前世知識のベクトルという考え方がそこそこ役に立った。
脚を120度に開き、背中の気流と合わせて三角錐の辺を描くように力を釣り合わせ、まずは空中で静止する。
その後で少しずつ背中側だけ強め、噴射も水平に近づけるとちょうどいい速度で向こう側にたどり着いた。
「ふひぃ……」
「お疲れ様、ケティ。辛いようなら帰りはほら、あっちの順路を使いましょう」
そう言って背中から降りたミラが示すのは、館の正面玄関の縁石のような部分だった。
良く見れば館の左右は天井まで断崖絶壁になっているが、入り口脇から通路幅の崖道が館の縁石まで繋がっているらしい。
「あっちはキラービーやフェアリーなんかの飛ぶ魔物と罠がしかけられてるから、注意が必要だけどね」
「なるほどね……じゃあ飛んでった方が良いや」
精神的には疲れたが、魔力が枯渇するほどではない。ケティは大きく伸びをして長乳をゆさっと揺らした。
「よーし! それじゃあ行こうか! 次のエッチな敵に逢いに!」
「ふふ、元気ねえ。ここはどうやら複数の階をひとまとめにしてるみたいだから、抜けた先が15階……次のエリアよ。頑張って抜けましょう」
その話を聞いて更にやる気が出たケティがずんすん進む。
一歩館の中に入った所で、にゅるぅ、とマイコニドが床から飛び出した。
「とわぁ!?」
正面からだったため、『拒絶』で吹っ飛ばすと同時に下がる。マイコニドは床から生えている場所を支点に、押し倒されるようにのけぞった。
起き上がりこぼしのように体勢を戻してきたマイコニドを斬ろうとした瞬間、後ろから伸びてきた薄ピンクのムチが伸びる。
美形だがぼんやりした造作の顔を捉えて首から上をもぎ取る打撃をお見舞いした。
「ケティ、反応は良いけど罠には気をつけないと」
「うん、ありがとう、ミラ。とっさにムチで頭を狙えるなんてすごいね!」
「ふふ、昔とった杵柄というやつね。これくらい出来なければダンジョンで生き残れないわよ」
ケティはへえー、と感心するが、本物のダンジョンの真剣さを思うと敗北レイプとかは無さそうで寂しい気持ちになる。
何にせよ今はエロダンジョンなので、わざと敗北してもエッチなことをしてもらえるという幸せを噛み締めた。
進行方向に向き直り、魔力の刃を伸ばして遠くの床をバンバン叩きながら進むことにする。
「ねえ、罠の位置って覚えてないの?」
「なんだか一定時間で変わるみたいなのよね。月に一回はダンジョンの構造自体変わっちゃうわ」
「え、めんど……」
「まあ、昨日私が見た時と道は変わっていないようだから、今は大丈夫よ」
覚えていても何度でも楽しめる有り難い配慮にため息を吐きつつ、エントランスホールらしき広間を左に進んで通路に入る。
バンバン言わせる先が壁と天井も加わり進行が遅くなるが、ローパーも出るということなので処女を奪われないためには必要な用心だった。
実際に胸揉みの罠や媚薬が噴出することが何度と無くあり、その付近で魔物が襲ってくる事も多い。
「やっぱり2人居ると楽ねえ」
「そうだね。バンバンやってる間に後ろを見てもらえるの助かるよ」
いくつかのドアと小部屋を抜け、廊下突き当りの両開きのドアをくぐると……
「うわっ」
館の中とは思えない、入り口以来の断崖絶壁が広がっていた。
よく見ると壁にはそこかしこに横穴……通路があり、例の媚薬縄で繋がっていた。下は完全に暗闇になっている。
「そうそう、ここよ。ここもね、この通路の真下に出口に一番近い通路があるの」
そう言われて覗くと、確かに暗闇ギリギリの所を媚薬縄が渡されている。真正面の、一番遠い通路から繋がっているようだ。
「これはまた……迷路な上に定期的に媚薬縄を渡るんだね。ミラ、良く頑張ったなあ」
「ええ……本当に大変だったわ……」
「後でどういう風に気持ちよかったか聴かせてね」
「……い、言いませんっ」
ミラが可愛いのでお決まりのじゃれ方をして、早速おんぶして降りていく。
今度は媚薬縄が繋がった先に少しだけ通路があるため、ショートカットに成功する。
「おおー、良いね」
「これで9割以上道のりを飛ばせたはずよ。後は廊下を進めば階段にたどり着くわ」
心なしか、ミラの声も弾んでいた。ダンジョン探索が上手く行っている事を喜んでいるのだろう。
(結構、冒険者に向いていたんだろうなあ)
魔法も武器も出来るし、性格も向いている。結婚相手も迷宮騎士……ダンジョン探索をする軍人だろうか……と言うし、出会いもダンジョンだったのかも知れない。
ケティも、ここを越えれば装備ドロップがあると聞いているので興奮を抑えきれない。
エッチなデザインの上にエッチなスキルが付いている装備が手に入れば、もっと気持ちよくなれるに違いない。
ケティはニコニコしながらダンジョンをバンバン叩いて進んでいく。
「きゅぃぃぃっ!」
進行方向からローパーが現れても慌てず魔力の刃を伸ばして刺し殺す。
「張り切りすぎて倒れないでね……?」
「まだまだ魔力は大丈夫だよ」
師匠とは一日中魔力の刃で斬り合い、魔力の鎧で刃を防いでいたケティにとって、魔力枯渇の感覚は慣れ親しんだものだ。
飛ぶ感覚を掴むのにかなり無駄にしたとは言え、今の魔力量はまだ7割程度残っている。戦闘には支障なかった。
魔力量と言ったが、魔力というのは師匠によれば『魂が世界から汲み上げるもの』だそうだから、魔力を汲み上げるための魂の体力的なものが7割位残っている、ということになる。
結局、散発的に魔物が襲ってくるだけで階段までたどり着くことが出来た。
「ここを降りれば、また新顔かあ……♥」
「もう、本当に好きなんだから……」
いい加減ミラもケティのスケベに慣れて来たのか、苦笑するだけで流してくれる。
木の階段を降り、一気に15階へと進んだ。
言われた通り、次は無骨な鉄板という感じがする金属の通路だ。しかし照明は明るくなっていて、ここまでの薄暗さに慣れた目が痛かった。
「うん、ちゃんと15階って書いてあるね」
「ここからは、罠か魔物か良く分からないのが出てくるわ」
ほうほう、と楽しみに進んでいくと、今回はお決まりの分かれ道が4つ用意されている。