デカパイエルフに産まれたからにはエッチな目に逢いに行く。 作:伊倉米磁
結局、その日はジェシーが魔法の練習をしたがっていたのでずっと付き合う事になった。
「んふふ……これは後でがっつりと『お礼』をしてもらわないと♥」
「ふん……わかったよ。いくらでも付き合ってやるさ。
ジェシーは顔を背けているが、大分落ち着いている。
今日の練習だけで手だけでなく武器からも魔力放出が出来たので、希望が湧いてきたのだろう。
(ジェシー先輩が男なのはとりあえず確定として……)
どうやらジェシーは自分の正体が男だとバレてケティの気が変わる事を期待しているようだ。
もちろん、男でも構わずセックスするつもりではあるが……
(友達に処女を捧げるのも中々良いと思うんだけど……)
ジェシーとケティは今日初めて会話したような仲でしか無く、予告なしに処女を捧げられてもジェシーの方が困ってしまう可能性が高い。
(なるべくならお互いに嬉しい思いをするような処女喪失が良いし、先輩以外の処女喪失相手、本当にそろそろ決めないと)
物心ついてからずっと夢見てきた、処女喪失の時がすぐそこまで迫っているのを感じて、ケティは股間をウズウズさせるのだった。
そんな邪念を抱きつつも、修行には真面目に取り組む。
「良いですか? 弱めに火を出しますから、ちゃんと耐えてくださいね」
「こ、来い!」
魔法を使うには確固たるイメージが重要だ。
それには、やはり五感を駆使するのが効率的……という事で、ジェシーに眼の前に手を出してもらって、そこにケティが魔法の火を吹き付ける。
「っぐ……」
「目をつぶらずに良く見てくださいね。あと焦げるような臭いとゴウゴウいう音も感じてください」
味覚以外の全てで炎を感じる。チョロチョロと火を出してジェシーが火傷しないことを何度か確かめてからの本番だ。
「つっ……」
「っと、大丈夫ですか?」
少しでもジェシーが集中を乱しそうなら中断し、休憩してから繰り返す。
この類の修行をするために、ケティもまずは身体の強化とガス状にした魔力の鎧を習得した。
師匠に、腕をまな板にして色んな物を斬られたのを思い出してしみじみしながらも、ジェシーの練習に付き合った。
ジェシーの場合は身体強化だけだが、弱めの炎なら火傷にならない程度の防御力はある。小柄な身体で大きな斧を使っていることからも、身体強化は得意なようだ。
その甲斐あって、ジェシーもあっという間に炎を出せるようになる。
「うおっ……おおおっ!」
長柄の斧の先端からライターのようにちょっと出ている炎を見て嬉しそうに叫ぶジェシーに、ケティも笑顔になった。
「やっぱり先輩、魔法の才能あるじゃないですか!」
「いや……一日で覚えるなんて普通じゃねえよ。お前の教え方が上手かったんだ。……ありがとよ」
ジェシーは遠い目をして上を見上げた後、ケティに向き直って頭を下げた。
「ふふ……どういたしまして。はあ、結構疲れましたね。もう外は日が落ちちゃうんじゃないですか?」
「おお、そうだな。その……」
「一緒に帰りましょう!」
「……ああ」
ダンジョンの外での姿もこの際知っておきたいケティはニッコリ笑ってジェシーの腕を取り、ジェシーも諦めたように引っ張られる。
15階ロビーの隅っこにあったジェシーのバックパックを回収して、帰ることにした。
奈落に落ちて1階にワープしたことをジェシーは抗議したが、実際に怪我もしていないので渋々納得するしか無く有耶無耶にされる。
そして、ダンジョンの出口まであっという間に出てきたのだった。
ベルトを緩め、縛っていたシャツを解いてジェシーが一歩踏み出す。
「おお……」
ケティの見ている前でジェシーの姿がゆらぎ、一瞬にして体格が変わった。
「ほれ、これで満足か?」
そう言って振り返った顔も声も、もちろん男のものだ。しかも、けっこうな長身、太い声だった。
180センチはある、筋骨隆々の大男。それがジェシーのエンチャント無しの姿だった。
「それが先輩のダンジョンの外での姿なんですね」
顔は厳つく、簡単に言えばゴリラ系だろうか。髪は自分で切っているのか、短めのざんばら茶髪。
ケティは結構嫌いではないと思ったが、男前扱いはされてこなかったかも知れない。
「フン……それで、どうすんだ? 身体でお礼すれば良いのか?」
「ふふふ……まだ私の準備が整ってないから、後で取り立てますよ。身体を綺麗にして待っててくださいね♥」
ケティのノリが少し分かってきたのか、挑発的に言ったジェシー(?)は言い返されても顔を顰めるだけだった。
「そうだ、先輩の本当の名前も教えてくださいよ」
「……ジェイクだ」
もう観念して素直に教えてくれるジェイクに、ケティが手をのばす。
「じゃあジェイク先輩、これからもよろしくお願いします」
胡散臭げにその手を見つめていたジェイクも、渋々とその小さな手を握る。
んひひ、と笑ってぶんぶん上下に振ってくるケティに苦笑するジェイクと連れ立ってダンジョンから出ていった。
納品に行くジェイクと、ドロップが一つもなかったのでそのまま帰るケティが別れる。
もうそろそろ日が落ちる時刻になっていた。
(今日は結局ずっと練習してたなあ)
稼ぎはないが……昨日がっつりとバイブを売りまくったので宿の滞在費換算で2ヶ月位は溜まっている。
ミラと山分けした上での話だし、自分用のバイブを確保しなければもっと溜まっていた。
加工品が直接落ちるという反則級の稼ぎの良さと、ダンジョンがガラガラで独占できる環境のおかげだ。
(お金はありがたいけど、もっと人を増やさないと……)
ミラの家まで空を飛びながら、処女喪失やダンジョン振興の事を考える。
難しい問題だが、日々確実に事態が動いている感じがあって、とても充実していた。
「ただいまー! ねえねえ、ミラ! 今日はまたお友達が出来たよ!」
「おかえり、ケティ。お友達って……え? 冒険者のってことよね?」
夕飯はコンソメスープにポークソテーだった。相変わらず美味しい料理に笑顔になりながら、今日の事を話す。
「まあ……! やっぱりあの人もエンチャントだったのね」
活動域が被っているミラも会ったことがあるらしい。お互いあまり探られたくないので挨拶位しかしたことはないようだ。
「うん。見れば分かるって感じではあったけど。でも良い人そうだったよ」
ぶっきらぼうだし、色々苦労していそうではあるが……根は善人なんじゃないかと、話してみて思った。
「それでさ、修行のお代ってことで、今度セックスするんだ」
「っ! っげほ! ごほっ!」
「わーっ! 大丈夫!?」
スープを飲みかけのミラが咳き込み、ケティが介抱する。
「もう、ケティったら……初対面でしょ!?」
「えー? でもミラとも会った翌日に並んでスライム姦してもらったし……」
かぁっと老婆の顔が赤くなる。二の句が継げないミラに、ケティがふわっと抱きついた。
「私、お友達とエッチなことをして遊ぶのが夢だったんだー。だからミラも先輩も大好き♥」
「はぁーっ……」
盛大にため息を吐かれたが、ミラがこれ以上文句を言わない気配を感じたのでケティはニコニコと食事を再開した。
その日の夜。また一緒のベッドで寝ていると、ミラがポツリと呟く。
「ケティ。私、貴女と一緒に行こうと思ってる」
「ほんとっ!?」
眠そうに目を細めていたケティが一気にぱちっと見開いた。
「やっっっ……たああーーっ!」
バサァ、と掛け布団を跳ね除けて身体を起こすケティ。
「ちょっと、寒いから……!」
「おっと、ごめんなさい。……んふふふ」
ニマニマを顔を緩ませて喜ぶケティに、ミラも顔のシワを深めて笑顔になるのだった。
「それじゃ、明日からダンジョン攻略頑張らないとね! エンチャントオーブゲットだぜ!」
「ふふ、何その口調……」
ゴーレム、そして21階からもいるであろう新顔たち。
ケティは処女喪失の相手を夢想しながらスヤスヤと眠るのだった。