デカパイエルフに産まれたからにはエッチな目に逢いに行く。 作:伊倉米磁
「なに、あの……獣?」
ミラが困惑しつつも、鞭を構える。
ケティは前世知識によりその名前に心当たりがあったが、森に住むエルフとしての知識には全くなかったので首をかしげておいた。
(なんでカピバラ?)
首をかしげながらも、杖を腰だめに構えている。林の中では長い刃を振り回しづらいので槍だ。
前後に長い、どこかとぼけた顔にげっ歯類の前歯。
普通のカピバラは前世でも生で見たことはなさそうだが、目の前にいる個体は魔物らしい巨体と凶悪なまでの鋭い歯をしている。
つぶらな瞳を見ても感情はよくわからないものの、大口を開けて素早く突進してくるカピバラはどう見ても友好的な存在ではない。
「ギィィィィッ!!」
威嚇音のような鋭い鳴き声を発しつつ飛び掛かり噛みつこうとするのを、カウンターで槍を喉奥に叩き込んで頭を貫通させる。
断末魔もなく即死し、魔力にほどけて消えていった。
「お、意外と普通のドロップ」
さっきのカピバラの固そうな毛皮をふんだんに使った、デザイン性のある革鎧だ。
しかし、上半身しかない。もしかして、服じゃなくて鎧だからパーツ別にドロップするのだろうか?
「ん-、とりあえずリュックに入れて先に進もうか」
「そうね。さっきみたいなのが大量に出てきたら面倒よ」
想像してみても、とぼけた絵面にしかならなかったが……今は敵を倒してドロップを厳選している場合でもない。
さっさと先に進むことにした。
そんなこんなで、もう37階にたどり着いた。
岩礁だらけだった31階とは違い、だんだんと柔らかな砂浜が増え、観光地のようなロケーションになっていく趣向のようで、目の前にはエメラルドグリーンの海と白い砂浜、ビーチサイドにはトロピカルなハイビスカスのような花が咲き誇っている。
「まあ……ずいぶんきれいな所ね」
ダンジョン内とはいえ、ミラも感動しているようだった。
「そうだね。時間がある時に海水浴してもいいかもね」
「いや、魔物の居る海で遊ぶのはちょっと……」
ミラは苦笑しているが、ケティは本気で遊びたい。
海に潜むサハギンに襲い掛かられてビーチサイドでセックスしたい。
そんな考えを感じ取ったのか、ミラが赤面して三つ編みの先端をくしくしと弄った。
「さ、さあ! そろそろ次のボスだろうし、早く抜けてしまいましょう」
赤い顔で勇ましい表情をして、ミラが先に進むのを可愛いものを見る目で追って、ケティも歩き出した。
35階あたりから出だした鷹の魔物が頭上を飛び回っている。
夏そのものの強い日差しに、手でひさしを作りながら時折見上げて襲撃を警戒しつつの進行なので、なかなか気を遣う。
といってもケティは近くの気配を魔力による索敵で察知できるので、こういうときにも重宝した。
「うーん、あの鷹、また降りてきてくれないかなあ」
ケティのつぶやきに、先行しているミラがため息をつく。
「もう……そういう事を言わないの。れっきとした魔物なんだから」
鞄の中には、鷹のドロップアイテムであるハイレグ競泳水着が入っている。
ぜひ、2着目を用意してミラと海水浴&セックスを楽しみたいケティは来い来いと念じながら歩いた。
幸か不幸かその願いが叶うことはなく、カピバラをいくらか狩るだけで階層を抜けてしまった。
カピバラシリーズの革鎧の手甲と、ローライズのツヤツヤした素材の黒いホットパンツが出たのは収穫といっていいだろう。
ケティは敵の来ない階段でドロップアイテムをニコニコ笑顔で整理して、本日の成果に満足していた。
そして、38階へと降り始めた。
「ん? なんか、階段が長くない?」
黙々と階段を下りていたケティが、後ろを歩くミラに振り向いて語りかける。
「確かに……もう1階分は降りたはずだけど。久しぶりに、複数階層にまたがった階なのかも」
「だよね。まあ、2階分をいっぺんに降りられると思えば悪くは無いか」
何が出てくるかなーと鼻歌を歌いながら階段を降り切ると、一見今までと同じようなフロアに見える。
違いはすぐそこに高めの岩山があり、上下も探索する必要がありそうという位だ。
「んー? とりあえず上から見てみるか……」
靴の裏から空気を噴き出して真上に飛ぶと、すぐに今までと違いを感じる。
といっても当然の話で、天井が高いのだ。その分、まるで本物の夏空を飛んでいるかのように感じられた。
「ふー、なんだか風まで良い感じに涼しいなあ。……っと、これって……」
適当な高度まで上がって地上を見下ろすと、これまでとは一目瞭然で違う。
小高い岩山が視界を遮っていたため階段の出口からは分からなかったが、あの岩山がフロアのほとんどを占めているようだ。
平たい円柱のような岩山の周りは、今飛び立った階段側の半円はほとんど海と岩礁だが、反対側の120度くらいにはキラキラと輝く砂浜が広がっている。
さらには、岩山の奥のほうにはすり鉢状に凹んだ部分があって、その中心には建物が建っていた。
しかも、モンスターが巣くっているようなものものしさが無く、まるで……
ケティは下に降りて、ミラに見たものを説明した。
「ふぅん……という事は、迂回せずにこの岩山の中を通れってことかしら」
「みたいだね。まあ飛んで無視するけど」
岩山の中には新顔のモンスターなんかも居るかもしれないが、今は敗北セックスできないので生殺しになってしまう。
ダンジョンを
「……何か面白いものが手に入るかもしれないし、後でまた来ましょう」
我慢が顔に出ていたケティの頭を、ミラがそっと撫でた。
「うん。ミラも一緒にモンスターにレイプされようね」
「う、うぅん……」
撫でてくれるミラに甘えて抱き着きながらのケティの要求に、ミラは断ることができずに敗北レイプを楽しむことが確定してしまったのだった。
ミラを抱えた状態ではかなり飛行は難しくなるとはいえ、上昇だけなら問題は無い。
1階分以上の高さの岩山を超え、平らで魔物もいない岩山の頂上を悠々と歩いた。
上からすり鉢状に見えていた部分は、実際には岩山の頂上からは3メートル程の崖になっていた。
魔力で身体能力を強化できる2人には大したことは無く、普通に飛び降りて着地する。
「まあ……本当にあるわね」
すり鉢の一番下は岩ではなく砂浜と同じ砂になっている。さらにはヤシの木も生えていて、白い砂浜に涼しげな影を落としていた。
円柱形の岩山の一部に切れ目のように道が続いており、向こうには砂浜の続きと海――ダンジョンの中だが――が見えている。
「あれって、宿屋……だよね」
「そう見えるわねえ。1階はレストランなのかしら? テラス席まで用意されてるわ」
すり鉢状の地形の中央にある建物。それは、木造に見える3階建ての立派な建物だった。
1階は、いわゆる『海の家』をちょっとオシャレにした感じのレストランが併設されている。
2階にも3階にも各部屋にバルコニーがついていたりして、部屋数が多くなさそうな高級宿という印象を受けた。
一応警戒しながら、宿っぽい建物に向かって歩いていく。
「ん……? あれは……」
近づくにつれ建物の中がガラス窓から見えてくると、ホテルの受付らしきカウンターに人影が見えた。
ケティが駆け寄ってドアを開けると、笑顔で声をかけた。
「ナンナさんっ! どうしたんですかこんなところで?」
そこには、スミレ色の髪のショートボブの美女、このエロダンジョンの管理人ナンナが居た。
受付の時のスーツ姿とは違って、黒シャツにエプロン着用のずいぶんラフな格好だ。
「ケティ様、ダンジョン探索お疲れ様です。当施設の敷地内ではモンスターは侵入してきませんので、ごゆっくりお寛ぎくださいね」
どうやら本当に宿屋だったらしい。ニッコリとした挨拶から一転、ナンナの顔が曇った。
「と、言っても……申し訳ございません、スタッフが居りませんので、大したおもてなしは出来ないのですが……」
「昔はここで人が働いてたんですね」
「はい……左様でございます。この階層の海は特別に魚介が捕れるようになっておりまして、それをレストランで出したりもしていたのですが。今提供できますのは……ドリンクバーのみとなっておりますね」
どうやら、誰もいなくても飲み物は出してくれるようだ。とりあえずレストランに行ってごちそうになる。
料金も無しで良いという事になった。当時の料金はもちろん当時のお金だったのだが、今はスタッフも居ないし誰が経営しているわけでもないので、ダンジョンのドロップを持っていくようなものだとナンナが言った。
古代のドリンクバーの内容は日本とだいたい同じようなラインナップだったが、ミラもそこまで驚いてはいなかったので果実のジュースや炭酸系も現代にあるらしい。
「それより、ナンナさんの恰好のほうが嬉しいね」
「ウフフ……海の家バージョンです」
さっきはカウンターの向こうで見えなかったが、上は黒シャツと白エプロンだが、下は水着だった。しかもきわどい角度の競泳水着だ。
ナンナがくるりと回転してみせると、引き締まった大きなお尻が丸見えだった。
「はー、ナンナさんが触れたら良いのに」
「今は映像だけですが……昔は実体も伴っておりましたよ」
昔を懐かしむような微笑みでナンナが言うと、ケティが目を輝かせた。
「えっ、そうなの!? ナンナさんとセックスできるサービスある?」
「もう、ケティさまったら♥ もちろんございましたよ。やはりダンジョンの顔の受付をやっておりましたから、慣れた男性冒険者は皆さん私をお求めになりました」
なんというサービス満点なダンジョンだろうか。
受付さんといえばセックスしたいランキング上位に入るのは必然だが、エロ同人RPGではイメージの問題とか工数の問題でエロシーンが無いという事もよくある話だ。
改めてこのエロダンジョンの素晴らしさを感じてケティがニッコリ笑顔になると、ナンナも満面の笑みを浮かべた。
「ふふ……いつかダンジョンが盛況になったら、私を実体にする余裕もできるでしょうし……その時『遊んで』くださいませ」
「うん! 絶対だよ!」
という事で、ドリンクバーを楽しんでナンナとセックスの約束だけしてその階は通り過ぎた。