デカパイエルフに産まれたからにはエッチな目に逢いに行く。 作:伊倉米磁
駅弁と言ってもポータルなので中で食べる時間もない。
教室ほどの、何もない部屋で立って待っているとアナウンスが流れ、定刻通りに戸が閉まり、そして開いた。
「さ、出ましょう」
促されるままに部屋を出ると、デザインも間取りも全く同じ建物なのだが人がごった返している。
出発前は薄汚れていた床や天井はこっちの方が綺麗に掃除されていた。
「うわー、すごい。こんなに人が居るんだ」
2人が出てすぐに次の乗客たちが部屋の中にどやどやと入っていく。
立ち止まることなく人込みを歩き続けたが、ケティの流水の鎧に包まれた途轍もない巨乳やミラの片脚だけハイレグになったボディスーツにも道行く人はチラチラと視線を送るだけで絡んできたりはしない。
前世と同じくあくせく生きている人々を見てケティはため息をついていたが、とにかく足早にポータルを抜けた。
あまり安い宿だと盗難も考えられるというミラの勧めで、そこそこのランクの宿を取る。
1階の食堂は持ち込みアリだというので飲み物だけ注文し、カツサンドを頬張った。
「いただきまーす」
昼飯時なので辺りを見渡すと、リンボ……エロダンジョンのある町の事だ……とは違い冒険者もそうでない人も往来を沢山歩き、圧倒的に活気がある。
さらにキョロキョロと店内を見渡すと、ふとケティとして産まれてからは見た事のないものが目に入った。
「あれなに? もしかして冒険者がモデルやってる?」
それは、女冒険者たちが華やかな装備を着たままビールを乾杯する場面の写真を使った、まさに前世で見たようなポスターだ。
その隣にはこの店でも売られている『メルクリウス』という名前の清涼飲料水を飲む、巨乳の美人女冒険者の写真のポスターも並んでいる。
ミラもよく見て冒険者であることに気づくと、感心したような声を上げた。
「へえ。私たちのころは、こういうのは歌姫とか役者さんがやるものだったけど。今どきは冒険者も宣伝に出るのねえ」
興味をそそられたケティは、ミラを促してポスターの傍の席に移る。
「ほうほう、これかな? モデル、コレクトネス・クルセイダース所属、サブリーダー・ヴィオラ……」
ポスターの中では皮鎧の胸元を大きく開けて眩しい美白巨乳を見せつつ、あえて一筋唇の端から零すことで液体が谷間に消えて行く所を撮影されている。
クランの名前の割に、前世では露骨すぎてもう出せないようなお色気ポスターだ。
「うーんこのおっぱい、良く揉みこまれて柔らかそう……♥」
眼福とばかりにニッコリ微笑むケティに苦笑しつつ、ミラも隣の集合写真のポスターを見てみる。
「ええとこちらは……リーダー・オルガ、サブリーダー・アン、以下メンバー……と」
名前と人物が紐づいていないので同定出来ないが……
多分真ん中でジョッキを掲げて笑っている金髪の筋肉質なのがオルガ、その隣に居るどこか神秘的な黒髪の女の子がアン……だろうか?
その2人が目を引く構図になっている。
そして、冒険者の名前の上にデカデカと描かれたエンブレムと名前。
「このベルカント商会っていうのが広告主かな? エッチな品物とか扱ってないかなあ」
「うぅん……このお色気ポスターを見てしまうと絶対無いとは言えないかも……」
そうミラが言ってしまうほど、ヴィオラの唇や胸元は性を商品にしていた。
「こういう人たちをエロダンジョンに呼べたら良いよね」
「広告に出る人が世間体の悪い場所に近づくことはないと思うけどね……」
それはそう、と頷きつつも、夢は大きく持とうと決意するケティだった。
ほどなくカツサンドを食べ終わり、ジョッキ麦茶で流し込む。
「ごっくん……ねえ、この宿って男の人連れ込んでセックスとかしても良い所?」
「ダメです。連れ込み宿はどこかにあると思うから、男の人に連れてってもらいなさい」
「ミラとはセックスしていい?」
その言葉にミラはポっと頬を赤くするが、首を横に振った。
「じゃあ連れ込み宿の場所も調べとかないとね」
「もう、ケティったら……」
おさげで口元を隠しつつ、セックスする事自体はもう否定しないミラだった。
部屋に荷物を置いてギルドへ行くと、紹介状を渡しておく。
ここの受付は、さすが大きい所だけあって当たり前のように見栄えのいい美女たちが受付嬢をしていた。
時間が少し遅いからか込み合っているというほどではないが、冒険者も座って話し合いをしたり掲示板を見たり受付でなにか提出や申請をしたりと活動的だ。
これが普通の冒険者なんだー、と感心しながら見ていたが、受付嬢はミラが差しだした紹介状を読んでもノーリアクションだ。
ミラも当然のように流して、活動拠点としてラザロに登録してもらえるように頼んだ。
ケティは一緒にいる必要が無いというのでミラにギルドカードを預けてちょろちょろと掲示板に駆け寄り、残っている貼り紙を読んでみる。
・2級薬草、3キログラム納品
・魔鉄鉱採掘、面接は毎日15時から、条件は――
・深層上部、魔物の素材割り増し買取。黄ランク以下はお断り
ほぼ常設の採取や採掘の依頼しかない。
それ以外は難度の高い依頼が残っているだけのようだ。
――おい、あの娘誰だ?
――いや、見た事ねえ。あの耳、エルフだよな?
――つーか乳デッカ……
掲示板を見上げるケティの後ろからそんな声が聴こえるが、今は声をかけにいかない。
(セックスばっかりしてるダメな奴だと思われると、後々面倒かもだし……)
仕事はちゃんとするがセックス好き、という評価を得るべく、ケティはムラムラ来つつも真面目に仕事することにした。
(薬草や鉱石採掘って、知識が無かったら出来ないねえ……)
異世界ファンタジーならお約束の薬草採取だが、採取先がダンジョンなので初心者感が無い。
しかも依頼書には行き先とかも書いていないので、理解している人間を相手にしていると知れる。
逆に採掘の方は雇用してくれるというのでやり方なんかは迷わなさそうだ。
正直、面白そうとは全く思わないが……稼ぎもエロダンジョンに潜った方がよほど儲かる額だが……真面目に仕事する人だと印象付けるには良いかもしれない。
(雇用って言うなら一緒に作業する他の人と知り合いになれるかもだしね)
掲示板の前で考えていると、後ろからミラが歩いてくる気配がした。
「何か良いのあった?」
「ん-ん、正直よくわかんないかも」
ため息をついたケティに、ミラが寄り添って立つ。
「ああ……お決まりの奴ね。薬草は、こういう大きなダンジョンでは定期的に講習会があるからそれに出席すれば理解できるわ。地元ギルドによる囲い込みの一環とも言えるけど、理解できない人に薬草を荒らされるのは困るからね。採掘はもう、見ての通りよ。ケティは体力があるから、そんなに苦労しないと思うわ」
さすが経験者だけあってミラの解説は詳しい。
(でも、そんな何十年も変わってないんだなあ)
前世では10年もあればやり方が一変しているようなイメージだったが、ここでは違うという事だろう。
そのおかげで冒険者という職業が今もまだ存在していると言える。
もしダンジョンに入れるのは厳しい試験に受かった人だけだったら……16歳でエロダンジョンに入り浸ってセックスしまくる、なんて出来なかったかもしれないので、ありがたく恩恵を受ける事にした。
「よっし、じゃあ採掘にしよ。まだ時間あるよね?」
日めくりカレンダーよろしく沢山貼られた案内をちぎり、手に取ってよく読む。
「そうね。あと1時間だし、隣の酒場で待ってましょう」
昼飯には少し遅い時間とはいえ、そこは冒険者なのかギルド隣の酒場では飲んでいる者もいる。
スイングドアを開けると何人かがちらりと見てきて、それが美女と美少女だと解ると鼻の下を伸ばした。
(お、見てる見てる♥ まだヤるわけにいかないけど、ゆくゆくは……♥)
性欲の溜まっている肉体労働者との濃厚セックスを思い浮かべて美少女の微笑みを浮かべつつ、隅の方の席で今日2杯目のジョッキ麦茶を飲む。
これもまた昔から飲まれているらしい。確かに麦があれば作れるから、流通だけは整ったこの世界では都合が良いのだろう。
ちゃんと煮だして作っているのか、香ばしくて美味しい麦茶だ。
「……あの、ケティ」
「ん、どしたの?」
「やっぱり……この装備、ちょっと目立ちすぎじゃないかしら……?」
隅の席に座っていても、2人にはチラチラと視線が向けられている。
何気なく座る場所を決めてしまったせいで、ミラは鼠径部が見えている方を客に向けてしまっていた。
宿の食堂はテーブルが大きかったので脚が見えなかったが、冒険者酒場は2人席でテーブルも小さいため座っている全身が簡単に見えてしまう。
もちろん真横から見ただけで恥ずかしいような服をしている人などミラ以外に居なかったが。
ミラは頬を赤くして、おさげに伸びそうな手をピクピクさせながら努めて無反応で済まそうとしている。
ケティはそれをニヤニヤと見ながら、どたぷんとテーブルの上に乳房を乗せる。
一抱えはあるクッションのようなありえない大きさの乳房に、酒場の男たちも凝視してしまっている。
「まあまあ、良いじゃん。後でお楽しみなんだし」
「うう……やっぱり、私も?」
ケティはテーブルの上に置かれたミラの手をそっと掴んだ。
「うん。ミラも一緒だと嬉しいけど……だめ?」
それはもちろん、後で男を引っ掛けてセックスする時は一緒に乱交しようという誘いだったが……
ケティ可愛さと、ミラに刻まれたサキュバスボディ付属の『背徳快楽』のスキルにより、インモラルなセックスに魅力を感じてしまう。
「最初は、無茶しない人にしてね?」
「うん、うん♥ 楽しみだね♥」
ケティはニコニコと、周りに聴かれても良い言葉だけでセックスへの期待を膨らませる。
昼の酒場はそれなりに騒がしく、特に誰かが声をかけてくる事もなく時間を潰したのだった。