デカパイエルフに産まれたからにはエッチな目に逢いに行く。 作:伊倉米磁
さてそろそろ時間なので出て行こうかというところで、大勢がどやどやと入ってきた。
「あー、つっかれたぁ!」
「だっる、酒飲まないとやってらんねー」
「ふぅ……」
それは10人以上もの女冒険者たちだった。
ミラやジェシーは例外として、自分たち以外の初の現役女冒険者なのでケティは観察することにした。
「げ、今日はあいつらが来る日かよ……」
それと同時に、周りの男たちが顔を顰めるのも見える。
(私たちは歓迎してくれたのに……)
と思うが、その理由はすぐにわかった。
「チッ、席空いてねーじゃん。おい、オッサン! そっち空いてんだから詰めろや!」
若い女冒険者の一人が、手近な席に座る男に因縁を付ける。
「は? なんで俺がどかなきゃなんねーんだよ」
当然睨み返されるが、女は逆にニタニタと嗤う。
「何その態度? 女だからって舐めてんの? ウチのボスの前でそれ言えるー?」
完全に調子に乗った女冒険者だが、後ろからも仲間がゾロゾロと出てきてテーブルを半包囲してニヤニヤ嗤う。
「……チッ!」
その圧に負けたか、脅し文句に効果があったか……男は席を移った。
「最初からそうしとけや、グズが」
礼どころか追い打ちをかけて、ゲラゲラ笑いながら座る女冒険者達。
ちょいちょい、とミラが袖を引いてきた。
(関わり合いになる前に出ましょう)
(そだね)
初遭遇の女冒険者たちは明らかにヤバイ人たちだった。
ゲラゲラ大声でおしゃべりしているため、足早に出ていくケティ達に気づくことが無かったのだけは幸運だった。
酒場から出て、隣のギルドへと移動する。説明の会場はここの一室だ。
「あーこわ」
「元から冒険者なんてお行儀の良い人種ではないけど……それにしても異常ね。女の子が伸び伸び出来て良かった、とはとても言えないわ」
道すがら、先ほどの脅威について話し合った。
ミラが言うには、新人女冒険者をだましてレイプしたり、孕ませて引退させたりはよく聞く話だそうだが、それを禁じる方に進んでいたという。
確かに、ケティが冒険者登録したギルドでもそんな空気だった。
「結局、そうしないと女冒険者が減るし、冒険者の評判が悪くなって誰もまともに結婚出来なくなるのよね……そうすると界隈がさらに荒れるから」
婚活のためらしい。まあ、家庭を持てば安定するのは確かだろう。
「うーん、でも、なんかちょっと見覚えあったような?」
「……言われてみるとそんな気もするわね。何でかしら?」
「……あ、そうか。ポスターだ」
さっき見かけた中に、集合写真の端の方に写っていた人相が居た気がする。
キラキラ笑顔のポスターと違い邪悪な笑みだったから、似ていたと思いつつも半信半疑だが。
冒険者らしいというべきか、モデルの素顔がこんなに分かりやすく横柄なのも面白い。
「どうしてこんな事になってるのか……誰かに聞いてみてもいいかもね」
「ちょうど『職場』でそういう事が出来そうだね」
会議室Aの扉を開けると、中は1,2人程度がボーっとしているだけでがらんとしている。
「ここで合ってるかな?」
「うん、間違いないわ」
ミラにも、剥がした貼り紙を確認してもらったが、一応ここにいる人に声をかける。
「すみません、ここって採掘の面接会場で合ってますか?」
ケティが前かがみになって座っている男に話しかける。
あまりにも深すぎる乳の谷間に視線が吸い寄せられているが、むしろケティにはご褒美だ。
「お、おう。そろそろ来るはずだぜ……ごくっ」
いったんはその男を放置し、ミラの元へ歩き去る。
机は部屋の端にどけられていて、いくつかある椅子に座った。
「あ、ども。……初めての人もいるみたいなんで、自己紹介しときますね。ギルド職員のヨハンと言います。これから説明しますけど、採掘はギルドの方で管理してますんで、盗掘はおやめくださいね」
さらっと言われたが、何かライセンスの停止とかペナルティがあるのだろう。
やっぱり皆に管理されているダンジョンは大変だ……と曖昧に笑うケティだった。
それから、言った通り色々と基本的な作業の流れと注意事項が説明される。
「以上で説明終わりです。何か質問ありますか?」
「はーい」
「どうぞ」
さっそくケティが手を挙げると、乳の揺れを見るべく数人いる男面接者がチラチラと視線を向けて来た。
「結構奥深くに採掘に行くみたいですけど、息が苦しくなったりはしないんですか?」
「ふむ? ダンジョンは初めてですかね? 多くのダンジョンと同じように、ラザロのダンジョンには『空気苔』が植えられていますので、酸欠はほぼ気にしなくて良いですよ」
「おお、そんなのがあるんですね」
登録時に貰った紙ペラにはそういうことは書いていなかったし、エロダンジョンにも特にそんな仕組みは無かった。
まだまだケティの知らない便利動植物が存在するのだろう。
他には質問もなく、初日ということで職場まで案内してもらう事になった。
「そ、それで、ケティちゃんはどこ住み? こっちにはいつ?」
「ギルドの近くにあるホテルだよ。今日来たばっかりなんだ♪」
ケティは歩いて揺れるデカパイにチラチラといやらしい視線を送る男に対して愛想よく答えた。
(本当なら、『夜になったら遊びに来て欲しいな♥』って言いたい……そしてセックスしたい……)
しかし、初仕事を始める前に男を引っ掛けるような奴は社会からの評価が終わるというのは、前世知識が無くても分かろうものだ。
前を行くヨハンがちらりと……これは本当に心配そうな……視線を向けてくる。
しかし、男よりもケティの頭の方こそ万年発情期であることなどヨハンには想像もできないだろう。
そこは本当に申し訳ないが、いつかヨハンともセックスしたいので目を合わせてニコリと微笑んでおく。
ダンジョンに入っても特に魔物などに出会う事もなく、和やかなまま職場へとたどり着くのだった。