デカパイエルフに産まれたからにはエッチな目に逢いに行く。 作:伊倉米磁
ヴィオラがもたれていた柱から背中を浮かせて向き直る。
「紹介するわ、アン。こっちは最近ラザロに来たケティとミラよ」
ケティ達はやってきた人に挨拶した。
「ん。私はアン。コレクトネス・クルセイダースの副リーダー」
訥々とした喋り方だが、この喧騒の中でも不思議と良く通る綺麗な声だった。
ケティとほとんど同じ身長に、前半分しかない感じの兜というかヘッドギアを被った黒髪のセミロング、ヴィオラよりさらに金属の多い鎧に全身を包まれたその姿は、ケティに『ワルキューレ』という単語を思い起こさせた。
ヴィオラはアンに横から抱き着いて、ケティ達に笑いかける。
「ケティ、ミラ。この子がうちのクランのお姫様よ。ちっちゃくて可愛いけど、結構な力持ちなんだから」
そう言いながらも、アンから見えない頭の上で口元に人差し指を添え、『ナイショね♥』と優しくウインクしてくる。
(この子は男の話題ダメなんだ)
とケティも了解してニコリと笑うが、内心首を傾げた。
(結構イケそうな雰囲気もあるけどなあ……まあ聞いた話だと色々あるみたいだし)
CCの副リーダーという事は、結成時の3人だ。
3人ともレイプされて意気投合したらしいので、不用意に探りを入れるわけにもいかない。
「もう……子供扱いしないで」
アンがむくれてヴィオラを押して引きはがすその仕草はまるで思春期の女の子のようで、ケティも思わず和んでしまった。
「初めまして、アンさん。仲良くしてくださいね♪」
手を差し出すと、小さく頷きながら握手を返してくれた。
少女サイズの金属の手甲、内側が革張りになったそれは手の感触を通じて魔力でしっかりと身体を強化し続けている事を伝えてくれる。
ミラも続いて手を握りニッコリと孫娘に接するように笑顔を見せると、アンは少し照れて俯いてしまった。
「ヴィオラが道草食ってるから迎えに来た」
「ごめんって。面白い新顔が居たから、ついね」
そう言って、ヴィオラはチラとカウンター奥、未だ順番待ちで積まれたままのダンジョンワームを見る。
「……2人でいっぺんに3匹運んだの?」
「あはは……寄って来たからつい倒しちゃって。背負ったままダンジョン出るの大変でした」
エロダンジョンでは倒したあと残るのはドロップアイテムだけなので、ダンジョンワームの大きさを甘く見ていた。
「背負ったまま戦った?」
「はい、魔法があるからなんとか」
いつの間にか、アンの目が単なるポワポワした女の子から、冒険者の真剣な色を帯び始めていた。
「オルガが聞いたらムキになってマネしそう。アタシも出来るとか言って」
アンの言葉を聞いたヴィオラが苦笑する。
「ちゃんと止めるわよ。あ、オルガってうちのリーダーなんだけど、熱くなりやすいからあんまり煽らないでね」
「ポスターでビール飲んでた人ですよね? 今日は一緒じゃないんですか?」
「ま、クランのお仕事でちょっとね。大所帯のリーダーは何かと大変なのよ」
ヴィオラは肩をすくめるが、宣伝業の責任者でもあるだろうしメンバーが町中の男冒険者に反感を買ったりもしていて、本当に大変な立場だろうと思われた。
「ケティ達はウチに来ないの?」
アンがこてんと首を傾げると、黒髪がサラリと揺れる。
「あー、それは……」
アンも可愛らしいし一緒にセックスしようと言いたい所だが、今しがた釘を刺されたケティが少し言葉に詰まる。
「あーっ! ヴィオラさん、アンさん! もー、どこ行ってたんスか!」
数秒迷っていると、どやどやと5人、女ばかりが近づいてくる。
「ごめんねー、皆。新しく可愛い子が居たから、声かけちゃった」
そうヴィオラに言われてケティとミラを見たCCの面々は……
「は? なにそのカッコ」
「男に媚びすぎだろ」
「体型やっば」
「髪色えっぐ」
「えっと……よろしく、お願いします……」
警戒心も露わに口々に罵倒ともつかない言葉を投げつけてくる。
「コラ! 初対面の人に失礼な口を聞くんじゃない!」
ヴィオラが真面目な口調で叱るが、ツーンとそっぽを向いて聞き流している。
一人、普通に挨拶していた女だけがペコペコと謝罪していた。
「ヴィオラさん、まさかコイツら『ウチ』に入れるんスか?」
『!?』と顔を歪めてケティを睨みながらヴィオラに確認し、ヴィオラの方は頭痛を堪えるようにこめかみに指を当てる。
ケティは一歩相手に近づいて話しかけた。
「私はケティ、こっちはミラって言います、よろしく♪ 私たちはそっちのクランに入るつもりはないんだ。……男の人も嫌いじゃないからね♥」
ほんの少しの挑発の成分に、4人の態度が硬化した。
「ヴィオラさん! この『ガキ』、ウチらの事舐めてますよ!」
「『シメ』ちまいますか!?」
剣呑な雰囲気を出した若手とケティの間に、アンが割り込む。
ふぅー、と深いため息の後、ヴィオラの拳がパパパパと4連続でクランメンバーの額に叩き込まれた。
「ぐえ!」「あだ!」「へぶ!」「むぎゅ!」
「態度が悪い! はあ、ゴメンねケティ。うちのクランの若手ってこんなのが多くて……個人的には貴女達とは仲良くしたいから、これに懲りずにまた声を掛けてちょうだい」
言うなり、ヴィオラは若手の5人を引き連れて離れていく。
「ごめんね」
アンも、最後にちらりとケティを振り返ると一言呟いてヴィオラに付いて行った。
そんなやり取りの間も、ギルドの検品所はずっと止まる事もなく喧騒に満ちている。
少しの言い争いなど冒険者にとっては日常茶飯事なのだろう。
「うーん、ヴィオラさんもアンちゃんも、エロダンジョンで一緒に遊びたいなあ」
去っていくCCのパーティを見送り、ケティがポツリと呟いた。
「ヴィオラさんがあんなに明け透けに話してくれるとは思わなかったわ。色々ストレスが溜まってるのかもね……」
「んへへ、もし皆が無理でも、ヴィオラさんとだけは絶対一緒にシたいね♥」
思わぬ確約を得たケティが目をキラキラさせて期待するのを見てミラはケティの頭を優しく撫で、ケティも頭を預けてミラに甘えた。
「さっそく知り合いになれてしまったけれど、しばらく討伐を繰り返してみましょうか」
「うん。オルガさんとも会ってみたいし、強いとこ見せたら注目してくれるかもだしね」
しばらく後、価値算定の終わったダンジョンワームを依頼主に引き渡す合意書を書き、そのまま依頼完了のお金を貰ってその日は帰るのだった。