デカパイエルフに産まれたからにはエッチな目に逢いに行く。 作:伊倉米磁
◆◇◆◇オルガ◆◇◆◇
「つーわけだから、この討伐で持ち込まれる素材はこの位の量になる予想だ。全部使う予定で祝賀会の会場と食事とかの手配頼むわ」
アタシはクラン『コレクトネス・クルセイダース』のリーダーとして、ちょっとした商談に来ていた。
「チッ……ダンジョンにゾロゾロと全員で入る必要はあんのかい?」
目の前に居るこの成金ババアはウチのパトロンである『ベルカント商会』の商会長、ベルナデットだ。
女所帯で何かと舐められていたウチは箔が付いて金も儲かる、ババアは冒険者業界を浄化するという『社会貢献』で名声を得る。
お互いにうまい取引相手として、もう何年もやってきた。
「結成10年だからな。ここらでもう一度連帯感ってものを高めておきたいんだよ」
ババアの手前自信満々に言うが、ウチは正直名声をほしいままにし過ぎた。
冒険者以外の町人から芸能人のようにチヤホヤされるせいで若手はつけあがっちまって、そろそろ古参も嫌気がさしている。
今回のこの大規模討伐でも、若手の不出来な所をひっきりなしで指導し続けることになるだろう。
これで何とか皆の気持ちが引き締まってくれれば良いんだけど。
「まあ、良いさ。別に赤字買取ってわけでもないからね……その代わり、向こう2ヶ月は宣伝に精だしてもらうよ」
またこれだ。このババアは年々目つきが悪くなって、私たちを何とか商売のダシとしてしゃぶりつくそうと余念がない。
「おいおいもうちょっとまからねえか? ヴィオラとアンの本業は冒険者だって事を忘れんじゃねえぞ」
「そうかい? ヴィオラなんか本当に良い脱ぎっぷりじゃないか。何なら人気の役者を宛がってやろうかね」
さすがに黙っていられないので声を荒げる。
「ふざけんな! ウチらがどんなクランか分かってんだろが!」
コレクトネス・クルセイダースは男の横暴から身を護るために立ち上げた。
あの日……アタシが味わった苦痛は未だに忘れちゃいない。
それはヴィオラだってアンだって同じなんだ。
これでも青等級の冒険者なんだが、ババアの面に小便とばかりに平然としていやがる。
「フン。男にレイプされたくらいで10年もギャアギャア喚いてんのはアンタらだけだろ? ウチの取引相手には他の町の男娼の居る娼館だってあるよ、アンタもスッキリして来たらどうなんだい」
「このっ……!」
ギリ、と拳を握る……が、もちろん殴るわけにはいかない。
青からは高位冒険者のはしくれだ。いざという時には魔界との戦闘に召集されるかもしれない兵士である私たちは、一般人に手を出すとかなり罪が重くなる。
その代わり、こういう有利な依頼前取引はむしろ合法なので、クランのためにも抑えるしかない。
「ケケケ。権力と金に首輪をつけられた雌犬を煽るのは楽しいねえ!」
「クソババア……! ろくな死に方しねえからな!」
ババアも出会ったばかりの頃はもうちょっとマトモだった気がしなくもないが。
(これが老いるって事か……)
怒りと失望混じりのため息をついて、さっさと退散した。
(あ、2ヶ月って話、そのまま呑んだことになっちまったか。ヴィオラとアンに詫びねえと……)
誰にも見られていない商会の廊下でだけ、肩を落としながら歩いたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ダンジョンワームの後も、毎日真面目に討伐をこなした。
体長で言えばダンジョンワームが一番大きかったが、やはり本物のダンジョンは嫌な敵が多い。
少しでも傷つけると破裂して他の魔物を誘引する体液をまき散らす『カマンドウマ』……ケティの頭くらいはあるカマドウマ……や、枯れ枝のように細く、動かない体勢から瞬時に刺して来る『ゴーストスパイダー』。
金にならない上、姿形も不快害虫みたいな奴らをかき分けて進まなければならない。
師匠はダンジョンの中の気配察知と視界の確保を一番重点的に叩き込んでくれたが、そのありがたみを実感している所だ。
今もまた、ダンジョンの苔むした壁に擬態して襲ってくる『モスキンク』を魔力による感知で狩った所だった。
「よし、これで最後だね」
「ええ、私が背負うから先導お願いね」
モスキンクとは全身に苔を生やしたトカゲなのだが、苔も本体も薬の材料になるものの、口も爪も傷つけられた所から膿んでくる……つまり有害な菌だらけらしいので、専用に背負子が必要になった。
幸いミラは昔よくやったらしく、郊外で製材している所から交渉で廃材を貰い、手際良く作ってくれた。
もちろん製材所のおっちゃんたちは大きな乳とミラのえぐいハイレグの股間に鼻を伸ばしていた。
(あの人たちとも全員セックスしたかった……)
さすがに業界の外の人たち相手に好き放題やっていると苦情どころではなさそうなので、いずれチャンスを伺うために笑顔で挨拶だけはしておいた。
……などと物思いに耽っている場合ではないとはいえ、来た道を戻るので待ち伏せはほぼない。
カマンドウマの体液も身体には1滴も付いてないし、ミラの指示で銀の槍に魔力の刃をスコップのように展開し地面を掘り返して埋めてある。
今もまた前方に気配がする……が、照明の範囲外なのでまだ仕掛けない。
これもダンジョンの常識で、悪意なく他の冒険者たちが矢を射かけて来たりすることもあるので注意するようにミラに言われている。
冒険者同士がダンジョンでやった事なので殺人罪に問われたりはしないが、相当評判が悪くなるし復讐なんかも見たことがあるらしい。
前回のダンジョンワームは殆ど人が来ない場所へ行ったから実感しなかったが今回は割とすれ違う事も多く、とりあえず殺しておけばいい魔物よりもドキドキする相手だ。
(挨拶代わりに全員とセックス出来れば良いのに)
とエロダンジョンが恋しくなった。
そんな討伐をこなして休むという日々を繰り返し、さあ今日は何を狩ろうかと考えていると受付に声を掛けられた。
「ケティシュさんとカミーラさんですね。お2人は昨日までの依頼で緑等級の資格ありと見なされました。今から昇級の手続きが出来ますが、お時間ございますか?」
という事なので、ありがたく昇級させてもらう事にして依頼掲示板を見ながら待つことにした。
「あら、ケティにミラ。また会ったわね」
振り返ると、ヴィオラと……筋肉質な金髪の女冒険者が居た。
「ヴィオラさん、おはようございます! また会えて嬉しいです!」
ドスケベ仲間と思っているので、ケティも気安い笑みを浮かべる。
ヴィオラは他の男冒険者たちが顔を顰めて距離を置いているのを無視してにこやかに近づいてくる。
「紹介するわ。ウチのクランリーダー、オルガよ」
「どーも。ヴィオラから聞いてるぜ。結構やるんだって? お前ら」
ニヤリと好戦的な笑みを浮かべるオルガは荒っぽい感じで、ヴィオラやアンよりも冒険者らしい感じがする。
ボブカットというのか短髪にしてはいるが、割とかわいらしさにも気を配ってる気配をケティは感じた。
「んへへ、それほどでも。今ようやく緑ランクになったばっかりですよ」
へえとオルガは笑みを深めた。
「良いねえ! 女冒険者が活躍してるとアタシまで嬉しくなっちまうよ」
そう言って笑うオルガは快活そのものという感じで、男にレイプされた過去など感じさせない。
どころか声がデカくて周囲の男冒険者を威圧していた。
「どうだい? ヴィオラには聞いてるけどよ、ウチに来る気はねえか? ラザロでやってくなら、入ってるとお得だぜ」
真面目な勧誘に、ヴィオラの方に視線を向ける。
笑みのまま微かに首を振ったので、性欲の事は言っていないようだ。
しかし、いつまでも隠していたところでケティの望む展開にならないことは分かり切っている。
「私たち、趣味がセックスなので。男の人と仲良く出来ないクランには入れないですね」
ギョッ、とした顔で周囲で聞き耳を立てていた男冒険者たちがケティに刺すような視線を送る。