デカパイエルフに産まれたからにはエッチな目に逢いに行く。 作:伊倉米磁
師匠は、この町で『近くにとんでもないダンジョンがある』という噂を聞いていた。
それは、『挑んだ男達は皆無様にケツを掘られて帰ってくる』とか、『潜りすぎると変態になって戻れなくなる』とか、そういう怪談じみた話だ。
ケティシュが想像したようなエロい事満載のダンジョンでなくとも、モンスターにケツを掘られる位は出来るはず、とドキドキしながら町に入る。
前の町もそうだが、いちいち城壁の門で兵士に取り調べを受けて、なんてことはやっていないようだ。城壁自体無い。
またも宿を取る。今回は恰幅のいい女将が対応してくれて、夜這いも期待できそうにない。
まだ1日も経っていないので身体を洗ってオナニーするのも我慢出来る。
涼しくなってきた風に美しいピンクの髪をなびかせ、意気揚々と夕暮れの町へ繰り出した。
向かう先は、酒場……に併設された冒険者ギルドである。
ダンジョンに挑む者の状況を管理し、戦力を把握することはこの世界にとって非常に重要な事だ。
持ち帰った素材、敵から奪った諸々のアイテムはギルドを通してしか売れない。
そこで税金が差し引かれるため、冒険者は殆どの税を免除される。
個人で売却状況を管理されているので実態のないものは追徴課税を受ける。
お前も馬鹿みたいな事を年中やってないで、税金収めなきゃ冒険者証剥奪だぞ、と師匠は言っていた。
そのケティシュのローブの内ポケットの中には、師匠から託された紹介状があった。
冒険者になるためには審査みたいなものは全く無いのだが、情報を集めるのに便宜を計ってやってくれという内容……だそうだ。
見るなと言われて封蝋してあるので、中身は分からない。
もしかしたら『このエルフ女はドスケベだから情報の対価に身体を要求しても良い』と書いてあるかもしれない。
そんな妄想をして可愛らしいエルフ美少女の顔をニコニコ笑顔にしていた。
道行く人がその美しさに振り返っているが、胸や尻を脈絡なく揉んでくるようなエロ同人RPG界の住民はおらず、足早にギルドへ向かう。
夕暮れなのでギルドには気配がなく、酒場にはすでに明かりが灯りワイワイと騒いでいるのが聞こえる。
後ろからやってくる冒険者らしき人達はケティシュにチラチラと視線をやるが、特に絡まれることもなく酒場へと入っていった。
ギルド入り口は酒場ともどもスイングドアになっており、所々漆喰や木材の壁に傷がある。
年中器物を破損する荒くれどもの気配、それはエロイベントの気配でもある。胸を高鳴らせながらギルドに入った。
奥にはカウンター、入り口左右にテーブル席、右の壁に大きなコルクボードがあって、紙がピン留めされている。
(冒険者ギルドだあ……)
絵に書いたようなファンタジー冒険者ギルドを見てテンションを上げていると、
「そこの子、何か用があるなら早くしてね」
と声をかけられてしまった。
てくてくとカウンターに歩いて行きながらケティシュは苦笑した。
「すみません、初めてで珍しくて。冒険者になりたいんですが、今手続きできますか?」
受付には妙齢の美人が座って、今日の分の書類整理で忙しそうにしていた。
しかし慣れたものらしく愛想笑いを浮かべ、さっと道具類をカウンターに取り出す。
「ええ、すぐ終わるから大丈夫よ。ここに名前書いて、この針でちょっと血を出してここに血判をお願いね。じゃ、ちょっと失礼」
そう言ってスマホのような平べったい板を取り出すと、ケティシュの顔に向け、すぐ仕舞った。
ケティシュは不思議そうにしつつささっと済ませると、受付嬢は奥のドアに入っていき、すぐ出てきた。
「はい、これが貴女の冒険者証。なくしたら再発行は1万ゼニーだから気をつけてね」
白くてのっぺりしたカードに、ケティシュの顔写真と名前がプリントされている。
(さっきの、カメラだったのか……ここだけ技術力がすごい事になってる)
何にせよケティシュには有益な傾向だった。
(映像を記録出来るのなら、絶対エロ本とかAVとかあるよね……ゆくゆくはAV嬢にもなってみたいなあ)
AV撮影というのもエロ同人RPGの定番シチュの一つと言える。
ギルドだけでなくAV監督にも撮影機器が持てるような世界観であることを、ケティシュは祈った。
「で、これが冒険者の基本的なルールについて書かれた冊子。大切なものだから無くしたりしないでね。宿でちゃんと最初から最後まで読むように」
「はい」
師匠の言っていた、税金関係の事などが書かれているのだろう。ケティシュも今年からは納税者になるわけだ。
「あ、そうだ。私の師匠が冒険者なんですが、これをこの町のギルドに渡してくれって」
「ん? ええ……はい。分かりました。ギルド長宛……? 渡しておきますね」
特にそれ以上やらなければならない事は無いため、それじゃ、と挨拶してケティシュはギルドを去る。
その足ですぐ隣の酒場に入った。
スイングドアを開けると、付いた鈴がチリンチリンと鳴る。
「ヒュウ♪」
と誰かがケティシュを見て口笛を吹いた。
鼻の下を伸ばした、いかにも性欲が強そうな中年男性。
内心期待しながら空いている席に座った。
「ご注文は?」
貧乳だが可愛らしい女性がウェイトレスとして注文を聞きに来た。
「えっと、これとこれで」
あまり高いものを頼むと懐具合がまずいことになるが、冒険者御用達だけあって安い肉料理が充実している。
前世と同じく鶏肉が安いようで、鳥野菜炒めと蒸かしたじゃがいもを頼んだ。
周りの会話に耳をそばだてながら塩味濃いめの料理を楽しんでいると、
「よう、お嬢ちゃん! 見ねえ顔だな?」
さっき口笛を吹いた男がテーブルの隣にどっかりと腰掛けた。
「はい! ついさっき冒険者になったんです! ほらっ」
指に挟んで冒険者証を見せる。
「だっはっは! そりゃ真っ白だわな! 俺のはホレ、これだ」
男が見せてくれた冒険者証には、顔写真の隣の名前の下に赤、橙、黄の三つ星が並んでいた。
「仕事をこなして行くとランク昇格試験ってのが受けられる。ランクが上がれば受けられる仕事も変わっていくってわけだ」
「へえー、そういうシステムなんですね」
と言いつつ、ケティシュは貰った冊子を広げる。割と薄っぺらいそれにも、ランクの赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の事が記載されていた。
邪険にされない事で気を良くしたのか、男は更に続けた。
「ま、この仕事はなんだかんだで体力勝負だからよ。お嬢ちゃんみたいな小柄な子には厳しいぜ? どうだ、俺とパーティを組んで一緒に……」
「あの、この辺の噂について訊いていいですか?」
(絶対にパーティを組んで私にナマハメ
と思ったケティシュが話題を変えた。周りの冒険者の目が鋭くなっていたので何もしなくても安全だったかもしれない。
「ん? う、噂? ああ、まあ……」
ヤリチンを冒険の仲間にするというのは大いにアリなのだが、まだケティシュは処女だった。
(これしか無い! ってシチュで処女喪失したいから……今はごめんね、スケベなおじさん)
「この辺に『とんでもないダンジョン』っていうのがあるらしくて、それを見たいんです」
男の顔が引きつった。
(この反応……当たりだ! すごい! エロダンジョンは本当にあったんだ!)
思わずケティシュは身を乗り出し、テーブルに長乳がぐにゃりとたわむ。
「知ってるんですか!? お願いします、教えてください!」
「い、いや、お嬢ちゃんの耳に入れるようなことじゃねえよ」
「お願いします、その噂を確かめるために故郷から旅に出たんです!」
ケティシュとパーティを組もうとした所で周りから薄っすらと殺気がしていたが、和らいでいく。
左のテーブルに座っていた別の男から声をかけられた。
「くっく、お嬢ちゃん。その噂を訊くなら確かにそいつが一番だぜ。なんせ、」
「うるっせえボケ! 黙ってろ!」
「ぎゃっはっは」
なんだか男同士のじゃれ合いが始まってしまったが、ここで引き下がるわけには行かない。
「やっぱりご存知なんですよね? お願いします!」
がたん、と椅子を立ってテーブルに手をついて身を乗り出した。
男は狼狽しつつも、ローブの中に覗くケティシュの長い乳が鉛直方向に引っ張られている光景に鼻の下を伸ばす。
「わ、わかったよ。ていうか、場所を教えてやるから自分で行けば良いだろ」
「ありがとうございます!」
エルフ美少女、しかも低身長で爆乳という極めて男好きのするケティシュがにっこおおおと満面の笑みを浮かべると、周りの冒険者が息を呑んで魅入ってしまう。
視界の隅でウェイトレスがお盆を円月輪のように構えて騒動に備えているのが見えるが、ケティシュはとりあえず自分の身体を使って気分良く喋って貰うことにした。
「いや、別にそんな礼を言われるほどじゃねえよ。山を登った所にある町から普通に行けるダンジョンだからな」
遠くから見えていた山の、反対側の中腹には町があったらしい。
「そうなんですね! 誰でも入れるんですか?」
「ああ……そうだな。魔物から、その……良い稼ぎになる素材が手に入るんでな。危険だが、金に困った奴らが行ったりするんだよ」
いきなりしどろもどろになる男を見て、ケティシュは師匠から聞いた話が正しそうだと小さな鼻の穴を膨らませ、んふーと息を吐いた。
「ありがとうございます! ぜひ行ってみますね!」
周りの男冒険者どもは気まずそうにしたり、ニヤニヤと下品な笑みを浮かべたりしている。
(ああ、私がエロダンジョンに興味を持って、そこでエッチな目に逢ったら……この人達もその噂を知るんだ……♥)
ケティシュとしては淫乱女だという噂が広まった後でこの酒場に来てみるのも楽しみだった。
(その時は、行きずり冒険者乱交できちゃうかも……♥)
ニッコリと笑った可憐な少女の顔の下で、セックスを待ち望む淫蕩な思いに溢れる唾液を飲み下し、細い喉がこくりと鳴っていた。
翌日。朝一で発ったケティシュは、ついに目的の町へ足を踏み入れた。
3度目ともなると慣れてきた宿を取り、今度も女将だったのでエロイベントは起きそうにないと思う。
しかしエロダンジョンへの無限の期待があるのでケティシュはニコニコと上機嫌だった。
「ギルドっ、ギルドっ!」
まだ昼過ぎと言った所の町を、革鎧でも抑えきれないほどにユサユサと長乳を揺らしてケティシュが駆ける。
「すみません! この辺りのダンジョンに入りたくて来たんですけど!」
案の定酒場と併設されているギルドのスイングドアを開け放つと同時に呼ばう。
「あ、ああ……? ダンジョン? いや、ここにはそんなもんはねえよ」
「あるんですよね!?」
爛々と輝くターコイズブルーの瞳で、ギルド職員の中年男性を真正面から見つめた。