デカパイエルフに産まれたからにはエッチな目に逢いに行く。 作:伊倉米磁
いつ来るか分からないという話だったが、2時間ほど待つと明らかに腕の立つ冒険者の集団が受付へと向かっていき話し込んでいたので、恐らくアレだろうと当たりをつける。
深刻な顔をした受付嬢が奥に引っ込むと、しばらくしてまた出て来た。
受付嬢はカランカランカラン、と手に持ったベルを鳴らして注目を集める。
「ギルドからの緊急依頼です。緑等級以上の冒険者は傾注してください!」
ケティが冒険者登録したときに貰った、あの紙ペラにも書かれていた、緊急依頼。
個人レベルでは対処できない事態が起きた時に半ば以上強制で冒険者を駆り出す制度だ。
これが魔族の侵攻、すなわち新ダンジョン発生であれば青以上のみが動員されるらしいが……受付嬢は言葉を続ける。
「ダンジョンの奥で違法なローパーの養殖が確認されました。見た限りで数十匹、いずれも発情期でした」
ラザロのダンジョンには天然のローパーが居ないので、あまりざわついていない。
傍らでミラがギュっと拳を握ったのが分かった。
「ローパーはその周辺にいた女性、つまり確認できる限り全員クラン『コレクトネス・クルセイダース』所属の冒険者を捕らえています。そのため存命と思われますが、早急に救出する必要があります」
つい最近、ミラにローパーの話を聞いたばかりだ。
野生のローパーは他種族の雌の胎を使って卵を孵すという。
エロダンジョンのピンクローパーではなく本物のローパー相手なら、精神はもちろん膣や肛門にケガをしていてもおかしくないので普通に心配だった。
これがケティ自身であればスキルで対策しているのでいつでも産んであげる所なのだが。
「これより討伐隊を編成します。緑等級以上の方はこの場で緊急依頼書に署名してください」
ケティは真っ先に署名に行った。ミラも続く。
「へっ、女の子に先陣切られちゃあ、やらないわけにいかねえな」
「CCが種付けされてんのが見れるんだろ? いくいく!」
そんな事を言いつつ、その場の冒険者が署名していく。
一通り終わると、調査隊の男たちを率いていた一番厳つい顔の男が前に進み出た。
「皆! 聴いてくれ。俺はゴドウィン、青等級だ。この場には青以上は俺しか居ないから、ひとまずこの場を仕切らせてもらう」
スキンヘッドで浅黒い肌の上、顔に刻まれた傷も歴戦を主張する。
低く落ち着きのある声で、スピーチにも慣れている感じがする。
偉くなるとそんなことまでしなきゃいけないんだなあ、とケティはぼんやり思った。
「ローパーってのは単独でそこまで強いわけじゃないが、群れで発情期ってのが気を付けるべき点だ。媚薬の霧を吸えば興奮して正常な判断が出来なくなるし、卵を孵そうとしてる母体を奪おうとすると激しく抵抗される。1体に付き3人位の鞭使いと対峙するようなものと思ってくれ。あと、ローパーは火に弱いんだが今は人質がいる、なるべく命が無事な状態で助けて欲しい。もし自分が救出される側になったらと思って加減してくれよ」
うげ、と冒険者たちが嫌そうな声を出す。
「今回は、なんせ数が多いからこの場にいる全員の協力が必要だ。ひとまず5人1班で分けるから、その中でリーダーを決めてくれ。今後はそのリーダーに説明をして、リーダーが各班を率いてもらう」
ケティはミラと2人組なのでバラバラにされても困るが、まとまりが無いのも困る。
キョロキョロと素早く辺りを見回すと……良い感じに3人組ですという感じで立っている冒険者が居たのでミラを引っ張ってソロソロと少し近くに寄っておいた。
しばらくしてゴドウィンが近くの人間を大雑把に5人にまとめだし、目論見通りケティとミラは3人組と一緒になった。
「じゃあしばらく任せるから、リーダーが決まったら報告に来てくれ!」
そう言われたので、班の中でとりあえず挨拶する。
「あ、お、俺レオナルドです」
「ジェイコブです! よろしくっ!」
「……ト、トーマスです……」
しょうがないとは思うが、ケティとミラをみて鼻を伸ばしていた。
普段なら乱交しながらのんびりダンジョンアタックするところだが、今回は本当に危険になるかもしれない……と思っていると、ミラが前に出た。
「皆さん、これから行くのは緊急依頼。本当に危険な所なんです。気を引き締めないと危ないですよ」
窘めながらも彼らの身を案じていることが伝わってくるミラの声音に、3人はハッと目を見開いた。
「すっ、すみません!」
その言葉に反発するでもなく顔を赤くして頭を下げてくれる辺り、良い人ではあるのだろう。後でぜひセックスしたい。
じゃあさっそくリーダーを、という事になったが……
「いえ、ぜひミラさんがお願いします」
と3人が言うのでサクッとミラがリーダーに決まった。
ミラが話を聞きに行く間、ケティはチームの人と会話する。
「ね、3人はずっと一緒に組んでるの?」
挨拶がてら、ケティ達に遠慮した言葉遣いは要らない事も伝えておく。
「え、あ、おう! そうだよ。まあ10年くらいやってるな」
「ま、いつまでも青になれそうもないけどな」
「上がりたきゃラザロから出て攻略されてないダンジョン探さないとだしな」
直接戦闘以外にも、未踏のダンジョンでちゃんとした地図をギルドに収めるなど貢献によってランクが上がる事もあるらしい。
地図作りの過程で逃げる位は出来ないといけないので、得意分野の違い程度でしかないらしいが。
「ケティは……最近緑に上がったんだよな? 1年もやってないのに大したもんだ」
「ありがと♥ CCの皆を助け出せたら、また一緒に遊ぼうね♥」
「おっ、おう! ぜ、絶対だぞ? ……あだっ! お、お前ら!」
「ミラさんに言われたばっかだろ!」
「抜け駆けしやがって」
また鼻息が荒くなるレオナルドが仲間にガスガス殴られるのを眺めていると、ミラが戻って来る。
「ただいま……って、どうしたの?」
「ん-ん、お話して親睦を深めてたんだよ♥ それで、なんだって?」
絶対セックスの約束とかをしたのだろうとミラは思ったが、突っ込むだけ無意味なので話を進めた。
「単純に、この地図の場所へ向かってローパーを狩るって作戦よ。班ごとに受け持ちの場所が決まってるから、念入りに探して行方不明者がいないようにって」
すべての班の範囲を合わせたものだろう領域が黒の斜線で示され、ケティの班の担当領域が赤の斜線で示されている。
道順を確認していると、ゴドウィンが声を上げた。
「急かしてすまんが、至急準備を整えて、30分後北東のサブゲート前で集合だ! ダンジョン内でキャンプも想定してくれ! 遅れた奴はギルドの評価に減点が付くぞ!」
ダンジョンの中で50人も人探ししないといけないので、確かに日をまたぐ事も考えなければならないだろう。
班の皆と顔を見合わせて頷くと、ダッシュで宿に荷物を取りに行った。
「まさかこんな風に役に立つとはね……」
無事に遅刻者無しで出発し、ミラも緊張した面持ちで呟いていた。
班は全部で6つ、30人からなる冒険者が縦列でダンジョンを歩いていく。
「しっかし、ローパーの養殖かあ……話には聞いたことあるけど、ここで起こるとは思わなかったぜ」
ジェイコブが顔を顰めながら言った。
「ふぅん……噂とかも無かったんだ?」
「まあな。もしあったらギルドの怖ーいお兄さんたちが裏から調べて始末しちまうよ」
ジェイコブはそんな風におどけて見せるが、実際まずい事態なのは分かる。
「……実際ギルドの怠慢じゃないか? こんな大事になるまで気づかないなんて事あるか?」
「つっても、普段からダンジョンに出入りする俺たちも、今回ヤられたCCの連中も知らなかったろ」
「ローパーって事は媚薬だろ? その辺りちゃんと監視して取り締まって欲しいぜ」
レオナルド達も愚痴を言い合っているが……違法行為の尻ぬぐいで命がけの戦いを強制されているので不満も出るというものだろう。
ケティは努めて明るい声を出した。
「まあ今回で明るみに出たんだから、それこそギルドの人が調べてくれるよ。それより、こっちにも魔物来るよ」
「おっとすまねえ!」
大勢が急ぎ足で移動するので、ダンジョンの生き物も激しく反応している。
元からか改造されたのかは分からないが……ダンジョンの生き物は大勢の侵入者には向かってくる性質がある。
CCは大勢を引き連れて狩りに行ったが、寄ってくる魔物を狩れるという自信があればこそだろう。
寄ってきた魔物はケティの班も含めさっさと始末し、死体はそのままで先を急いだ。
そして数時間後。以前のケティの速度なら30分もかからない、ガンバンジーを倒した地点を通り過ぎてしばらく。
ゴドウィンが立ち止まって全員に声をかけた。
「ここからが捜索対象の領域だ! 各班、くれぐれも気を付けて捜索してくれ! 我々の班は、定期的に各班の無事を確認するため巡回する! 救助した人が居る場合は我々が引き取るから、無理に探索はせずその場で待ってくれて良い! 増援も来る予定だから心配するな!」
そういうと、皆が分かれ道を別々に歩いていく。
「私たちも行きましょう」
ミラの声に、皆が頷いた。