デカパイエルフに産まれたからにはエッチな目に逢いに行く。 作:伊倉米磁
さすがに火事の件をCCの人が知らないのは困るだろうという事で、良い感じに出て来たクランハウスに戻る。
入口で呼び鈴を鳴らすと、今度はちゃんとアンが出てきてくれた。
「ケティ、また来てくれたの? ……オルガ? なんかギルドの人が来て連れて行った」
というので、ケティ達もギルドに行く事にした。
ギルドに付くと、やはりというか皆がザワついている。
見知った顔が居たので声をかけてみる事にした。
「トーマスさん、これって何の騒ぎ?」
「お、ケティちゃんか。いやとんでもねえ話だぜ。俺たちの斃したローパー、あれを養殖してた犯人……というか組織が分かったんだよ」
「早いですね」
「ま、養殖施設を抑えたからな。で、それがベルカント商会……CCを支援してたとこだってわかったんだが……」
もしかして、とは思ったが。
「商館が燃えてるのは見ましたよ」
「で、証拠も主犯も燃え尽きて真相は闇の中だ。ギルドがザワつくのも当然だろ。なんせダンジョンのあんな所で50匹だぜ? どう見てもギルドにも内通者が居るよな……」
犯人を捕まえられれば供述で内通者を特定できるが、出来ないので自力で犯人捜しをするしかないようだ。
商売や輸出の実務を担当した奴らは捕らえられ、今はギルドの『怖いお兄さん』達に拷問……いや取り調べを受けているらしい。
「あの様子じゃ、内通者の情報は訊き出せてないようだな」
未だギルド職員が頻繁に行き来し、普段よりだいぶ緊張した顔をしているのを見てトーマスは溜息をついた。
ケティはオルガがこの件にどう関係しているか考え、首をひねった。
「オルガはこっちに来てない? 呼び出されたって話なんだけど」
「……ベルカント商会は相当やらかしてたみたいでな。ラザロから出ていった女冒険者が数年に1人位は誘拐されてたらしいぜ。ほら、掲示板見てみな」
言われて一緒に掲示板まで歩いて行くと、依頼書を脇に押しのけて大きな貼り紙があった。
――この数年でラザロを出て行方の知れない冒険者の情報を集めています。ご存じの方はギルドへ。
ちゃんと報酬のついた依頼だった。
冒険者ギルドではギルドカードで活動記録を付けているため、他の町で冒険者を続けているのならすぐ知れる。
ベルカント商会はどうやら結婚、家業を継ぐ、良い転職があった、などの理由で出ていった女冒険者を誘拐していたようだ。
女性だけ誘拐、違法な媚薬と合わせれば目的は分かったようなものだろう。
「CCのメンバーもって事ですか?」
「詳しくないが、多分な。ポスターでいつの間にか顔見なくなった奴とかいるし……冒険者を引退するのは珍しい事でもねえ」
もしかするとローパーに犯されるよりもオルガにはショックな出来事かもしれない。
誘拐された人は今生きているかどうかすら分からないのだから。
ケティはお礼という事でトーマスと連れ込み宿へ行き一発
そしてギルドで待ってくれていたミラと合流すると、しばらくしてオルガがフラフラと出てくるのが見えた。
「オルガ、大丈夫?」
「ケティ? あー……面倒かけたな。はぁ……クランハウスに行きながら話すか」
ギルドの建物を出てからの方が、むしろオルガへの好奇の目線は増えているようだった。
「ギルドからの依頼の事は聞いたか?」
「行方不明者を探すっていう?」
「ああ。どうやら……ウチのメンバーで、ポスターなんかで人気になった奴が狙われてたらしい。クソッ……! 良い職場があるって……言ってたのによ……!」
オルガの目にはローパーレイプで落ち込んでいた時にさえなかった涙がにじんでいた。
今回の件を受けて、オルガの証言を元にメンバーが去った町で軽く情報収集したらしい。
数時間程度待っただけで確かめられるのは通信機器があるとしか思えないので、さすがギルドという所だろうか。
それでいて民間人には手紙位しか個人での通信手段がないのだが……
「ついでに、商会の奴らがアタシたちを襲ったローパーを養殖してたって話も聞いたよ。本当に……ふざけた奴だぜ。あのババア……さっさと死んじまいやがって」
そう言いつつも、オルガの顔は複雑な心境を表したように顰められていた。
「ババアが何考えてたかはさておいても、これからアタシたちの収入源は昔に戻る。貯えがあるとはいえ、今のクランハウスのローンも早晩払えなくなるな……」
ケティとミラはもはや何を言って良いか分からず、せめてオルガへの視線を遮るべく左右に侍って歩くことしか出来ないのだった。
今度こそクランハウスの前で別れる。
「色々世話になったが……さすがにこれ以上甘えてられねえよ。ま……こっちはこっちでなるようになるさ」
そういうオルガの顔は大分消沈していて、前を向いてもなお厳しい現実に打ちのめされていた。
甘えていられないとは言われたものの、さすがに気になるので翌日もクランハウスに行く。
「おはようケティ、いらっしゃい」
今日はヴィオラが出迎えてくれる。
「もうお酒は抜けてるみたいだね」
「飲むもの無くなっちゃったんだもの。……アンが初めて私のお酒に付き合ってくれてね。美味しくて飲みすぎちゃった」
昨日よりずいぶんとスッキリした顔をしたヴィオラに、1階のリビングに案内してもらう。
共用スペースといった感じで、質のいいソファに向かい合って座った。
「ケティだから話すけど……正直色々と大変でさ。今のままじゃ立ち行かないのは分かり切ってるのよね」
「お金とか?」
「そうね。クランハウスだって支援ありきだもの。こんな枯れたダンジョンじゃ幾ら狩ったって維持できないし、キャンプとか冒険用品もクランでまとめて商会から安く仕入れたりしてたし」
でも、と前置いてヴィオラが続けた。
「最初はそんなの無かったんだから、お金が無いだけなら続けられる。……ラザロの町の人たちが今の私たちをどう見てるか知ってるでしょ?」
「うん……」
普段ポスターでアイドルのように見ている女冒険者がローパーに犯されて乱れまくったという事実を多分に含んだ噂は、未だラザロ中に広がっている。
「新人の女冒険者を守るどころか、私たちが守られないといけない立場よ。もう諦めたらってオルガには言ったんだけどね」
オルガを励ましたおとといの様子を見るに、ちょっとやそっとで退くことはないだろう。
「ま、オルガも帰って来てから凄くしょげちゃって反論も出来ずに黙っちゃったんだけどさ。本当、どうしようかしら。商会がもってくる仕事と相殺でローンと維持費を払ってたんだから。来月か…再来月位で限界ね。そもそもローンだって商会の信用で組んでくれたものだし、返済を厳しくされるかも……」
ヴィオラはどっかりとソファにもたれ、天を仰いだ……と思ったらグンと起き上がってケティに顔を近づける。
「ってワケでさ、真面目にエロダンジョンで活動するのもアリかなって思うのよね」
その一言を聞いて、ケティの目が輝く。
「いいの!?」
「これ以上下がる評判もないし、今なら空いてるんでしょ? 個人的には枯れたダンジョンよりもまだ見ぬ階層がある方がテンション上がるしね」
「うんうん! 皆が来てくれたらきっと今より行けるところが増えるよ!」
果たしてエロダンジョン50階肉ダンジョンの先が何なのか、ケティもずっとワクワクしている。
「さっき言った通りオルガは絶対嫌がるから、まずは志願したメンバーを一時的に避難させてあげるって名目で行こうと思うの。聞いたわよ? ステイシーの事もパクッと食べちゃったんですってね♥」
「んへへ、仲良くさせて貰っちゃった♥」
もちろんケティとしては即日お持ち帰りしたいので、さっそくステイシーの部屋へ行く。
廊下に出てケティ見るなりハグしてくる。
「イクイク! すぐにでも出発できますよ!」
ステイシーはキラキラと目を輝かせていた。
話が出てからずっとケティのホームタウンであるリンボの町……エロダンジョンのある鉱山町……に行くのを待ちわびていたらしい。
「今の所志願したのはステイシーだけね。さすがにアイドルみたいにちやほやされる生活からの落差で戸惑ってるみたいだけど……まあ半分以上はそっち行くんじゃないかしら?」
エロダンジョンの階層を拡張するには毎日30人位の利用者が必要という話だったので、何とか行けそうだ。
「よーし! それじゃ、ポータルの予約が取れ次第出発しようよ」
本当の意味で新規の女冒険者が増える事になってウキウキのケティが満面の笑みで言った。