デカパイエルフに産まれたからにはエッチな目に逢いに行く。 作:伊倉米磁
◆◇◆◇アン◆◇◆◇
普通の冒険活動を再開するというと、皆渋い顔をした。
「同じことの繰り返しになると、時間かかっちゃうよ。仕事すれば気も紛れるし、お金も稼げる」
そう言うと、ヴィオラは苦虫を嚙み潰したような顔で私に賛成してくれた。
ヴィオラにも援護してもらって、何とか行けそうなメンバーだけで冒険者としてダンジョンにいく事にする。
――お、アンちゃんだ……あんなちっちゃくて可愛いのにヤッてるんだよな?
――あいつら全員ローパーで善がったんだろ? 見たかったなあ!
ケティならそのまま声をかけてセックスが始まるかもしれないけど、私はまだまだそんな域には至れない。
いやらしいというより馬鹿にする感じが強いとムッとしてしまう。
メンバーたちも俯いて顔色が悪いので、適宜手を引いて歩いた。
(やっぱり、まだ早かった?)
と弱気が顔を出すが……引きこもったところで噂が消える保証も心の傷が消える保証もないので、とにかくやり切ろうと歩き続ける。
まず仕事を請けるためにギルドに顔を出すと、皆が一斉にこちらを見てきた。
居心地の悪さに回れ右しそうになるが、後ろにいるメンバーたちの存在が踏みとどまらせた。
「コレクトネス・クルセイダースのアンさんですね。すみませんがこちらに来て頂けますか?」
声をかけて来たのは、意外にもカウンターの向こうのギルドの人だった。
訳も分からず行ってみると、トレイに革袋を何個も積んで差し出される。
「こちら皆さんが先日行った討伐の素材売却分となります」
最初、言っている意味が良く分からなかった。
10周年討伐。実質、ベルカント商会のボーナスというか……広告の仕事の報酬を別の形で払われただけではと思っていた仕事。
しかも、帰ろうという時にローパーに囚われたから、結局素材とかキャンプも置き去りになったはずだった。
目を丸くしていると、受付嬢が微笑んで説明してくれる。
「皆さんを救出した冒険者達を中心に、ボランティアで残された装備一式と素材を運んでくださったんです。テントなんかは会議室に積んでありますから、後で持ち帰ってくださいね」
「皆、が?」
言うまでもなく、大勢の男冒険者という事。
「私たち……冒険者からの評判は良くなかったのに」
「へへっ、良く分かってんじゃねえの」
「おい、レオナルド」
「あなたたちも……運んでくれたの?」
「まあな。俺たちは……ホラ、救助で良い目も見れたし……いやアンタらの姿の事じゃねえぞ」
レオナルドさんはまた小突かれ、他の人が代わりに喋った。
「クランに属してねえ女冒険者からの評判は良いからな。俺の知り合いにも、アンタらに助けられた女冒険者がいるんだ。態度はさておき……活動は評価してる奴多いんだぜ」
本当に……情けないと思った。
私はそんなことも今まで全然知らなかったから。
皆が頑張ってきたことは……全部が馬鹿にされてたわけじゃない。
そう思うと、何か胸にこみ上げてくるものがあった。
「へへっ、まあこれを機にお近づきになれたらなって下心もあるけどよ!」
照れ隠しに笑う男冒険者たちを見て、
(ああ、この人たちならセックス出来るかも)
と自然と思う。ケティならもうしゃぶりついてるかもしれない。
私はギルドを見回してみる。
突き刺さると思っていた視線は、気づかわしげだったり無事な姿を見せたホッとしたものだったり……想像とは違っていた。
大人数で怯んでしまうけれど、それでも何とか皆に対して言葉を紡ぎ出す。
「みんな……ありがとう」
こんな時……ケティならどうするだろう?
「あの……いつか……個人的にもお礼するから……♥」
言ってて恥ずかしくなり、うつむきがちで赤面しているのが自分でもわかる。
「お……」
「「「「「おおっ!!」」」」」
目の前にいるレオナルドさんたちの声をかき消すように、ギルド中に野太い声が響いた。
せっかく仕事をしようと出かけたけど、皆と話して荷物とお金を持ち帰るのを優先する。
町の人たちはさっきと全く同じ、いやらしく小ばかにした視線とかヤジを送って来たけど、皆今度は前を向いて歩いていた。
「まぁじで!? やったあ! これで相当楽になるわ!」
帰るなり、ヴィオラが眼の色を変えてお金を数え始める。
オルガは恐る恐るヴィオラに声をかけた。
「あ、あー……これでタイムリミット伸びたり……?」
「しない!! ……よし、これで宴会予約のキャンセル料は問題なし、討伐依頼の違約金も払わなくて良くなった」
ブツブツ呟きながら金勘定に戻るヴィオラを何とも言えず見送るオルガに、ギルドで聞いた話を告げる。
「アタシたちの活動も……ちゃんと……役に立って……たん゙、だなっ……!」
震える拳を握り締め、オルガは初めて私の前で泣いた。
つま先立ちになってオルガの頭を引き寄せる。
鎧を着てるので頬をくっつけて頭を撫でてあげると、嗚咽が漏れた。
「ううっ……ぐずっ……」
冒険者の装備をしたメンバーも、家で家事をしていたメンバーも……涙ぐんで私たちを見守っていた。
「ありがとう、オルガ。私もオルガに助けられて、今まで育ててもらった。ずっとずっと大好きな、私のお姉さんで、お母さん」
「やべろよ゙……ながぜんなって……」
今まで言えなかったことが、するりと口から出てくる。
私も涙が溢れ、オルガとしばらく抱き合っていた。
◆◇◆◇ヴィオラ◆◇◆◇
皆、涙ながらにほっこりした空気になってるけど……私は手を止めるわけにはいかない。
破棄になる契約とそのための商談の内容をまとめ、話のもっていき方を事前に考える。
さっき解決した2件が確実な借金と見なされていたから足元を見られて今まで煮え湯を飲まされたけど、これで色々状況が変わった。
理想的なプランとしてはクランハウスは今月のローンを払う期日までに引き払ってしまいたい。
ひと月でも相当な額なので、残しておければ後の展開の自由度がかなり変わる。
アンは冒険者の仕事をしてくれるというけど、正直そこは金額としては焼け石に水といったところ。
(うう……これを終わらせて、エロダンジョンでセカンドライフよ……)
常識的にはありえない、意味不明なほどの穴場。
エロ女というのが噂でなく本当の事と扱われるのは避けられないが、今はもう別に良いやと思う。
いっそのこと、今引きこもってる奴らも全員セックス漬けにして本物のスキモノ女として開き直って欲しい。
半ば本気でそう思いながら、必死に目の前の仕事を片付けるのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇