サキュバス化催眠アプリ 〜巨乳黒髪眼鏡の図書委員の彼女に〜 作:Rオウ
「え? ぶつけるの?」
リビングでソファに寝転がってる翠が気だるげにそう言ったので思わず聞き返した。
私を見もしない。姉が相談したというのにその態度はなんだ。
私を姉だと思ってないな?
「そう、ドーンとね」
「だ、だめだよ。ヒロくんにそんな酷いことできないよ? しかもワザとだなんて」
ムカつく。
「分かってないなぁ、お姉ちゃんは」
「何がよ?」
「これはご褒美なんだって」
「ご褒美?」
「そう」
「胸をヒロくんの頭にぶつけるのがご褒美!?」
「当り前じゃない。ねえ、お母さんもそう思うよね?」
キッチンで晩御飯の調理をしていたお母さんが振り返って断言した。
「ええ、ご褒美ね」
「ほらね?」
「えぇえええええっ!?」
「お姉ちゃん、自分の武器を理解しようよ? 入学してすぐにヒロシくんとお弁当を一緒に食べるように仕向けたのはファインプレーだったけどさ? その後がもう全然じゃん」
「ぜ、全然ってことないよ? 今じゃ下の名前で呼び合ってるし。凄いよね? これ凄いよね。私すっごい勇気振り絞ってヒロくんに提案したんだよ?」
「そんなの基本でしょ」
「き、基本!? これって基本なの!?」
ほんとに!?
全国の女子中高生の女子力ってそんなに高いの!?
「その……半信半疑だったけど、クラスにヒロくんを狙ってる女子がほんとにすごく多くて焦っちゃって、一生分の勇気振り絞ったのに」
「だから競争率高いって言ったでしょ。誰だって狙うわ」
「……ヒロくんは普通だもん」
「まだ言うか、この姉。あのさ、ヒロシくんを狙ってる女子の名前ちょっと言ってみてよ」
「えっと目立ってるのは
「全員サキュバスの家系じゃん」
「え? ええ?」
「お姉ちゃんさぁ? 一族の家系くらい把握しておこうよ。一応みんな遠い親戚なんだよ?」
「い、いやでもサキュバスなら
「お母さんその子たち知ってるわよ。久珂さんと嶋久さん、佐久間さんとこのお子さんでしょ? 血が弱かったらしくて、サキュバスの力が発現しなかったって聞いてるわ。町会長さんと今もよく相談してて、血の濃い有望な男性を探してるとか以前聞いたことがあるわ」
「えー」
そうだったの?
全然知らなかったんだけど。
「ほら、モロにライバルじゃん。だからおっぱいぶつけるくらいやらないと取られちゃうよ。血が発現してなくてもサキュバスはいい男見逃さないし。ライバルは素顔のまま、美人でスタイル抜群なんでしょ?」
「む、むむむー」
◇◇◇◇◇◇
「なんか、あと一押しが足りない」
「一押しって?」
ソファに寝転がった翠がひじ掛けに頭を乗せて、TVを見ながら興味なさそうに返事してきた。
「お母さんと翠の言う通り胸とかお尻をことあるごとに押し付けてるんだけど、最近ヒロくんの反応が鈍いの」
「ほーん」
TVに集中している翠が生返事を返してきた。
ヒロくんと番になれなくても、最悪お見合いすればなんとかなるでしょって翠は思ってるらしくて、時々私への対応が雑になる。
私はお姉ちゃんなのに!
妹から敬愛されてない!
「今日なんかヒロくんの肘に胸を押し付けたらこう……スンってなって。分かる? スンって感じ。無の境地っていうのかな、急にヒロくんの姿勢が良くなるし」
「……姿勢が良くなるって何?」
「あの独特な感じを説明するのはちょっと難しいんだけど……そうだ! 武士! 武士みたいな雰囲気になるの」
「余計分かんないんだけど……ヒロシくん慣れちゃったんじゃないの。お姉ちゃん加減って知らないしさ~、四六時中やられてると有難味って減るみたいだよ?」
「……そうなのかなぁ」
◇◇◇◇◇◇
キッチンで夕食の準備を始めたお母さんの側に行くとすぐに見咎められた。
「つまみ食いするにはまだ早いわよ?」
「ち、違うよ。つまみ食いなんかしないし!」
お母さんがじっと私を見る。
娘を信用しない母親が目の前にいる。
とりあえず本来の目的を伝えねば。
「あのね? これから自分のお弁当は自分で作ってみようかなって思うの」
「青子がお弁当を!?」
「ほら、料理の上手な女子って好感度高くなるみたいだし」
「今まで料理なんかしたことない青子が!?」
「確かにやったことないけど、やればできる子だし、私」
「やれば……できる子……」
「包丁持ってトントントンって」
「包丁持って……トントントン……」
「なんで復唱するの?」
◇◇◇◇◇◇
「撮影会?」
最近、翠は私の相談事を露骨に聞き流すようになってきた。
なので今私はソファに寝頃がった翠の足をマッサージしている。
足裏の良い感じに痛気持ちいいツボをギューッと押す。
「おぉ……おふっ………………誰の?」
「私の」
しょうがないなぁ、聞いてあげるよ? みたいな雰囲気をようやく出し始めた翠が首をひねって私の方を見た。
「雑誌モデル? お姉ちゃんいつの間にオーディションなんか受けたの?」
「いや、そういう凄いのじゃなくて」
「じゃあ何?」
「えっと……ヒロくんがスマホで私を写すんだけど」
「ほーん…………順調そうじゃん」
興味を無くしたのか、翠が再びうつ伏せの姿勢になった。
足先でトントンと私の腕を叩いて「もっとマッサージを続けたまえ」と要求してくる。
「……それでね? 放課後の誰もいない図書室で……いろんなポーズを取るんだけど、例えば本棚の整理をしている私がふと振り返った瞬間とか……ヒロくんが写すんだけど」
脛からふくらはぎにかけて丁寧に揉み上げていくと、翠が気持ち良さそうな声を漏らし始めた。
「大体はそういうちょっと素敵な感じの写真なんだけど、ときどき制服のスカートと太ももの間とかブラウスに写りこむ下着とか、思わず撮ってしまうみたいで、隠し撮りなんかじゃなくてね? 撮った後の写真もちゃんと見せてもらえるんだけど、やっぱりヒロくんも男の子だなって思って、ちょっと嬉しくて」
横に置いてた紙袋から買ってきたばかりの下着を取り出して翠に見せる。
「……それでね? ヒロくんをその気にさせるのにこんなの買ってみたの」
「ふーん」
私が生まれて初めて買った真っ赤な下着を翠が無造作にゴミ箱に投げ捨てた。
レースをふんだんに使ったエッチな下着が宙を飛んでゴミ箱にジャストインする。
「あぁっ!? 何てことするの翠!?」
「逆」
「え? 逆?」
「逆効果」
「逆……効果?」
ソファに寝転がってた翠がむくりと身体を起こした。
「あのね、お姉ちゃん。男子視点で考えてみてよ? ちょっと抜けてて天然入ってる芋っぽい女子が、それも普段からよく話してる仲が良い身体だけはすごい女子が、ある日制服のブラウスの下に真っ赤なレース付きのブラををしてくるんだよ?」
「う、うん。……あれ? 私って抜けてて天然とかじゃないよ?」
「お姉ちゃんの高校に禿げててデブの用務員さんとかいる? 時々デュフフとか言っちゃう感じの」
「なんか話しが飛んでるけど、うん、いるよ。時々廊下で会うと話しかけて来るし」
「その人にお姉ちゃんが寝取られて調教されてるって思っちゃうよ、ヒロシくん」
「いや、飛躍しすぎじゃない!? いったい何の話しをしてるの!?」
「まあそれは冗談だけど、男子として気になってる女子が他の男子の目を引いて欲しいわけ無いでしょ」
「あ……、あー」
なるほど。
なるほどなるほど。
「気になってるか……私、ヒロくんの特別な人にちゃんと近づけてるかなぁ?」
「さぁ? そんなの妹に聞くより、そのセリフをそのままヒロシくんに直接ぶつけた方が良いと思うけど」
「む、むむむー」
「……あと、その用務員さんには注意した方がいいよ?」
◇◇◇◇◇◇
「青子、大丈夫?」
朝、ベッドの中で唸ってるとお母さんが心配そうに私の顔を覗き込んできた。
「……うん、大丈夫。痛いわけじゃない……から」
股間に手が伸びそうになるのを必死で耐える。
始めてしまったら多分終わらない。
「いつから?」
「ちょっと前から。なんか違和感あるなぁってくらいだったんだけど、今朝いきなり来た」
深呼吸を繰り返すと
お母さんが頭に手を置いてぽんぽんとしてくれる。
「……身体がサキュバスの成体に近づいていってるのよ。多分だけど16歳の誕生に向けてどんどん性欲が高まってくると思うわ」
「お母さんもそうだったの?」
「お母さんはそんなに酷くはなかったけど……個人差がかなりあるとは聞いてたけど、青子は今までが普通の人間の女の子並みだったから余計にそう感じるのかも」
「うん、今ならハグレになっちゃう人の気持ちがちょっと分かるよ」
「落ち着いたら、シャワーでも浴びてきなさい。朝食は軽いのを用意しておくわ」
「うん」
シャワーのお湯でまだ腰の奥に残って重く感じていた性欲が洗い流されるように消え去っていく。
「ふーー、落ち着いてきた」
あのままだと学校にも行けないところだった。
しかし聞いていた以上にきつい。
サキュバスは16歳の誕生日に成体になる。
成体になるともう普通の食事は必要なくなって男性の精液のみで生きていけるようになるし、魅了の魔眼だけじゃなくそれ以外に性愛に関する様々な超自然的な力を
公ではないにせよ、日本の社会にサキュバスが市民として受け入れられているのは、あくまでも善良な市民である前提だ。成体になったサキュバスが本気で吸精すれば、普通の男性は死ぬこともあるらしいし、そんなアウトローみたいな生き方をするサキュバスを日本は市民として受け入れない。日本社会と融和しているサキュバス社会も当然受け入れることはない。それが
サキュバスは成体になれば本能のままにヤりたいように生きてしまう。それを回避するにはどうすればいいのかと、昔のサキュバスの偉い人が考えた方法が
現在ではサキュバスとして生まれた女の子の胎の中には術式が刻まれる。
術式は、成体になる16歳の誕生日までに初めて結ばれた男性と
一方でエネルギーを流し込まれた番の男性のペニスには淫紋が現れるらしい。多分お父さんにも淫紋があるはずだけど、流石に娘である私は見たことはない。
まあ、大抵は精力がちょっと強くなる程度の淫紋モドキが現れるようだ。掠れててあるかどうか分からないレベルの淫紋モドキでも、男性が30代や40代にさしかかっても中学生男子並みの絶倫のままとか聞いたことがある。
そういうありふれた淫紋こそが夫婦円満の最高の淫紋とかなんとか集会なんかの時におばさんサキュバス連中から猥談みたいに聞かされて私たちは育つんだけど。
まあ何百年も昔に西洋で魔女狩りが流行ってた頃、巻き添え食って追われたサキュバスがその数を減らしていた時、サキュバスの女性を1万人以上妻にした伝説のサキュバス大王みたいな凄い淫紋も歴史上では存在したらしい。そのおかげで絶滅を免れたサキュバスが遠く東洋まで逃げ延びれたとかの歴史みたいなことも聞かされる。その他には出会うサキュバスを一人残らず虜にして千人以上のサキュバスの妻を持った麗人王のペニスに顕れたという極めて珍しい淫紋とか。
まあそんな凄い淫紋なんか私の人生には関係ないけど、おばさんたちに聞かされて一時期淫紋の資料を読むのにハマったことがある。
◇◇◇◇◇◇
シャワーを終えてダイニングに行くとお母さんと翠がいた。
お父さんは会社に出かけているのでもういない。
「お姉ちゃん、やっぱりキツイ?」
翠が心配そうな声で話しかけてきた。
「うん……まあ、ね」
大体13歳か14歳あたりで番の男性を選んで結ばれるのが推奨されてる理由が実感できた。
12歳で番を得た翠の方がはるかに正しかった。
こんな風に突発的に発情してしまうのでは危なすぎる。
学校にいる時にこんな状態になったらヒロくん襲っちゃうかもしれない。
そしたら私はハグレになってしまう。
「思ったよりも時間がないのかも」
16歳の誕生日まであと3ヶ月ちょい。
ヒロくんとはもうかなりいい感じになってきてるような気がするので、3ヶ月以内に告白されそうな予感はある。
読み漁った少女漫画とか少女小説とか、ナーロッパざまあ恋愛モノとかで学んだ知見によれば告白は近い。近いんじゃないかな? 近いといいな?
「……やっぱりダメかもしれない」
ゴトンと私はテーブルに突っ伏した。
そうなのだ、朝の発情で私は気づいてしまったのだ。恋愛作品ばかり読み漁って私は盛大に勘違いしていた。告白がゴールラインではないのだ。
告白して!
受け入れて!
即日合意セックス!!
……私は深く考えもせず、こうなると思ってたけどヒロくんはそんな人じゃない。
すごく真面目なのだ。
多分高校生の間は手を出してこない。きっとキス止まりだ。
厳しい現実が突きつけられている。
「もうダメだ」
涙がちょちょぎれ始めた私を見て翠がつぶやく。
「やっぱ見合いかぁ」
「見合いはイヤ」
「そうは言ってもさぁ、お姉ちゃんどうするの?」
ヒロくんが私を襲ってくれれば何も問題はないけど、私の大好きなヒロくんはそんなことはしない。
ここで大昔に決められた番制度の規則が問題になる。
サキュバスは「性の分野」で人間と比較して圧倒的な強者だ。その強者のサキュバスから男性に告白するのは規則では実はNGなのだ。サキュバスから愛の告白をしたらそれに抗える男性などいるのかと。成体になったサキュバスが男性を襲うのと実質的に何が違うのか? と。日本社会で善良な市民であるために、サキュバスはあくまで受け身で男性から言い寄られる必要がある。
だけどセックスにガツガツしていた男性が一杯いた時代とはもう違う。
絶対この規則は時代遅れだ。
「うぅ……」
下腹がかすかに疼いている。さっきの発情の残り火が奥の方で熾火のように長く後を引いている。
「あぁ……ヒロくんに襲われたい。好き好き囁かれながら襲われたい……」
どうすればヒロくんに襲われるのか。襲うように仕向けられるのか。
ここまで来たらちょっとくらい汚い手を使っても良い。だけどそんな恋愛達人の手練れの技は恋愛ミジンコクラスの私には無い。
「………………あっ?」
急にふと思いついた。
さっきから会話にも混ざらず妙に静かにしてるお母さんを見る。
「ダメよ」
私から目を逸らしつつお母さんが即答する。
「まだ何も言ってないけど?」
「後で後悔するから絶対に止めた方がいいわ」
「やらないで後悔するより、やって後悔する方がいい」
やらないで後悔するというのは結局ヒロくんを諦めるということなのだ。
今まで生きてきて出会った男子の中で唯一ピンときた男子がヒロくんだ。
お見合いしてピンと来ない男性と生涯一緒に暮らすなんて冗談ではない。
「……催眠アプリ作って、お母さん」
よくよく考えればお父さんだって15歳の学生の身でセックスするような性格じゃない。生真面目が服を着ているような性格なのだ。
そのお父さんを陥落させたお母さんの催眠アプリとその手腕。
襲われた(≒告白)上に、即日セックスまで持ち込めるとかよく考えれば天才の仕事じゃなかろうか?
「ほんとに後悔するわよ?」
お母さんはソフトウェア会社に勤務している。
実際には催眠機能なんかないガワだけの偽物なんてその気になればきっとすぐに作れると思う。
「それでもお願いします。貴方の娘はミジンコなのです、お母さま」
私にはもう後がない。