サキュバス化催眠アプリ 〜巨乳黒髪眼鏡の図書委員の彼女に〜 作:Rオウ
「グビリ……」
自分の喉が鳴った音の大きさに驚いて、思わずヒロくんのズボンから手を離した。
と、同時に正気が返ってきた。
「わ、わわっ!?」
危なっ!?
私何してたの!!
私の眼の前では、ヒロくんの勃起したおちんちんが内側からパンツを押し上げて巨大なテントが作られていた。
そのパンツの生地におちんちんの形がはっきりと浮かび上がってる。
生まれて初めて見る男子のソレはもうドキドキするくらい素敵に見える。さらに香しい匂いが鼻の奥で暴力的なまでに感じ取れて、思わず陶然としてしまう。
──じゃない!
いつの間にか下腹部を包むパンツが濡れてしまっていた。
なのに冷たく感じないのは今も下腹部が熱く火照っているからだ。
再び誘惑に負ける前にヒロくんのズボンを慌てて引き上げる。
「はっ……はっ……はっ……」
危なかった。
完全に発情して意識が飛んでしまっていた。
これがサキュバスの本能だとしたらマジで怖い。
好きで好きで堪らない男子が椅子に座って眠りこけて、誰もいない静かな図書室という最高に都合の良い環境。
しかもコレも朝勃ちと呼ぶのだろうか? それとも夕勃ちと呼ぶべきなのか、ヒロくんはすやすや寝ているのに破廉恥にも勃起して、ズボンの股間が盛り上がっていたのだ。
だけど、そっか。
私はこの程度で正気を失っちゃうのか。
これはもう自分を信用してはいけないな。
図書室のカウンターの中でヒロくんのズボンを荒っぽく元に戻す。
そしてすぐに後ろを向く。
見ているとダメだ。
ポケットティッシュを取り出して、千切って丸めて鼻に詰める。匂いも危険だ、意識が飛ぶ。
乙女の顔ではなくなってしまったけど、大丈夫。見ている人はいない。
ヒロくんのスマホにはお母さんが作ってくれたニセ催眠アプリをすでにインストール済だ。彼が目を覚ましたタイミングで返せば今日のミッションはコンプリートとなる。
後はヒロくんが自然に目を覚ますのを待てばいいだけ。
ヒロくんを襲ってしまったら全ては台無しになってしまう。
冷静さを保つのよ、ファイト! 私の理性!
でもお母さんの用意してくれたハーブティーはすごい効き目だった。
ヒロくんのズボン剥いても全然目を覚まさなかったし。
待って?
なら少しくらい大丈夫なんじゃないだろうか?
冷静さの戻ってきた頭で熱に浮かされながら考える。
ズボンのチャックを下ろし、ヒロくんのおちんちんを取り出してちょっと触るくらいならまずバレないだろうし、許されるような気がしてきた。
だって、女の子が隣にいるのに足をあんなに開いて勃起させながら寝ているのって、要するに自由に触っていいよって言ってるようなものなのでは?
ズボッ
ズボッ
詰めたばかりの鼻栓を取り外す。
おちんちんの匂いを堪能できる貴重な機会なのだ。
大きく深呼吸しながら振り返ると、ヒロくんのズボンのテントは小さくなっていた。
「あぁ……なんてこと……」
迂闊にも正気を失っていたばかりに、旬を逃してしまった。
……いいえ違うわ。
イギリスの名門貴族の有名な言葉を思い出す。
逆に考えるんだ。ヒロくんのおちんちんを小さな状態から大きく育てられると考えればいいんだ。
うん、すごく素敵な考えに思える。
音を立てずににじり寄り、さっき元に戻したばかりのズボンのチャックに指をかける。
布を隔ててヒロくんのおちんちんの感触が指に伝わってきた。
甘酸っぱい感覚が胸を満たす。
「いいよね! これもう絶対許されるよね! だって男子のおちんちんって女の子のモノに決まってるし!」
ノリにノって最高潮というところでヒロくんが呻いた。
「ん……うぅん…………」
◇◇◇◇◇◇
「で、どうだったの?」
「寝ているヒロくんのズボンのチャックを下ろして、パンツの中から再びおちんちんを取り出そうとしたところでなんとか正気に戻りました」
一家揃ったリビングで、ソファに座ったお母さんと翠が呆れている。
でしょうね。私だって私に呆れてるくらいだ。
そしてお父さんは顔を両手で覆っていた。
「で、でもみんなこんな感じになるんじゃないの? 16歳の誕生日が近づけば」
とりあえず言い訳はしておきたい。
ハグレなんてここ10年以上は発生していないし、こんなギリギリの年齢まで番がいないのは珍しいだろうから、実際どれだけサキュバスの本能に煽られるのかなんてお母さんだって知らないはずだ。
「うん…………まあ、そう…………なのかも」
少し、いや大分首を傾げながらもお母さんは渋々と同意してくれた。
「えー違うんじゃない? 成体になったサキュバスならともかく、その前でこんなになっちゃうのってお姉ちゃんに問題があるんじゃない?」
「問題ってたとえば何?」
急に湧き出るようになった性欲をきちんと扱えるサキュバスなんているとは思えない。これは不可抗力だ。
「青子は15歳まで普通の人間の娘より性欲薄そうだったし、その反動なのかしらね?」
「そうかなぁ?」
「私がこうなるのってヒロくんだけだし。一途で純情だと思うけど」
「純情って……言葉の定義勝手に変えないでよ、お姉ちゃん」
時間が経つに連れて、アプリインストール大作戦結果報告会から、ただの家族の雑談に変わっていく。
「そういえばさ? 男の人のパンツの前の部分からおちんちん取り出すのって結構難しくない? なんであんな変な構造なの?」
「慣れれば簡単だよ、お姉ちゃん」
「その話は止めよう」
と、お父さん。
──夕食後もリビングに家族全員が集まって雑談しているのは理由がある。
ソファに囲まれたテーブルの上にスマホを置いて皆で監視しているのだ。
ヒロくんのスマホにインストールした催眠アプリは、起動するとこのスマホにデータを飛ばして状況が分かるように作りこまれている。
もちろん見張っていなくてもヒロくんのスマホにインストールされてる『女の子をサキュバスにしちゃう催眠アプリ』はそれ単体でちゃんと動作はする。アプリの機能をユーザーに説明して、使用するのであれば本人と対象の情報を登録するように促すだけのものだけど。
それで催眠対象を登録されたアプリは、起動すると渦巻状の画像がグルグルと回転してそれっぽい演出を表示するけど、対象の女の子を催眠状態にする力など実際には無い。
ヒロくんが私に催眠アプリを使ったら「あっ♥ 私サキュバスになっちゃう♥ ヒロくんのおちんちん大好き♥」とアカデミー主演女優ばりの名演技で、催眠に掛かったフリをしてヒロくんに襲いかかる段取りだ。
──完璧かな。
ごろん。
もし。
まあほぼ無いと思うけど。
可能性はゼロだとは思うけど?
催眠の対象者の氏名に私以外の名前が登録されてしまった場合は、遠隔でアプリをアンインストールできるように作ってある。
ヒロくんが催眠アプリを信じて私以外の女子に対して偽物の催眠アプリを使ってしまったら、社会的に破滅する可能性がある。そんなことにならないようにするセーフティの仕組みだ。
ごろんごろん。
まあ、そんなセーフティは必要ないとは思うけど?
……大丈夫大丈夫。必要はないし心配もしていない。
ごろんごろんごろん。
「お姉ちゃんさぁ?」
「何?」
突然話しかけてきた翠を床から見上げる。
「邪魔だし鬱陶しいんだけど?」
「姉に対してそんな言葉は使っちゃいけないのよ?」
酷い言葉を使う妹を姉として
「でも床を転がるのは止めた方がいいとお母さんも思うわ」
ソファに座ってるお母さんが私から目を逸らしつつ、小さな声で指摘してきた。
ごろんごろんと転がっていた身体を止める。
さすがにお母さんから言われたら止めざるを得ない
「くっ」
だめだ、転がりたい。
じっと待っているなんてとてもできない。
◇◇◇◇◇◇
『アプリが起動しました』
3時間後、お母さんと翠と私が見守る中テーブルの上のスマホに起動信号が飛んできた。
ヒロくんが催眠アプリを立ち上げたのだ。
スマホを手にとって耳を済ます。
ヒロくんは大事なことを考える時、小さな声でつぶやく癖がある。
その呟きを聞き取りながら、ヒロくんが催眠アプリを使う方向に誘導したい。
アプリの説明文はあらかじめセットされているけど、私の持つこのスマホに音声入力するとそちらに差し替えることができるのだ。
ヒロくんがアプリを使うか使わないのか運任せにするつもりはない。
ヒロくんが使いたいと思うようなアプリだと適切に誘導すればそれだけ成功率は高まるのだ。
これからの数分間に私の人生全てがかかっている!!
リビングのソファに座る私の横にお母さんと翠が集まってきた。
そしてスマホから聞こえてくる声に集中している。
『ご安心ください! 催眠にかかった女の子は貴男と二人きりになった時だけサキュバス化するんです!』
ヒロくんをより引き込むために早速アプリの説明を口頭で差し替えた。
スマホに向かって私が喋った言葉がすぐに文字変換されてヒロくんのスマホに表示されていく。
「ねぇお姉ちゃん。そんな勢い任せでアプリの説明してどっかで矛盾したらどうするの?」
隣で聞いてる妹がひそひそと小声で忠告してきた。
そんなの間違えてたら、間違えましたって言えばいいだけじゃない。
勢いさえあれば大抵のことは乗り切れると私は信じてる。
万が一ヒロくんが途中で「やっぱ止めとこう」とか思ってしまったらこの作戦は失敗に終わるのだ。ヒロくんの様子を探りながらその場に合わせて引き込む説明をアドリブでしなきゃいけない。
「え? そうなの? 思ってたのと……違う?」
手に持ったスマホからヒロくんの呟く声が聞こえてきた。
やっぱりそうだよね!?
ヒロくんだって私が他の男子に襲いかかるシーンとか見たくはないはず。
『大丈夫です、サキュバス化した女の子は貴男以外の他の男の子には見向きもしません!』
言い切る!
こんなの当然だ。
ヒロくん以外の男子に用はないのだ。
「青子さんが…………僕専用のサキュバスに!?」
私がサキュバス化した妄想でもしているのか、興奮して震えるヒロくんの声が聞こえてくる。
嬉しい!
ヒロくんは催眠アプリを私に使った時のことを妄想しているのだ。
「…………お姉ちゃんさぁ? これ、催眠アプリってほんとに必要なの? ヒロシくん、お姉ちゃんのことしか考えてないよ?」
「黙ってて!」
「ひゃん!」
ヒロくんが安心するようなことを今すぐ言ってあげる必要がある。
『周りに貴男以外の人がいたり、もしくは貴男以外の誰かに見られる恐れがある時はサキュバス化しない親切設計なのです! しかも! ここ大事ですよ!? サキュバス化した女の子は満足するまで催眠は解除されないのです!』
あっ、ついつい私の願望が入りすぎた。
だけど説明を聞いたヒロくんが今までにないほど興奮して、彼の震える声がスマホから響いてくる。
「すごい……僕が満足する……までだなんて……」
やった!
今のセリフがヒロくんの心を撃ち抜いたのだ。
「あ、まずいよ、これヒロシくん絶対誤解してるよ? 今の説明ってヒロシくんが満足するまでじゃなくて、お姉ちゃんが満足するまで、って意味で言ったでしょ?」
きっと翠を睨みつける。
今の私には余裕がないのだ。翠のツッコミに答えてる暇はない。
「……そうだよ。そもそも催眠が解けた後、青子さんとどんな顔して会えるって言うんだ?」
あ、まずい!
ヒロくんの真面目な性格が出てしまってる!
興奮しすぎた反動で頭が冷やされてしまったんだ。
このままヒロくんが冷静になってしまうと、アプリを使うのを止めてしまうかもしれない。
とにかく畳み掛けなきゃ!
『ご安心ください! 催眠が解除されると催眠にかかった間のことを女の子は覚えてないのです!』
「え!?」
『記憶に残りません!』
「……覚えて、ないの?」
『はい!』
「全然?」
『全然覚えてません! 催眠でサキュバス化した時のことは思い出せなくなるのです! しかもですね!? 覚えてない間のことは女の子の中で自動的にいい具合に補完されるので、後になって疑問とか違和感を覚えることも絶対にないのです!』
「お、お姉ちゃん!? それすっごい無理があるよ!?」
「うるさい! 黙れ、妹!!」
「ひゃん!」
翠が割と傷ついた表情で私から離れた。
でも今はそれどころじゃないのだ。
詰めの瞬間が近い!
「おぉ! 凄い! このアプリ凄い!!」
『でしょうっ! 凄いんです、このアプリ!』
ノリノリで私は絶叫した。
◇◇◇◇◇◇
「……大騒ぎしてるようだけど、どうなったんだい?」
もう深夜に近かったので寝室で寝ていたお父さんがリビングにやってきた。
「これ見てお父さん!!」
手に持ったスマホをお父さんに突きつける。
そこにはヒロくんが催眠の対象に選んだ女の子の名前、つまり私の名前と、選んだ理由が書かれている。
「…………青子さんの全部が好き、か。これはまた情熱的な愛の告白だね」
お父さんがゆっくりとヒロくんの書いた文章を読み上げた。
読んでもらうことで再び嬉しさが胸の内から湧き上がる。
「やったわ! 私やったのよ!!」
「さっきからこの調子で騒ぎ続けてるのよ、青子」
お母さんが疲れた声でお父さんにそう告げる。
ソファにもたれかかって半分目を閉じている。
「お姉ちゃんがもう30分も浮かれきってるの。お父さんなんとか言ってあげてよ。近所迷惑だよ、これ」
「あ、あぁそうだね」
◇◇◇◇◇◇
ダイニングで朝食を食べながら、顔がニヤけてしまうのが抑えられない。
いやよく考えたら抑える必要がないし。
「くふっ……くふっ……くふっ……」
「一夜明けても狂ったままか……」
「黙れ、妹よ」
テーブルに置いたスマホをもう一度見る。
もう100回は読んだけど、何度読んでも良いものは良い。
「青子さんの全てが好き…………ですって……くふっ……くふぅ……」
「その内落ち着くでしょ。ほとんどプロポーズみたいなものだし、こんな熱烈な愛の告白読ませられたらおかしくなるのも無理はないわ。青子は恋愛小説読みまくってた割に実践ゼロだったし」
「読まされたけど、ヒロシくんの意外と冷静なツッコミも入ってるよね。料理とか。それに今、ふと思ったんだけど、これ結果オーライだっただけで一歩間違えたらお姉ちゃん立ち直れない事態になってたよ?」
「え? 立ち直れないってどういうこと?」
なんのこと言ってるのか分からない。
まあアプリを使うように誘導するのは確かに賭けではあったけど。
「いや、催眠の対象にお姉ちゃん以外の……例えばA子さんの名前が書かれてて、そのA子さんを選んだ理由をヒロシくんが好き好き連呼してたら、それを読む羽目になってたんだよ、お姉ちゃんが」
「……あっ」
ざぁっと一瞬で血の気が引いて、自分が薄氷の上で浮かれきっていたことに気付かされた。
一歩間違えたら確かにそうなっていたかもしれない。
「地獄かな?」
翠が追い打ちをかけて来る。
「ち、違うし! ヒロくんは私のことが大・大・大好きだったし!!」
叫んで翠を睨みつける。
「まあそれはいいとして、次の対策はできてるのかい?」
お父さんがコーヒーを飲みながら静かに皆に問いかけた。
その口調に私も翠も口喧嘩を止めてお父さんを見る。
「対策って?」
「いや、ヒロシくんがこんなにも青子のことを好いているのなら、週明けに青子に会った時すぐにでも催眠アプリを使うとか考えられるかな? ヒロシくんの性格を一番知ってる青子はどう思う?」
「そ、そうね! ヒロくんは私のことが大・大・大好きだから週明け学校で会った時にすぐに催眠アプリを使って来ると思うわ!」
ヒロくんが私のことが大好きって言い切れるのがこんなに気持ちいいなんて。
当然すぐに催眠アプリを使ってくるに決まってる。そして二人は固く結ばれるのだ。
「くふっ……くふっ……」
だめ、嬉しすぎて声が抑えられない。
そんな私を妙に真面目な目で見つめていたお父さんがおもむろにスマホを掲げ、私に画面を見せて囁いた。
「催眠」
「は?」
いきなり何? お父さんが壊れた?
お父さんが私の様子を見て首を左右に振る。
「……練習が必要だね。お母さん、
言われたお母さんはそっとお父さんから顔を逸らした。
「文子、すごく練習したんだろう? 私を騙すために」
「………………えぇ」
ぼそりと小さく呟いたお母さんの声はダイニングに意外な大きさで響いて、その後静まり返った。
「……地獄かな」
翠が小さく呟いた。