サキュバス化催眠アプリ 〜巨乳黒髪眼鏡の図書委員の彼女に〜 作:Rオウ
そして季節は巡り…………
「卒業生代表 鬼頭大」
体育館にずらりとパイプ椅子が置かれ、卒業生と在校生が並んで座っている。
後ろの方は保護者の人がいて、うちのお父さんとお母さんもいる。
司会役の先生の言葉に従い、座席から立ち上がったヒロくんがゆっくりと壇上へ歩いて行く。
途中で先生方と来賓に向かってお辞儀をした後、体育館の壇上から並んで座っている私たちを一望して……ヒロくんは動きを止めた。
だよね、思い入れあるもんね。
生徒会長だったし。
ヒロくんがポケットから答辞用の用紙を取り出して、背筋をピンと伸ばし良く通る声で語り始めた。
立っているだけで絵になるなんてさすがヒロくんだ。
『……寒さの中にも春の陽気を感じられるこの良き日。多数の方々のご臨席を賜り、このような盛大な卒業式を開いて下さったことに、卒業生を代表して心から感謝申し上げます』
ヒロくん凄いよね、首席だもん。
いつのまにこんなスーパーマンみたいになっちゃったんだろ。
「……ねえ、青子ちゃん」
「ん?」
隣に座ってる結衣ちゃんがひそひそ話しかけてきた。
「東京で住む場所ってもう決まったの?」
「ううんまだ。来週お父さんとお母さんと一緒にキャンパスの近くの不動産屋見て回る予定なの」
「鬼頭くんとの新居だもんね」
「え、えへへ」
もうずっと
体育館の壇上ではヒロくんが答辞を読み上げ続けている。
『──私たちがこの学び舎の門を叩いたのは、まるで昨日のことのようですが、今となっては多くの思い出が詰まった3年間でした。新しい環境、新しい友人、新しい挑戦。全てが新鮮で、全てが刺激的でした。そして、それらすべてに私たちは一生懸命に取り組んできました』
「鬼頭くんT大だもんね。ウチの高校からT大行くのって20年ぶりだって先生言ってたよ」
今度は反対隣りに座ってる杏佳ちゃんが話しかけてきた。
「う、うん。ヒロくん勉強もすごく頑張ってたし」
そう。ヒロくんは本当に頑張ってた。
「なんでそんなに頑張ってるの?」
と、以前ヒロくんのおちんちんを舐めながら聞いたことがある。
なかなか答えてくれなかったけど、射精しないように寸止め状態で3時間しゃぶり続けたら恥ずかしそうに告白してくれた。
──青子さんに必ず幸せになってもらいたいからだ。
だって。
おちんちんの先っぽをちゅーっと吸いながら「今、幸せだよって」言ったらなぜか微妙な顔されちゃったのを覚えてる。
『──最後になりましたが、今日まで私たちを導いてくださった全ての皆様に、改めて心からの感謝を申し上げます。ありがとうございました。以上をもって答辞の言葉とさせていただきます。卒業生代表 鬼頭大』
ヒロくんの答辞が終わると、卒業生や在校生、先生たちから一斉に拍手が巻き起こった。
すごい。
今日ここに集まった人がみんなヒロくんに向かって拍手してるんだ。
私もヒロくんの妻としてすごく誇らしい。
妻というのももう自称じゃない。
籍は明日入れる予定だし、明後日には私とヒロくんの結婚式が開かれるのだ。
結婚式には同級生からかなりの人数が出席してもらえる予定で、先生方──もう恩師と呼ぶべきなのか──も10名ほど出席してもらえる予定だ。
もちろん隣の結衣ちゃんと杏佳ちゃんも私たちの結婚式に出席予定だ。
「でも学生結婚って凄いよね、みんなびっくりしてたもん」
「そ、そうかな? 早めにちゃんとした形にしておかないと、なんか危ないかなって思って」
「ふーん。急がない方がいいと思うけど。あ、そういえば結婚式にOBの久喜先輩も来るんでしょ?」
「うん。生徒会長つながりで一応声を掛けたけど」
「久喜先輩、今お腹大きくて大変なのに凄いよね!」
そう言いつつ杏佳ちゃんが自分のお腹を愛おしそうに撫でる動作をすると、釣られるように結衣ちゃんまで自分のお腹を撫で始めた。
「……うん、そうだね。でもほら……校長先生の閉式の言葉も終わったし、これから卒業生退場だよ? 結衣ちゃんと杏佳ちゃんも立ち上がって?」
まだ話し足りなそうな久珂結衣ちゃんと嶋久杏佳ちゃんをパイプ椅子から立つように促し、彼女たちが立ち上がりやすいように上から手を差しのべた。
……とにかく私とヒロくんは今日で高校を卒業するのだ。
そして東京で二人っきりの甘々で濃厚でトロトロで幸せな新婚生活が始まるのだ。
「ねえ青子ちゃん? みんなで新居に遊びに行っていい?」
後ろから葵ちゃんが小さな声で話しかけてきた。
「……も、もちろん、いいよ」
「そう、良かった。久喜先輩にも話を伝えておくね」
そう言うと、佐久間葵ちゃんまで自分のお腹を愛おしそうに撫でながらにっこりと微笑んだ。
◇◇◇◇◇◇
家のリビングで、コテンと床に寝転がった。
とうとう高校生活が終わったんだなって思いに浸っていると、お父さんとお母さんや翠から結婚式の準備を手伝えって視線が飛んできて痛い。
正式な結婚式は鬼頭家と久米家の親族だけでやる予定で、高校の同級生や先生が出席するのは結婚式後のお披露目パーティだ。みんな学生だし、ご祝儀なんか出せないだろうから、大きなレストランを借り切って、司会とか裏方役も生徒会役員経験者とかの優秀なのが文化祭のノリでやってくれる予定で、打合せもほぼ済んでいる。
かかる費用はヒロくんと私からそれぞれの家族へ出世払いの予定。
こんな提案を受けてくれるなんて、ありがたい話だと思う。
もちろんせっかくの結婚式、披露宴のパーティなのに素人が仕切って失敗したらどうするのって声もあったけど、ヒロくんが「文化祭と同じだ。成功とか失敗とかよりみんなが集まってくれる気持ちが大事だと思うよ。 だから仮に失敗したとしてもきっと後でみんなで笑い飛ばせるよ」って言ってくれたらみんな肩の力が抜けたみたい。
そんなわけで、私は結婚式の準備じゃなく婚姻届を書いてる最中だ。
明日、市役所へヒロくんと一緒に届け出る予定。
「……妻になる人の氏名は……久米青子っと。くふっくふっくふふ♥」
「きもっ」
「黙れ、妹」
ジト目で軽蔑の視線を送ってきた妹を黙らせる。
「ところで住所ってどう書くんだっけ?」
「ヒロくんちの住所でいいでしょ? どうせすぐに東京に引っ越すんだし」
お母さんが作業しながら反応してきた。
「……あ、そっか」
夫婦の氏と本籍はヒロくんの方にしてっと。
「あれ? この婚姻届けの右下に書かれてる告知義務要項って何?」
ネット上の記入例を解説してるサイトのところを見てもそんな項目が無い。
「ああ、それ? 私たちサキュバスと結婚する男性に対して市役所は告知義務があるのよ。あなたが結婚しようとしてる女性はサキュバスですが問題ないですよね? っていう念のための最終確認みたいなものね」
「えぇ!? なんでそんなのがあるの!?」
ね、寝耳に水なんですけど!
「別に差別を意図してのものじゃないわよ? そもそも昔と違って今のサキュバスは既に
「……これ、チェックしないで婚姻届提出したらどうなるの?」
「私たちはちゃんと日本の市民として権利を持ってるけど、住民票データベースではサキュバスとして登録されてるから、記載漏れ扱いで必ず告知はあるわよ?」
「うそおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉおおおおおおおおおおおおっ!!」
思わず絶叫してしまった。
お父さんもお母さんも翠までもがぎょっとした顔で私を見ている。
「…………」
「…………」
「…………」
リビングに重苦しい沈黙が下りて、私の背中を冷汗が流れ落ちた。
「………………青子、あなたまさか」
お母さんが顔を真っ青にしながら私を見ている。
「ち、違うの! だって、ヒロくん、私をお姫様みたいに扱ってくれるし! なんでも言うこと聞いてくれるし!」
「青子、おまえ……」
お父さんが愕然とした顔で私を見てる。
「あっ! だからかっ!! だからヒロ兄あんなに頑張ってたんだ!!」
翠も顔を真っ青にして叫んだ。
「え? ヒロくんの頑張りがどうかしたの?」
「うわ! お姉ちゃん最悪! 張本人が分かってないとかあり得ない!!」
翠がもの凄い怖い顔をして私に指を突き付けた。
「あっ! そうなのか!」
お父さんも何かに気づいたように「はっ」と表情を変えた。
そして青い顔が更に青くなった。
「お父さんどうしよう!? お姉ちゃんがやらかしてる! ものすごくやらかしてる!! これヒロ兄に一家揃って土下座案件だよ!!」
ピンポーン♪
玄関のチャイムが鳴った。
「あ」
「あ」
「あ」
「あっヒロくんかな」
お父さんとお母さん、翠と私全員がお互いに顔を見合わせた。
このタイミングでヒロくんがウチを訪ねてきたのだ。
もちろん婚姻届とか結婚式の準備とかで話し合ったりすることは山ほどあるけど、今まさにこのタイミングなので家族全員の顔が一気に青くなった。
◇◇◇◇◇◇
「……あの、これは一体なんでしょうか?」
ヒロくんのものすごく戸惑った声がウチの玄関で響き渡った。
そのヒロくんに向かってお父さんとお母さんと翠と私が揃って玄関で土下座してる。
ちなみに私の頭を翠が上から押さえつけてる。
「ヒロシくん……ウチの娘がとんでもないことをしていたのが判明しました」
お父さんの額が玄関の床にゴンっと音を立てて打ち付けられた。
「誠に……申し訳ございません」
「申し訳ございません」
「申し訳ございません」
「……えっと」
「ほら! お姉ちゃんも謝るのよ!!」
「あんたが一番謝るのよ!」
ヒロくんの困惑がますます酷くなった。
「すいません。状況が全然分からないのですが、青子さんが何か失敗でもしたんですか?」
「…………なるほど。そうだったん……ですか」
「私たちは元々サキュバスの一族で、まさか青子がヒロくんのことをあの時からずっと騙したままでいたとは全然……くっ」
「もちろん今からでも結婚は破棄して貰っても構いません。慰謝料だって」
どすっ!
玄関で棒立ちしていたヒロくんの膝からカクンと力が抜けて、崩れるように玄関に膝を付いた。
「ひっ!」
その光景を見たお父さんとお母さん、そして翠の顔が引きつった。
「あ、あわわ……」
終わった?
もしかしてヒロくんと私の関係が終わっちゃった!?
「はぁ……良かったぁ……じゃあ青子さんは催眠で意志を捻じ曲げられたわけじゃなくて……僕のことがちゃんと好きだったんだね」
だけど、ヒロくんが漏らしたセリフは想像していたのとは全然違くて……
「ヒロ兄聖人か……」
「器の大きさが違う」
「うわあああああん、ヒロくん大好きぃいいいいいいい」
私はヒロくんに飛びつくように抱き着いた。
目から涙が溢れてくる。
私、こんな人を騙したままだったんだ。
でも怖かったし。
ヒロくんが自分の側からいなくなるなんて絶対耐えられないし。
抱き着いた私の背中をヒロくんの手がポンポンと叩いた。
「うくっ……うぅ……」
「大丈夫だよ、僕は青子さんを幸せにしてみせるよ。ずっと僕の側にいてくれるかい?」
「うん…………うんっ!」
抱き合ってるヒロくんと私の側にいつの間にかお父さんとお母さん、それに翠がいた。
「……たわけ者の娘ですが末永くよろしくお願いします、ヒロシくん」
「お父さん、普通こういう時って不束者ですがっていうんじゃないの?」
「青子はもっと反省しなさい!」
「ねぇ、ヒロ兄? ほんとに
「黙れ、妹」
妹と悪態合戦を始めたそんな私の顎をくいっと持ち上げたヒロくんの唇が私に近づいてくる。
「え? ちょ、みんなの前なのに!?」
「僕を騙した罰だよ」
「で、でも!」
「まったく……聞き分けない奥さんだな……んっ」
「んんっ♥」
唇が重なり…………こうして私はヒロくんの本当のお嫁さんになった。
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