※この作品はR-18です。

性奴隷と長身巨乳リョナグロ背徳性癖倒錯ふたなりが純愛に堕ちるまでの話   作:PP→KP

12 / 56
8話:夜に逢う

 今、目の前に彼女が居るということが信じられなかった。

 

 私の胎には、もう誰が見ても明らかなくらいに成長した胎児がいる。私を手枷で拘束し、興奮を隠せない面持ちでのしかかってくる彼女が孕ませた、2人の血を引く子供が居る。

 覆いかぶさるような姿勢の彼女は、私に対して体重をかけているわけではない。柔らかく体同士が触れ合うだけで、私にとって重さは殆ど感じない。それはきっとお腹の子も同じだろう。

 

「どうして、ですか……手は出さないって、この子が──」

 

 私は呆然と呟くほかなかった。

 何時ものように私に身体の重みをかけてこないから、だから大丈夫だなんて思えない。

 

 だって、だってあんなにも──あそこまで彼女のペニスが肥大化した姿は見たことがない。性器同士が触れ合う前から、刺激を与える前から──亀頭から溢れ出す異常な量のカウパーが私の身体をべっとりと濡らしていくなんてことはなかった。

 

 今私の上にいる彼女は。妊娠した私に、もうすぐ産まれるだろう子供が胎に居る私に──かつて無いほどの興奮と狂気を見せていた。

 

 私の言葉に彼女は、ああ、と思い出すように小さく呟いた。

 

「そうだな、言った。『その子がちゃんと育つまで』は手を出さないと確かに約束した」

「だったら──」

 

 

「ちゃんと育ってるじゃないか。君の中で、大きく」

 

 

 約束を守って、と言おうとして。彼女が告げた言葉に、私は二の句が継げなくなった。

 

 産まれるまで待つ、そういう意味だと思っていた。違った。前提が違ったのだ。

 彼女にとって──私のお腹の中の子供は、私をより残酷に犯すために、育って欲しかったのだ。

 

「ふふ、聞いたぞ?順調以上に育ってるのだろう?お腹の子供は平均よりも大きいそうだな。私(・)達(・)の血を継いでいるから大きくなるのも当然かもしれないな」

 

 機嫌が良さそうに私に笑いかけてくる、彼女。私達の、という言葉に合わせて、彼女がペニスを私の寝間着と腹の間に押し込み、私の身体を──子供が居るお腹を、カウパーでベトベトに濡らしてくる。

 艶めかましい動きに合わせて、彼女の股間から愛液が垂れてきて、ベッドにパタタ、と水滴の跡を残す。

 

「そんな大きい赤ちゃんが、まだ11歳の君のお腹にいる。きっと重くて、辛くて、大変で……それでも頑張ってここまで育ててくれた事を思うと、とても嬉しいんだ」

 

 労るような言葉と裏腹に、彼女の吐く息が荒くなり始める。

 白く細い指が前と比べて遥かに膨らんだ大きなお腹を撫で、自分で出したカウパーを愛しそうに塗り拡げていく。まるで、そこが自分のものであると主張するかのように。

 

 

「君はどうだ。私との子供を、小さく愛らしいその体の中で育むことは──嬉しかったか?」

 

「…………っ」

 

 

 カウパーにまみれ粘液でテカテカと光を反射する白い手を、私の頬に添えてくる。僅かに精液が混じっているのだろう、触れられた処から生臭い匂いが漂ってきた。

 

 どうする、どう答えれば良いんだろうか。

 嬉しかった、と答えれば彼女は満足するのか?それとも、最後まで育てたいと言ったほうが引いてくれるのか?

 

「……私が、憎いというのはわかります。ですが、この子は──むぐっ」

 

「そんな事は聞いていないんだ。前も言っただろう、ちゃんと言うことを聞いてくれ、と。言うことを聞いてくれないと──また、前みたいになるかもしれないぞ」

 

 答えに窮し、せめて子供だけでも──なんて、打算的な事を言おうとした口を、粘液まみれの手で塞がれる。生臭い液体が口に、鼻に入り込んで息苦しい。

 だけどそんなことより、彼女の台詞からは本気しか感じ取れなかった。質問に答えなければ、きっと今すぐにでも私を──この子を。

 

 

「……嬉しかった、です。御主人様の子を授かって、自分の中でその子が成長していくことが。──私が、子を産むことが出来るかも知れない、ってことが」

 

 

 

 恐怖に耐えきれず、ぼろぼろと涙が溢れてくる。まるで、恐れへの耐性も子供の頃に戻ったかのよう。それでもなんとか口にした、その言葉は嘘ではなかった。たとえ彼女が恐ろしくても、かつての私の罪悪感に由来する代替行為でしか無かったとしても──今度こそ、なんて歪んだ思いで産もうとしていたのだとしても。

 

 それでも、私の胎内(なか)で、ちゃんと赤ちゃんが育ってくれたのは──ちゃんと赤ちゃんを産まれるまで育てられるというのは、嬉しかったのだ。

 

 私の言葉にそうか、と頷く彼女。

 

「それなら良かったよ。嬉しかったと言うなら、私と君は同じように──この子を祝福してあげられたということだものな」

 

 そういって、彼女は少しだけ強く、私の腹にペニスを押し付けた。

 ぐに、と自分の腹が変形した感触に怖気だつ。答え方を間違えてしまったのかと思ったが、そんな考えは彼女の目を見て否が応でも改めることになった。

 

「なら、きっと。私達は一緒に気持ちよくなれるように頑張れる、そうだろう?」

 

 そういう彼女が見せる感情は、嗜虐心とは違うもの。私に対する憎しみと、それ以上の情欲が混じり合った目は、私がどう答えようが彼女はもう手遅れであることを示しているかのよう。

 

「っ、私、私は頑張れます。ですが、この子はまだ──」

 

 恥も外聞もなく、私は彼女に懇願する。

 私だけが殺されるのは良い。加害者だったであろうかつての私と被害者だったであろうかつての彼女のとの関係を考えれば、私が殺されるのはただの自業自得だ。

 

 でも、お腹の子は違う。この子に私達の間の因縁なんて一切関係ない。ただ、私と彼女との間に出来てしまっただけ──ただ、それだけだ。

 

「そうか?でも、この子は私と、君の子だろう?だったら家族なんだ、楽しいこと、気持ちいことは一緒にやったほうが良いんじゃないか?」

 

 彼女は自分の腰を上げ、長大なペニスを掴む。そしてその先端を押し下げ──私の臍に、亀頭を押し当てた。

 一層、カウパーが溢れてくる。私のお腹が温かい粘液に包まれ、いっそ熱いとすら感じてしまう。

 

 にちゅ、にちゅ、と彼女は楽しそうに臍に当たった亀頭をその手で弄る。そうする度に、彼女のペニスは快楽を高めるかのように脈動し、私の臍を犯そうとでもいうかのようにその先端からカウパーを垂れ流す。

 まるで猛獣の舌か、或いは牙のようだ。彼女はその鋭く頑健なペニスで、軟らかいはらわたを、その中にいる新鮮な赤子を捕食しようとしている──そう錯覚するには十分な恐怖が、そこにはあった。

 

「それは、それは──」

 

 ふるふる、と首を振る。

 駄目だと言おうとして、だけど言葉にならない。

 ずっと彼女に殺されていたことで、彼女に口出しすることができなくなっていたのか。あるいは、私が嫌がってることを知った彼女によってより酷い殺され方をするのではないかという根拠の無い空想が脳理に浮かんでいたからか。

 

「嫌、か?」

 

 気を遣うような彼女の言葉。どれほど本気でそう言っているのかも分からないが、それでも頷くしか無い。

 

「私は、良いです。この子には、この子は……」

「ふむ…………」

 

 悩む素振りを見せた彼女は、覆いかぶさった姿勢を止め、ベッドに座り込んだ。

 止めてくれたのか、とは──残念ながら、思えなかった。

 

 ちゅく、と私の性器に熱を持った粘液が触れる。

 分かっていた。もう止まりそうにないということが。臍から私を貫くことも出来ただろうが、彼女はそうすることはない、ということが──私にだって、分かっていた。

 

「私は、君に──君を、犯したいと思って買ったって前に言ったな」

「はい、はい!だから、私を、私だけを存分に犯していただいて、ですから……!」

 

 彼女の強化・機能拡張の魔法が私に付与される。体感できる限り今までで最も強いそれが、私の性器に、皮膚に、筋骨に、内臓に行き渡る。

 普段のようにゆっくり適用されるような、そんな魔法じゃない。分かってしまったのだ、今の私であれば──彼女を受け入れることが容易だと。彼女の膨大な魔力で全身余すところなく支えられている今ならば、どれほど犯されても死ぬことはないと。

 

 でも、きっとそれは──私だけだ、と。

 

 

「──ああ、勿論存分に楽しませてもらおう。だけど──楽しいことはお裾分けしてやらないとな。赤ちゃんだけ仲間はずれだなんて可哀想だ」

 

 

 ずぷ、と彼女の剛直が私の膣内にほんの少し侵入する。嫌な感覚だ。圧迫感こそあれ、何時もの痛みとでも言うようなものを感じることが出来ない。彼女の形に私が広げられても尚、悍ましいことに──性交による快感だけが身体に奔ってしまう。

 そのままゆっくりと、彼女が私の奥に──彼女と私の子がいる、胎児を育てる形状へと変化した子宮に近づいていく。

 

 嫌、嫌だ。またなのか、という思いが私を支配する。また、私は──自分の子供を、自分の胎で殺してしまうのかという絶望が浮かぶ。

 

「普段より強く掛けてるけど、それでもゆっくりやろう。お腹の子が心配なのは分かるけど、私達の子だ。きっと一緒に頑張ってくれる」

 

 少しずつ、少しずつ奥に入ってくる。彼女のペニスはまだ半分も入っていないのに、私の最奥まで触れるか触れないかまで来ている。

 このまま犯されたら、私は──快楽の中で、生命が奪われる様を味わうことになってしまう。小さな、無垢な、大切な──新しい、生命が。

 

 

 そして、その鋒が。私の子宮口に触れた感触を受けて──思わず、私は彼女の身体を蹴って、押しのけてしまった。

 

 

「────あ」

 

 ズルン、と彼女の剛直が私の狭く小さな膣から抜け落ちる。

 恐らく彼女自身、私を苦しませるために細心の注意を払って、わざとゆっくり優しくやっていたのだろう。大きな体躯に優れた膂力を持つ彼女であっても、乳房以外に無駄な脂肪もない上半身はそこまで重くは無いようで。全力で抗した子供の脚力で押しのけることが出来てしまった。

 

 咄嗟の反抗にそのまま身体を押しのけられ、驚いたような、ぽかんとした表情で私を見る。

 だが、それも一瞬。自分が何をされたのかを理解して、彼女は──およそ、私が今まで接してきた中で初めての表情を浮かべた。

 

 眉尻を釣り上げ、口角を引き絞り、その隙間からは噛み締めた白い歯がちらりと見える。

 

 先程までの興奮とも、普段の作ったような微笑みとも違う。それは、間違いなく──怒りの感情だった。

 

 

「──何で?」

 

 

 平坦な声で小さく呟かれたたった3音から漏れ出てくる、心中から煮え滾るような怒りの感情。それが大気を、ベッドを、身体を通して伝わってくる。

 普段見せる軽く怒ったような、叱りつけたような素振りは単にポーズなのだと理解させられてしまった。こうやって相対しているだけで、たった一言告げられただけで、私の貧弱な心臓は鼓動を止めてしまうのではないかと錯覚してしまう。

 

 でも、やってしまった以上、私は止まる訳にはいかなかった。

 

「お願いします。止めてください、この子は──御主人様の子です。私だけならともかく、この子を殺すのだけは止めてください!」

 

 私は縛られた手に変わって脚を折りたたみ、膝を立てて腹を守るような姿勢を取る。

 彼女の膂力の前には何の意味もないポーズだが、それでも何をしてでも守りたい、守らなくてはならないという意思表示をしたかった。私が彼女にできるのは、意志を伝えることだけだったから。

 

 

「────どうして」

 

 

 だが、そうやって私が守る姿勢を見せることもまた、彼女にとっての逆鱗でもあったのだろう。

 

 

「どうしてッ!?」

 

 

 彼女のまさに絶叫としか呼べないような、いっそ咆哮とまで形容できるような叫びが地下牢に響く。

 まだ扉も空いているのにこんな声で叫んだら外にまで漏れ聞こえそうではあるが──不思議と、誰かが来るような音は聞こえなかった。

 

 睨むだけで人を射殺せそうな爛々と輝く真紅の目は、今や私だけではなく、私の胎にも向けられていた。

 ぎり、という歯ぎしりの音が聞こえる。強く握りしめられた彼女の手のひらからは、彼女自身の血が流れ出しベッドに赤いシミを作っていく。

 

 

「どうしてその子は守るのッ!?────私のことは守ってくれなかったくせに!」

 

 

 その瞬間。彼女の憎悪が私だけではなく──彼女と私の子に向けられた。

 

 かつての人生ですら向けられたことのない、溢れんばかりの憎悪の感情。最早口調を取り繕うことすら出来ない、それほどの憎悪を、怒りを今まで隠して溜め込んでいたのだろうか。

 凄絶な怒りの感情を向けられたことで気を失いたくもなるが、それでも幸か不幸か私の精神は意識を保ち続けていた。罪悪感もあって私が受け止めなければならないという意思もあったが、それ以上に彼女の言葉が気になった。

 

 守ってくれなかった、と彼女は言った。それはつまり、彼女はかつての私に守られる立場だったということだ。

 

 彼女の叫びに、最初に想起したのは──半透明で、15cmくらいで、ゴミ同然にバケツに入れられた、胎盤とへその緒が残ったままの、小さな肉塊。

 

(やはり、堕ろした子だったのだろうか。だとしたら──憎むに決まってるか)

 

 半ば現実逃避気味に思考を動かす。

 親に守られなかった子が、親に守られている子を羨み、憎むのはある種当然だろう。

 私だって、子供の頃は同級生を羨んでいた。私は虐げられているのに、どうして皆は楽しそうなんだろうと理不尽な怒りを覚えることもあった。

 

 まして、彼女は守ってほしいと願ったであろう私によって殺されている。

 

 彼女からすれば、今私が守ろうとしているお腹の子は自分が得られなかった全てを得ているも同然なのかもしれない。

 私によって全てを奪われた彼女が、その全てを得ている子を殺そうとして、奪った私が何をしてでも守ろうとする。それは、彼女のここまでの激昂を呼び起こすには十分な状況だったのだろう。

 

(……守ろうとしないほうが良かったのか?でも、それだときっとあのまま──)

 

 彼女の心中を思うなら、或いはなすがままにされたほうが良かったのかも知れない。だがそれは──どうしても無理だった。

 私はあの時、半ば無意識的に彼女を押しのけた。普段彼女に犯されている時はほんの僅かにもそうしようとは思えないのに、だ。

 抵抗が無意味だから、というのはある。だけどそれ以上に、かつての私のことを思えばこの境遇も仕方ないのではないか、と現実逃避気味に諦観していたからだ。

 

 でも、今回は抵抗してしまった。抵抗できてしまった。私の……いや、私と彼女の子供はかつての私の罪とは関係ないと思っているから、守らなくてはならないと思っていたから。

 

 だから、この子を守らない、という選択肢は潰えた。

 なんということだろう。向き合えない、産んだら終わりだなんて酷薄な考えをしておきながら。この子は、私にとって私以上に──何よりも大切なものになっていたのだ。それこそ、かつて自分で殺した相手に対して、恥も外聞もなく命乞いをするほどに。

 

「──すみません、申し訳ありません。本当に恥知らずで、お怒りになられるのも当然です。ですが──どうか、どうかこの子だけは。私と──御主人様の子である、この子だけは、どうか殺さないでください……っ」

 

 何度も何度も、ベッドで仰向けのままで頭を下げる。さぞ滑稽に見えるだろう、ベタベタな粘液に塗れ、腕を縛られ碌に動けない私が首だけでもペコペコと下げているのだ。私の股座に座り込んでいる彼女から見て頭を下げているように認識できるかも怪しいところだが、最早そんな事は関係なかった。

 

 私の胎で大きくなった子供は、いつの間にか私の心の中ですら大きな割合を占めていた。

 そのことを自覚してしまった今、たとえそれが彼女にとってどれほどの逆鱗だろうと、その結果私がどれほど暴虐の目に合おうと──この産まれていない生命を守らなくては、と決意を固めるには十分だった。

 

 

 ひたすらに謝り続ける私を前に、彼女は無言だ。

 ただじっと、私を見つめていた。

 

「そうか。私の子だから、だから守りたいんだな」

 

 ぽつり、と呟く彼女。感情の乗らない声は、きっとさっきまでの怒りを乗せないように意図的に単調に喋っているからだろう。

 先程の子供の癇癪のような叫びではない、かつての私を真似ているであろう口調も、或いは自分自身を冷静にさせるためであったのかもしれない。

 

「まあ、確かに、お父様からすれば、その子は大切な世継ぎになるかも、って考えになるか。であれば、その話を聞かされたであろう君は──その子を守らなくてはならないものな」

 

 うんうん、と納得したような素振りを見せる彼女が恐ろしい。何を考えているのかまるでわからない。

 だがひとつだけ──彼女は意志を曲げていないということはわかる。私のポーズ1つで、謝罪の意思表示だけでこうも易易と意思を変えてくれるなら、そもそも私を幾度も犯して殺すことに拘るような歪み方をしていない。

 

 

「──うん。だったら、また作ればいい」

 

 

 さも名案だ、なんて笑顔を浮かべ、彼女は私を見た。

 

「あの日、私と君の営みが途中で終わったから、君は結果としてその子を妊娠した。だったら、これからは君が死なないようにしっかりと強化の魔法を掛けることにしよう。そうすればまたいつか──子供が作れるだろう?」

 

 朗らかで屈託のない笑顔に背筋が凍る。何時もの困ったような、作ったような微笑みでさえ、今の彼女に比べれば確かに笑っていた。大なり小なりその表情を作るだけの感情があった。

 

「私達はまだ若いんだ。だからこの子が駄目でも次がある、次の子はきっと、ちゃんと産まれてきてくれる」

「勿論、お腹の子が育つまではちゃんと待たないといけないからな。妊娠したら手は出さない。ちゃんと育つまでは、絶対にな」

 

 今は違う。今の彼女は笑っていない。まるで、怒る獣が牙を剥く前に唇をめくるような──そんな感情が、美しい顔に顕れていただけ。普通なら醜悪とさえ言える顔の歪み方も、あまりの美しさから笑顔に見えるだけだ。

 

「もし、何かがあって。次の子も駄目だったとしても──私の魔法なら、君を若いまま、長く生かし続けられる。そうさ、私達の未来はまだまだ先が長いんだ。だから──いつか、ちゃんと産まれてくるだろう。私達の子供が」

 

 

「だから──良いじゃないか。今、その子を守らなくても」

 

 

「子供なんて、まだまだ出来るから──ちゃんと産まれるまでは、一緒に楽しもう?私達の子供なんだから、私達で愉しまないと」

 

 

 その顔を見て、もう駄目だと感じてしまう。

 だって、それほどまでに彼女は怒り、狂っている。恨みがあるだろう私にだけではなく、子供すらも己の快楽の道具にしようとしている。

 

(──いや、違うか)

 

 そこまで考えて、僅かに思い直す。

 恐らく、彼女にとって子供を殺すことは二の次だったのだろう。主題はあくまで私を犯して殺すことで──今回はそれが、私を犯すことでお腹の中の子供を惨殺して、私の心を殺すことに向いていたというだけ。

 彼女にとってはもしかしたら、射精で殺すという歪んだ殺意と性欲の充足の一環でしか無かったのかも知れない。

 

 それが、私が彼女を拒否したことで胎の子にも同じ感情が向き始めた。彼女が得られなかった物を得た、私が自分の命よりも大切にしている子供に対しても同様に、殺意を向け始めた。私を犯すための道具ではなく、それ自体を犯して殺そうとするようになった。

 だから今の彼女は──母胎ごと胎児を犯して、私という人間の胎内にある小さな命に直接精液をぶち撒けて殺すことで──憎い私の心を殺しながら、妬ましい自分の子供の生命を犯すことを愉しみたいのだ。

 

 ……それがわかったからって、何かが出来るわけでもないが。胎児自体への殺意の有無は、彼女が私を犯しながら胎児を殺すという所業を変えるものではない。矛先が2つに増えただけで、結末は何も変わらない。

 

(祝福を与えられる転生者は、何処か歪んでいる──そういう話だったな)

 

 だとすると、私なんかには祝福が与えられないわけだと改めて思わされる。

 神の祝福は、歪みきった魂を是正させる最終措置であるという。その言説が正しいのなら──彼女は、最大限補正して尚ここまで狂っているということになる。

 

 私に祝福があれば、神様からの贈り物があれば。それがあれば、お腹の子を守れたんだろうか。そんなことを考える。彼女によってゆっくりと刺し貫かれている私の精神が、無情な現実から逃避しているだけだ。

 

(──祝福、か)

 

 ずぷ、と少しずつ、私の心を削っていくように、彼女のペニスが私の膣を侵していく。私がこれから起こるだろうことを想起して涙している様を愉しむかのように、彼女は時折己のペニスを手で掴んで弄ぶように私の膣内を刺激していく。

 最早どうにもならない。そんな諦観の中で、ふと気づいたことがあった。

 

 祝福を受けたという彼女は、神と対話するに当たりある程度の自我があった筈だ。もし彼女がかつての私が堕ろした子であれば──その自我は、その時点の胎児の自我だったということなのだろうか。

 

 もしも胎児であっても祝福を与えられるのなら、神が祝福を与える際に対話を行えるよう、その魂を精神的に成熟させるのではないかと推測していた。

 私の模倣をするのも、胎内に居た時に私が話していた言葉を記憶していた状態で死んだ結果、神によってその言葉を理解できるようになったためではないか、と。

 

 勿論、穴だらけの推測だった。柘植の次に私を恨んで、犯して殺すことを望むような立場になるとしたらその子だったという理由から無理やり当てはめ、取り敢えずの納得を得るための推測でしかない。

 

 ただ、もしもそうだとするなら──先程の、素が出たような叫びは何だったのか。

 

 今の私は11歳の女児だが、思考はかつての私のそれになっている。何故かと言えば、偏にかつての私として生きた34年の大半をこの様な口調・思考で生きてきたからに他ならない。既に十分に発達した精神性があったから、転生したところで変えることなんて出来なかったという、至極当然の話だ。他の転生者の情報を確認した時も、基本的にかつての生から精神が大きく変わったというヒトはいなかった。

 

 ……ならばそれは、彼女にも言えるのではないだろうか。

 

 彼女がもし堕ろした胎児だったとして、先程の無理やりな推測が事実だったとして──そうなると、素の彼女はかつての私と同じ口調になるのが正しい筈だ。

 神から祝福について理解できるだけの知性を無理やりにでも与えられた時、思考の基準となる言語は神の言葉か、あるいはかつての私の言葉の二択になるはずだ。それ以外に言葉なんて教えられる機会がないままに殺されたのだから。

 

 私の推測が正しいのなら、先程の少女の癇癪の如き口調は私の使っている口調ではない。つまり神の言葉が思考の基準になったということになるだろうが──それも怪しいところだ。

 

 転生について理解を深めようとした私は、図書館で祝福を受けた転生者の神との対話の記録を読み漁った。記録されていた神の語り口は様々だが、それでも一様に穏やかで温和で──人に対して、親などの上位者のように振る舞っていたのだ。

 

 だから、さっきの子供の癇癪のような口調で叫ぶことがあるとは思えない。私を模倣するにせよ、神の口調を基準にするにせよ──子供らしい言葉が素になることはないはずだ。

 

 そうなると、彼女は──私が堕ろした胎児ではなく、かつての私に守られる立場だったという認識がある誰か。子供らしい口調を素で持っていながら、それを私の模倣で覆い隠すことを選んだ者。

 

 かつての私が惨殺し、死後の尊厳すら凌辱した子供は柘植の娘と三重野の息子の2人。その内どちらが「私に守られる筈だった」という認識を持っていたのかを考えれば、答えは自ずとわかってしまった。

 

 

『──私達の子供なんだから、私達で愉しまないと』

 

 

 先程、彼女が言った言葉が脳内で反芻される。

 彼女の性癖が魂の歪みに由来するものであるなら、子供で愉しむという言葉もまた彼女の魂が歪んだ結果飛び出した発言にほかならない。

 

  信じたくはなかった。だが、状況的にはそれしかありえなかった。

 

 かつて子供であって、私に守られていて──子供が親の性快楽のために消費されるという現実を実感として知っていた、私に害された人間。

 

 

「貴女は──君は、ひかるちゃん、なのか」

 

 

 それはかつて、殺人計画の中でひょんなことから会話をするようになった少女の名前。

 実の娘でありながら、妻に逃げられた父の性欲の捌け口として犯されていた哀れな少女。

 油断を誘い殺すために馬鹿な女のふりをしていた私の隠蔽に気付いた、とても聡い子供。

 

 ──そして、正体の漏洩を避けたい殺人鬼にとって邪魔であり、事件の隠蔽にも都合が良かったから、と。首を絞められ、コンドームに残された父親の精液を膣の奥にまで突き入れられて、父親を殺した凶器を握らされた──捜査撹乱のためだけに私に殺され、徹頭徹尾被害者のまま人生を終えた彼女。

 

 私を警官と知って、自分に変わって父親に犯されるようになった私を守ってくれる人だと慕い、名前で呼ぶようにとお願いしてきた──僅か10歳でこの世を去った「柘植 ひかる」という名の、連続殺人の3人目の被害者。

 

 かつての私の口調でその名を告げられたことで、彼女は一拍の間動きを止めて私を見た。

 

 

 そして──漸く気づいた私の滑稽さに耐えきれなくなったように。その美しい顔を美しいまま、大きく歪ませた。

 




私(11):人間。女。妊娠9ヶ月。自分で思うよりも赤ちゃんが大事となっていた。

彼女(34):淫魔。ふたなり。立ったままセルフパイズリ出来るぐらいにペニスが肥大化。やろうと思えばセルフフェラも出来るだろうがそこで射精したら自分が死にかねない。子宮を犯して膨大な精液を注ぎ込む堕胎ックスをするために夜這いを敢行した。本来なら憎くもない袈裟を使って坊主を苦しめることを良しとしないぐらいには良識があったのだが、諸般の事情から自分の子供であれば使えてしまう。愛情はちゃんと持っているけど長期の禁欲で私への殺意と性欲が子供への愛情を上回ってしまった。自分の子供に嫉妬してしまっている。

***(-1ヶ月):淫魔。女。自分の父親に嫉妬から全身をペニスで犯されて殺されそうになっているけど当然何も気付いていない。死ぬときはせめて気付いていないほうが良いかもしれない。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。