※この作品はR-18です。

性奴隷と長身巨乳リョナグロ背徳性癖倒錯ふたなりが純愛に堕ちるまでの話   作:PP→KP

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2話:「私」が生まれ変わるまで

 執行室の刑壇の上。足元が固定されて動けなくなる。

 

 思えばまあ、碌でもない人生だった……というより、碌でもない人間だった。

 

 全部が全部自分のせいではない、とは思う。幼少期の親からの扱いは虐待だったと言えるだろうし、犯罪に巻き込まれて一般的な感性からは歪んでしまったのだとは思う。

 悪いことばかりではなかった、とも思う。好きな人が出来て一念発起し、勉強もスポーツも頑張れた。見た目が良く能力もあったおかげが、人に褒めそやされるようになって自信が持てるようになった。

 

 首に縄が掛けられ、目隠しで視界を覆われる。視界が塞がれる直前、ガラス張りの部屋の向こうに刑死を見届ける検察官が見えた。

 

 結局のところ、最終的に悪いのは自分だったのだろう。

 好きな人が死に、その原因となった数名に判決が下った時。普通であれば裁判の結果が全てであると引き下がるものだ。検察と弁護士、裁判所という人の罪を計るプロが最終的に決定した刑罰に納得するか、出来ずとも受け入れるものだ。

 だと言うのに、その判決を認められなくて。罪が軽すぎると決めつけて。そして復讐などと称して殺害計画を立て、一人ひとり殺していった。

 殺意を持って他者を死に至らしめたら、それは傷害致死ではなく殺人だ。そして計画的な殺人を複数回に渡り繰り返せば、日本の法律では死刑になるのが通例だ。弁護士も苦労しただろう、覆しようがない罪を弁護しなくてはならなかったのだから。

 

 バン、と床が開いて私の身体が重力に引かれて落ちていく。首にかけられた縄が絞られ、ゴキリ、という音ともに激痛が走る。

 

 馬鹿なことをした、とは思っていない。自分にとっては正しいことだ……とまでは言えないが、少なくともそうしなければ止まれなかった。なんて、これも言い訳だろう。普通ならストッパーは自分の心に持つべきで、それが壊れていた私はやはり碌でもない人間だった。

 薄れゆく意識の中、執行室に来る前に教誨師と話したことをぼんやりと思い出す。輪廻転生、生前の罪に応じて生まれ変わる世界が変わるという仏教の教え。行いが悪い者は地獄に落ちるけれども、そこで罪を濯げば新たに生まれ直せるのだとその仏僧は語っていた。

 

(罪を濯ぐ、なんて無理なことを言ってる、なあ。でも、だけど──)

 

 自分の罪を自覚していた。自分が悪人だと理解していた。その上で止まろうとしなかった人間未満の碌でなしが、果たして罪を清算できるものか、なんてその時は思っていたけれど。

 

(──もし、かしたら、新しく、やり直せる、のか、な)

 

 息ができず、思考がまとまらない。本能的に救いを求め、教誨師の言葉にすがるような思考を残して。

 

 享年34、刑死となった。──それが「私」の、連続殺人鬼の前世での最期だった。

 

 

 

 最初に自覚した時。仏僧の言葉は誤りだったのではないかと思った。

 私のような人間は地獄で罪を濯ぐのだと言っていたその言葉に、まあそうだろうななんて自分の宗教観からも思っていたのに──私は、罪を濯ぐ前に生まれ直したようだった。

 

 私が生まれた世界──前世とは異なる、有り体に言ってファンタジーな世界は、それでいてまあまあ牧歌的と言うか、穏やかな世界だった。

 文明的には前の世界のほうが総合的に上だろう。少なくとも私の生まれた集落では水洗トイレなどはなくくみ取り式で、人糞を肥溜めに入れて肥料にする昔ながらの農耕地。ただただ広い草原が側に広がっており、農耕と遊牧を行き来するような少し変わった生活を送る村。それが私の生まれた村だった。

 この広い草原は馬に限らず家畜の育成に向いているらしくそれなりに小競り合いなども起こっているらしい……が、私の村は特段国境線に近いというわけでもなく。そもそもただの農村なので戦場になることなんてまずなく、領主が変わればそっちに従う、くらいの考えが主流のごくありふれたただの1集落。

 

 両親は平凡な、かつての世界で言うなら畜産農家だった。牛や羊など前世で見知った家畜や、太く締まったダチョウのような見たことのない鳥を広い草原で放牧し、時間が来れば厩舎に戻す。一帯の草が減れば別な場所へ誘導し、草原が復活するまで待つ。

 こういう遊牧生活を送る場合、本来なら草原の回復に年単位の時間がかかるため居所を転々とするのだろうが……この草原、数日もすれば元通りになるのでわざわざ拠点を変える理由がなかったりする。

 なんなら他の農家が栽培している果樹や野菜、穀物も収穫しても数日で同じくらい生長し、放置してても枯れないのだから凄まじいものだ。そのくせ意図的に栽培しない限り自生地を広げないのだから、これこそ一番ファンタジーだなと思う。

 

 また驚いたのは、この小さい村に多種多様なヒトが暮らしていたということだ。

 この世界で、「ヒト」といえばいわゆるホモ・サピエンスではなく、大雑把に言語で会話ができる知的生物全般を指している。私の一家はかつてと変わらない人間だったが、そうではない種族も多く居てそれら全てを総称して「ヒト」と呼んでいた。

 主に見た目で更に細分化する傾向があり、人間基準で体型が違ったり一部位だけ発達する「礎人」、明確に獣の特徴を持つ「獣人」、異形の形質を持つ「魔人」というように呼び分けている。ちなみに当の人間は「礎人」の範疇だ。

 

 ……後から聞いた話になるが、これは見た目での区分なので、例えば昆虫のような6本脚が直立したようなヒト種である「インセクトイド」族は昆虫を大きく野生動物=獣と見做せば獣人だが、呼吸機能から何から哺乳動物である人間とは異なるため異形の形質のある魔人ではないかと言われたりする。

 他にもケンタウロス族やアラクネ族など下半身だけ別の動物の機能を持つ場合は獣人か魔人か、角やコウモリのような翼の生えたデーモン族は魔人か、それとも翼竜の獣人なのか……などなど、議論が絶えないらしい。

 

 閑話休題。

 

 この小さい村でも人間やエルフ、ドワーフのような亜人族以外に、猫耳が生えてたり直立した犬だったりする獣人族、額に長い角が生えた鬼族という魔人族など多様な種族構成だった。

 

 これだけ種族差があれば争いも絶えないだろうと思えたのだが……この世界は民度が良いのか、あるいは前の世界よりもポリティカル・コレクトネスが浸透しているのか、ともかくそういった種族間での争いは殆どなかった。

 偏見や蟠りと言ったものは基本的に見られず、精々鬼族の角が壁を削ったことで叱られたりとかその程度のもの。皆で仲良く力を合わせて、なんて前の世界では御為ごかしか理想論なんて揶揄されそうなスローガンが当たり前のように浸透していて、それだけこの世界が平和であることを示していた。まあ所属する国家間とかの営利関係や主義関係での係争は普通に起きるのだが。

 

「……こんな安穏とした生活を送って良いのか、私は」

 

 馬に乗って家畜の羊を追いながら、そんなことをポツリと呟く。

 碌でなしの人間が何人も人を殺して、死刑になって。人の社会の法律であれば死刑執行が最も重い刑罰だからこそ、それで罪を清算できた……なんて、当の私は思えないのに。

 優しい家族、穏やかな隣人、代わり映えのしない平和な生活。こんな楽園を甘受して良いものか、もっと苦役を背負うべきではないだろうか。私が生まれ変わるためにはもっとこう、なにかしなくてはならないのでは……なんて思いに駆られてしまう。

 

 まあ、そんなことを思っていたから、というわけではないのだろうが。私の日常は唐突に終わりを告げた。

 

 

「あー、この村は我らの直轄地に入る。元の領主は我々との領域争いに敗北したため、今からお前たちの主は我が国となると思え」

 

 ある日、草原の反対側から突っ切るように現れた一団。誰も彼もしっかりした鎧を身にまとっており、如何にも職業軍人です、といった趣だ。

 こういったことは今までにも何度かあった、ということを隣に立つ老いた山羊頭の獣人である副村長が教えてくれる。こそこそ話をしていた私達にちら、と目線を向けられたがすぐに戻した。小さな農村が主替えをすることはこの世界では当たり前のようにあり、ああいった正規軍らしい集団もそのくらいを咎めたりはしない。

 

「ついては、我らの民が多少ここに流入する関係で、この村の民も一部奴隷として王都へと連れて行く形となる。原則は農奴となるが……知識や技術などでによっては別な用途での奴隷となるだろう」

 

 奴隷、という言葉にざわつく。村人たちは誰が行くんだろう、なんてボソボソ話しているがそこまで悲壮感はない。

 

 実のところ、この世界の奴隷は犯罪奴隷などの実質懲役刑のような者を除けば、強制労働的なものではあるにせよそこまで厳しいものではない。業務をこなせば休憩もあるし、指示に従えば結果が不作でも一定の報酬がもらえる。

 色んな意味で誤解を恐れずに言うなら前の世界におけるサラリーマンに近い立場になるだろうか……強制徴用ではあるので厳密には違うがまあ、上に従って粛々と生きることが出来る隷属者、それが奴隷という立場だ。

 

 法定割合の報酬が適切に支払われればちゃんと自分を買い直すことが出来るし、そのあと同じ職場に居着いたりすることもあれば独立するものも居るというぐらいには技術が身につくこともある。この世界の人権意識や遵法精神は部分的には前の世界よりも優れているな、なんて思ってしまう。

 

 で、その奴隷の一人として私が選ばれた。特段特殊技能とかがあったわけではないが、だからこそ村から引き抜いてもさほど影響が出ないとの判断だろう……この時はそう思っていた。

 離れ離れになる、ということで両親は泣いてしまって、私も思わず泣いてしまった。前の両親に比べて遥かに人の心に溢れた今の両親のことが、私は殊の外家族として愛していたんだな、なんてことをようやく自覚したのだった。

 

 馬車に揺られることしばし。奴隷として連れてこられた私はこの世界で初めて都会に来たわけだが──なんというか、その、開放的だった。赤道に近いのか、あるいは私達の村よりも標高が低いのかは分からないが、全体的に陽気な暖かさに包まれた大都会。それが私から見た王都だった。

 

 全体的に風通しが良い、立体的かつ芸術性に尖らせたデザインの建物が多く、それらが立ち並んだ流麗な景色を端的に言えば「美しい都」と評することが出来る。そしてそんな美しく風通しの良い、陽気に包まれた王都に合わせているのか、全体的にこう、男女問わず露出度が高めの服装のものが多かったのも特徴だろう。

 この国は全体的に魔人族が多めであるらしく、特にも現在は「淫魔」族が勢力を増しているのだとこちらに来る途中で平の兵士が話してくれた。なんでも強力な淫魔の戦士が台頭しており、もともとそれなりに派閥があった淫魔が皆その戦士の氏族に従った結果それなりの勢力になったらしい。

 淫魔は読んで字のごとく淫猥なことを食料とする魔人の一種だ。厳密には他者の強い感情から発せられるエネルギーを栄養としているとのことらしく、別に姦淫する必要はない……のだが、相手と自分の体だけでお手軽に強い快楽の感情エネルギーを確保できるからそういった手段が好まれており、だからこそ淫魔と呼ばれるようになったと言われている。

 こういった種族特徴を持つ淫魔は他者からの好感・興奮を向けられるだけでも多少は栄養になる、ということで肉体をかなり曝け出した服装をするものが多い。話をしていた平の兵士も淫魔であり、王都近郊に近づくやいなや鎧を脱ぎ捨て過激な水着に金属の部分宛だけ付けたような服装になったものだから心底驚いた。

 

 ちなみに件の淫魔の戦士は何でも「王の徴」なる特徴を備えた上位種?へと昇格(アセンション)した昇格者(ハイランダー)であるそうだ。昇格者というのは良くわからないが凄いんだろうなということだけはわかる。

 同時に淫魔でありながら姦淫によるエネルギー獲得ではなく回復・強化魔法や蘇生魔法といった他者を救う魔法の練達者として働き、その感謝の感情で生活する変わり種らしい。話してくれた平兵士も尊敬しているが不思議にも思っているのだとか。

 

 やがて馬車は王都の城付近で止まり、奴隷となった私達は順次荷車から降りていく。一列に並べられると、予め聞き取っていたそれぞれの技能に応じて諸処の奴隷主へと振り分けられていく。

 

「で、ええと次は──」

 

 次々と仕事が割り振られる中、私の番が来て。事前の話だと十中八九農奴だろうと言われていたからどんな仕事になるかな……なんて楽観的に考えていたところで。

 

 

「ああ、その娘は私が引き取りたい」

 

 

 なんて、美しい声が耳に届いたのでそちらを振り向けば。そこに居たのは──美という言葉を体現したような、隔絶した見目をした淫魔の女性だった。

 

 男性と比較しても遜色のない長身を、そこらの兵士が付けているものとは比較にならない豪奢な鎧で覆っている。本来なら防御に使うはずの胸当ては金属製のブラのようになっており、内半球全てがむき出しになるほどに大きく開いていた。ああいう装いは淫魔が好むものというが、彼女も例に漏れないようだ。

 大きく開いた胸元は彼女の小さい頭に並びそうな大きさの乳房がこぼれ落ちるんじゃないかと言わんばかりに張り出しており、みっちり詰まった谷間はY字どころかI字を形成していた。

 ひと目見て吸い寄せられるような胸のすぐ下には程よい筋肉に薄い脂肪が乗った滑らかな白い腹が見えており、臍の形一つとってもまるで古代のギリシャ彫刻のような美しさを見せている。

 逆に胸より上を見上げてみれば、形容する語彙が足りなくなりそうな美しい顔が微笑みを浮かべている。つややかな烏の濡羽色のセミロングヘアが綺麗に切りそろえられていてその輝きを際立たせていた。

 

 他の淫魔と違い下半身には足首まで覆うようなロングスカートを履いており、豪奢な刺繍が光をキラキラと反射している。その先から見える足は金属鎧に覆われており、金縁の細やかな装飾もまた彼女を引き立てる一助となっていた。

 

 周囲の兵士たちが戦いている。兵士たちも同じく見目麗しい淫魔ではあったが、彼女の前ではくすんで見える。

 漏れ聞こえる声を聞く限り、彼女が「王の徴」を持つ上位種へ昇格した淫魔、であるらしい。

 そして、そんな彼女が何故か私を、奴隷として購入したらしい。

 

(…………何で?)

 

 本当によくわからない。ただの農民の娘でしかない私を彼女が必要とする理由があるのだろうか?

 いや、単に誰でも良いから奴隷を買おうと思ったときに私の番が来た、というだけだろうと思い直す。身の回りの世話、とまでは言わないまでもほんの雑事を任せるにしても同性の奴隷が欲しかった、だからちょうど売りに出された子供の私を買ったと考えるほうが自然だ。

 ……その時、彼女の周囲の淫魔が彼女に不可解な目線を向けていた事に──彼女から、今まで感じられなかった興奮の感情が発せられていた事に困惑していたらしいということに、当時の私は気づいていなかったが。

 

 私を管理していた兵士たちは彼女の言葉を二つ返事で承諾し、金銭と引き換えに私を彼女へと引き渡した。

 兵士たち曰くかなりの高値で取引されたらしい私は奴隷になった同村の面々との別れもそこそこに、彼女の細く優美な手に優しく引かれる。そのままあれよあれよという間に王城から少しだけ離れた、だけど十分に近い位置に立つ大豪邸の門をくぐることになった。

 

「さて、ここが私の──そして、これから君も住む家だ」

 

 流石に部屋は違うが、なんて彼女は言うが──そんな言葉が耳に入らないくらいには別世界だった。

 真っ白な石造りの立派な4階建ての建物。窓の高さを見れば各階の天井の高さも相当なものだろうことが見てとれて、もはや豪邸を通り越して小さい城とすら言える。

 当然ながら敷地も建物に負けないぐらい広大で、大きな庭園を綺麗に手入れされた庭木と花園が鮮やかに彩っている。

 

「すごい……」

「ふふ、感動してくれるのは嬉しいけどずっと門で立ち止まっている訳にはいかないな。そろそろ進むとしよう」

 

 思わず身を乗り出して感嘆していた私に苦笑した彼女は私の肩を優しく抱き、落ちないようにと座り直させる。

 そのまま御者に指示を出すと馬車はゆっくりと進み始め、やがてその造りにふさわしい大きな玄関の前で再度停車した。

 ずらり、と並んだ使用人達を見ればまさに貴族・貴種の世界であり、とても前世では触れられなかった世界を感じられてすこし面白い。

 

「お嬢様、お帰りなさいませ」

「出迎えご苦労、何時もありがとう」

 

 出迎えの使用人たちの中から一人、猫獣人の女の使用人が前に出て馬車上の彼女に礼をする。自然に出てきて堂に入った振る舞いを見せられれば、そうすることに極めて慣れている従者なのだろうと察しもつく。

 お付きか何かだろうその従者に迎えられ彼女が馬車を降り始めたので、私も立ち上がり彼女に付き従った。

 

「ほら、行こうか。……っと、小さいから一人では危ないか、ほら、こっちに来ると良い」

 

 彼女が降りた段差を降りようとするも、豪奢な作り故か馬車が思ったより高く少し手間取ってしまう。踏み外さないようにゆっくり降りようとした私は、先に降りてた彼女に両脇を支えられてひょいと降ろされた。

 奴隷であるはずなのに主人に抱えて降ろしてもらうなんて良いんだろうか、なんて小動物か何かのように扱われた私は疑問に思う。いや確かに踏み外したら危なかったかもしれないけれど……。

 

(奴隷として買った割に、やけにこう……扱いが良いと言うか……?)

 

 いくらこの世界の奴隷が前の世界に比べて人権意識高めとは言え、奴隷は奴隷。少なくとも主人が奴隷を助けるなんてことは基本無い、はずだ。

 しかしそんな彼女の行動に対して誰も注意しない。間近で見ていたであろう猫獣人の従者もさほど気に留めた様子もなく、私が地面に下ろされるまではこちらを見ていたが、ちゃんと地面に立ったことを確認すると直ぐに目線を戻していた。

 

 彼女がこんなふうに子供相手に丁寧な振る舞いをすることはもしかしたら日常茶飯事なんだろうか。疑問に思いながらも、彼女がついて来るようにと言っていたのでそのまま後ろについていく。

 歩く私の後ろには先程の従者がついてきており、奴隷の私が正式な従者の前で良いのかと確認したくなる。だが流石に奴隷身分で許可なく主に声をかけるのも憚られるし、注意が飛んでくることもない。兵士たちも彼女も奴隷として私に求める振る舞いについて説明しなかったから、許される線引がどこでされているのかもわからないのが現状だ。

 

 だから結局、私に出来ることは主人である彼女の言うまま、黙ってついていくぐらいだった。

 

 

「ははあ、奴隷を買ったと思えばそんな娘かあ。うーん、まあ、そうだね。大切にするんだよ?」

「それは……勿論です、お父様」

「なら良いけど。君も、あー、なんだ。頑張りなよ、自分を買い戻すとしたら多分15年から20年ぐらいはかかるだろうから。いやあ、ウチの娘からの珍しいおねだりだったからってちょっとお小遣い奮発しすぎたねえ」

「……?はい」

 

 彼女の父、つまりこの館の主であり当主。この国における淫魔の長である男は他の淫魔同様に露出の多い、しかし娘である彼女同様に豪奢な飾りを纏ってどこか神秘的な雰囲気を漂わせていた。

 線が細く一目見るだけでは男か女かわからない美貌の、父親と言うには若々しい男。天を向く二本角が目立つその貌は子供にも大人にも見え、娘である彼女と年齢差があるようには見えない。性的魅力がピークを迎えた段階から先は殆ど見た目に変化が起きないのは淫魔の特徴であるらしい。

 そして思ったより買い戻すのに時間がかかるようだ。いや、子供の私がどれだけの労働でどれだけの対価を捻出出来るのかと思えば時間がかかるのは当然だろう。老人になってから開放ならともかく、30そこらで開放されるなら良いほうだろう、多分。……買い戻しの話をしたときに、彼女が少しだけ眉根を潜めたのが気になる。

 

「……あのね、その、色々大変だろうけど……」

「……ううん、やっぱり良いわ。ねえ、小さい貴女。初めてで辛いこともあるかもしれないけど……頑張ってね」

 

 彼女の母、つまりこの国における淫魔の長の妻。複雑に枝分かれした角は綺麗に手入れされており、美しい美貌は夫同様に娘と同じぐらいの若々しさを見せつけている。姉妹と言われても疑いの目を持つことはなかなか難しそうだ。

 背丈は夫と同じくらいだろう、あの夫婦から長身の彼女が生まれた、というのもなかなか信じがたい話だが……淫魔は肉体より精神、そして魂で成長・変化するという特性があるらしく、親子で大きく異なる見た目になることもあるのだという。

 何か私に話しづらそうにしていたが、やがて娘をちらりと見た後首を振り、ここに来たばかりの私に仕事を頑張るようにと優しく声を掛けてくれた。

 

 

 奴隷である私に対しても隔意なく話し掛けてくる夫妻は素晴らしいのか開明的なのか。単なる雑談のような会話を少し挟んだのち、私は面会を終えた。どこか悩まし気な顔の彼女の両親に見送られ、少し疑問に思いながらも私は彼女に付き添って案内を受けていった。

 洗濯場、炊事場、ゴミの集積所などなど日常で世話になるような場所を転々と案内される。いつの間にか大勢居た使用人は消えており、彼女の従者と勝手に睨んでいた猫獣人だけがついてきている。

 そうして、この館を色々案内された後。最後に案内された場所は……。

 

「……ここは、地下牢ですか?」

「ああ。いや、正直に言うとここぐらいしか広くて個室になる場所がなかったんだ」

 

 私の住居になる、という部屋……いや、取り繕うまい。誰がなんと言おうが地下牢だ。

 いやまあ、奴隷なのだから贅沢な暮らしを望むべくもないだろう事はわかってる。わかってるが……上階の綺羅びやかな雰囲気の空間とかけ離れた部屋だったので、ちょっと残念だなとは思ったりしている。

 

「勿論、今は牢獄として使ってはいない。かつては罪人を捉えて禁錮する目的で使ってたが、そういったものは私が生まれる前には国で管理するようになってからは利用も絶えて久しいものだ。だからほら、取り敢えず寝心地が良いベッドは用意しているぞ」

 

 私の少しの沈黙をなにか勘違いしたのか、彼女がやや口早に説明する。彼女が指差す先にあるのは複雑な文様が鋳造された金属製の寝台が置かれていた。

 キングサイズとまでは言わないまでも私はもとより大柄な彼女でもゆったり眠れそうな大きさで、部品一つ一つに精細な模様が描かれて確かな職人の手間暇が込められていることが伝わってくる。

 その上には分厚いマットレスに真っ白なシーツ、あたたかそうな羽毛布団に大きな枕など。なるほど、少なくとも私がこの世界に生まれてから使っていた藁のベッドよりは遥かに寝心地が良さそうではある。

 

「確かに、凄く綺麗なベッドが……あれ?」

 

 そんなベッドが、何故か2台。どちらも同じ大きさであり、用途が違うようには見えない。わざわざ離したところにおいているので、ダブルベッドの代わりというわけでもないだろう。

 

「あの、これは何で2台も……?」

「ん?ああ、そうか。そう言えば説明していなかったな。君の仕事にも関わることだった──長くなるし、椅子もまだだったからな。ちょうどいい、行こうか」

 

 仕事の説明。そう言えば私は何の仕事をするためにここで奴隷となったのだろうか。彼女に連れられベッドに座りながら考える。

 

 この館には大勢の使用人が居た。あれだけ使用人が居るのに奴隷が家事手伝いなんてする必要もないだろう。

 そもそも畜産農家だった自分がこの館でまともに出来そうなことと言えば精々馬などの世話くらいか?それにしたってこれだけ大規模な家の馬やら家畜やらの世話をするにしたってとっくに専属の飼育員とかを雇ってそうなものだ。

 

 最初はそれこそ身の回りの世話かと思ったが、地下まで付き添ってる従者がいる時点で──。

 

「──?」

 

 さっきまで付き添っていた従者が居ない。地下牢に降りてくる時は一緒に居たと思ったが……。部屋の外で待っているのだろうか、と私が牢の扉を見る。

 

 その扉の向こう側に、確かに彼女が連れていた従者がいて──扉を締めて、鍵をかけるガシャリという音が部屋に響いた。

 

「え、何で、鍵を──」

「私が君に求める仕事、というのはだな」

 

 ガチャ、と先程の扉のような、金属の錠を閉める音。それが今度は、ベッドに座っていた私の手から聞こえてきて。

 何が起きたのか分からず手を見れば、そこには頑丈そうな──それこそ、犯罪者を逃さないようにする金属錠が私の手に掛けられていて、太い鎖がベッドの柱まで伸びている。その傍にあった彼女の手には、金属の鍵が握られていて──まるで、まるで彼女が私をベッドから逃さないようにしたみたいで。

 

 わけもわからず彼女を見上げる。

 呆然と見上げる私の前で、彼女は一枚ずつ、その身を覆う鎧を、服を、下着を脱いでいく。やがて豪奢なオペラグローブとガーターソックスを除き全裸となった彼女はその肢体を惜しげもなく私に晒し──そこでようやく、彼女が私に何を望んでいたのかを知った。知ってしまった。

 

 私の頭より重そうな乳房、シミ一つない身体、胸ほどではないが十分にグラマラスといえる張りのある尻。

 そこから伸びる滑らかで柔らかさ以上の無駄な脂肪がないと言わんばかりの美しい太もも──その間に生える、彼女の前腕のような大きさの、男性器。

 だらり、と垂れ下がったソレは、私の視線が注がれていることを自覚するかのように一呼吸ごとに太く、力強く勃ち、水平に持ち上がった亀頭が私の顔と向き合った。

 

「男、うそ、だって──」

「違う、私は女だ──女だった、が正しいか。コレが『王の徴』と言って、淫魔の女性の中で上位種として昇格する者が獲得するものだ。これを持つものは膨大な魔力や高い膂力なんかも得られることから、淫魔の王、と呼ばれたりもするな」

 

 だから、私はいわば両性だな、なんて言いながら。彼女はぎしり、と音を立ててベッドに登ってくる。

 思わずベッドの上で後退りするも、じゃらり、と重い鎖に腕を取られて仰向けに倒れ込んでしまう。そんな私に慈しむような目線を向けた彼女は、怯えた私に優しく覆いかぶさった。

 彼女の細くたおやかな指が、私の服を少しずつ脱がしていく。彼女の膂力が強く、抵抗しようとしても優しく、されどどうにもならないほど強引に私は生まれたままの姿にされてしまって。

 

 太いペニスが、私の股間を弄る。すでに遮るものが何もないというのに、彼女はもったいぶるように性器を擦れあわせる。──いや、本来なら遮るもなにもないのだ。だって、だって──あんなモノ、物理的に入るわけがない。あんなモノで犯されたら、私は──私の体は、壊れてしまう、壊されてしまう。

 既にカウパーによって濡れた巨大な亀頭がついに私の陰門を探り当て、ちゅくり、とほんの先端部だけを押し当ててくる。

 

「あ、いや、やめて──」

 

 殺される。急な命の危機に心の底から怯えていた私に、彼女は申し訳無さそうに眉を寄せて、苦笑を浮かべて首を横に振った。

 

「それは駄目だ。だって、私は──」

 

「私は、君をひと目見たときからこうして、君のことを犯したかったんだ」

 

「だから、私は君を買ったんだ──。奴隷として、君に求めるのは──私の、欲望の捌け口だから」

 

 

「だから──君は私の性奴隷になったんだ。だから、私と一緒に、これから気持ちよくなれるように頑張ろう」

 

 

 彼女はそう言って──ゆっくりと、力強く──私の膣を、陰門を引き裂きながら、そのペニスを奥まで挿し込んだ。

 

「い、あ、助け、痛、や、アアアアアアアアアアッ!っむ、ぐっ!」

 

 痛い、痛い!内蔵が物理的に引き裂かれる痛みに私はただただ絶叫した。そんな私の顔を愛おしそうに、彼女は己の唇で私の口をふさぐ。

 腹筋が断裂したのか、内出血が起きている青黒い痣が腹に浮き出てくるが、それ以上に皮が引き伸ばされ、絶えきれずにびちびちと引き裂かれて赤い血がこぼれていく。

 

 私の激痛も、怪我もお構いなしに彼女は自分のペニスが奥まで届いたと見るや一気に引き抜き、それがまた私の胎をずたずたに引きちぎるような痛みを与え、私の性器から生理や処女膜の貫通なんて比較にならない程の大量の血が溢れ出して、白かったはずのベッドを真っ赤に染めていく。

 叫びたい、痛いと訴えたい。止めてと懇願するように涙をダラダラと流して彼女を見るも、彼女はそんな私に困ったような視線を向けるばかりで。

 

 はっ、はっ、と興奮するように息を吐き、貪るように唇を重ね合わせる彼女。その吐息に合わせるようにズジュ、ズジュと何度も何度も、到底性器の交わりとは思えないグロテスクな音を鳴らして私にペニスを突き入れる。

 引き裂かれた性器の傷口がえぐられ、さらなる痛みで気を失いそうになる。いいや、ココで失っておけばよかったのだと思ってしまうが、幸か不幸か意識を残してしまった私は──やがて自分の膣の奥が、彼女のペニスで突き破られた感触を、痛みを味わってしまって。

 

 ずぼり、となにか底が抜けたような感覚とともにこれ以上にない激痛が走る。

 

 本能的に遮二無二暴れようとする私の小さい身体を豊かな肢体で抑え込んだ彼女は、興奮に感極まったようにペニスを引き抜こうとし──その張り出したカリ首が、貫いた私の膣を絡め取り、繋がった子宮も、私の腹の肉も、支えるための周りの組織もまとめて、引きちぎって。

 

(なる、ほど、こ、うやって、私は、罪を濯いで、いか、ないと──)

 

 彼女の大きな乳房の向こう側に、腹が物理的に引き抜かれてぽっかりと開いた穴が見える。血の池のようになった腹に浮かぶ、ぐちゃぐちゃな自分の消化器を目の当たりにして──奇しくもかつての人生の終わりと同じように、私は、かつての教誨師に言われたことを思い出していた。

 

 罪を濯ぐ。己が犯した罪科にふさわしい罰を受けて罪を濯げば、私は生まれ変われるのだという。

 

 私は碌でなしの人間だった。死刑になるような殺人を起こした。だからきっと彼女は獄卒で、今の状況は罪を濯いでいるんだな、なんて防衛本能のように自分を納得させる。嘘だ、納得とかそういう話ではなく──それこそまた、自分の都合の良い妄想にすがっているだけだった。

 そして、私の性器が絡みついたペニスで、私の肉を引き抜いた腹を犯す彼女から与えられる痛みと出血を味わいながら──口だけは恋人のように、キスをしたまま。

 

 私は、この家に迎え入れられて1日目にして性奴隷としての仕事を果たし──これ以上ないほどの惨殺により、2回めの人生が終わったのだった。




私(10):人間。女。性奴隷。前世が死刑囚の屑。敬虔な仏教徒ではないが複数ある宗教の中で仏教に触れる機会が多かった。
彼女(33):淫魔。ふたなり。勇猛な淫魔の将であり、また同時に味方の軍勢を回復させたり蘇生させたり強化したりする殴りプリ。童貞卒業の興奮で魔法を使うことを忘れたために筆おろしはあっという間に終わってしまった。ただ初体験という興奮補正でいっぱい射精た。
当主夫妻(??):年齢不詳(未設定)な当主夫妻。淫魔は性的魅力がピークになった辺りで成長が止まるので見た目では年齢がわからないとのこと。王都近郊の淫魔の長で大貴族。一応王位継承権があるらしいが、王族及び係累が全滅して漸く目が出るぐらいなので当人たちは無いものとして扱っている。
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