性奴隷と長身巨乳リョナグロ背徳性癖倒錯ふたなりが純愛に堕ちるまでの話 作:PP→KP
あの日以降、私は彼女とセックスをする時に強化・拡張魔法を自分自身で使用し、殺されないままに愛を囁き交わることが増えていった。
当然ながら全部の日で実行できたわけではない。私を脅かす性行為こそが愛だからと、愛と憎しみを綯い交ぜにした情欲を発散する行いだからと──そう考えている彼女から急に私への殺意の全てを取り上げようとしても逆効果だ。
だから、昼日中や性行為をしないと決めていた夜なんかに彼女と積極的に会話し、性行為にならない範囲でキスやハグを繰り返した。彼女に犯され、殺される時も。快感なんて感じないような強引な性交で恐怖や絶望、痛み等の感情が生まれるその中でも、可能な限り彼女をいたわり、彼女自身が楽しめるように体を絡めていった。
私が彼女を愛したいと──愛せるようになりたいという、そんな思いを伝えたくて。
……優しくしたい、愛してあげたいという私からの彼女への感情は、今にして思えば、かつての私が既に抱いていたものだったと思う。
ただ、優先しなかっただけだ。私は自分という人間を、常に彼女より優先してきたのだ。
親に犯され虐待され続けた事実に同情しながら、復讐心を優先して彼女の尊厳を犯して殺した。
本当の死を迎えたくないという恐怖に負けて、諦観の中でただ彼女に犯され、殺され続けた。
そんな私が、果たして彼女を自分より優先できるだろうかと思う。
私の自己中心的な性質は筋金入りだ。彼女を愛したいと思うこの心だって、ともすれば彼女を懐柔することで自分が楽になれるという思考が根底にあるのではないか……そんな考えが常に心に残っている。
それに、今の彼女は愛されている。私なんかいなくても、娘たちも息子たちも居るし、彼女の両親である先代夫妻もいる。
領民だって、戦場の輩だって。性的な感情もそうでない感情であっても、間違いなく彼女に友愛や親愛を向けていることだろう。であれば、私が彼女を愛したいという思いは実は要らないお節介で、彼女としては私のことを気兼ねなく犯して殺せる関係で居てもらったほうが良いという可能性だってある。
でも、だとしても──私は、今の勢いを止めたくはない。
これこそまさに、今度こそ、と言えるだろう。私は今度こそ、彼女を裏切りたくはなかった。
たとえ今の行いが彼女にとって望むものではなかったとしても。いつも身勝手だと罵られても──私を愛すると宣言して、たった1人のパートナーとして指輪をくれた彼女の愛情を裏切らないと決めたのだから。
娘に見られているという建前であったとしても、互いに快楽のみのセックスが出来たことは1つの契機だった。
はっきり言えば彼女は欲望というか、快楽に弱い。彼女が凄いのは快楽を求める過程で他者を害するということにまで考えが回り、それが悪性であると認識できれば自制できるというところであって、根本的に快楽に弱い事実には変わらない。
結婚記念日では私が彼女を犯す立場を取るという関係をずっと続けているのも、結局のところ快楽に負けているのだ……これについては私も人のことは言えないが。
そんな理由もあって、犯している相手から快楽と好意の感情のみを発するようなセックスを何度も体感してしまえば、きっと彼女はその誘惑に抗えないだろうと踏んでいた。
「私、偶には魔法の練習をしたいんです」
「貴女で一杯にして欲しいんです」
「貴女の熱を、体中から感じていたいんです」
などと適当に理由をつけて私が魔法を使い、本来であれば人が余裕で死ぬからこそ人にぶつけられない筈の彼女の射精を全身で受け止める。
普段であれば一回の射精で私が死んで終わるところを、大きく膨れ上がった胎に詰まった精液をだらしなく互いの身体にぶち撒けて、2回戦、3回戦と絶頂後も快楽を味わわせ続ける。
そうして少しずつ、彼女の性行為における嗜好の順位を変えていく。相手を一方的に犯して、その恐怖を味わいながら孕ませるための膣内射精で殺すという倒錯嗜好より、ただ純粋に互いを求めあい快楽に沈み、互いの肉欲に溺れて果てるような、そんな堕落嗜好を上位にさせていく。
……本当はもっとこう、純粋な方が良いのかなとは思ったりもしたのだが。生憎だが私が知っているセックスは基本互いに溺れる堕落的なものだけだった。
(淫魔の彼女を相手に、人間の私が堕落させるというのも卦体な話ではあるが)
普通は立場が逆な気もするが、根が真面目で理性的な彼女と根が自己中心的で身勝手な私ならこんなものだろうとも思う。
ともあれ、そうやって彼女を快楽に堕としていく策を実行してきたわけだが……その効果は、確かに目に見えるように現れていった。
例えば、私が死ぬ頻度が減ってきているだとか。
例えば、避妊の魔法を彼女から使用する様になったとか。
例えば──彼女の射精量が目に見えて減ってきていて、ペニスの大きさも小さくなってきたことだとか。
淫魔の性器は、基本的に相手に合わせてその大きさや拡張性を変えると言われている。
人間サイズのペニスで半人半馬の人馬族の馬の下半身を犯しても快楽を与えることなんて出来ないし、逆に馬のペニスを人間サイズの淫魔が受け入れたらそれこそ私の様に引き裂かれて死ぬのが目に見えている。
だからこそ淫魔は相手によって性器の大きさや柔軟性を変えられるような生態を持っているのだ。その生体機能を分析し魔法化したものが私に使用される強化・拡張魔法なのだから、その自由度の高さが伺える。
そして、この生態は厳密に言うと「自分が望む感情を相手に吐き出させる」ために変化する。
淫魔は原則として性行為による快楽の感情から発せられるエネルギーを捕食する関係上、先に述べたような快楽を与えられるように相手に合わせた形になるということだ。
彼女のような淫魔の昇格者、特に女性の淫魔が男性器を獲得する形での昇格者を「淫魔の王」、獲得した男性器を「王の徴」と呼び習わしていると彼女の父親から聞いた時のことだ。当時の当主であり彼女の父親は、自分の娘の持つ「王の徴」が歴代の昇格者と比しても遥かに異常な大きさと射精量を持っていたという話をしていた。
つまるところ、彼女の腕のような大きさのペニスも、そこから吐き出される自身の体積を凌駕しかねないような精液も。偏に私を犯し、悍ましい手段で殺すことで悲痛・絶望・恐怖などの感情を私から引っ張り出すことが目的だったわけだ。彼女の本人の意識的な目的というよりは、その目的に淫魔の本能が合致した結果起こった生態的機能変化なのだろうが。
その射精量が減り、ペニスの大きさが縮んできているということは──快楽や情愛といったセックスで得られる一般的な感情の方が、恐怖や諦観といった膣内射精での惨殺から得られる感情より優先度として上回り始めているのだろう。
この状況は先代様が当主だった頃から求められていたことであり、それを達成できた今、彼女に充てがわれるのは私でなくてもいいということになるが──でも、ここまで来たら流石にもう譲る気はない。
私が性奴隷として買われてから、月日は随分と流れたと思う。
彼女に買われたのが10歳の頃。あの頃は彼女とは恐怖の対象であり、3日に1度殺され、蘇るというサイクルそれ自体が悍ましかった。
表面的には愛していると囁きながら、色んな体位で、色んな殺し方で私の胎内を蹂躙していった彼女の暴虐に、私はかつての自分が罪を重ねすぎた結果だと諦観していた。
最初に妊娠したのも10歳だったか。妊娠している間は彼女も犯してこないと思っていたから、臨月の娘を膣内射精で堕胎させられかけた時の恐怖は今でも昨日のことのように思い出せる。
……彼女は私と違って、感情の奔流に流されずに己を傷つけてまで踏みとどまれる理性があることを知った。
結婚したのは娘が生まれて1年が経ったときだ。性奴隷である12歳の私に対して、生真面目に、恥ずかしそうに高価な指輪を差し出してきた彼女。
手が震えていたのは緊張ではなく、私が彼女の愛を受け入れるのかが不安だったんだと今ならはっきり理解できる。
彼女が息子を孕んだのは初夜の時で、あのときは互いに理性を溶かしていて、体液まみれのまま互いにベッドに沈んでしまった。
口だけでは抵抗しつつも最後には自分から腰を振っていた彼女は、当時から既に苦悶よりも快楽のほうが好ましいと感じていたのだろう。当然だが。
私が15になった頃は、珍しく彼女と私が同年に妊娠した。夫婦なのにいわゆる母親同士のコミュニティを構築できていて、彼女の優しさと真面目さを再認識出来たように思う。
そして、私への殺意や憎しみを抑える手段も見え始めた。彼女自身、対象への愛情が深ければ深いほどその暴力性が鳴りを潜める。それがたとえ憎い相手を前にしてでさえも、だ。
……そして、娘に見咎められて。彼女が私を殺さずに犯した日。
私が20歳、彼女は43歳だ。出産して9年以上、結婚してから8年も経って、幾度となく体を重ねて、死んで。互いに子供を2人ずつ作って。
そこでようやく、私達は互いに愛し合えたのだ。
──もう、私は30になった。かつての彼女を、柘植ひかるを殺した時の私と同程度に、今の私は年月を重ねてきた。
見た目はどうだろうか、かつての自分に近くなるように髪型やメイクをしてはいるが、髪質や人種の違いもあって完全に同じとは言えないだろう。
ただそれでも、身長も体重も3サイズも、かつての自分に遜色ないスタイルだ。彼女の優れた蘇生魔法を受け続けた結果なのか、実年齢より大分若い外見で少しだけ嬉しい。
彼女の見た目は変わらず、成年と未成年の境界に立つかのような色気と清純さを併せ持つ美貌だ。性的魅力のピーク時から姿を変えない淫魔の性質上、いくら若く見えると言っても今の私のほうが年上に見えることだろう。
実際の年齢では彼女が年上で……かつて生きていた時代を含めれば、お互い60年以上の時間を歩んできている。もし1度の生で、もし人間だったなら、今頃私達はおばちゃんからおばあちゃんへと呼び名が変化していくぐらいの見目だったろう。
今日は、彼女が地下牢に来る。性行為をする日として定めた、3日に1度の深い夜。
そして──今日が、性奴隷として働く最後の日になる。主人と交わり続け、子を産み育てた20年の奴隷働きは、性奴隷として自己を買い戻すに十分だった。
だから、相手を犯して、殺して。そんな世間的には到底認められないような行いを当主の権限でギリギリ揉み消せるのもまた、今日で最後。
互いにそれは理解している。だからこそ──。
ギイ、という鉄扉の開く音。私の血液や彼女の精液で汚れ、錆びて、何度も取り替えたソレが軋むような音を出す。
「──頼みがあるんだ」
廊下から一歩、地下牢に踏み入れた彼女。
その背後では、ひげや獣毛に白髪が混じり始めた猫獣人の従者が扉を閉める。あの従者とも20年の付き合いなのか、と今更な感傷を抱く。
ガチャン、と施錠する音が聞こえて、何時ものように地下牢には2人きり。
私を見て、何かを言おうとして、言えないとでも言うかのように口をパクパクとしては首を振る彼女を、私は何も言わずに見守り続けた。
ややあって、やがて決心がついたとばかりにスウ、と深呼吸をして──彼女ははっきりと、私に告げた。
「今日、君を──
それは、殺意の表明であり──私に対する殺害予告。
普段は許可を求めず、望む時に犯して殺す彼女が、未だ性奴隷の立場に居る私に生真面目に許可を求めた。
……きっと、拒否すれば殺されないだろう。今の彼女はそのくらい、殺意と快楽の天秤が釣り合っているだろうから。
ソレを踏まえて、私は。
「──ええ、貴女。どうぞ、いらっしゃって?」
そう言って、彼女を迎えるように両手を広げた。
今の彼女のペニスは、精々30cm程度というところだろう。
人間に近い形の生き物に生えているモノとしてはかなり大振りではあるが、かつての世界であってもそのぐらいの大きさになる人はゼロではない、という程度には「常識的な」巨根だ。
一番大きかったときは多分、私が妊娠中の時。彼女が私の胎を蹂躙しようとしたあのときは多分、長さも太さも今の倍以上はあったと思う。
勿論、彼女の膂力は据え置きだし、ペニスの頑健さは人間のソレを上回る。だから全力で愛し合うような、快楽に堕ちるようなセックスをするなら魔法が必要になるだろう。
でも、今日は魔法を使わない。私はもとより、彼女も使うことはないだろう。
ちゅく、ちゅくと彼女のカウパーがほんのり漏れ出している亀頭が私のクリトリスを愛撫し、その快感で私の膣も愛液でじわりと湿っていく。
互いの性器が十分に濡れたところで、彼女は意を決したようにペニスを私の膣口へと押し当てた。
「はぁ……っ!んっ、入って、来た……っ!」
ずぷぷ、と長く太いペニスがゆっくりと挿入されていく。広く張ったカリが、海綿体がみっちりと詰まった太い陰茎が、私の膣内を押し広げ、刺激していく。
魔法による拡張のない私の膣は彼女のペニスで限界近くまで押し広げられていく。膣が収縮して隙間なく密着して様は、まるで己を孕ませようとする存在を理解していて逃さないようにする生物の本能なのではないか、なんて馬鹿な空想が浮かんでくる。
「く、ふぅ……んっ、キツいな、君の、
互いの滑液が分泌され続け、結合部からは彼女の雄と私の雌が混じり合うかのような混合液がボタボタと溢れてきている。普通なら激しい抽挿だろうが快楽に変えられるような程の液量だが、ソレに反してペニスが奥へ進む速度はじれったいほどゆっくりだ。
みっちりと、余すところなく搾り取るかのように彼女のペニスを全方位から圧迫する私の膣は、しかし魔法の拡張がなければキツいと感じる程度には常人のソレだ。どれほど潤滑しようが、物理的なサイズの限界同士だとやはり動かすにも限度があるのだろう。
やがて、彼女のペニスが半分ほど挿入ったところで。私の奥に痛痒が奔った。
「んっ、奥に、届きました、ね……」
「……ああ。少しだけ動かすぞ……」
子宮の入り口、彼女の亀頭がポルチオに触れたことによる痛みで僅かに顔を顰める。その表情の変化に気づいた彼女は、気遣うようにペニスを器用に動かしてその周辺の性感帯を刺激してくれる。
「あっ、んっ……んんぅ……、あぁん……!」
「んっ、くぅ……」
押し込んだまま下手にピストンすることもなく、トントン、と小刻みな振動を奥に与えて私に快感を与えてくれる彼女。優しく奥を啄かれる度に、私の口からとめどなく嬌声が上がる。
彼女自身もその小刻みな動きでペニス全体が優しく擦られて気持ち良いのか、喘がないようにと口をきゅっと引き絞っているようだ。
そうして、互いに気持ちを昂らせていく。互いに快楽に沈んでいく──少しずつ彼女に染み込ませた、快楽を貪る堕落した性行為に向かっていく。
このままこの快楽を続ければ、きっと彼女は私の膣内に射精すだろう。そのことに彼女も気付いているだろうが、それでも止めようとはしていない。多分、先程宣言したことを有耶無耶にしたいのだろう。
だから、私は少しだけ上体を起こして、彼女の乳房に自分の乳房をむぎゅ、と押し付けながら──私の膣に入り切らなかった、露出したままのペニスの根本を優しく掴んだ。
「…………良いのか?だって、それは、本当に……」
多分、その動きで察したのだろう。彼女は私にペニスを掴まれたことで動きを止め、どこか困惑したような、拒否してほしいとでも言いたげな顔を見せる。
確かに、このままなし崩し的にセックスで互いに気持ちよくなって、それで性奴隷としての最後の夜を終えるというのは私としてはありではある。
性的快感で痛みへの感情を押し流してしまえば、きっと今日も死なないし──今後、彼女に殺されることはなくなるだろう。
それは、私を優先するのであれば選択肢としてはありだったと思う。
でも、今日はそうしないと決めていた──彼女を優先してあげたいと、そう決心していた。
「ええ、貴女」
だから、私はニッコリと笑う。怖くないと、受け入れていると。──今までみたいに諦観で殺されるのではなく、貴女を大切にしたいから殺されるのだと。そう伝えるために。
彼女のペニスから手を離し、彼女の身体を抱きしめる。離れたくないと全身で示してあげる。
彼女の腰に脚を回し、これ以上後ろに下がってほしくないと、ここから後ろに下がるつもりはないと身体で主張してみせる。
「────良いの、来て。──私を、
「──────っ!!」
ずぐん、と膣奥にえぐられたような圧力がかかって、一瞬呼吸を忘れてしまう。
恵まれた体躯、美しい肢体をいっぱいに使って私の身体をベッドの上に抑え込んだ彼女は、膣の奥まで詰め込んだペニスを僅かにも露出させないままにピストン運動に移行する。
少しずつ、ほんの少しずつ奥へ奥へと押し広げられる。いいや、既に限界だった膣がこれ以上押し広げられるなんてことは本来有り得る話ではない。
だから、きっと、もうすぐ。
ぶちぶち、と組織がちぎれたような音が体内から聞こえた気がした。
身体に激痛が走る。彼女の肉に包まれて見えないが、きっと今頃内出血で腹全体が青くなっているのではないかと思う。
ぐじゅ、ぐじゅ、と凡そ性器から発せられるような淫猥さとは程遠い、生命が浪費される音が交接口から血とともに響いてくる。
「あ゙っ、あ゙っ、ぐ……うぅぅ」
「──────!」
私の痛みに呻く声に、彼女が一瞬だけ動きを止めそうになる。私はそんな彼女の腰を、両脚を使って無理やり引き寄せた。ずたずたになっている臓器から迸る激痛に失神しそうになるが、最後まで受け入れるためにと気合で意識をつなぎとめる。
「あ、あ、あああああ!」
彼女は自棄になったように、私を犯す勢いをどんどん強くしていく。
いまや、彼女の30cmはあるペニスは私の中に全てが収められている。ペニスを押し込む度に私の腹部が突き上げられて、皮膚が裂けて赤い血がたらりとへそを流れていく。
ずん、ずん、と。押し込む度に私をえぐり続け──その動きがついに私の限界を超えて。
私の膣と子宮にその全体を包まれたペニスが、メリメリと腹を引き裂いて外へと出てくる。孕ませるに必要な膣と子宮をちぎり取って、己のものとせんばかりに私の身体を貫いていく。
やがて、陰門周りすらも引きちぎって、彼女は私の性器の全てを自分のペニスで奪い取った。
「あ──あ、ああ……」
血溜まりに沈む私を見て、我に返ったような、そんな声を上げる彼女。やってしまった、そう言いたそうな顔で、蒼白な表情で私を見る。
でも、まだだ。まだ──私は、彼女に
まだ──最期の夜は終わっていない。
ちぎれた腹は腹筋がマトモに機能していない。だから上体を起こすに当たって、私は彼女に絡めていた腕と脚を使った。
呆然とする彼女の顔に、そっと己の顔を近づけて。
「ひか……いいや、違ったな」
最期の言葉を告げようとして。そう言えばそれは昔の名前だったと思い返す。
かつての彼女はもういない。今の彼女に繋がっているし、事実上同一人物だとしても──かつての彼女は、柘植ひかるは殺されている。他ならぬ、私によって。
だから、今の名前で呼ぶべきだ。
最初に好きになった、恋した人の名前は終ぞ呼ぶことが出来なかった。
次に好きになっていた、愛した人の名前は自分から呼ぶことが出来なかった。
だから、今度こそ。
今生で愛するようになった、大切な彼女の名前は──私から先に呼びかけよう。
今度こそ、愛する人のその名前を、自分の意志で呼ぼう。
「────イヴェット、愛してる。大好きだ」
血があふれる口で笑顔を作り、どうにか音を成立させて。血を喪って力が抜け始めた両腕に全力を込めて。私は美しい彼女の──イヴェット・ゼヌニムの唇を貪るように接吻をする。
目を見開いた彼女は、その宝石のような赤い瞳からポロポロと涙をこぼしながら、震える顔で笑顔を作って。
「────私も、私も愛している。ゼノヴィア──
そう言って、感極まったように私に──性奴隷のゼノヴィアに、愛するように口付けを返して。
びくん、と彼女のペニスが一度脈打つ。ペニスをカバーのように覆う私の身体から引き剥がされた子宮と膣が、その脈動に合わせてほんの少しだけ膨らんだ。組織のちぎれた穴からは、ごぼり、という音とともに白い精液がぼたぼたと溢れ出て、それで終わり。いつも私に飲ませていた量すらも遥かに下回る、今までの彼女に比べたら残り滓のような量の精液。
彼女が性奴隷の私を殺して、妻の私に愛を告げられた最期の夜は。引きちぎられた内蔵すらも壊せないような、そんなこれ以上無いくらいの全力の
──────
────
──
─
「……ん……」
「目が覚めたか?」
光がまぶたを貫いて、意識が覚醒する。
すぐ隣から、愛する彼女の透き通った声が聞こえた。
「ああ、おはよう、ございます……」
「ふふ、もう良いさ。性奴隷としての仕事は昨日の夜で終わったんだ。だから、奴隷として主人に向けるような口調はもう要らない」
彼女は愛する人にするように、私をぎゅっと抱き寄せる。手放したくない、そう全身で主張する。優しい抱き方だが、しかし彼女の愛を明確にした私にとって、その腕は到底振りほどけないだけの魅力があった。
身動きが取れないベッドの上。ふわふわした毛布に包まれ、互いに全裸で抱き合っている。彼女のペニスが私の腹に押し付けられているが、勃起しているわけでもなくただ本当に触れているだけだ。
ちら、と目線だけを動かせば、昨日使ったであろうベッドが見えた。
普段は私が可能な限り清掃し、洗い場に寝具を持っていくのだが……昨日使ったであろう寝具は既に外され、清潔感のある真っ白なシーツで包まれた状態になっている。
性奴隷の私は昨夜で終わった、ということであれば。きっとあのベッドは彼女の従者が片付けたのだろう。当主の情事の後片付けは従者がやる仕事だ。
「……口調、か。なあ、イヴェット。君はその口調のままで良いのか?言いたくはないが、君のその口調は──」
言葉を続けようとした私の口に、彼女はその美麗な人差し指を当てた。
「これでいい、この口調が好きなんだ。前の口調も多少なり愛着はあるけど……なんだかんだ、もう40年以上も今の口調で喋り続けてるからな」
「……そうか」
彼女が良いなら、まあそれでいいかと思う。私だって同じ様に40年以上、作った口調を使い続けているのだし。
「ゼノヴィア」
「何だ?」
ぽつり、と彼女が呼びかけてきて。答えてみれば、嬉しそうな顔を浮かべた彼女の顔が視界に写った。
「ふふ、呼んでみただけだ。ずっと、君は私の名前を呼んでくれなくて、だからどうしても、私は君の名前を呼ぶことに踏み切れなかったから。だから、嬉しくて」
「ああ、まあ……そうだな。前も含めた今までの人生で、愛し合って名前を呼び会えるのは貴女が最初だ、イヴェット。だから私の名前をいっぱい呼んでくれ」
貴女が最初、というところで更に嬉しそうに笑みを深め、私の顔を豊かな乳房に埋めるようにして抱きしめてくる。私に向けられるその態度の全てが愛しく感じられるのは、20年掛けて憚ることなく彼女を愛せるようになったからだろうか。
「……昨日の夜、素直に言うと、気持ちよくはなかった。いや、気持ちよかったんだけど……でも、最近ゼノヴィアが私を愛してくれた時と比べるとどうしてもな」
「それはまあそうだろう。淫魔はそういう種族なわけだし」
「でも、楽しかったのは事実なんだ。だから、どうしても、どうしてもまた……」
「良いさ、受け止める。……そういう貴女になってしまったのは、私にも大いに責任がある」
少し震えた声の彼女の要求を、間髪入れずに受け入れる。
祝福のお陰で「嫌だったものが嫌ではなくなる」という彼女は、本来の淫魔であればゲテモノな感情でも嫌わずに摂取できる。
その味わいをずっと続けてきて、倒錯した、背徳的な行いが好きになってしまったのは紛れもない事実だ。今は普通の快楽の感情のほうが好きというだけで、結局憎悪や恐怖といった感情が生まれる性行為も嫌いではないのだろう。
人間だってそうだ。美味しいものが好きでも、偶にはゲテモノを食したくもなる。食べた直後はもう食べないなんて言っておきながら、またしばらくすればその味を思い出したくなるものだ。
どうしたって嗜好は嗜好だ。多少過激なものだろうと、その嗜好の発端の私が受け入れなくてどうするというのか。愛する人からのその程度の願望くらい、笑顔で受け入れて、恐怖と愛情を込めて殺されてあげようと、今なら素直に思えるというものだ。
私の答えを受けて、困ったような、嬉しいような、そんな顔を浮かべる彼女。
だが、きっと嬉しかったのだろう。自分の困った性癖を受け入れてくれるというその言葉で、きっと彼女はとても喜んだに違いない。
だってほら、私の腹に当たっていた彼女の立派な逸物が、どんどん硬さを増しているのだから。
「まったく、イヴェットは欲張りだな」
「えっ……あっ、いや、これはその、だな」
自分の股間の膨張に気付いたのだろう、きれいな顔を紅潮させてしどろもどろになる。
そんな彼女の可愛らしさに、私は思わずクスリと笑ってしまった。
……まあ、私も。昨晩は気持ちよくはなかった。本当に最初の、ゆっくりと挿れられていくときだけは少し気持ちよくて、あとはもう痛いだけだったわけで。
勿論自分から受け入れたのだから、それに文句をつけるつもりはない。彼女が凶行を振るっても尚、愛すると示したかったのは嘘ではないし、その目的は達成できたから万事問題なしだ。
…………。
「んっ……」
彼女のペニスを柔らかく握る。亀頭を刺激するように、私の柔肌に擦りつけながらその先端を膣口に持っていく。その刺激に、彼女が思わず嬌声を漏らした。
同時に使用したのは、私の身体が多少乱暴に扱われても平気になるような、そんな強化と拡張の魔法。覚えてから10年弱、すっかり彼女と遜色ないレベルで扱えるようになった、彼女を愛することが出来る魔法。
今の彼女の射精量であれば、そこまで強力な拡張魔法は要らないだろう。必要なのは、あの剛直を全部呑み込んで刺激してあげられるだけの強度と柔軟性だけだ。
膣口で亀頭を少しだけ咥え、手を離す。昨夜の行為では満足できなかった私のはしたない身体が、彼女からの快楽を求めて蜜を滲ませる。
膣液で湿った亀頭はお返しとばかりに私の陰門にカウパーを塗りつけてきて、にちゅにちゅ、といやらしい音をベッドの中に響かせる。
「…………」
「…………」
顔を赤くして、ゴクリとつばを飲み込む彼女。これから起こることを大層期待しているであろうその顔は、まるでエサを前に待てと言われている大型犬のようだ。
なんて、私も似たようなものだけど。欲求不満な夜を過ごしたアラサー女が、愛する人と2回戦を行おうというその時の顔は、同じ様に盛った獣のような印象を与えるだろう。
密着して変形した互いの乳房越しに、どくん、どくん、と心音が聞こえる。これは私のものなのか、彼女のものなのか……両方、という可能性が一番高そうではあるが。
時間的にはもう朝で、そろそろ従者が呼びに来るかもしれない。……いや、何時もの従者は部屋の前で待機しているだろうから、おっ始めれば気を利かせてくれるだろう。
或いは、もう年頃になった子どもたちが遊びに来るかもしれない。……なんて、アビーはもう大人で実務に携わってるし、バーティは聖都の高等学校で寮生活で不在だ。ケイトやクリスが来たとしたら……いや、あの子達ももう14と15歳だし、淫魔なんだから親の情事を見せても問題ないかな、なんて思う。アビーに見せた時に比べれば大変健全だ。
大分毒されている気がするが、どちらかと言うとその程度でこれから起きることを止めたくない、という方が正しいだろうか。どちらでも良いか、それよりもお互いの昂りを心ゆくまで消費して、今日1日を平常心で過ごせるようにするのが肝要だ。
どちらともなく、顔を近づける。
少しずつ少しずつ近づいていき、互いの吐息が絡み合う距離に来て──マナーとでも言うかのように、同時に目を瞑った。
口が温かい。自分のものではない温度が互いの口腔を蹂躙していく。彼女の舌と私との舌が、互いを求め合うように絡み合う。
お腹が温かい。体の芯から温められるような、そんな熱のあるモノが私を優しく貫いていく。愛の結晶を生み出す生命のスープが、次代を育むベッドを一杯に満たしていく。ごぼ、と白い液体が少しだけ溢れてきて、密着した結合部が更に淫猥さを増していく。
日が昇り始めていてもわからない、窓のない地下牢の中で。3日に1度の、その次の日になっても関係ないとばかりに。
後から後から昂っていく性欲に任せて、私達は確かめるまでもない互いの愛を──心ゆくまで堪能するのだった。
ゼノヴィア→ゼノヴィア・ゼヌニム(30):人間。女。主人公。長身巨乳リョナグロ背徳性癖倒錯ふたなりを純愛に堕とした性奴隷。男を堕とすファム・ファタール。初めて愛する人の名前を自分から呼んで告白できた。自分を買い戻し誰彼憚ることなく正妻として名字を名乗れるようになって順風満帆。こいつが順風満帆で良いのか?本当に良いのか?と作者に常に思われている。
イヴェット・ゼヌニム(54):
アビゲイル(20)、バーソロミュー(18)、キャスリーン(15)、クリスティアン(14)
:淫魔。女男女男。両親が長生きしそうなのでそれぞれやりたいことをやることに決めた。この後どんどん弟妹が増えていくのだが現時点では誰も知らないのである。