※この作品はR-18です。

性奴隷と長身巨乳リョナグロ背徳性癖倒錯ふたなりが純愛に堕ちるまでの話   作:PP→KP

27 / 56
本編7話~9話


3話:「彼女」と赤ちゃん②

【マナー講師から】転生者間依頼スレ Part.231【総会屋代理まで】

 

 

……

……

 

631:無銘 ID:1xQfi16P

今更だけど毎回変わるスレタイの依頼って実際に出されたことあるんかな

 

632:無銘 ID:A6VCoLcA

マナー講師はやったことあるけど総会屋はちょっと……

依頼受けますって手を上げた瞬間に依頼者共々Hマスターに札付きにされる未来しか見えない

 

633:サキュOh! ID:a#j2qG1D

【依頼】

内容:護衛依頼

期間:明日 から 1ヶ月後 まで(開始日応相談)

場所:ザナーン王国王都 ゼヌニム邸

報酬:ザナーン金貨1000枚

条件:イヴェット・ゼヌニムより強いこと

備考:守秘義務があるので詳細な依頼内容は契約後に明かします 契約完了前に内容を漏洩した場合は報酬はありません

 

634:無銘 ID:gqUk4J7L

>>633

おっ新規依頼だ

(依頼主見て)(依頼内容見て)えぇ……

 

635:無銘 ID:DqBEB#vO

随分豪勢な自宅警備員だなおい

Oh!の家に誰か来るの?

 

637:無銘 ID:I0u6kHL9

まずハイランダーより強いことが前提条件の護衛な時点でハイランダーしか受けられないんよ

 

640:無銘 ID:iZi8idEA

・報酬がおかしい(相場の2倍以上)

・場所がおかしい(Oh!の自宅)

・条件がおかしい(ハイランダー限定)

これ知ってるよ 騙して悪いがされる奴だよ

 

642:無銘 ID:qj6qoWPC

騙して悪いがするなら個人依頼にするんだよなあ……

 

645:無銘 ID:j2lwzTDt

>>633

>>640

地味に期間もおかしいよな 最速で明日からってのもおかしいし開始日応相談ってのも大分おかしい

さてはとにかく早く来てって感じでよっぽど切羽詰まってるな?

 

646:サキュOh! ID:a#j2qG1D

そうです切羽詰まってるんです!どなたか請け負ってくれる方いませんか!!

 

647:無銘 ID:21L44dkf

素直に認めて可愛いね♡

でも無理

 

650:無銘 ID:+uSVC&tz

サキュOh!って表だとめっちゃイケメン美女作ってるくせに掲示板だと色々雑可愛いよね

あっ依頼は無理です^^;

 

653:無銘 ID:-7ugUtzN

デカパイで誘引すればええやんけ

身体自由にしていいよって言えば変態昇格者とか釣れるんでない?

 

656:サキュOh! ID:a#j2qG1D

>>653

釣れますかね……最悪それも条件に加えないと……

 

659:無銘 ID:-7ugUtzN

あっこれ思ったよりあかんやつや

そんなの条件に付け加えなくてもいいから(良心)

 

661:無銘 ID:vROAbmWA

割とマジで切羽詰まってそうだなこれ

ちょっと他のスレで暇してそうな人探してみるかー

 

664:ラン坊 ID:mB&wO29$

時間空いてれば行ったんだがなあ

今長期依頼中だしなあ

 

667:無銘 ID:kE&RpoaY

ラン坊また変な依頼受けてるの?

 

668:ラン坊 ID:mB&wO29$

変とは何だ変とは

良い依頼だぞ?色んな薬品を被ってその効果を確かめるってやつ

ちょっと身体が爛れたりするけどすぐ治るしな

 

670:無銘 ID:viICGE0D

変な依頼過ぎる……

 

671:無銘 ID:1MIw1+YR

まあラン坊はハイヒューマンで耐性自体は最多種族な人間と一緒だからな(耐久性狂ってるけど)

そう言う意味では治験()に向いてるのかもしれん

 

673:無銘 ID:E6t9iBdV

ラン坊が爛れるレベルの薬品は兵器に近い気がするんですが

 

675:無銘 ID:mEboCyH7

実際は薄めて使うんでしょ……多分

 

677:無銘 ID:LG&23HwR

ごめんそれ俺が出してる治験だわ

肌の角質ケアで作ってるんだけど強すぎて肌どころか肉まで溶かしちゃったんよ

いい感じの濃度のが出来たら化粧品に使えると思うんだけどなあ

 

679:無銘 ID:jL7N%m20

角質どころか確執までケアできるね♡お前の命貰い受ける

 

680:ラン坊 ID:mB&wO29$

それはともかく依頼の件で思い出した

今チョーさん依頼入ってなかったと思うから誘導してくるわ

 

681:無銘 ID:vrvvJAwz

チョーさん空いてるのか珍しいな

ラン坊ほどじゃないけどあのヒトも依頼選ばずなヒトだろ?

 

683:無銘 ID:JXKuqsNZ

チョーさんならOh!より強いけども過剰戦力過ぎんか???

 

685:無銘 ID:HCNfZLef

それはそう

まあ切羽詰まってそうだし良いんじゃない?

 

687:サキュOh! ID:a#j2qG1D

>>680

ありがとうございます!来たら交渉してみます!

 

688:チョーさん ID:S7uFc2n#

ええよ

今行くから窓開けといて

 

689:サキュOh! ID:a#j2qG1D

えっ

 

 

……

……

 

 

「来たぞ」

「えっ」

 

 まだ夜も明けていない深夜帯。取り敢えず初手で依頼用の掲示板に依頼を投げたらとんでもない大物が釣れた。

 咄嗟に窓を開けると同時、一陣の風が奔ったと思えば部屋の中央に1人の少年が立っていた。いや、実年齢を考えれば少年とは言えないんだろうけど……。でも、130cmあるかどうかという小さい体にくりくりした目、まるで小鳥のような高く綺麗で澄んだ声は少年としか言えないと思うんだ。

 

「誰が少年じゃ小娘が」

 

 思考がバレていた。まあそれぐらい出来ても不思議じゃないヒトだけど……。

 

「ほんで、どういう依頼なんじゃ?誰ぞ襲撃者が来ることでも予見しとるんか?なに、大船に乗ったつもりで居るがいいさ。わしなら大体なんとかなるからの」

 

 そう言って、小さな体で大きな私を見上げるように胸を張った彼──「チョーさん」こと両儀四象(ガンロゥ)と呼ばれる昇格者(ハイランダー)は、矢でも鉄砲でも持って来いと言わんばかりに自身に満ちた小さな笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「ごめんドン引きするわ。犯そうとする依頼主から赤子孕んだ性奴隷を守れってわしが今まで受けた中でも指折りのあたおか案件なんじゃが?」

 

 さっきまでの笑みが一気に消えて真顔でそう言われると、わかっていてもきつい。

 

「……でも、今はこれが最善なんだ。私が変わればいいって分かっていても、今すぐなんてとても出来る気がしなくて……」

「ああ、まあ祝福ってそういうもんであるが故なぁ。魂を整形するための強制力がそう簡単に振りほどけちゃ神も困るじゃろ?わし困らせたし」

 

 カカカ、とお爺さんのような笑い声を少年の声で上げる両儀四象(ガンロゥ)。祝福を振りほどくなんて出来るんだ……ずっと助けられてずっと振り回されている身としては凄いの一言しか浮かばない。でも彼ならそれぐらい出来てもおかしくはないのだからしょうがない。

 両儀四象(ガンロゥ)、彼は昇格者(ハイランダー)全体を見ても指折りの強者だ。私はもとよりアグナギメルさんでも正面から立ち合うと数秒と保たないだろうって言うほどに。

 実際、こうやって向かい合うだけでも全く底が見えない。こんなファンタジー世界に生まれ変わって30年以上、戦場に立って10年以上も前線で戦って一廉の将として見られるようになって、昔見た古いマンガに出てきたような強さを測るみたいな真似が出来るようになったのに、である。

 

「小娘ごときに測れる器じゃないんじゃよ、わし。ほら、時の皇帝にも何度も士官の誘い受けるぐらいじゃし。全部断ったけど」

「……それって、じゃあ、私の依頼を断ったりは……」

 

「流石にせんわい。内容はあたおかだとしても、真摯に嘘偽り無い依頼であることはわかったしの。それに護衛依頼ってのもまあ、嘘ではないものな」

 

 その言葉にほっと安堵の息を吐いた。良かった、それなら最低限どうにかなるはずだ。

 それじゃあ、と契約成立を示すように差し出された小さな──今日、私が抑え込んだ彼女よりも更に小さな手を握る。そこからは、私の大きな手なんかより遥かに大きなものを感じさせてくれた。

 

 

 両儀四象(ガンロゥ)の実力は話には聞いていたし、対峙してすごいヒトだっていうのは分かっていた。でもこれほどまでとは思わなかった。

 翌朝になって、父に事の顛末の説明にフローが向かおうとした時。私が散々強化を重ねがけして封鎖してしまった扉をいともたやすく引き剥がした……おかしいな、竜の突進だって止められそうなぐらいだったはずなのに。

 

「従者だけに説明に行かせるんか?ほれ、貴様もいかんかい。なぁに、わしが傍におるでな。莫迦やろうとしたらふんじばってやるわな」

 

 なんていって私を部屋の外まで蹴り出した。恐る恐る踏み出して、父の部屋へ向かう。途中、彼女の居る地下牢へ向かうための螺旋階段が見え、無意識に脚を伸ばそうとして──。

 

「言うたそばからこれか!この戯けが!」

 

 次の瞬間には体がくの字に折れ曲がって、床に倒れ伏していた。気づけば両儀四象(ガンロゥ)が目の前に立って拳を振り抜いた姿勢になっていて、そこでようやく「ああ、殴られたんだ」と何が起きたのか理解できた。

 不思議なことに痛みがない。ただ体の曲がる場所を的確に曲げて足止めをした、いわば膝カックンみたいな感じで全身が曲がって倒れてしまったような感覚で、何をどうやれば殴っただけでこうなるのか皆目検討もつかなかった。

 

「ほれ、いけいけ!次妙な動きしたらわしが引きずってでも連れて行ってやるからな!」

「は、はい……」

 

 もうこの一幕だけで格の違いをまざまざと教えられた気がする。私はすごすごと、だけど安心したように父の部屋へ足を向けた。

 

 

「成る程、昨夜そのようなことが……道理でイヴェットの部屋からガンガン物音がしたりフローレンスの叫び声が聞こえたりしたわけだ。そしてその方が……」

「んむ。わしが赤子が産まれるまでの間コヤツから母胎を守る──というか、コヤツが妙な動きをせんように見張るという契約を結んだのよ。名は教える気はないが故、両儀四象(ガンロゥ)と呼んでくれぃ」

 

 いつも飄々としたお父様も、流石に私の昨晩の話を聞いて頭を抑えていた。お母様に至っては衝撃が大きすぎたのかくらりとソファに倒れ込んでしまって……本当に愚かな娘で謝りたい。

 

「わかりました。……それで両儀四象(ガンロゥ)殿、契約金が金貨1000枚でしたね。では私から……」

「ならぬわ。この小娘が依頼を出してわしが承けた以上、金を出すべきはこの小娘よ」

「お願いです、お父様。この失態と呼ぶにも烏滸がましい行いをした悍ましい娘の為に家の財貨を、身銭を切るなんて止めてください……」

 

 む、とお父様が少しだけ渋面を作り、しかし一理あると思ったのか言ったことを取り下げる。

 

「……そうですか。それでは孫を……娘を、よろしくお願いします」

「応よ、任せておくが良い」

 

 お父様の口から出た、重い重い感情が乗った言葉。それに対して気楽に、それでいて確かな堅さを持った言葉で返す両儀四象(ガンロゥ)の幼な顔は、重ねた年季を強く感じさせるものだった。

 

 

 

 契約を結んだその時から、両儀四象(ガンロゥ)は精力的に働いた。とはいっても私の周りをうろついて、地下牢に私の意識が向く度に逸らすことが主だったけど。

 両儀四象(ガンロゥ)は本当に意識の隙を突くのが上手で、私の意識が僅かにでも地下に向いた瞬間に出来た間隙を縫って身体を折りたたんできたのだから。本当にもう折りたたんだとしか言えない。痛くもないのに関節という関節が一気に曲がるだけ曲がって、力が抜けたままに床に倒れ伏しているのだから意味がわからないとしか言いようがない。

 それでも一度だけ、両儀四象(ガンロゥ)が少し離れたときに一歩だけ地下牢に足が向いた時。一瞬にして両手足の腱を斬られて関節を外されたりもした。流石にすごく痛かったけど、血も抜けて冷静になれたのか、治癒後には地下牢に行こうという衝動は治まっていた。

 フローは流石にやり過ぎでは、と言いたそうだったが、私はむしろ感謝していた。両儀四象(ガンロゥ)が付き添ってくれたことで、私ごときでは何をどうやっても地下に行くことは不可能だと確信できたことで逆に安堵することができたのだ。

 このまま両儀四象(ガンロゥ)が居てくれれば、赤ちゃんはきっと無事に生まれるだろう。そうなったら、流石に生まれた後であれば前みたいな衝動は持たないはずだ。

 

 ──だから、新しく子供ができない限りは、同じようなことは起きない、筈だ。

 

 

 ……つまり、新しく子供ができたら──同じようなことが起きて。私は、もしかしたら、今度こそ。

 

 

「なぁにを悩んでおるんじゃ小娘」

「っ、両儀四象(ガンロゥ)さん……」

 

 私が悩んでいることを見抜いたのだろうか、いつの間にか透明感のあるクリアブルーの瞳が目と鼻の先にあった。その澄んだ瞳は、まるで私みたいな奴の心なんてどこまでも見透かしていそうで──。

 

「いやわしが目だけで見通せるのは表面的な思考ぐらいなんであんまり過度な期待されても困るんじゃが。なんでも見通せるんなら質問なんぞせんわい」

「身も蓋もないな!」

 

 思わず叫んで、そして笑っちゃった。こうやってお道化たことを話してくれるのも、私を慮ってくれているんだろう。それが分かっていながらもついついその優しさに甘えてしまう。年の功と言うか、年長者の貫禄だ。

 

「そうそう、わしが年上。つまり目上よ。わしが依頼を受けたことを感謝せいよ」

「うん──ありがとう」

「どういたしまして。ついでに悩みの相談もするか?」

 

 ふふん、という声が聞こえてきそうなドヤ顔を披露してくれた両儀四象(ガンロゥ)の言葉に、私はそのまま甘え続けることにした。一人で悩んでも答えなんて出ない気がしたのだ。

 

「ああ、お願いしたい。それで──」

「あー待った待った。昔取った杵柄よ、どうせならちょいと変わった形式にでやろうではないか」

「?」

 

 このヒトの昔がどの程度昔なのかはまったくわからないけど、何か考えがあるんだろうか。

 不思議そうな表情を浮かべた私に、彼は不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「──そいじゃ、1つ禅問答と洒落込むとしよう」

 

 

 にやりと笑いながら、彼はそう口にしたのだった。

 

 

 

「ええか、質問する前に『什麼生(そもさん)』とつけよ。わしが目上側じゃから、その問に『説破(せっぱ)』とつけて答えてやろう。そうさな、質問の内容は直接的に言うではなくある程度比喩的なものがええじゃろな」

「そもさん……?」

「日本語で『如何に』とか『さあどうだ』ぐらいの意味合いよ。それで、どうじゃ?やってみるか」

「……難しそうだけど、わかった」

 

 こうやって捻ったやり方を持ち出すのは昔とった杵柄とやらに関わっているのか、それとも私が下手に地下牢に意識をむけないようにしたいのか……前者な気がする。多分。

 

「当たり前じゃろ。地下牢云々の話なら暴の一手で片がつくのにいちいち問答してられんわ」

「えぇ……」

 

 本当に身も蓋もない。まあ私に反応すらさせず片手間でボコボコに出来るぐらいに力量差があるんだからしょうがないんだけども。

 

「ううん、まあ取り敢えずやってみるか」

 

 そう思って考え始めたけれど、意外と……訂正、かなり難しい気がする。比喩的なもの、なんて言われても困る。直接的な表現で質問することですらどう言葉にまとめれば良いのかもわからないのに。

 

「……什麼生。上の立場から『鴉は白だ』と言うヒトが居る。そのヒトの言葉に従わなければいけない下の立場のヒトの目は、鴉を白く見ているのか?」

 

 嫌いなものが嫌いではなくなるという、私に与えられた神様の祝福。この祝福を受けた私は「嫌」なものも「嫌ではない」と感じてしまって、ついには赤ちゃんを犯し殺すことでその母親であるお姉さんを苦しませようとするまでになっている。人道なんて捨て去った鬼畜の行いですら快楽を感じさせるようになってしまった私は、祝福の影響で嫌いなものが好ましく思えているのではないだろうか。そんな不安をどうにか言葉をこねくり回して聞いてみる。

 私の問に両儀四象(ガンロゥ)は片眉をあげ。何だそんなことかとばかりに口を開いた。

 

「説破。鴉は鴉でしかないのだから白でも黒でもなかろうよ。鴉を白く見ているとすればそれは『鴉は白だ』と言われているのだと勘違いしておるだけよ。上も下も、誰もそんな事は言うとらんのにな」

 

 ──これはつまり、祝福のせいにするなってこと、なのかな?なるほど、私より遥かに長生きな両儀四象(ガンロゥ)が言うことなのだから正しいのかもしれない。

 

「これ、易きに流れるでない。わしの答えが必ずしもお主にとって正解とは限らんのじゃぞ」

「え……間違った答えを教えたんですか?」

「そも、禅問答に正しい答えなんぞ無いわ。禅問答というのはな、問答を通じて己の思索を巡らせ心底を渫う『行』よ。ほれ、わしの言葉を探り棒に己が蒙を啓いてみよ」

 

 ……悩みの相談という話だった気がするんだけど、何か煙に巻かれた気がする……。

 とはいえ確かに自分でも考えないといけない、と思う。だから両儀四象(ガンロゥ)の言葉について自分なりに考えてみることにした。

 

(鴉は白でも黒でもない、か。黒でもないっていうのは鴉色ってこと?あっ、お題が「鴉の色は白だ」って言わなかったからそう答えたのかな……?)

 

 問いかけの文面誤りのせいでややこしくなったのかな?と思ったけど、でもなんでかこっちのほうがちゃんと考えられるような気がした。

 好きなもの、嫌いなもの。それはあくまで私の主観だ。私の主観の中で何らかの事柄に対して好き嫌いの色を付けているだけ。物事をどう捉えるかは私の主観でしか無いのに、それを祝福のせいだと思ってしまっているのだと──そう、両儀四象(ガンロゥ)は私に説いているのかもしれない。

 

(……とはいえ、実際に嫌いであるべきことが嫌いじゃなくなって、残酷で悍ましいことを好ましく思っているのは変わらないんじゃないかな)

 

 嫌いなものが嫌いじゃなくなった結果好きになってしまっている。その事実はどうやっても覆せない。祝福が「嫌いなものを好きにする」というわけじゃないとは言っても、最終的にそうなるのであれば同じようなことなんじゃないかな……なんて思ってしまう。

 

「ほれ、悩んだら次の問いかけをせよ。昇格者(ハイランダー)といえども両性の連中は定命である故な、時間は有限よ」

 

 私が悩み込みそうなタイミングを見計らって呼びかけをしてくれる。両儀四象(ガンロゥ)は本当に面倒見が良いヒトだ。

 

「そうか……じゃあ、什麼生。白黒絵の具で描かれた絵があり、白い絵の具は水を弾いて、黒い絵の具は水で流れる。その絵が雨に濡れた時、その絵は全て白い絵の具で描かれた絵と何が違うのか?」

 

 私は結局、お姉さんに向ける残虐な行いが好きであり、そのためにかつての父の言った『子は親が作ったのだから親の好きにしても良い』という嫌悪すべき言葉ですら嫌悪できずに受け入れてしまっていた。嫌いの色が消えた結果、好きの色しか残らなかったら。それは結局どんな行いであれ──残虐で、ヒトを蹂躙するような行いですらも好きであるということになるのではないだろうか。

 

「説破。黒の顔料が塗られていた場所が白くなるわけではない。画板と顔料の白は違うのだから、黒の顔料が塗られていた時と描いているものは同じでしかない。白の顔料が水で流れんということはな、その白はそれだけ絵画にしっかり根付いていおるということよ」

 

 ……なる、ほど?ええと、つまり元あった白い絵の具……最初から好きなものと、黒い絵の具が流れた後の白い画板……嫌いが消えて好きになったものは違う?最初から好きなものが正しい好きで、後からできた好きは間違った好き?ううん、よく分からなくなってきた……!

 

「カ、カ、カ。悩め悩め。己が求める真理なんぞそう簡単に掴めるもんじゃないからの」

「悩み相談って言ってたじゃないか……」

「応よ。相談とは字のごとく相(あい)談(かた)らうのじゃからな。貴様の悩みについて問答を交わしておればそれは悩み相談よ」

 

 相変わらず煙に巻くような言葉を言ってきていて、果たしてこれでどうにかなるのか、と思わなくもない。けれど確かに、私は今までで一番「自分」というヒトの精神性について考えている時間を過ごしていた。

 

(……私は祝福の力で、嫌が嫌じゃなくなった。家族もそう、性行為もそう、食べ物の好き嫌いだって──お姉さんから向けられる恐怖と絶望の感情だって、そうだ)

 

 だから、嫌いな行いで感じるほんの些細な筈の好ましさばかりが感じられている。そういうことばかりを好んでいる。そう思っていた。

 

(でも……)

 

 両儀四象(ガンロゥ)はそうではないと私に説く。最初から好きなものと、嫌いな行いから嫌いが抜けた後の好きがあって、それを混同しているのだと。祝福は私の心から「嫌」を無くしているだけで、そこから好きをどう捉えるかと言うのは私の主観でしか無いのだと。

 ──私が悍ましい行いを好んでいるのは、私がそれが好ましいものだと認識しているからだと。両儀四象(ガンロゥ)はそう言っているのだろうか。

 

「……私は、私は憎くて好きなヒトを犯して、苦しませて殺すことでしか絶頂できない。そういう行いこそが好ましいとしか思えないよ。こんな私が、一体どうやって愛し合うことが出来るっていうの……」

 

 気づけば、ぽつりとそう漏らしてしまっていた。ずっとずっと考えていた、私というヒトの異常性。

 お姉さんと仲良くしたいと、仲直りしたいと考えていた。

 ──でも、その前に獣性を使い切ろうと当たり前のように考えていた。性欲を存分に満たそうとしていた。ひたすらに残虐に、自分の昏い欲望を叩きつけて。その上で、お姉さんに愛してもらおうと思っていた。

 

(そんなこと、出来るわけないじゃない……!)

 

 ケダモノのような心を満たそうとするために、大切なはずの赤ちゃんですら犯そうとした。そんな悍ましい性欲を最後まで発揮したら、きっとお姉さんは恐れてしまう。諦めてしまう。──壊れてしまう。ううん、今まで壊れていないことが奇跡でしかなかったという、そんな当たり前のことから私は目を背けていたんだ。

 

 

「あぁん?おい、比喩表現は百歩譲って許すにしても質問なら什麼生をつけんか」

「え……」

 

 

 だから、呆れたような顔の両儀四象(ガンロゥ)の言葉に私は驚いた。ただ自分の愚かさを悔いるような、情けなさを堪えきれなかったような言葉でしかなかったのに。それを両儀四象(ガンロゥ)は「質問」だと認識していたのだ。

 

 つまり──何らかの答えをくれる、のかもしれない。

 自分の言葉が正しいとは限らない、禅問答とは自分の心のなかに答えを探すものだ、なんて言っていたけど。それでも両儀四象(ガンロゥ)の言葉が何かのヒントになるのなら。彼の言葉から、私の心の奥底を渫えるのなら。

 

 

「……什麼生」

 

 

 だから、期待を込めて──さあ如何に、と彼に問いかけた。

 

 

「説破。単純な話よな」

 

 

 期待感と覚悟を以て問いかけた私に対して、両儀四象(ガンロゥ)は軽い調子で私に向かって口を開いた。

 

 

「──オマエは、快楽を知らん。性の快楽も、そうでない快楽も知らん。快楽を知らぬものが、果たして快楽を語れるものかよ」

 

「白い顔料の塗られた貌(かたち)を見極めよ。鴉を鴉であると認めよ。──オマエにとって『良き事』が何かを知らぬうちから、己の快楽の形を決めるべきではないぞ」

 

 

 驚き、唖然とする私の頭をぽんぽんと叩き。両儀四象(ガンロゥ)は大したことでもないと言わんばかりに1つアクビをしながらそう言った。

 

 

 

──────

 

────

 

──

 

─

 

 

 

「そうさな。差し当たっては子供が生まれた時に、親として何か色々やってみてはどうじゃ」

 

 告げられた言葉にショックを受けていた私を労るように、両儀四象(ガンロゥ)は1つの提案をした。

 

「──本当の快楽、のために?」

「うむ。快楽と言うか喜びというか……。小娘、貴様は赤子を殺せんかったのじゃろう?」

 

 言われて、あの夜のことを思い出す。悍ましい悪夢から目を背けるように逃げ出した、あの日。

 殺せなかった、というか我に返って逃げ出しただけだし、それだって自分の力じゃなかったのに。

 

「……あのときは赤ちゃんが、私に温かい感情を向けてきてくれたから」

「それよ。小娘、貴様は赤子に好意を抱かれたから殺せなくなった。赤子を殺すことでの快楽を得られるのだからと決めた筈なのに、それでも好いてきただけの赤子を殺せなくなったんじゃろう?」

 

 私の言葉にしたり顔で頷いた両儀四象(ガンロゥ)は言葉を続ける。

 

「こりゃつまり貴様の方も赤子に対して好意を抱いた可能性が高かろうよ。つまり「好き」という心が大きく上回ったから、憎かろうとも殺せなくなった。であれば話は簡単で、赤子が生まれた後に親として世話をしてみて、そこで喜ばしいことが起きれば良い。──それが、赤子を殺して母胎を苦しませることで得られる快楽を超えるのであれば。このようなことがそうそう起こることもあるまいよ」

 

 衝動的な感情はどうにもならんがな、と言葉を締める両儀四象(ガンロゥ)。

 赤ちゃんがちゃんと産まれて来てくれて、育てる喜びを知ることができれば──今まで以上に「赤ちゃんが生まれること」を優先できるということだろう。理屈としてはわかる……今回の対応同様、ちょっと場当たり的な感じは否めないけれど。

 

「根本的な解決を目指すなら、それこそセックスでもなんでも普通にやった時の快感を知ることができりゃええんじゃろうが──貴様、その性奴隷相手には憎しみも相応にはあるようじゃからなあ」

「……それは、まあ」

 

 嫌いは消えるのに憎いは消えないのはいまいち理屈が分からないが、少なくとも彼女にやられた過去を思うとふつふつと怒りだとか悲しみだとかが湧いて出るのは事実なのだ。

 

「じゃろ?……もしわしが両性だったら年の功を見せつけてやって、普通の性行為の快楽を叩き込んでやれるのかもしれんがなあ。いやそもそも前世で男じゃったし無理じゃな結局。そもそもどっちも無くして3000年も経ってる身だからのう」

 

 今の彼女(ゼノヴィア)以上に若々しい見目の両儀四象(ガンロゥ)は、実年齢相応に深いため息を吐いた。

 無性の昇格者(ハイランダー)、というのは両性の昇格者(ハイランダー)よりも更に数が少ない。叡智の主(ロード・ブレイン)曰く「無性の昇格者(ハイランダー)は周囲からの干渉がなくとも単体で生きられる」というものだとか。なるほど、目の前で飄々としている彼の様を見ればその言い分もわかる気がする。

 

「叡智の主(ロード・ブレイン)も大概じゃろ。脳漿の湖なんぞ作って何も食わんでぷかぷか浮いとるだけの癖してなに自分棚に上げとんのじゃあやつ。わしだって霞ぐらいは食うと言うに」

「霞は食べるんだな……」

 

 冗談なのか本気なのか分からない発言だなあ……。 

 

「ともあれ、わかったよ。何か出来ないか考えて頑張ってみる」

「おう、その意気よ」

 

 何が出来るかな、と今からぼんやりと空想する。

 取り敢えずあやしてあげることは出来るだろう。今のお姉さんの小さい体で生まれた赤ちゃんの面倒を見るのは大変だろうから、代わりに世話をしてあげても良いかもしれないな。地下牢にもマットを敷いて、汚さないようにして赤ちゃんとお姉さんと一緒に遊ぶのも楽しそうだ。……そうやって親子で一緒に遊べたら、お姉さんも少しは私に気を許してくれないかな……?

 

「自分のことばかりもいいがな、赤子の事も考えるんじゃぞ」

「も、勿論。言われずともそうするから、吉報を期待しててくれ」

 

 痛いところを突かれて多少言葉に詰まりながら、私はこれからの関係を考え、赤ちゃんとの楽しみについてちゃんと深く考えるようになったのだった。

 

 

 

──────

 

────

 

──

 

─

 

────★☆★CWC:集合智の雲海(Collective Wisdom Cloud)へようこそ!★☆★────

 

────★☆★本日はどのようなことをされますか?★☆★────

 

[>個人チャット:対象>ユーザー名:[チョーさん]

 

────★☆★CWC:個人チャットを開始します★☆★────

 

現在の参加者:[サキュOh!][チョーさん]


[サキュOh!]->[チョーさん]:赤ちゃんにおっぱいあげた。すっごい幸せ!

[チョーさん]->[サキュOh!]:えっ

[サキュOh!]->[チョーさん]:吸い付いてきて可愛いよ!げっぷも可愛い!

[サキュOh!]->[チョーさん]:もうずっとおっぱいあげてたい。可愛い!大好き!

[サキュOh!]->[チョーさん]:あっ、アドバイスありがとうございましたチョーさん。

[サキュOh!]->[チョーさん]:名前決まったら教えますね!

[チョーさん]->[サキュOh!]:なんd

[チョーさん]->[サキュOh!]:なんでそうなったんじゃい!!!!!





イヴェット・ゼヌニム(34):淫魔の王(キング・サキュバス)。ふたなり。什麼生の意味を知らない。
フローレンスの提案を聞いてスレに依頼を出したら凄いのが釣れた。色々と面倒を見てもらって報酬に色を付けたらしい。赤ちゃんにおっぱいをあげたことで赤ちゃんがめちゃくちゃ愛おしくなった。ついでにいうと「お姉さん」の嫉妬の感情を向けられることが憂さ晴らしにもなって一石二鳥状態。真の快楽なのかはともかく赤ちゃんが生まれてくれることへの肯定感がマシマシになったため隔離されている間は絶対に近寄らないということが実現できるようになった。

楽々森(ささもり) 優火(ゆうひ)(385):上人(ハイ・ヒューマン)。ふたなり。おっとり系。165cm 88/55/88。ペニス長16cm。
クラウドネーム:「ラン坊」
 元人間の男性。本来は結構筋肉の付いたガタイの良いあんちゃんだったのだが昇格(アセンション)時に筋肉と身長がしぼんで均整の取れた黄金比的な体になった。バイト戦士。
 かつての世界では第二次世界大戦とベトナム戦争に参加した米兵だった。シェルショックやら戦場のトラウマが一切癒えること無く、また死ぬ思いをしてどうにか帰還したのに反戦デモ等で散々に世間から排斥されたことで自宅ですら安らぐことができなくなり、拳銃自殺した。
 与えられた祝福は"ありのままの世界を受け入れられるようになる"。戦争が終わったことを受け入れられず、変化した世論を受け止めきれず、周囲の圧力によって世界に押しつぶされた事を慮ったものであり、この祝福により戦いが起きることも、また皆が平穏に暮らすことも穏やかに受け容れられるようになった。その結果「みんな頑張ってるんだな」という博愛主義に目覚めてそんなみんなの一助になるべくどんな仕事でも請け負うバイト戦士と化した。誰に対しても優しい。

両儀四象(ガンロゥ)(3021):仙人(エルダー・ハーミット)。無性。爺口調の美ショタ。128cm。
クラウドネーム:「チョーさん」(初出:2話)
 元人間の男性。本名不詳。転生者でも最強格。何も食わなくても死なないしそもそも排泄機能もないが、それはそれとして霞を食べるのが好き。粗食に慣れきっていて利き霞できるぐらい薄い食味の判別が可能だが、逆に普通の食事を摂ると味覚が爆発して暫く動かなくなる。
 性格はおせっかいで世話焼き。自分も先達に色々教わったから同じようにしないと先達に顔向けできないよね、という行動原理を持ついい人。ただ長寿なためか韜晦的な物言いが多い。世話は焼くけど最終的な本質には自分で気づくべきだ、というのが持論。本質は気付いてもらうとして取り敢えずの対応をイヴェットに言ってみた結果赤ちゃんの可愛さを延々と個チャで垂れ流された。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。