※この作品はR-18です。

性奴隷と長身巨乳リョナグロ背徳性癖倒錯ふたなりが純愛に堕ちるまでの話   作:PP→KP

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やたら長くなったので3部構成

時系列:本編終了から大体2年後


「長女」の話(上)

「……はあ、これからどうしよう」

 

 はぁ、とため息を吐く。ひゅるりらと透き通った風が吹き抜けるだだっ広い草原で、私ことアビゲイル・ゼヌニムは心中に溢れた先行きの不安さを誰にともなく溢してしまう。

 そんな泣き言みたいな独白に、しかし反応するのが1人。

 

「あ、ははは……。その、貴人様を招けるようなもんじゃないんですけど、とりあえずムラに行きましょう。鳥には乗れますか?」

 

 そう言って、走歌鳥(キンナリー)に私を誘導するのは若い男。いや馬ならともかく鳥には乗れないよ。お母様なら乗れたんだろうけどね。

 ちらり、と周囲を見回せば不安げな様子で彼と私を遠巻きに見守る若い衆。誰も近寄ってきそうにない。そりゃそうだ、私は(ち(・)ょ(・)っ(・)と(・)ここらの人より露出多めだけど)見るからに豪奢な服を着てるし、彼の言うように貴族であると分かっていれば不敬も出来ないということだろう。王都の屋敷とは全然違う常識を感じる。というか気を使わせちゃってるなあ……。

 それはともかく、女子の乗り手はいない様子。まあ戦いになるという覚悟で出てきたんだから普通はいないだろうけど……まあしょうがないか。

 

「いいえ、乗れないわ。ねえ、一緒に乗せてってくれない?」

「えっ!?お、じゃなかった、私の鳥にですか?」

「他に誰が居るの?」

 

 じ、と見つめれば一瞬だけ天を仰いで、不敬だろうとすぐに視線を戻した。うんうん、素直だけどちゃんと丁重に対応しようという態度は好印象だ。

 やがて観念したかのように、彼は他のより少しだけ大きな自分の走歌鳥(キンナリー)の鞍の前を空けてくれたので、私は小さな羽をパタつかせて空を飛んで、彼の前に腰掛けた。

 

「それじゃあ、よろしくね?ええと、名前は?」

「っ、はい!ええと、ザカリー、ザカリーです」

「ザカリー、ね。覚えておくわ」

 

 ザカリーと名乗る印象的な黒髪の短髪の青年に向かって笑いかければ、一気に真っ赤になりながら小さくコクコクと頷いて元気よく返事をした彼。その声が大きかったからか走歌鳥(キンナリー)がびっくりしたようで、不満げにこっちを振り返った。

 じとりと睨めつける鳥を宥めすかした彼が手綱を取って、パシンと鳴らすと走歌鳥(キンナリー)の強靭な二脚が勢いよく草原を駆ける。大きく跳ねる鳥の背に揺られながら、私は何でこうなったんだったかをぼんやりと思い返していた。

 

 

 

──────

 

────

 

──

 

─

 

 

 

「代官、ですか?お祖父様」

「そうそう。アビゲイルはウチの仕事を手伝いたいんだよね?だったらいずれ代官とかどうかなって」

 

 事の始まりは、アルバートお祖父様が私にそんな提案してきたことだった。

 ゼヌニム家は大貴族であり、当然ながら大きな所領がある。多種族国家ザナーン王国の貴族院において淫魔族の頂点として一定の権勢を得ていて、それ故に種族派閥の主張などを貴族院議会やら何やらで主張したりいろいろやることがあるから当主一族である私達が王都で暮らす必要があるため、所領の管理を代官に任せているのだ。幼い頃にお母様と一緒に勉強したことだからよく覚えている。

 しかしなぜ急に代官なんて言い出したんだろうか、と思う。昔からお祖父様はどこかふわふわしていて、どうにも掴み所がないけれど頭のいい人だったから考えあってのことなんだろうけど……。

 

「ですが、私はまだ若いですし、そういう肩書の役職に就くのはもっと経験を積んでからじゃないと」

「それはそうなんだけどね……。正直イヴェットとゼノヴィアがあそこまで色ボケ子沢山になると思ってなかったこともあってさ、流石に孫たちの立場を色々作ってあげないと可哀想かなって」

 

 お父様とお母様が色ボケだなんてそんな……いやお父様が10歳のお母様を孕ませて私を産んで、そうかと思えば12歳のお母様に孕ませられたお父様が弟のバーティを産んで、そのすぐ3年後には2人してケイトとクリスを産んで……で、ちゃんと性奴隷から解放された直後にお母様がダイアナを、お父様がダリウスを孕んで、産んで。ついでにケイトがクリスとヤッてアカシアちゃんを産んで……。

 うーん、色ボケ一族だ。否定できない。淫魔ってエロい事して愉しむことで栄養補給できる性質上妊娠しづらい・孕ませづらいって聞いたんだけどなあ……やっぱあれだよ、お父様の雄度最大の絶倫ちんちんが悪いよ。うん、間違いない。アレを扱える範囲で廉価コピーしたお母様ですらお父様を何度も孕ませたし、血を継いでいるクリスも一発でケイトを孕ませちゃったし。いやクリスとケイトはちゃんと妊活タイミングを見計らっていたみたいだけど。あのおばか弟妹たちは全くもう……。

 

「……それで、代官ですか」

「そういうことさ。イヴェットもゼノヴィアも転生者だからか真面目だろ?その血を引いて2人から教育されて育った君たちも(相対的に)真面目だし、そういう役職に就いたほうが良いと思うんだよね」

「まあ、言いたいことはわかりますけど……。いま代官をしているアルフレッド族伯祖父様がまだお若いのでは?」

 

 アルバートお祖父様の従兄弟であるアルフレッド族伯祖父様。お祖父様より年上で今は200歳を少し過ぎたくらいで、人間齢で言えば40歳前後。貴族としても政治家としても脂が乗っている年齢で、まだまだ現役真っ最中って感じだと思うんだけど……。

 

「若いからこそ若さがある間に辞めたいんじゃないか。僕だって真面目なイヴェットにさっさと家督譲って隠居しちゃったし。知ってる?あいつアーリーなリタイアした僕のことを滅茶苦茶羨んでたんだぜ?俺はまだ子供いないから頑張らないといけないのに、なんて言ってさ」

「えぇ……」

 

 そんな心配をしていたのだが、あっけらかんと笑うお祖父様の言葉に脱力する。そうか、淫魔ってそうだもんね。

 お祖父様が言うように、お父様とお母様が転生者……生まれる前の記憶と魂を持っているヒトだから精神が成熟してるのか何なのか、とっても真面目なのだ、特にお父様が。昨今の色ボケっぷりは置いておくけど。そして自分で言うのもアレだけど、そんなお母様やお父様の血を引いている私はしかし、2人に比べれば物凄く不真面目だ。遊びたいし楽したいし、かっこいい男の人見つけてらぶらぶになって子供も欲しいってぼんやり思って生きている。

 だが悲しいかな、普通の淫魔はそんな私ですら及びもつかない不真面目な連中がとっても多い。それこそケイトとクリスを考えなしにしたような種族こそが淫魔族なのだ。まあエロい事して食欲も満たせる快楽と欲望に能力が向いた種族だからこそそう言う方向にゆるゆるなのはしょうがないことなんだけど。

 そういう意味ではお祖父様や族伯祖父様だって淫魔族の中ならかなり真面目な部類だ。なにせ役職をほっぽりだしたりしないでちゃんと責任持って政治に参画しているんだもの。

 

「まあ本当に今すぐってわけじゃないけどさ、それでも代官の仕事を知っていたほうが良いだろうからさ。暫くはそっちで頑張ってみない?」

「う~ん……」

 

 正直、やってみたいと思っている自分がいる。相手方もむしろさっさと後継者を作って隠居したいって思っているんだし、ちょうどいい気もする。

 それにほら、代官やってちゃんと領地運営できたらお父様もお母様も私のことすごいって褒めてくれそうだし……!聖都の高校行ってちゃんと勉強して、今も王都の大学で勉強してしっかり単位も取りきったんだし、あとは若いうちから経験を積めばお父様もお母様もいっぱい喜んでくれる……よね?

 

「わかりました、やってみます」

「おっ、サンキュー。これでアルフレッドに「やっぱ無理だったごめん」なんて頭下げなくて済むよ」

「……すでに先方に話を通してたんですか?お祖父様、見切り発車が過ぎますよ……」

 

 非難の意味を込めてジトッと見つめみても、お祖父様はワハハと笑うだけ。役者が違うし経験も違うとは言え、もうちょっと後先考えたほうが良いんじゃないだろうか……って、この考え方も淫魔らしくないのかな?

 ともあれ、私はそんな感じで所領の代官としての職務を少しずつ勉強していくことになったのだった。

 

 

 

 

 ちなみに、この話にはほんの少しだけ続きがある。

 

「さてと、それじゃあまず始めに……イヴェットとゼノヴィアの説得、手伝ってくれない?」

「そこからですか……?」

 

 何で現役当主のお父様からじゃなく隠居したお祖父様からこの提案をされたのか不思議に思っていたのだけど、どうやらお父様たちに無許可でやっていたらしい。お父様もお母様も私のことを溺愛してくれているからこそずっと手元に置いておきたがる節があったし、無許可でも何でも先に約定を取り付けないといけないってのはわかるけど……最初の仕事からハードだなあ、なんて思ったのだった。

 

 

 

 

「え?代わりにやってくれるの?良いよ良いよ、よーしおじさん頑張って教えるぞー!」

「軽くないですか……?」

 

 私より頭1つ以上小さい、多分150cmかそのくらい?の彼、アルフレッド族伯祖父様が事情を聞いて最初に返してきたのがそんな言葉だった。思わず感想を呟いた私を責める人はいないだろう。ややもすれば子供にしか見えないが、これでも立派に成人しているというのだから淫魔族っていうのは不思議だ。

 

「軽くない軽くない。アビーちゃんのおっぱいよりは軽くない」

「セクハラ止めて下さい」

「ごめん」

 

 そんな彼はまあ、お祖父様に輪をかけて自由人だった。まあ淫魔ってそんなもんだけど……。でもおっぱいのことは言わないで欲しい。最初はおっきくなったことでお母様お父様とおそろいだー!なんて思ってたけど、このおっぱい2つ合わせて15kgもあるもんだからバランスは取りづらいし肩は凝るし手元も足元も全然見えないしで大変で、学校の同級生からも嫉妬を超えて畏怖の目で見られたりとちょっとしたコンプレックスの元になってるのだ。

 

「やだーすっごい真面目!かわいい~!」

 

 セクハラを咎めた私を見て、そんな脳天気な声を上げたのは族伯祖父様の奥さんのオードリーさんだ。代官である夫が本家の孫娘である私にセクハラを仕掛けて叱られたという一連の流れから「真面目で可愛い」なんて感想が出るあたり似た者同士感がすごい。

 

「ほらほらアルフレッドくん元気だして♥この子が代官やってくれるんならあたしら今まで稼いだ分の余録だけで生きてけるしばんばんざいだよねー♥」

「ねー、おじさんもうめっちゃ張り切っちゃおっかナ!自由のために!」

 

 ちなみに奥方様は小麦色のぷるんとした肌の笑顔が眩しい淫魔だった。別に海沿いでも何でもない代官屋敷で局部と乳首位しか覆えてないんじゃないの?って言わんばかりのマイクロビキニに派手なフリル飾りのちょっと露出過多なドレスを着た彼女はその大きな胸を惜しげもなく揺らして族伯祖父様に抱きついている。ちなみに族伯祖父様より年上らしいが背丈では族伯祖父様に負けている。多分147cmぐらいだけど、その割にはデカい。B90くらいはありそう。

 

「ってかアビーちゃんてアルバートくんとこのお孫さんだっけ?おっぱいデッッッッッカ!身体も大きいし面倒な仕事もやってくれるとか包容力の塊じゃーん!あーあーおばちゃんもアビーちゃんのおっぱい吸いたいなあー、せめて揉んでみて良い!?」

「だからセクハラは止めて下さい!」

「あっごめーん」

「こらこらオードリー、ボクがいる……だろ?いいんだぜ、ボクのおっぱい吸って揉んでも?」

「えー、でも平らで揉み応えないしなあ。そーれーにー、どうせ吸うなら別のものを吸いたいなあ……♥」

 

 流れるようにセクハラしてきたと思ったら唐突に盛りだしたんだけど……。お祖父様もだいぶ自由人だと思ってたけど全然真面目だったんだなあ……ってそうじゃなかった。

 

「あの、それで仕事は……」

「おっと、そうだった。予めアルバートから孫が代官体験に来るかもって聞いてたからね、やってもらいたい仕事を用意していたってわけさ。えーと、確かこの辺に……」

 

 おずおずと声を掛けたところで、思い出したかのようにガサゴソと戸棚をあさり始める族伯祖父様。後ろがTバック通り越して紐みたいになってて尻が9.5割丸出しのオードリーさんも一緒になって探し始め、そして目当てのものを私に見せてくれた。

 

「これは……巡視、ですか」

「そう、領内の巡視だね。基礎の勉強は学校でちゃんとやってきただろうし、王都の屋敷でイヴェットちゃんの手伝いもしてたって言うなら基礎業務の能力はあるんだろ?じゃあまず代官ならではの仕事……領地内の確認をやってみるのが良いかなって」

「なるほど……」

 

 思ったより真面目だった(失礼)。

 業務の内容を確認する。うん、巡視範囲も確認箇所も今回の日程で十分に対処できそうな感じだし大丈夫だろう。……これを、私や他の兄弟達の今後のためにってちゃんと計画組んでくれたんだって思うと、とてもありがたいと感じる。ちょっと軽いけど、だけど軽いだけの人たちじゃないんだなって思うと頼もしい。

 

「……よし!それじゃ、早速ですが巡視に行かせていただきますね!」

 

 気合と感謝を込めて、まっすぐと言葉を伝える。願わくば私がちゃんと代官になれて、彼らが1日でも早く代官を辞められるようにしたい(言葉にすると酷い話だが)、そんな心を込めて出立の挨拶とした。

 

「はーい。頑張ってねー」

 

 ……やっぱりこう、軽いなあ。

 

 

 

──────

 

────

 

──

 

─

 

 

 

「……最初は順調だったのになあ……」

「?何かおっしゃいました?」

「ううん、何でもないわ」

 

 いけない、ぼんやりと独り言を呟いてしまっていた。鳥を操りながら首を傾げる彼に、気にしないようにと首を振った。

 そう、最初は順調だった。領地内の集落を巡って、変化がないかを確認する。淫魔の中でも能力に優れる私は相手方の感情をかなり正確に把握できたし、感情の把握と摂取という淫魔の能力を理解している集落の人達も変な隠し立てをするようなことはなかったのでスムーズにことが運んだ。強いて言うなら普段の巡視吏ではない若造な私が来たことで普段と態度が変わったヒトもいたらしいが……まあおっぱい眺めて前かがみになってたことを責める気はない。おっぱいをみて興奮するのは男として当然だってお祖父様もお父様も言ってたし。お父様は自分にもでっかいの付いてるくせにお母様のおっぱいを吸ったり揉んだりするだけでバキバキにしちゃうからなあ。

 

 だが最後の集落から帰るところで問題が起きた。というのも嵐の猟犬(ハーンズハウンズ)という大型の犬の魔獣の群れに襲われたのだ。

 夜に嵐とともに集団で現れるという嵐の猟犬(ハーンズハウンズ)は、基本的に明かりが出ている場所だと現れない。旅人であれなんであれある程度の光源さえ用意しておけば危険性は低い魔獣なのだが、それが白昼堂々現れたものだから巡視団が混乱しちゃったのだ。

 幸いというか、私の精神干渉魔法+護衛の兵たちによって追っ払われたので事なきを得たのだけど……そこから更に墓噛り(ニーズヘッグ)の亜成体に襲われたのだからたまらない。もしかして今日の運勢は最悪なのかもしれない。

 墓噛り(ニーズヘッグ)はいわゆるワーム系の亜竜であり、ちゃんとした成体になると一個中隊規模で当たらないと危険な大型魔獣だ。基本的には腐肉食らしいけど生きている動物も襲うときは襲うわけで、嵐の猟犬(ハーンズハウンズ)の対処が終わったばっかりで疲弊していた私達は急な襲撃に対処もできず散り散りになってしまった。幸いにも死臭を追う習性があることは事前知識として知ってたので、私が魔法で感覚を誤認させて誘導する間に他の人の助けを呼ぶという手はずで行動を開始して、付かず離れずの位置に誘導しながらそんな早くもない飛行速度で空を必死に逃げて、荒れ気味の荒野地帯から草原地帯に入った辺りでザカリー含む草原の村の面々に遭遇。墓噛り(ニーズヘッグ)をほんの少し足止めしてもらった隙にありったけの魔力を込めた洗脳魔法で墓噛り(ニーズヘッグ)自身の体が美味しそうに見えるように錯覚させ、自分自身に食らいつかせて自殺させたのだった。

 

「なんだってこんなとこに墓噛り(ニーズヘッグ)が居るのよ、もう……って、助けてもらったのに愚痴ばかりでごめんね」

「いえ、お気になさらないで下さい。墓噛り(ニーズヘッグ)?っていうのはあの大蛇のことですよね。あいつは最近ここらに現れて、犬の魔物や馬や牛みたいな大型の家畜を襲って手がつけられなかったんです。ここ数日は逃げた群れを追って移動したから、戻ってくる前にどうにか武装を整えて倒せないかって思って村を発ってきたところだったんですが……」

「そうだったのね……」

 

 それが正しいなら、嵐の猟犬(ハーンズハウンズ)が昼に現れたのも墓噛り(ニーズヘッグ)から逃げていたんだろう。嵐の猟犬(ハーンズハウンズ)は犬の魔獣であると同時に性質としてはアンデッドに近しい存在だから、屍肉や腐肉を好む墓噛り(ニーズヘッグ)に付け狙われたということかもしれない。

 

「とにかく、一旦領都に引き返した護衛の皆を呼び戻さないとね。あなた達の集落って何か連絡手段ってあるかしら?」

「ええと、1日1回郵便ギルドの配達員が来ます。領都に連絡がつくのは4日後くらいでしょうか……」

 

 4日か、短い訳では無いが思ったよりはかからないことにホッと安堵の息を吐いた。

 

「そう。それじゃあ迎えが来るまでくらいはあなた達の集落に厄介になるわ」

「いえそんな!寧ろ貴人様を持て成せるようなものがない集落なのでその、不快にさせてしまうかも知れませんがご容赦頂けましたら……」

「良いわよ、気にしないわ」

 

 軽く手を振って安心するように伝えてはみたが、恐縮するように肩を縮こまらせながらおずおずと笑顔を見せるザカリー。まあ流石に王都の屋敷の皆みたいな気安い態度を求めるのは酷ってものだろう。

 身を縮こまらさせながらも鈍らない手綱さばきに感嘆しながら、私は遠く見え始めた集落の風景をのんびりと眺めた。

 

 

 

「なんと、あの大蛇を!?いやあ助かりました!」

 

 この集落の村長がそういって偽り無い喜びの感情を表情にそのまま浮かべる。背丈の低さとがっちりした体格はドワーフだろう。髭面で年齢が分かりづらいけど、多分140歳くらい、人間換算で70歳くらいじゃないかな。

 

「お気になさらず。それよりも、護衛たちを呼び戻すまでの少しの間、この村に滞在させていただければと思うんですが……」

「それは勿論構いませんが……その、さして特産のある村でもなく、旅人が泊まれるような場所はそこまで無くてですな……」

 

 手ぬぐいで額の汗をしきりに拭う村長に申し訳無く思ってしまう。そうだよね、そもそも未だに汲み取りトイレしか無かったし。とてもじゃないが外部の者、ましてや貴族を受け入れられるような土地柄ではない。周りに木も少ない草原地帯ともなれば、ベッドの数すら住民分でギリギリだろう。

 と、村長が私の横に居たザカリーをみてふと思い出したように口を開いた。

 

「そうだザカリー、お主の家に未使用のベッドが一台あっただろう。アレは今も使えるか?可能ならそれを使ってもらうのが良いかもしれん」

「え?でもあれは……。それに運び出すには奥まってるし……」

 

 不思議なことに、ザカリーはやや躊躇しているようだ。

 自分で言うのもアレだけど私の身なりはとっても豪奢だ。代官の巡視吏としての立場をわきまえて普段使うようなドレスじゃないにせよ、生地から何から最高級のビジネスドレスとでも言うべき代物で、当主の娘として恥ずかしくないような身なりにしているのだ。……淫魔の流行りの服なので、この朴訥とした集落では浮きまくる露出具合なのには目をつぶる。

 だからこそ、(私が自分からそう言うことを主張する気がないということは置いておいて)そんな私をベッドで寝かせずほっぽりだしたなんてことになったら相手や場所によっては結構な罰則を受けてもおかしくないのだから、普通は躊躇するようなことではないんだけど……。

 

 そしてそれは村長も同じ気持ちだったようで、煮えきらないザカリーの態度についに怒鳴り声を上げた。

 

「ええい、だったら運び出しやすいベッド運んでお主が未使用のベッドを使えばよかろうが!」

「っ、でもあの家だと俺のベッドぐらいしか運び出せないし……」

 

 まあ男のベッドというのは醜聞とまでは言わないけど風聞的にはよろしく無い、ということだろうか。私は淫魔だから寧ろもっとやれぐらい言われるんだろうけど、この村淫魔いないしな……。

 

「……あの、それであれば私がその未使用のベッドを使わせてもらえるかどうか、御家族の方に確認を取りましょうか?」

「あ……っ、いえ、そう、ですね。お願いします。村長もそれでいいですか?」

「ぬ……そちらが良いのであればわしから言うことはないが……。すみませんな、アビゲイル様。もし駄目ともなったらワシの家に来てくだされ。数日ぐらいなら妻のベッドをお貸ししますので」

「ええ、そのときは是非」

 

 このまま放っておいても埒が明きそうにないと思っての私の提案を聞いて一瞬だけ逡巡したザカリーは、しかしこれ以上話が進まないと判断したのかコクリと頷いた。村長もまた妥協点としてそれを了承し、もし駄目だったときに備えての提案をしてくれたので私はにこやかに頷いた。

 

 

「すいませんでした、お……私の我儘で」

「別に良いけれど……ねえ、別に『俺』で良いのよ?」

 

 申し訳無さそうにするザカリーだが、正直そんなことより一人称を毎回言い直すのを止めて欲しい。なんかこう、もにょもにょするのだ。

 

「いや、そういうわけには……」

 

 とは言え、私は貴族で彼は農民。とてもそんな無礼は働けないと思っているのだろう、どうにも歯切れが悪い。

 

「良いから!『俺』に戻して!ハイ決定!」

「えぇ……わ、わかりました……」

 

 何時まで経っても直しそうにないのでこうやって無理やり直させてやる。貴族の権威を恐れているならその貴族の権威で言い直させてやれば良いのだ。

 内心でドヤ顔を浮かべながら、改めてザカリーの顔をジロジロと眺めてみる。……うーん、初対面だけどなんかほっとけない。どうしてだろうかとなんとなく理由を考えてみる。緊張させて申し訳ないから?うーん、違う気もする。村の若手をまとめる立場の彼と繋がりを持っておけば長命種である私にとっては今後の発展に対してある程度アクションを取れるかも知れない……というのもなんか違う。

 

(なんだろう……この感覚?一目惚れ?いや、そんなのじゃないよねぇ……)

 

 よくわかんない、だけど放っておけない。そんなもどかしい感覚を覚えながら、私は彼の家に着いたのだった。

 

 

 

「なるほど、お泊りになられる場所が無いということですか……」

「はい。ついてはこの家にある未利用のベッドを使わせていただいてもよろしいですか?」

 

 ザカリーの家はこの村のどこにでもあるような馬農家だった。とはいっても基本放牧している馬は墓噛り(ニーズヘッグ)とついでに嵐の猟犬(ハーンズハウンズ)に襲われてしまい、今は何頭かの繁殖用の馬ぐらいしか残っていないらしい。なるほど、村の人達が馬ではなく走歌鳥(キンナリー)に乗っていたのは残った馬が万が一にも殺されないようにするためだったのか。

 そんな彼の父親はやや年を召している方で、黒髪の中に白髪が結構な割合で混ざっていて、遠目にはグレーに見えるぐらいだった。深いシワも日に焼けた肌も、多分この村の農家はみんなこうなんだろうなって思えてしまう。

 

「ねえ貴方……その、良いんじゃないかしら?」

「……そうだな。あの、貴人様が満足できるかはわかりませんが、それでも良ければどうぞ使って下さい」

「!良いんですか、助かります!」

 

 驚きながらも感謝の言葉を伝える。宿泊場所の件についてはもっとこじれると思っていたからラッキーだ。にしてもあんなにザカリーが躊躇していたからてっきりもっと拒否されるかな、と思っていたんだけど……。

 そう思って横を見れば、当のザカリーも驚いたように自分の父親と、ついでにその隣りにいる母親にむかってぽかんと口を開けていた。

 

「え、良いのか父さん、母さん?」

「良いも悪いもないだろう。困ったときは助け合いだ。単に旅行だとか観光だとかならともかく、この方のように訳あって困っているのであれば助けるとも」

 

 当然だ、とでも言いたげなザカリーの両親。だけど淫魔である私にはその心の内がもう少しだけ分かってしまう。……彼らは私を見て、そうして許可を出したんだ。

 何か値踏みをしたのか、あるいは他に何か理由があったのか……まあ、泊めてもらえるなら何でも良いから気にしないことにしよう。

 

「なんだ、なら良かった。……ところで、ベッドはどうやって運び出すかな……」

 

 ホッと安堵の息を吐いたザカリーは、今度はベッドの運搬に頭を悩ませ始めた。

 

「場所はどこなの?」

「2階の子供部屋です」

 

 2階……と、この家の階段を見る。結構な急角度だ。なるほど、確かに搬入も搬出も難しそうではある。

 

「普段は鬼人族で大工のメイナードさんが手伝ってくれるんですが……その、村に来た大蛇を追っ払う時に怪我していまして……」

「あー……」

 

 なるほど、力の強い鬼人族ならさほど困らないのか。でも今はその力を借りられない、と。うーん、どうしようかな……私の回復魔法はお父様みたいに何でも治せるもんでもないし、そもそも亜竜である墓噛り(ニーズヘッグ)に魔法を通すために結構魔力を使っちゃったから早々回復するもんでもない。

 少し悩んだ末、私は改めて家長であるザカリーの父に向き直った。

 

「それでは、もしご家族の方がよろしいのでしたらここに泊めてもらえませんか?」

 

 !?と言わんばかりにザカリーが振り向くが気にしない。何度も言うが淫魔なので未婚の男の家に泊まったぐらいで民からとやかく言われるようなもんではないのだ。お父様とお母様はちょっと苦言を呈するとは思うけど事情が事情だし分かってくれるだろう。

 ……本当はそれだけじゃないけど。どうにも彼が気になる。まだ出会って1日で、そんなに深い関わりがあったわけでもない。だけどどうしてか、彼の側に居たいと思っていたのだ。

 

「いや、それは……」

 

 言い淀みながら、それでも拒否しようとするザカリー。どうせそ(・)う(・)い(・)う(・)関係になるわけもないんだから、精々数日程度の同居ぐらい良いじゃないかと思う。こんなに可愛い私が泊まるんだから寧ろ喜ぶべきじゃないのか、と内心でため息を吐いた。

 

「ええと……ではその、何もない家ですが……」

「って、母さん!?」

「まあ、ありがとうございます!」

 

 だからザカリーのお母様が笑って泊まることを認めてくれたことに思わずぐっと心のなかでガッツポーズ。見てみればザカリーのお父様もウンウンと頷いていて、認めていないのはザカリーだけだった。

 

「それじゃあよろしくお願いしますね?……ザカリーも、これから数日の間、どうぞよろしくね?」

「……はい、よろしくお願いします。アビゲイル様」

 

 だったらもう有無を言わせぬ、という圧力を隣に掛けながら私はペコリと頭を下げる。その圧に負けたザカリーも観念したように頭を下げてくれたみたいで一安心だ。

 ふふふ、と堪えきれないように笑う。何の理由もないのに、だけどこれからの数日が楽しくなりそうだな、なんて思ったのだった。




アビゲイル・ゼヌニム(22):淫魔。女。172cm 115/62/98のQカップ。
 今回の主人公。ゼヌニム家の長子。本来はイヴェットの殺人性欲の最中偶発的に産まれることが出来たことで万が一の時の跡継とされていたのたが、当の2人が名実ともに夫婦となりふたなり子作り孕ませックスを遠慮なく行うようになったため、寿命の問題などもあって今段階で跡継ぎになることはないということも分かって普通に働くようになった。別に跡継ぎたいわけでもなかったので当人的には問題ない。
 今回は代官としての将来も検討してみては?という祖父アルバートの進言で領地経営に係る諸々を知るべく、基礎の基礎として領地を巡視する巡視吏として職場体験してみたところハプニングが発生し、草原そばにある村に滞在することになった。精神干渉魔法が得意で、ちゃんと魔力を練れば大型亜竜すら洗脳できる。

ザカリー(16):人間。男。176cm。
 草原の村の黒髪の青年。やや年老いた両親の元に生まれた。両親の年齢もあってやや不安視されていたが普通に成長し、村の青年団のリーダーにまでなった。最近になって魔獣被害が増え始め、ついてには大型の亜竜に村を襲撃されたことで青年団を率いてどうにか倒せるか……という賭けに出た辺りで追われていたアビゲイルと共闘で亜竜を倒した。妙にアビゲイルに気に入られている。

アルフレッド・ゼヌニム(213):淫魔。男。151cm。
 現在のゼヌニム領の代官。隠居した元当主アルバート・ゼヌニムの従兄弟。
 基本的に仕事をやる気がないが淫魔全体で言えば真面目な部類。アルフレッドに限らないが淫魔はセックスで食欲も満たせるため、体一つあれば大抵の状況で欲望を満たせることから種族としての本能レベルで頭が緩い。真面目で貞淑なほどフリーな性事情から遠ざかる≒食欲と性欲を満たせないためであり、ある意味進化の形と言えなくもない。この世界は神様デザインなので進化ってほどでもないが。能力は有能な部類。アルバートに中央政治を押し付けて相対的に緩い代官をやれてハッピーってなってたらアルバートが一気に子孫繁栄したことでアーリーリタイアしたことを羨んでいる。

オードリー・ゼヌニム(235):淫魔。女。147cm 92/52/82のJカップ。
 アルフレッドの妻。褐色肌なのは生まれつきだが淫魔の肌の色や髪の色は現代で言うところの耳たぶの長さとか瞼が一重二重だとかその程度の違いでしかないのでほとんど誤差。
 露出多めの服が好きで普段はマイクロビキニドレスという矛盾した服を好む。逆バニーとかああいう感じで局部を隠し胴体を晒して四肢を飾り立てている。年齢はそこそこなのだが見た目が一部除いて非常に子供っぽい。振る舞いも若々しい合法ロリ巨乳褐色淫魔。

ダイアナ・ゼヌニム(1歳7ヶ月):淫魔。女。イヴェットがゼノヴィアを孕ませて生まれた娘。
ダリウス・ゼヌニム(1歳6ヶ月):淫魔。男。ゼノヴィアがイヴェットを孕ませて生まれた息子。
アカシア・ゼヌニム(1歳2ヶ月):淫魔。女。クリスがケイトを孕ませて生まれた娘。
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