※この作品はR-18です。

性奴隷と長身巨乳リョナグロ背徳性癖倒錯ふたなりが純愛に堕ちるまでの話   作:PP→KP

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4話:かつての「私」②

 彼が死んだ。私が誰よりも好きで、誰よりも私を認めてくれた彼が死んだ。

 彼の葬儀は死亡してから4日後に行われた、らしい。当然ながら私にはいつ、どこで葬儀が執り行われるのかなんて分からなかったし参列することも出来なかった。私は結局、子供の頃に別れたっきり彼と会えないまま──互いに名を告げ、呼び合う機会もないままに永遠の離別を迎えてしまったのだ。

 こんな唐突な別れを迎えてしまった以上、せめて真相ぐらい明かされなければ……いいや、私が真相を知らないままで良いはずがないだろうと目を皿のようにして情報を探し──そして、無為に時間が過ぎるだけだった。

 

 受刑者同士のトラブル、というたった一言で彼の死は片付けられた。

 

 厳しく管理された刑務所での人死なんて本来はあってはならないことで、そこで何が起きたのか厳しく追求されて然るべきなのだが──刑務所という隔絶された、犯罪者しか居ない狭い世界での事件なんて社会にどれほども影響を与えることなんて無いと、そう言われているようだった。

 否、事実そうなのだろう。一夜経った朝のニュース番組では芸能人の不倫のようなキャッチーで、大多数には全く関わらないどうでもいいニュースのさらについでぐらいの報道しかされなくなってしまった。

 

 なぜ死んだのか素人なりに調べてはみたものの、犯人が3名いたこと、嫉妬によるトラブルだったことぐらいで詳細は不明。ネットニュースや新聞記事だって限度があるし、メディアだって営利企業なのだから詳らかにしても一部の人間以外には全く興味が湧かない内容に力を割くわけがない。

 

「だったら、調べられる情報がある場所にいくまでだ……!」

 

 彼の生命が、尊厳がこんな簡単に切り捨てられるなんて許されることではない。事ここに至り、私は将来設計を全部投げ捨てた。

 

「ええ……?君、ここまで来て警察になるの?それも警察庁じゃなく警視庁って……。というか他にも幾つか内定来てなかったっけ?なーんでわざわざ」

「企業の方は辞退しました。どうしてもやりたいことが見つかったんです」

「お、おうそうか……。いやまあ僕の助力なしで合格したから辞退するのは自由だけど……大分変人だね、君」

 

 幽鬼のような面で警視庁の合格通知を握りしめた私を見て、教授はそれはもうドン引きしていた。

 無理もないだろう、この研究室で私は教授の手伝いや卒業研究なんかでディスカッションや理論構築、徹夜の実験等で成果を上げており、昨今流行りの「リケジョ」の最前線をひた走っていたと思われていた。

 そんな中で唐突に警視庁の採用試験のために連日徹夜した挙げ句に一流だとか大手だとかの枕詞が付く企業の内定を辞退したのだ。さぞ理解不能だったに違いない。

 

 だがそんなことなど知ったことではなかった。彼の為に人生を費やしたいと願ったのにそれが叶わなかった私には、彼の死の真相を解明し弔いをすることしか縋れるものがなかった。

 

 

 卒業後、私はそのまま警視庁へ入庁した。

 最初は警察学校、次に地域課で交番勤務……と中々刑事課へいくことが出来ず、事件の調査記録を探せないもどかしい日々が続いた。

 その間にも彼を殺した3人の裁判が進んでいて、現状だと1名が傷害致死罪、1名が過失致死罪、1名が傷害罪となる見込みだということだ。交代制などで思ったより時間が取れず傍聴に行けなかったのが悔やまれる。確定したら裁判記録を閲覧する必要があるだろう。

 

「お前よくそんな真面目に働けるなあ。飲み会で良くない目で見られてんのに積極的に上に関わりに行けるのも不思議だわ」

 

 軽のパトカーで巡回中、同乗していた先輩にそんなふうに声を掛けられた。以前の飲み会のときに刑事部所属の警視と話した折、胸をチラチラと見られていたからきっとその事だろう。

 目立つ身体の自覚はあるし、色の乗った目線を向けられていることが傍から見てもわかりやすかったのだろうなとは思う。だがまあ実際は職場常識が古い人間からややセクハラまがいのセリフを悪意なく吐かれるくらいで実害はない。寧ろ上役相手に私のことを印象付けられるのだから万々歳だ。

 

「ふふ、俗ですがドラマのかっこいい刑事に憧れてたんです。そのためには上からも横からも頼られたりする立場になりたいじゃないですか」

「それでわざわざ立派な学歴背負ってキャリア組目指さないで直で警視庁に来るとかロマン派が過ぎるだろ……」

 

 今目の前で呆れている先輩もそうだが、私という新人警官について周囲は「国一番の大学を出ておきながらドラマの刑事になりたいと言う変人」として認識していることだろう。こういう冗談みたいな志望動機も、学歴に裏付けされた頭が良いというレッテルと見た目の良さで「夢見がちなロマン派」ぐらいに落ち着くのだからありがたい話だ。

 実際は彼の死の解明という一点のみでこんな事をしているわけで、騙しているのはほんの少しだけ気が引ける。だが流石にこんな理由を明かす気はなかった──というか、明かせなかった。

 協力して調べたほうが真相がすぐに分かるはずなのに、何故誰にも理由を話さなかったのか。当時は死んだ彼にロリコンの風評を立てられたら困る、とかそんな歪な考えの人間は捜査に回すべきではないと判断されたら困る、とか色々考えていた。

 

 ……今にして思えば、私という偏執的で狂気的な人間が真相を知ったとき何をするのか、それを無自覚ながらも認識していたのだろう。

 

 

 入庁4年目の春、私は希望通り捜査第一課へと異動した。地域課では特段大きなこともなかったから上と顔を繋いでいたことが奏功したのだろう。

 職場の雰囲気を掴むという名目で割り振られた仕事以外にも資料整理や職場の整頓を請負い、早朝に来ては職場に残されていた使用済み資料を捜査記録の棚に戻すついでにかつての事件を盗み見ていった。

 

 他の業務を遅滞させず卒なくこなした私は怪しまれることなく、粛々と調査を進めること半年──事件の全容を把握した日の夜に、自宅のマンションで大荒れした。

 

「やっぱり……、手を出したのは相手からじゃないか!こいつら先に手を出しといて何で被害者面してるんだ……!」

 

 事件の経緯は単純なものだった。

 もうじき出所するということで持ち物を整理していた彼に対し、今回の犯人の1人でボス格の囚人がやっかみで絡んだ。元々短気気味だった彼が強めに反撃したことで喧嘩が激化し、相手方に1人加勢があったこともあって顔面を殴られた彼は強く床に叩きつけられた。

 そして喧嘩を傍から見ていた男がこれ以上喧嘩が続かないようにと倒れた彼を取り押さえたところ、姿勢の問題で彼は胸部を圧迫され呼吸困難となり死亡。彼と喧嘩していた2人と抑えた1人がそれぞれ加害者となり裁かれたというものだった。

 致命傷となったのは転倒時の頭部の損傷と胸部圧迫による呼吸困難の2種であり、どちらか一方であれば救助が間に合った可能性があったが、頭部負傷からの酸素不足では如何ともしがたく、その結果として命を落としたのだ。

 

「裁判では彼の反撃が強く正当防衛だなんて主張している、か。殺意がなかった?倒れ込んだ後も追撃して、共謀して抑え込んだんだろうが……!それで殺意がないなんてよくも言えたな……」

 

捜査記録を見ると、抑え込んだ1人は最初に絡んだ男にパシらされていた立場であったらしい。だったら抑え込んだというのも喧嘩を止めるためではなく追撃しただけに決まっている。

 

 犯行の理由はやっかみ、とあるがそれも正確ではなかった。連中は彼が持っていたとあるものを見て嫉妬したのだ。

 ──丁寧に、綺麗に頑張って書いた、着飾った少女の写真が添えられた手紙を見て、嫉妬から殺したのだ。

 

 つまり、私と彼に嫉妬したクズが、短慮のままに彼を殺したというのが事件の真相だったのだ。

 

 あんまりじゃないか。親元を離れられて漸く彼と繋がりを持てると思って1回だけ、そのたった1回だけ私が送った手紙に嫉妬した輩に殺されるだなんて。

 ……認められるわけがない。私の手紙のせいで彼が殺されてしまっただなんて。私の思いが彼を傷つけ、失う遠因になってしまっただなんて。

 

 傷害致死の判決を受けた主犯は追加で4年の懲役だった。1番長い男でさえ、4年だけだ。傷害致死として裁かれた男は裁判期間の内1年が未決勾留期間となったため、実際は3年後の私が29歳になる頃には出所するだろう。

 当然残りの2人はもっと早く出てくる。喧嘩に参加してただ殴る蹴るをしていた男は傷害罪で1年の懲役、彼を抑え込んだ男は過失致死罪で30万円の罰金刑の判決が下っている。そのまま何もなければ来年ぐらいにはどちらも娑婆で暮らしている筈だ。

 

 3人がかりでよってたかって彼が殺されたというのに、殺した連中に科せられた罰は長くて4年の懲役と30万円の罰金だけ。まだ33歳だった彼が喪った生命、彼とともに暮らす筈だった私が喪った50年以上の年月は、たったそれっぽっちの罰則で賄われたことになるということだ。

 

「……これが真相だなんて、これが真実だなんて……そんなことがあるわけがない」

 

 人を殺した。私の愛する人を殺した。この世界で最初に私という人間を認めてくれた彼を殺した。

 そんな連中がのうのうと生きていられる?罪を償わんとした彼を殺しておきながら数年かそこらで出所して……そして、何事もなかったかのように平穏無事に暮らすのか?彼からすべてを奪っておいて?

 

「そんなこと……許せるわけがない」

 

 私が警視庁に入った目的は真実を突き止めること「だった」。素人の私が知り得ない情報を集め、真実を暴き、彼の死が何故起きたのかを突き止めること「だった」──何故?

 

「許せない、許せない、許さない!絶対に認めない、彼を殺した奴らが正しく裁かれることもなく生き続けるなんて!」

 

 真実を突き止めて、私は何をしようとしていたというのだろう。真実を知ろうが知るまいが、私に出来ることなんて何もない──だって、私は彼の親族でも無ければ身内でもない。大昔の約束に縋り、一緒に生きたいと願うだけのただの他人でしか無かった。

 だから法によって裁かれた以上、それが全ての筈だ。裁判官が検察の立証や弁護士の弁論を聞いて、法知識や判例と照らし合わせて判決を下した以上、心情はともかくそれを最終結論であるとして受け入れるべきだ──私が真っ当な人間であるならば。

 

「なら、そうだ、そうだとも。彼を愛していた私が、彼のために生きていた私が、私が──やらないと」

 

 私にとって彼は全てだった。彼が居たから、彼を愛していたから何でも頑張ることが出来た。彼が私の才能を見抜いてくれたから、私は自分に自信を持つことが出来た。

 だから私は、彼を奪った奴らを生かすという法の結論を受け入れようなんて思えなかった。私の全てを奪った悍ましい敵が生きていることが我慢ならなかった。

 ぼろぼろ、と涙が溢れてくる。それはこれから行うと決めたことへの恐怖だったのか、あるいは天啓の如く浮かび上がった狂気的な思考に歓喜したのか。我が事ながら今となっては最早わからないことだったし、当時にあってはどちらでも同じことだった。

 

 

「私がやるんだ……私が、彼を殺した奴らを殺すんだ……っ」

 

 

 だから──つまり私は、真っ当な人間ではなかったというだけ。普通の人間が持つストッパーを持っていなかっただけ。

 

 殺す、と己のやることを明確にした私は、パソコンのモニターに照らされながらただただ笑い続けていた──その顔には、自覚もなく流し続けた涙があった。

 

 

 

 殺すと決めた日から、私は3人のプロファイリングを徹底的に行なった。3人を殺すともなれば、最低限全員殺すまでは捕まらない犯行計画が必要だった。

 

「……刑務所に居たという時点で分かってはいたが、誰も彼も酷い経歴だな」

 

 標的は3名。収監されていたという時点で全員犯罪者であるが、当然そこに至るまでの経緯は違う。

 

 最も憎くて絶対に殺したい主犯格の「柘植 謙次郎」はいわゆる半グレで、店舗への空き巣で逮捕され懲役6年の実刑を受けていた。付き合っていた共犯の女は犯行中には妊娠していたらしく、獄中出産したらしい。

 その柘植に便乗する形で嫉妬から彼に暴力を振るったのが「東海林 雄一」。リストラからの破局で自棄になってコンビニ強盗未遂を起こして逮捕。自分より重罪の人間に待っている女が居ることに腹をたて犯行に及んだ。

 そして柘植と共謀する形で倒れた彼を抑え込んで直接の死因となった「三重野 俊仁」は妻を理由に上司に脅され詐欺に加担したところ、気弱で思い切りが良かった当人が妻を害されないように積極的に詐欺に加担したために逮捕された。

 

 それぞれ碌でも無い理由で捕まり、服役中に更に碌でも無い理由で彼を殺したというわけだ。であれば碌でも無い行いを精算すべく死んでもらおう。

 しかし腐っても成人男性3人、如何に私が空手黒帯で警官業で取り抑え技術があったとしても一方的に抑え込めるような相手ではない。極論武器を用いれば容易だろうが、現代社会で警察にバレずに辻斬りを3回行うのは至難。

 必然として、相手の懐に入るか、或いは自分の懐に入れる必要がある。

 

 後者は現実的ではないだろう。私の時のように小さい子供なら拉致監禁しようもあるが、成人男性で同じことをやれるわけがない。かといって同意の上で人を連れ込んで殺して、尚怪しまれず犯人を特定されないような物件を確保するには相応に時間も金銭もかかる。

 つまり、狙うべきは前者。そのためには──。

 

「──まあ、彼が亡くなった以上は大事に取っておくようなものでもないな」

 

 見目には自信があった。彼の為にずっと磨き続けていた自慢の身体は今も惰性的に磨いていて、彼の仇を取るためならいくらでも使い潰せる。妻がいる三重野は知らないが、女旱の東海林や下半身が緩そうな柘植あたりの懐に入るにはうってつけの手段だ。

 とはいえ、問題がないわけではない。

 

「経験を積みたい。マッチングアプリでも使ってみるか?」

 

 スマホをいじりながら思案する。

 男女の付き合いならともかく、殺したい相手を油断させるなら思い切り気持ちよくさせたほうが良い。それに殺すまでの時間や手間を考えれば遊んでいる人間を装ったほうが効率的なのも確かだ。

 

 どうすれば技術を身につけられるのかと悩んでいたところで、職場の幾人かで共有しているSNSからメッセージ通知が届いた。職場の飲み会の誘いだ。

 

「部長も少しだけ来るのか。だったら参加するか……うん?この参加者リスト……」

 

 現在参加できるメンバーのリストを眺めていて、1人の名前が目に入った。

 私の異動の半年後、秋の初めに異動してきた半年だけの後輩。

 敬語が苦手なこと以外取り立てて悪評が立つようなこともない、そんな真面目で努力家な男。

 

「あー……確か、一人暮らしだったな。……口が固そうなら狙ってみるか」

 

 高卒で、初の異動でまだ21か2だったと思う。私とはそれなりに年が離れているが、それでも若手同士。職場の動きや休日当番などの勤務体系に理解がある相手なら関係を作るには向いているだろう。

 駄目ならアプリでもSNSでも使って適当に相手を探すことにして、私は職場グループに承諾のメッセージを送った。

 

 

 

「ほら、飲め飲め。部長に酌もしてくるんだぞ」

「う、うっす」

 

 雑に生ビールを酌してやると、恐縮するように身を縮こまらせる男。刈り上げた頭を掻くような動作は少し困った時に無意識に出る後輩の癖だ。

 背は私より少しだけ大きい170cm後半程、学生時代は柔道で全国大会に出たこともある肉体は肩幅も胸板も立派で、身長差なんて目じゃないくらいには体格差があった。

 

「にしても私がお前くらいの時には適当に研究だなんだとやっていたものだが……立派に働いてて凄いなお前は」

「ソレに関しては先輩のほうが凄いと思いますけど……」

 

 高卒だという後輩は少しでも早く家に金を入れたかったのだという。弟妹も多く、あまり裕福ではなかったと子供の頃から肌で感じるような家で、それでも親が頑張って高校まで行かせてくれたその恩を返したいと言っていた。

 

「私なんてドラマに憧れてなんて俗な理由で入ってきたんだぞ?お前のほうが凄いさ」

「そんなことないっすよ!先輩かっこいいし仕事できるし皆褒めてますよ!憧れっすよ」

「何だ、褒め殺しか?そんなに褒められても酒しか注げないぞ?ほら、こっちこい」

 

 酔ったふりをして、近くによってきた後輩に胸を寄せて酒を注ぐ。直接触れても居ないのに真っ赤になって慌てて顔をそらす辺り、女との交流に慣れていないのが明白で少し可愛らしい。

 だから少しだけ胸が痛む。私はこれから──この優しい男を、自分の復讐のためだけに縛り付けようとするのだから。

 

 

「うぐ、うえっぷ……目が回る……」

「ほら、しっかりしろ」

 

 二次会帰り、私は前後不覚なほどに酔っている後輩の肩を支えて終電すら無くなった深夜の街を歩いていた。

 後輩が現在一人暮らしなことは知っていたので、解散時に送り届ける旨を皆に伝えていた。一応男と女なわけで皆心配していたが、後輩の酔いどれ姿をみて何かが起きることもなさそうだということでそのまま見送られたのである。

 

 そして私達は後輩の家……ではなく私の家、大学合格記念で両親の金で買ってもらったそこそこの広さのマンションの1室に居た。

 最近買い替えたダブルベッドの上に寝かせた後輩は悪酔いしているのか苦しそうな顔をしており、アルコールが回ったのだろうか顔が赤くなっている。

 

「苦しいのか?外すぞ?」

 

 どこか白々しい気遣う言葉を吐きながら、私は彼のシャツのボタンを外して呼吸しやすくしてやる。

 

「うぷ……ここ……あれ……?」

 

 息が楽になったのだろう、薄らと目を開ければ流石に自宅ではなかったことに気づいたのか戸惑う様子を見せた。

 

「すまん、お前の様子が余りに見てられんから近い私の家に上げたんだ」

「あー、え……あ、あざっす……?」

 

 全く現状を理解できていなさそうで、ぼんやりとした目線で私を見上げている。

 それに気づかないふりをして私は服を脱ぎ下着だけになった。これで色気のあるランジェリーなら多少は格好もついただろうが、悲しいかな当時の私の体型に沿う下着は大体シンプルなデザインばかりだった。

 だがそれでも後輩にとっては刺激がそれなりにあったようで、目に見えてあわて始めた。

 

「ち、ちょっと先輩……」

「うん?ああ、寝る時には下着で寝る主義なんだ。ちゃんとナイトブラにするから大丈夫だぞ?」

 

 素面のように見えて酔っている、ふりをして支離滅裂なことを言いながら今つけているブラを目の前で外してナイトブラに付け替える。

 ブラを外した瞬間にぶるん、と私の胸の全てが露わになる瞬間を後輩が見ていたことを確認する。ベッドの方からゴクリ、とつばを飲む小さい音が衣擦れ以外に音源がない部屋に響く。

 

「それじゃあ……お休み」

「うえっ!?い、いやいや俺床で寝ますよ!?ってうわっ!?痛ってえ!?」

 

 そのまま私がベッドに滑り込めば、慌てて立ち上がろうとした後輩が柔らかいスプリングに足を取られて盛大に転倒した。その際に腕をヘッドボードに打ち付けたらしく腕を抑えてプルプル震えていた。

 

「おいおい、大丈夫か?」

「っだ、大丈夫です!っすから、その、上から──」

 

 転倒し強打した腕を心配するような素振りで、ベッドに横たえた後輩の身体に覆いかぶさる。

 むぎゅ、と私の胸が彼の顔に押し付けられるが気づいていないふりをする。ちらり、と彼の下半身を見ればスーツ越しでも分かるぐらいに股間が隆起していたのを確認して小さく笑う。

 

「…………」

「あの、先輩?そろそろどいてもらえると──っ!?」

 

 少しだけ息を荒げながら、私は後輩の股間に手を伸ばした。演技ではない。私だって全く経験のないことで、彼相手のイメトレばかりしてたものの緊張自体はしているのだ。

 ジッパーを下げ、トランクスのボタンを外せば大きな男根がはちきれんばかりに屹立した。

 

「先輩、ちょっとまずいですって!それはその……」

「何がまずいんだ?良いじゃないか、私だって溜まってるんだよ……!」

 

 正直自分でも何言っているのかわからない。でもそのぐらいの精神状態のほうが怪しまれないだろうとは思っていた。

 ショーツを下ろし、勃起している後輩のその先に自分の性器を押し当てる。亀頭とクリトリスが擦れあい、これから起こること、やろうとしていることを自覚しているのか薄っすらと濡れ始めていた。

 

「先輩酔ってません!?いや俺も酔ってるんですけど……!ってそうじゃなくて、やばいですってだから……」

「酔ってるに決まってるだろう。普段真面目ぶってるように思ってるかも知れないがな、私だって人間だからこういうことに興味だってあるんだ。……お前も実は少しだけ期待しているんじゃないか?」

 

 そう言いながら腰を揺らせば、ちゅく、と淫蕩な音を立てて粘液同士が絡まる。

 先端同士で絡み合う性器の感触に二の句が継げなくなって、いよいよ顔が真っ赤になってプルプル震える後輩を少しだけ可愛いなと思ってしまうとともに、どうにも罪悪感が湧いて出る。

 いたいけな後輩の純情を弄んで復讐のための道具(?)にしようとしている自分に思わずため息を吐きたくなるが、だとしても憎い相手を殺したいのだからしょうがない。

 最後まで抵抗する後輩をなし崩し的に押し倒した私は、このままだと罪悪感が浮かびそうな自分の顔を見られないようにと赤くなった耳元に顔を寄せ、恥ずかしがるように囁いた。

 

「──なあ、身体だけで良いから使わせてくれ」

 

 言ってから割と最低だな、と思いつつ。私は罪悪感、背徳感、初体験の興奮に染まった身体で後輩を一気に呑み込んだ。

 

 ずぷ、と身体の中に異物が挿入される違和感が私の総身を巡る。膣壁と男根が擦れあってじわじわと快感が登ってくるのは性感帯を刺激しているのか、あるいはそう憎からぬ相手と交わっている高揚感なのかはわからない。

 じくりと痛みが走り、濡らし方が足りなかったのかと思ったがそう言えば処女であることを思い出した。やはり酔っているのだろう。

 

「っふぅ、こういう感じなのか……思っていたより暖かくて、刺激も緩やかなんだな」

「いやその先輩……まだ、まだ今なら……!」

 

 この期に及んで後輩は逃げられると思っているらしい。だがその意志に反して硬さを増していることは膣内の感覚から伝わってきており、本能的には快感を感じているだろうことが手に取るように分かった。

 ふふ、と笑いながら私は腰を動かして奥まで突き立ったそれをグリグリと刺激する。程よい快感が身体を刺激してきて、アルコールが染みた身体が更に火照ってしまう。

 

「あんっ……気持ちいい、な。なあ、もう少しやらないか?もし気持ちよくないなら言ってくれ、こういうのはお互い気持ちよくならないと後味が悪いからな」

「いや気持ちいいっすけど、気持ちいいから悪いと言いますか……っ!」

 

 そういう後輩は私の痴態を見ないように目を瞑っている。がっしりしたガタイとのギャップが思ったより可愛らしい。

 それでも無意識に腰が動きそうになっている辺り思ったより私とのセックスで感じてくれているようで、初体験ながら上出来なのではないかと思う。

 

(どうやら快感を覚えさせられるぐらいにはそれらしく出来ていると見ていいか……?いや、お互い素人だからな、こういうのに慣れていそうな柘植を相手することも考えるともっとこう、リードしつつ搾り取るようなことが出来るぐらいにはなった方が良いんだろうか)

 

 ちゅくちゅく、と粘液を纏った性器同士が甘く絡む音が、酩酊と快感に合わせて身体と脳をピリピリと刺激してきて心地よい。なのに、それでも脳の片隅では今後のことを考えている。

 安心できる相手とのセックスだからだろう。本能的に快楽を求めた身体は勝手に動き、後輩のモノを膣で絞め、扱いていく。亀頭のカリ首が膣壁を柔らかく引っ掻く感触がより一層私の身体を昂らせていく。

 

「んっ、はあ……良いな、こういうの。ふふ、酒に呑まれてでもやってみるのもアリだな」

「先輩……っ」

 

 後輩の言葉は弱々しい。顔は真っ赤で目が潤んでおり、まるで犯されているのはあちらのよう……いや、事実として私が後輩を犯しているのだが。酒に酔わせて家に連れ込んで強引にコトに及ぶのは強姦としか言えまい。

 これが後輩の初体験である可能性はそれなりにありそうだが、もしそうだとしたら今更ながらに申し訳ないなとは思う。後輩の性的興奮も最高潮に達しているから大丈夫だと思うが……いや、これも強姦魔の考え方だ。

 

「せ、先輩……っ!その、そろそろ、抜いて貰えると……っ」

 

 脳裏に罪悪感と背徳感が混在した思考が芽生えていたところで、切羽詰まった声が耳に届いた。

 事ここに至ってまだ止められるつもりなのだろうか、と酔いが回った頭で考えたところで……。

 

「…………あ」

 

 そう言えば、予め買っていたコンドームを付けていなかったな、ということに気づいた。

 いや言い訳をするならこの流れでコンドームを付けるのは正直狙っていたとしか思えないと言うかそういう事をやりまくっている女と思われるのも不都合と言うかあくまで酒の勢いでやってしまってなし崩し的に肉体関係を持つ間柄にしたかったと言うか……まあ単純に忘れていたのだが。

 ちらり、とヘッドボードにおいていた月めくりカレンダーを見た。周期を考えれば今日は安全日ではあるので、妊娠する可能性は低かった。

 

(──よし。明日、朝一でアフターピルを買おう)

 

 中に出しても対策すれば良い、という当時の思考を思い返すとアホじゃないかと思う。

 せめて外に出させれば良かったのだろうが、その時はこちらの都合に付き合わせたなら最後までやってあげようか、という意味の分からない思考が芽生えていたので、大分酔っていたんだなとヒシヒシと感じてしまう。

 

「先輩!?いまの『あ』って何……っ!」

 

 なにか言っている後輩を黙らせるようにその首を抱きしめてやる。ナイトブラに包まれた豊満な胸が彼の顔を塞ぎ、その吐息が私の乳房をいたずらに刺激してくる。

 そしてそのまま刈り上げた触り心地の良い頭を撫でるようにして、私は腰を今まで以上に激しく動かした。

 

「──────っ!そ、それ────っ、で、射精(で)ちゃ──っ!」

 

 じゅぷ、じゅぷ、と腰の動きに合わせて粘液が搔き回される音が響く。パンッ、パンッと男女の肉同士が音を立ててぶつかり、飛び散った汗と粘液が互いの身体を濡らす。

 一気に激しさを増した絡み合いに後輩も我慢が効かなくなったのだろう、私の奥まで精液を送り込もうとする本能のままに腰を強く押し付け、大きな亀頭が私のポルチオを僅かにこじ開け子宮への道に矛先を向けた。

 

 理性に反して孕ませようとするような後輩の挙動が何だか面白くて──そして、求められているという事実が私の女を強く刺激してきて。私は思わず、堪えきれないように後輩に口づけした。

 

 

「──大丈夫な日だから、腟内(なか)に出して。なあ、どうせなら────ふたり一緒に、イこう?」

「────っ、すんません、もう、射精(で)ます……っ!」

 

 

 どぴゅ、と私の胎内に温かい液体が注がれていく。私が囁くのが早いか、彼が私でイくのが早かったのか。私が告げたそのタイミングで────私と彼は同時に絶頂を迎えたのだった。

 

 

──────

 

────

 

──

 

─

 

 

 そうして、アルコールが回りに回っていた後輩は性交からの射精でついに限界を迎え失神。私はそこまでではなかったのでどうにか体を起こしてシャワーを浴びて改めて同じベッドで寝た。

 

「酷いっすよ先輩……初めてだったのにこんな、こんな……」

 

 翌朝、私より遅く起きた後輩はまだアルコールが抜けきっていないのか非常に弱りきった顔を布団に埋めていた。

 

「悪かった、悪かったよ。ほら、私も初めてだったしおあいこってことで、な?」

「いや童貞を捨てた俺はまだしも先輩こんなんで初めて捨てるの駄目でしょ!?身体大事にしてくださいよ!!」

 

 申し訳ないなあという気持ちを素直に伝えられなくてすこし茶化した謝罪にしてみたのだが……思った以上に強い反応が返ってきてびっくりしてしまった。

 布団から上げた後輩の顔には申し訳無さと少しの怒り──軽々に酒の勢いで処女を捨てた私を心配する感情がありありと浮かんでいて、ちょっとだけ心が暖かくなってしまう。

 ……処女を捧げるつもりだった「彼」はもう居ない。使い途のなくなったこの身体が彼の復讐に使えるなら処女なんて何回捨ててもいいが、だからと復讐相手に捧げるのも馬鹿らしい。だから口が固くて明るく純情な後輩を使わせてもらった──なんて、眼前の顔を見て言えるわけもなく。

 

「その、だな──すまなかったな。私、実は失恋していてな。だからまあ、少しだけ自棄になってたんだ」

 

 だから、せめてこんな行動に走った理由くらいはぼかして伝えておこうと思った。目的を考えればこんな事言わないほうが良いのに、とは思いつつも──それでも、私という人間のほんの少しの善性が黙っていることを許さなかった。

 

「先輩……」

 

 後輩が一転して申し訳無さそうな、辛そうな顔を見せてくる。

 言葉こそ選んでいるが、今私が言ったことは後輩を感情の捌け口に使わせてもらった、というだけのことだ。その言葉に後輩への思いやりなんて欠片もなかったと言うのにこんな気遣わしげな表情を浮かべられてしまって、私なんぞより遥かに大きな底抜けの善性をぶつけられてしまっては苦笑するしかなかった。

 

「でも、誰でも良かったってわけじゃない。一方的な思い込みだけど、お前が──お前ならこんな無様な人間の感情を受け止めてくれるかも知れないって思ってて、それで──つい、甘えてしまったんだ」

 

 嘘、ではないが虚飾まみれだ。言葉短く端的に、それでいて実直に私を慮ってくれている相手に向けるにはなんとも不適当な言葉だと思う。

 だけどそんな虚飾に塗れた言葉も、それに合わせて表情を作ることにも慣れてしまっていた私には──その時私が浮かべている表情が嘘だったのか、本心だったのか分からないままだ。

 

「……その、あー。好きだった人の代わりだなんて大口は叩けないっすけど……それで良ければ俺、先輩の力になりたいっす。人生経験なんて無きに等しいですけど……それでも、辛くなったら言ってください」

「あのなあ……いや、その優しさは美徳だよ、本当に」

 

 お互い裸で、ベッドの上で。ピロートークというには真面目な顔で後輩が告げた言葉は……私なんかが受け取って良いような言葉じゃないというのに、つい呆れたような笑顔が浮かんでしまう。

 

 

「それじゃあ、そうだな……。身体の関係(セフレ)、続けてくれないか?」

 

 

 だから、どうにも気恥ずかしくて。ついついそんな言葉が口から出てしまう。私の捨て身の言葉にわーわーと騒ぐ後輩にしなだれかかって、その口を自分の唇で塞ぐ。

 セックスの練習台、復讐相手に怪しまれないような技術を磨くためのテストベッドとして求めた相手。私に縛り付けるためだけに酒にまかせてレイプした、4つ下の優しい後輩。

 

(こんな自分勝手な私に、こんなにも優しくしてくれるのなら──)

 

 全部終わったその時は、心以外の人生全てぐらいは捧げて良いかもしれない──そう思わせてくれたのだった。




私(26):人間。女性。泥酔逆レイプ!野獣と化した先輩。愛する人の復讐の為なら身体を使うことを躊躇わないし法にトリーズナーするクリームヒルト系女子(26)。憎い相手なら名前を呼べる。

後輩(22):人間。男性。I類とIII類の年齢差はあるが主人公と同期。なのに先輩後輩呼びなのは異動時期が半年違ったために主人公がOJTとして指導に当たったから。能力と外面はつよつよな頼れる年上美女の主人公のことを先輩呼びするようになり、じゃあということで主人公から後輩呼びされるようになった。憧れや恋慕の感情を抱いていたが泥酔逆レイプされ情緒がぐちゃぐちゃになったらしい。純情。
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