性奴隷と長身巨乳リョナグロ背徳性癖倒錯ふたなりが純愛に堕ちるまでの話 作:PP→KP
(うへぇ。僕はてっきり母さんとだけ因縁があるもんだと思ってたんですけどね……)
率直に言えばやばいです。一触即発です。
ギリ、と頑強な牙が擦れ合う歯軋りの音が威嚇のように部屋に響き渡り、包丁を持つ父さんも困惑と警戒の感情を浮かべていました。
音の発生源は二次元座標的には左後方、そこに高さを加えた場合は直立した僕の耳から大体40cmぐらい下。言わずもがなのリィロンです。
「お前、クソ、こんなところで……っ」
「え、ええと?君は……」
父さんはリィロンの様子を見て下手に刺激しないほうが良いと動きを止めています。そこら辺の判断力は確かなんですが、問題はリィロンの撃発する銃爪が何処にあるのかも分からないってところです。この状況になった時点でそれぞれどういう因縁を抱えているのか、判っているのはそれこそリィロンぐらいでしょう。
そのリィロンはというと、恐怖、怒り、殺意、憎しみといったおよそマイナス感情がごった煮になった感情を父さんに向けています。そしてそれと同時に、どうにか自分を沈静化させようとしているようでもありました。多分セフレとの逢瀬の場で、それなりに思い入れがあるからだと思います。竜だと自負するリィロンは自分の物に対する執着が結構強めなので、下手にそこを壊したくない、汚したくないという感情があるのでしょう。
……にしても、一体全体何処に父さんとリィロンの接点があったのでしょう。教えてくれたらこんなやばいブッキングになりそうな予定を立てなかったんですが。
僕の父さんは性奴隷でした。それも子供の頃から。
10歳の頃に母さんに買われ、そこからずっと犯されていたそうです。ふたなりの
父さんが姉さんを産んだのは11歳の頃、逆算して10歳の頃には孕ませてしまうほどの倫理観欠如行為に勤しんでいたことになります。今はともかく、僕らが子どもの頃にセックスの例として見せてもらった時の射精量は尋常ではなく、
閑話休題。要するに何が言いたいのかと言えば、父さんは10歳の頃から今に至るまでほとんど王都の外に出てこなかったということです。
リィロンのトラウマは「大人の女性が怖い」というもの。その理由までは知りませんが、少なくとも幼少の砌から王都でずっと過ごしていた父さんがトラウマの原因になるとは思えません。なので僕はてっきり戦場で誰よりも女らしいとさえ言える肉感豊かな母さんとの戦いでなにかあったんだろうと思い、そっちと顔を合わせなければ問題ないだろう、そう考えていたのですが。
「ええ……っとぉ、とりあえず父さんは一旦包丁を置いてください」
「あ、ああ……わかった」
刺激しないようにゆっくりと、父さんが包丁をまな板の上に置く。幸いなことに包丁から体を引くように立っていたリィロンはその行動で撃発することはなく、ただその包丁の行く末を只管に凝視し続けるだけに留まりました。セーフ?
ただリィロンは結構どころじゃなく喧嘩っ早いのでやはり丁寧な対応が必要そうです。
「ね、リィロンも一旦離れてください。ほら、部屋の扉閉めますから」
ゆっくり、リィロンから見えるような動きで肩を優しく掴んでゆっくりと押してあげます。リィロンは父さんの事を凝視し続けましたが、だけど僕の誘導に沿って一歩、ニ歩と後退していきます。よし、あとは視界に入らないようにキッチンの扉を閉めれば……。
「!リィロン……君が」
「っ、お前が、今の僕の名前を軽々しく呼ぶなっ!」
ちょっと父さんなんで今そんな事呟いたの!?刺激しないようにしてたのに!!
というか父さんもリィロンのこと知ってるんですね?教えておいて欲しかったなあ……!!いやセフレにしてたの黙ってた僕が言えた話じゃないんですけれども……!
ぐい、とリィロンが僅かに身じろいで、敵意むき出して一歩前に出ます。あっ床に爪が食い込んでる!原状回復費が…………!
じゃない、そっちは原因の父さんに払わせればいいから後にしましょう。そんなことより止めないと……!
「リィロン、リィロン!落ち着いて、ね!?」
「うっさい!退いてろ!」
「っ、あ、ぐッ」
だあん、と大きな音。
背中の翼が巨大化して、どうにか抑えようとしていた僕の体は壁に叩きつけられました。ぐえっ。くそう、ベッド上だとあんなに敏感でぷにぷにとろとろのくせにと悪態をつきたくなりますが、たかがいち淫魔が
「バーティ!」
「っ、あ…………っ!この、お前が、お前さえ……!」
父さんの悲痛な悲鳴にリィロンもわずかに我に返って、なんか憎々しげに見ていた父さんから視線を外して心配そうな目線を向けてきます。そこで罪悪感を覚えてくれたリィロンはしかし、その感情さえも父さんに転嫁してしまっていました。
心に抱く恐怖、嫌悪、それらを怒りに変えて、戦闘形態へと変化していく肉体。だけどそれを見ていた父さんは、その姿に確かな死への恐怖を抱いていながら、だけど同時に罪悪感も持っているようで、振り上げられた爪を見上げるだけで逃げようともせず達観したような顔でそれを見ているだけでした。それが自分が受けるべき罰なのだとでも言わんばかりです。
だけど、ただ一点。死が迫る父さんは、それでも尚、僕のことだけを心配するかのような顔を向けていました。
どういった理由があるのかは知らないけれど。なんでこうなっているのかはわからないけれど。
大切な父が、たまに遊び歩くこともあるような気の置けない
多分、生涯で最も速かったと自負しています。
「え────」
鮮血が、鮮やかな赤が視界に広がる。めちゃくちゃ痛い、死んじゃいそう……いや冗談抜きで。ああ、もう。せっかく壁紙もキレイな建物を選んだのに、なんて思ってしまいます。
さっきの爪痕と合わせて、修理費は幾らになるんだろうなあ。
「────っ!──!」
「────……!──!─、────……」
背骨がひしゃげて、お腹を貫通した太い爪が背中から飛び出てました。真っ赤な血で辺りを汚してしまって、もう痛くないところを探したほうが早いくらいに全身痛いです。
後ろに見える父さんは、泣きながら必死で魔法を使おうとしていて。血で汚れているけれど、怪我をしてないみたいで本当に良かったと思います。
そうして、僕を手に掛けたリィロンは呆然と首を横に振りながら何かを呟いて泣いていました。ううん、よく聞こえませんね。意識も遠のいてきた気がします。
「りぃ、ろん──ごめんなさい、父さん、なにか、えっと……とりあえず、はな、しあいで……」
「──────っ!!──、──」
あー、何も聞こえない。やばいかな?やばいですよね?ううん、とりあえず魂の牢獄の術式だけは自動で発動してくれる、筈、ですので。母さんが来るまで、休学、ということで──。
まとまらない思考の中で。この期に及んで学業の心配ばかりしていた僕は、そんなふうにして初めての死を迎えたのでした。まる。
──────
────
──
─
「……!…………!」
ううん、眠い。なんか頭が痛い。ぼんやりする。ぐらぐらする。一体全体何があったんでしょう。
なんか夢の中にいるみたいです。すっげえでかい感情の塊というか魔力の塊が目の前に居るような。僕みたいなちっぽけなものはそれのそばにいるだけで呑み込まれてしまうんじゃないかって感じです。
"ヤ……で…ね、……。マ……死…………ま……"
「どう……ら……!?」
なんか騒がしくて、全身が反響するような不思議な感覚です。うーん、というかこれアレですね。この反響する感覚と目前の存在感の綱引きで気持ち悪くなってる感じですね。
綱引き状態が気持ち悪いならどちらかに寄ったほうが良いのかな、と考えると目の前の方が暖かそうというか、気持ちよさそうに思えます。超絶巨大なクッションに身を沈めたような感じになりそうというか……ただなんというか、戻ってこれない断崖絶壁の縁に立っているような感じもあります。いえ正確に言えば反響する感覚から伝わってくる感情的な何かがこの先がそう言うものだと伝えてくる、みたいな感覚でしょうか。うーん、フィーリングだらけで学問の徒としては落第点ですね。猛省しないと。
"神……遭……、昇……たら……引き戻…………よ……。クソ、…………い……じ…学生……研究室………………と……のに"
「愚痴は……か……な……手は……!?」
"そ……言っ…………。っ…、……の道……!……研究テ………試作……!そ…、…れ…使……しょう!"
……さっきからこの山彦みたいな反響、どうにも聞き覚えがあるんですよね。知り合いだったり家族だったり、あとは、ええと。声、というかこの脳裏(今の僕が脳で考えてるのかよくわかりませんが)に響く言葉は……。
"──やった、繋がりました!起きなさい!単位落としますよ!!"
!!!!?!?!?!!!
「ちょっと待ってください教授僕ちゃんと研究成果出してるじゃないですかもうすぐ
がばり、と起きた僕の周りにいるのは、父さん、リィロン、そして……
"良かった、目が覚めましたか"
「あれ、教授?どうしてここに……?単位は?」
"こないだ全部研究成果出して『
「……そうでしたね」
ということはさっきのは……夢でしょうか?うわ、恥ずかしいなあ。もし母さんがいたら生温い目で見られるところだっt「バーティ!!」ぐえっ!?
「バーティ!!ごめん、僕、お前を……っ!大丈夫!?怪我してるのか!?なあ、今はもう平気だよね、治ったよね!?」
「たった今平気じゃなくなりましたよ……というか、そうでした。さっき僕死んでましたね。心配させてすいませんでした」
体当たりの勢い強く僕の懐に飛び込んできたリィロンが涙ながらに謝罪したことで、ようやくさっきの流れを思い出しました。そうそう、僕ってばさっきリィロンの翼腕の爪で体がぶっちぎられて死にましたっけね。母さんが来るまで死んだままかなと思って壁の世界時計を見てみれば……死後2時間ってところですかね。あれ?早い?
"バーソロミュー。君の最後に使った術式が死にかけている状況だったこともあって不完全な発動だったのですよ。なのであと1時間遅かったら死んでました。君の体から神の力が滲んできた時はどうしようかと思いましたよ"
「神?神!?そうだ、教授僕神様見たんですよ!なんかすごい、その、すごい、すごい感じでした!!」
"知ってます"
くそ、神と会ってると理解できていたならもう少し注視しておくべきだった!!いやしかし、神様と会えたことはしっかり記憶に焼き付いてはいます!あの感覚、この世界にあまねく存在する全てはあの神様の力によって存続されているのだと、つまりあの力をもうちょっと丁寧に把握できれば僕の研究もさらに……!
…………?
「あれ、そういえばなんで僕蘇ったんですか?教授って蘇生魔法使えましたっけ?」
"使えませんよ。君が作った試作魔力共有変調器、複数人の魔力を混合させ出力を増幅・制御するための機材があるでしょう?それを使ってリィロン、私、ゼノヴィアの3名の魔力波形や敵性を混濁・整形・増幅させることで蘇生魔法への適性をごまかしました"
成る程……えっ、でもあれ試作品だからうまく混ぜられなかったような……?
なんか無性に不安になり、改めて部屋を見渡して……さっきから喋っていなかった父さんの体がずたずたになっていることにようやく気づきました。
「っ、父さん!?無事ですか!?」
"魔力切れで寝ているだけです。自己回復能力と魔法制御能力に長けていたので主に他者の魔力を引き受けて制御してもらっていたのですが、やはり反動が酷くて体内がずたずたになってしまいまして。ただ妙に慣れているというか、痛みを堪えながら魔法を行使し続け君が蘇生したのを見届けた後、残った魔力全部を自己回復に当てて肉体回復したと同時にばったり、って感じですね"
感じですね、じゃないんですが?
しかし確かに教授の言う通り、服がボロボロにこそなっているし、辺りに父さんの血が飛び散ってはいるけれど傷自体は消えているようでした。よく聞けば寝息も聞こえてきて一安心です。
「……ごめん、バーティ。ちょっとこう、カッとなっちゃって、止められなかった」
父さんを見てほっと安堵の息を吐いたところで、リィロンが改めて謝罪を口にしてきました。結構後悔しているっぽい?ううん、まあなんだかんだ助かったからセーフ……って言える空気じゃないですね、これ。
「いえ、まあ、はい。その、リィロンと父さんって、やっぱり転生前になにかあったんですか?僕が知る限りこっちで出会ったことはないですよね」
「……うん。僕、転生前にソイツに殺されたんだよ。転生前は人間で……いやヒトは人間しかいなかったんだけど、それでまだ7歳で、誘拐されて、監禁されて、手錠で縛られて、何日も閉じ込められて、中指もがれて、包丁でお腹切られて、内蔵ぐちゃぐちゃにされて……」
「ちょっとちょっとちょっと、え、それマジですか?えぇ……それじゃ怒って当然じゃないですか……何やってんですか父さん……?」
ポツポツと語られる断片的なリィロンの過去がヤバすぎました。恨み骨髄になって当然では????
なんかこう、思ったより深刻な関係ですね?というかもしかしなくてもリィロンのトラウマの元って……。うーん、正直リィロンを責められないですよね、これ。父さんを殺そうとしたことに思うところはありますけど、それよりもリィロンから伝わってくる回顧からの恐怖の感情はかなり寒々しいもので、ここまでの悲嘆を抱かせるような所業をやらかした身内を庇えるかっていうと……。
「我が父ながらとても擁護できませんね。大変申し訳ありませんでした」
「……でも、バーティにとっちゃ大切な家族だから庇ったんでしょ?僕、せっかく出来た友達を殺しちゃうんじゃないかって、思って……」
じわり、と涙が浮かぶリィロン。普段は色々自由な常識知らずですけど、こんな状況で僕の心情も慮れるのは本当に優しいと思います。あともしかして友達がどうこうも地雷の範疇だったりします?セックスな友達ですしもっと軽く考えても良いのではないでしょうか?なんて思うのですけど、どうにも感情が収まりそうにないみたいです。ふぅむ、どうしましょうかね。
「いいえ、気にしないでください……なんて言っても、きっとリィロン自身が納得できないんですよね?」
「……」
こくん、と頷くリィロン。外見年齢相応の可愛らしいモーションありがとうございます。
それはともかく悩ましいですよねこれ。正直僕が何をどう解決させられるのでしょうか。
"……とりあえず、私はこれで。あとはお若い2人が解決することを願っていますよ"
あっ、このなんとも言えないじっとりとした空気に耐えられないからって逃げようとしている!待ってください教授!その明晰な頭脳で解決策を導き出してください!
なんて思ったところで解決なんて出来るわけもない……なんて思ったところで、教授が手に持っていた僕の作った試作品が目に飛び込んできました。……っ!これだ!
「はいわかりました教授お疲れ様ですあっ試作品は回収しますね!それじゃあリィロン!今回の件はこれを使ったということでレビューを書いてもらうことでチャラにしましょう!」
「……えっ、えっ!?いやあの、僕は魔力の提供が主で……っ!?」
「じゃあ供出した魔力が他者の魔力と混濁して変質したときの感覚でも良いのでお願いします!
息吐く間もなく捲し立てていきます。きっと今のリィロンにとってはこれくらいゴリ押したほうが気分的に楽なはずです。
「え、えぇ~……なんだよ、もう、バカみたいな押しっぷりだなあ。……ねえバーティ、やっぱり君面白いよ」
僕の目論見は当たったのか、ぽかんとしたあと、目端に浮かんだ涙を拭いながら呆れたようにクスクスと笑い始めました。ヨシ!
「そうですか?結構真面目に言ってるんですけどね。察するに父さんの状態も、膨大な魔力を持つリィロンの魔力制御がおっつかなかったからでしょうし、やっぱりそう言う不具合は修正したいですし」
ここらへんは本音です。やっぱり不具合ってのがあるのは気になりますし、この不具合がなければ父さんがズタボロにならなかっただろうことを考えるとやはり思うところはあります。
……とはいえ。なんというか、今回はまだ不具合が残っててよかったのかもな、なんて父さんの惨状とリィロンの過去を聞いてそう感じた部分もありましたが。
「あー、まあそうだよな。……でも、まあ、僕は今回のでズタズタに出来たからある意味スッキリしたよ。そう思わない?殺人鬼のオバさん」
「…………そんな、簡単に、『スッキリした』で済ませられるほど私の罪は軽くない。そうだろう、龍太くん」
リィロンの言葉に、ぽつり、と小さな声。色々と罪悪感やら安心感やらの感情が現れていたから目が覚めていたとは思っていましたけど、リィロンもとっくに気づいていたみたいですね。
「おはようございます父さん。蘇生魔法の制御とかしてくれてありがとうございました。おかげで助かりました」
「……いや。私の方こそ、助けられたよ、バーティ。……だからこそ、私なんかのために生命を擲たなくても良かったんだぞ?」
ほぉん?父さんってばこの期に及んでそんな事を言うんですか。
こほん、と咳払い。良いでしょう、僕がどう思ってるかをちゃんと聞かせてあげませんと。
「あのですね、父さんの所業はリィロンからざっくり聞きました。そのざっくり部分だけで端的に言ってクズのキチガイのヤベー女だと思います。僕なら丁重に遠ざけたくなりますね」
「…………」
「すっごいバッサリいくねバーティ……」
あ、見るからにどんよりした。そうだよな、っていう諦観と子どもに否定されたということへの悲痛の感情がごちゃまぜになってますね。ええい、これだから淫魔以外の感情を察知できない種族はすぐに言葉だけで判断しちゃうんですから。
「ですけど」
「!」
「それも全部ひっくるめて、それでも父さんは僕の父さんです。いっぱい甘やかしてくれて、抱きしめてくれて、勉強を教えてくれて。この聖都の高校に受かった時も、大学合格した時も。すごくいっぱい褒めて我が事のように喜んでくれた父さんの心が本当だってことを僕は知っています。淫魔ですから」
バッと顔を上げる父さん。駄目だと、自分が悪いのだと、そう思いたくてもつい喜びそうになっているのでしょう。ふふふ、淫魔相手に感情の隠し事が通ると思わないほうが良いですよ。
「だから父さん。僕は父さんを助けたことを後悔していませんし、助けられたことに感謝を忘れたりなんかしません。大好きで、愛している家族なんですから」
「っ、バーティ……!」
喜んでる喜んでる。全くちょろいもんです。
「あ、それはそれとしてリィロンの気が済むぐらいには痛めつけられたほうが良いと思いますよ。僕の友達が色々苦労している原因なわけですし」
「ああ、それは勿論だ。イヴェットともそうだけど、あまりに悍ましい所業をした以上はその報いを受けて然るべきだとは思っていたんだ」
ちょっと待ってください、母さんも被害者なんですか?父さんホントに殺人鬼だったんですね?ドン引きですよマジで。
家族だから良いですけども……というか母さんもどういう気持で父さんとお付き合いすることになったんでしょうかこれ。好きあってるのはわかりますけども……うぅん、複雑怪奇ですね。
「え?いやいいよ。割とスッキリしたし、あとは時間が解決するでしょ」
「龍太くん……だがそれだと私の気が……」
「なんで僕がお前の気分を優先して甚振らなきゃいけないわけ?十分痛めつけたし、昔殺されたときの恐怖の対象だったお前がクソ雑魚って実感したから前ほど怖くないし、友達の父親だし、手ぇ出すの面倒くさいんだけど?」
僕が人知れず戦慄していた中身は2人はとっくに知ってたらしく、思わず動きが止まった僕をよそにうだうだと言い合っていました。というかリィロンはやっぱりスッキリしたからそれでいいや、ぐらいの認識なんですね。心が強い。
「っていうか、今の僕はリィロン!三重野龍太はとっくに死んでるんだよ僕の主観だと50年以上も前に!!トラウマ以外に引きずってる過去はないのにその名前で呼ばれても困るんだよ!!!」
いつまでも食い下がる往生際?の悪い我が父に業を煮やしたのか何なのか、リィロンが牙もむき出しに大咆哮をかましました。すっごいうるさい……あっ、キッチンとリビングの間の扉のガラスが割れてる。
爆音を至近で浴びた父さんは一瞬ぐらり、と揺らいでました。一瞬だけど意識飛んでましたねあれ。
「────っ、あ、ああ、済まない、リィロンくん……」
「百歩譲ってさん付けにしろよ。僕のが歳上なんだぞ」
ぐるる、と唸るような威嚇音と一緒に吐き捨ててます。うへぇ、父さんも変なところで意固地なんですから……というか自分が気がすまないからっていうのはそれはそれで相手の都合を考えていないのがなぁ。
とはいえ、これを放置するとせっかく穏便に済みそうだったのに変なふうに拗れそう。よし、ここはやっぱりアレでしょう。
「リィロン」
「なんだよバーティ、このヒト止めろよお前の父親……父親?だろ?だったら……っ、むぐぅ!?」
「!?!?」
おお、父さんったら今まで必死に贖罪を求めていたのも忘れて驚愕一緒に染まってます。まあリィロンも不意打ちされたので止まってましたが。
「んっ……ちゅ……」
そんな僕は体を大きくかがめて、リィロンの顎をクイと上げさせて、そのきれいな唇を貪っていました。リィロンも慣れたもので、混乱してたような感情が直ぐに興奮と快感に変わって、僕の口の中に舌を入れてきました。可愛いやつだなあ。
僕も思わず応えるように舌を絡ませて、吐息を絡ませて、その小さな体を抱き寄せて、ゆっくり持ち上げて……よし、このまま寝室に連れ込んでしまえば父さんも手持ち無沙汰に誤魔化されて……!
「………………その、そういう趣味だったのか、バーティ……いや、同性愛、少年愛?は……ああ、いや、イヴェットと同じならセーフ、なのかな……?」
なんかその、とんでもない勘違いされた気がする!?そういう、ってどういう趣味なんです!?
なんか僕の性癖を勘違いされていそうで思わず唇を離して抗議しようとして……少し顔を引いたらリィロンの顔が追従してきて離してくれませんでした。この性欲忠実ドラゴン!僕も性欲に忠実にあろうとは思うけど!
「っ、むぅ……」
「い、いや、その、なんだ。私はほら、お前たちがどういうヒトを好きになるとしてもそれを咎めたりなんかしない。祝福するさ。ただその、私の周りにそういう趣味のヒトがいなかったら、すこし混乱しているというかだな……!」
やばい、どんどん勘違いされていませんかこれ!?くそ、キスをねだるリィロンは可愛いけどそればっかりに流されちゃ駄目だ!
スッと顔を離し、不機嫌そうな小さな頭をぎゅうっと胸板に抱え込んで頭を撫でつけて上げましょう。知ってますよ、こういう甘やかされるモーションに弱いのは……!
「あ、ああ。私お邪魔だったな!すまん、それじゃあそろそろ帰るから!たまには家に帰省するんだぞ!」
ああっ、まって帰らないで父さん!せめて僕の言葉だけはちゃんと聞いてから帰って!!
「~~~~僕はっ!ショタコンでもホモでもありませんっ!!リィロンは────僕の大事な
勘違いされたまま別れたくない、というか家でどういうふうに扱われるかわかったもんじゃない。そんな万感の思いを込めて、僕は錯乱したかのような叫び声を上げたのでした。
──────
────
──
─
「けぷ。いやあ、危うく同性愛者にされるところでしたよ」
誤解を解いて、傷も癒えた父さんを帰して。死んだばっかりの僕の体力の補充のために
「っ、ふぅ、はぁ、すっごいよかった……。って、僕に殺されたこととかそこら辺はまるっと許せてる癖に性癖誤解されるのは嫌なんだ……」
「当たり前じゃないですか。性癖っていうのは個性の極北ですよ」
全身真っ赤に上気させてふわふわした面持ちになってしまっていたリィロンの言葉にしたり顔でうなずきます。これは淫魔にとっては心理だと思うんですよ。家族みんな変な性癖持ってますからね。僕はただのヘテロセクシャルなのでノーマルです……って、こういう言い方は最近の聖都だとアウトでしたね。みんなノーマル、ヨシ!
「……なんだかんだ年下の叔父相手に一線超えた姉とか半分双子みたいな関係なのに一線超えたどころか子どもまで作った弟妹とかに比べたら僕の性癖はマジョリティですし、それをマイノリティな性癖だと誤解されていいものではないと思うんですよね」
我ながら兄弟で一番普通な性格だと心より思います。今年齢一桁のダイアナとかダリウスとかアカシアとか、最近父さんが産んだエセルレッドとか、あそこらへんのまだまだちっちゃい子達が僕と同じくらい真面目な性癖で産まれてきていますように……いや無理ですね。父さんが奴隷じゃなくなってからというもの、アホみたいに性欲に溺れてるって聞いてますし。あんな両親を間近に見て、性癖異常者な姉兄を眺めて育つであろう我が小さな弟妹たちの性癖はきっとボロボロになることでしょう。ただの淫乱ぐらいで済ませて欲しいものです、切実に。
「やってもらってる身で言うのもなんだけど異性愛者なのにチンポ咥えてくれるバーティも大概……いやでも、流石に兄弟近親相姦出産よりはマトモか……」
「自分で例に出しておいてアレですけどウチの上の弟妹は例外も良いところなので省きましょうか」
あの2人、クリスとケイトは淫魔基準でもヤバい部類の性癖です。僕が家に居た時に家族で見張ってたのは忘れていませんよ。……今更ですけど、家に残った両親はあの2人の妊活作戦に出し抜かれちゃったんですよね。
「まあバーティの性癖はふたなり
「そもそもリィロンはセフレとしては良いですけど恋人にはちょっと……」
「なんだとぉ……?」
ガンくれるその顔も可愛らしいんですけど、ただまあ色々爛れてますし本命もいますからね。僕の性癖はNTR(転生者発のエロシチュの一種。最近聖都で広がってきている)では無いのでセフレとしてはともかく本命としてはノーセンキューって感じです。あくまで友人としては好きですよ?
「お友達でいようねってやつ?ヘヘ、照れるじゃん……」
「リィロンの『お友達』に向ける重みはなんなんです?」
さっき話した父さんとの過去以外にも結構地雷があるというか、やっぱり「友達」っていう部分に琴線に触れる話があったりしますよね?聞きませんけども。
「って、そうじゃなかった。それじゃどういうのが本命なの?気になってるヒトとかいる?」
「まるで高校時代の級友みたいな詰め方しますね……」
え、そう?なんてまたも照れくさそうにするリィロン。友達少ないんでしょうか。
それはともかく、気になっているヒト。……居るか居ないかで言えば、それは勿論──。
「──いますよ。ええ、僕が
「へぇ!ねぇねぇ、教えてよ!」
途端に目をキラッキラさせて詰め寄ってきましたよこのちびドラゴン。やっぱりこういう恋バナに興味津々な辺り元男だからって同性に括るのは間違っていると思うんですよね。男なら興味ないねで流す話題でしょうし……これも今の聖都だとアウトよりですかね。
ぐいぐい寄ってきて聞き出そうとしてくるトカゲっ子の角をつかんで引き剥がしながら、僕はこほん、と咳払いをしました。
「そんなに聞きたいんですか?全くしょうがないですね……僕も誰かに語っておきたかったのでこの機会にガッツリ語りましょう!」
「お、ノリノリじゃん!」
当然でしょう。前にゼミの友人に同じようなことを聞かれて、ならばとちょろっと口に出しただけで「いやもういいや」で会話をぶち切られて以降誰にもこの想いを伝えられていなかったのですから。
「彼女(?)に出会ったのは僕が高校卒業してすぐ、大学に入るまでのモラトリアム期間のときでした」
「ふんふん」
「ある意味失礼かもしれないのですけれど、僕は彼女のそのあまりに輝かしい姿に見惚れてしまったのが彼女を気にするようになった切欠でした」
「ふんふん……一目惚れってやつ?」
「あー、うーん……」
どうなんでしょう。一目惚れ、と言うには少し違うとは思うんですけどね。
「なんて言えば良いんでしょうね。僕、家族はみんな美形じゃないですか。僕はずっと子供の頃からそんな美形に囲まれてたから美形ってだけでは食指が伸びなくて、基本的に心を優先したいって思っているんですが」
「そうなの?でもその割に付き合ってくれるヒトが居なかったってことは周りにはよっぽど性格悪い奴しか居なかったってこと?」
なんてこと言うんですかリィロン。ちなみにゼミ友はここで話を打ち切りやがりました。性格はともかく度量が小さいのかもしれませんね。
「違いますよ。単に僕の見目が良すぎて皆遠くから敬うばかりになっちゃったんです。一時期は顔の良さを恨んだりしましたけど……」
「聞く人が聞いたら殺されそう」
それは僕もそう思います。なので口にしたのはここが初めてです。
「で、
「その件の
そうなんですよね。僕にとっては余りにも初体験過ぎる経験で、だからこそ彼女から目が離せなくなったんです。
「ええまあ。だから彼女とお付き合いしたく思って色々調べたり、ただの大学生を装って彼女とちょこちょこ話したんですけど……」
「なんかあったの?」
あったんです。というかここが彼女を好きになったキモといっても差し支えはありません。顔は入口でしかなかったんです、僕にとっては。
「それがですね……彼女の心、感情は思ったより普通だったんです。他愛のないことで笑ってくれて、嫌なことにはちゃんと怒って。あそこまで美しいのに、輝かしいのに、その心が普通の優しさに溢れていたものだから、そのギャップにコロリとやられちゃったんですよねえ」
「あー……まあ、なんとなくわからなくもない」
リィロンの友人のファンウェイも良くも悪くも普通(傭兵ですけど)な感性で、リィロンに対しては弟分として接してくるとのこと。そういう気安い関係から惚れ込んじゃったであろうリィロンにとっては僕の体験談も納得できるものだったみたいです。
「だからこそ、研究です。人並みの感情を覚える彼女は、僕と同じでその輝かしい姿故に恋愛に悩んでいました。ですがその悩みは、お互いに魔力を共有し、混濁させて、それぞれの持つ魔力の適性を誤魔化して、魔法をある程度自在に操ることで解消させることが出来ると!そう確信したからこそ、僕は今のテーマでの研究を始めたんです」
「おお~……」
ぱちぱち、というささやかな拍手。
グッ、と握りこぶしを作って力説する僕に対してリィロンは素直な感心を向けてくれました。こういう素直なところはリィロンの長所ですね。
「いやあ、思わぬいい話だったね。夢を追うのは良いことだよ、バーティ」
「ありがとうございます」
夢、なるほど。確かに夢を追っているんだなと思います。なにせ一学生には追いきれないような研究テーマで、それでも輝かしい彼女に届けられればという一心で
「……ふぅん、いい顔してるじゃん。僕のチンポしゃぶってたくせに」
「前立腺刺激されながら尿道の精液全部吸い出されて腰砕けになったリィロンは可愛いですよ」
あ、顔を真赤にして黙りましたね。ふふ、僕は仲の良い
「に、にしてもさ!そんなに思うなんて、よっぽどすごい
照れ隠しなのか、少し噛みながらも話題を変えてきましたね。まあ良いですけど、もともとそっちの方を話してたわけですし。
それにもしかしたらリィロンが彼女と繋がりがあれば、そこからいい感じに顔をつないでくれるかもしれませんし。
何より、自分が惚れ込んでいるってヒトの事を声高らかに喧伝したいですしね。
「ええ、勿論!アレほどの輝きはこの世界にはきっと彼女以外には持ち得ない!あの、何者にも代えがたい、彼女の────」
思い出します。あの輝き。他に類を見ない、それこそ絶世の美であるという母さんすらも霞むとさえ思えるほどの、太陽を全身に浴びて煌めく黄金の如き姿を。
思い返します。あの穏やかな心。戦いに親しい風土に生まれながら戦いを好まず、反映と豊穣を好む温かい精神を。
「──
僕の感情のこもった陶酔したような切ない告白に、リィロンががくんとバランスを崩してしまいました。うーん、やはり彼女の絶対の美を知っていたのでしょう。それを思い返せばバランスを崩すぐらいはしますよね、ええ。
「…………そう来たかあ…………」
何処か呆れたような、そんなつぶやきとともに流れてきた感情は真実呆れているものだったのでして、きっとリィロンも僕が彼女のような高嶺の花とは付き合えない、と思っているのかもしれません。ですが…………。
「ええ、僕は彼女とお付き合いして、結婚して、家庭だって持ちたいんです!彼女の笑顔を見るために、家庭を作るために、彼女の魔力を用いて僕の体を強化・拡張する為に!そのために今も頑張っているんですから!」
少なくとも今回の件で
エイリークさんの魔法適性である強化や変質、それを僕の魔力と混合させることで僕の方から使えるようにして、その上で「魔力を使って性器を相手の大きさに合わせる」という淫魔の生態を強化する。そうすれば僕のチンポは、きっとあの大きな彼女だってたっぷり満足させてあげられるほど大きく出来るに違いありません。
その輝かしく偉大すぎる巨躯故に恋愛感情を持て余してしまう彼女に付け込むようであれですが、そうすればきっと彼女は僕に好意を向けてくれるに違いありません。そうなれば、もうゴールインしたようなものでしょう。きっと。
「あー、えっと。まあそうだね、エイリークはきっと喜ぶと思うよ」
「そうですか!!ふふ、よぉし、メラメラやる気が湧いてきました!」
リィロンの言葉は多少呆れの感情こそ含んでいますが嘘が含まれているものではありませんでした。つまりリィロン視点で見ても僕の研究が完成したらエイリークさんが喜んでくれるということが確定したわけです!
そうと決まれば何故バックファイアが起きたのか、どの程度まで軽減できるのか。あとは彼女とエッチするにあたり肉体強化とかも並行発動する必要がある以上、より微細な制御手段についても模索する必要がありますね……!
僕は勉強が苦手で面倒くさそうにしているリィロンに機材の使用感を問いただしながら、今後の研究のためのロードマップを頭の中で組み立て始めました。その先に、輝かしい未来がると信じて。
ああ……待っててください!エイリークさん!!
バーソロミュー・ゼヌニム(24):淫魔。男。
雑に死んでギリギリ蘇った。死んでいる間に神に出会ってこの世界における魔力や力について感覚的な理解が進んだので研究が捗りそうだとご満悦。なお少し遅れたらそのまま神と同じ生物になって二度と蘇ることはなかった模様。とりあえずその場をしのげればいいやなスタンス。
恋愛のために七面倒臭い研究畑に飛び込んだ。いつかはエイリークと結婚したいと思っている。
リィロン(57):
トラウマの元凶と対峙した結果間違って友人を殺してしまいめちゃくちゃ動揺した。その友人を喪ったことでトラウマの元凶であるゼノヴィアが半狂乱になって泣き出したものだから一周回ってトラウマが消えたらしい。蘇生のごたごたの中でズタズタに出来たのも一助だろうが。これからは女性に対してもお付き合いできるようになっていく、かも。
夢追い人には優しい。あとかつての人生で親友ができたのにそいつを置いて死んでしまったことも気にしており、友達が出来たら大事にする。
ゼノヴィア・ゼヌニム(36):人間。女。
自分のせいで息子が死んだことでめちゃくちゃ後悔した。そのためバーソロミュー試作の魔力共有変調器をつかっての蘇生時には一番負荷が重い術式行使担当として命懸けで蘇生魔法を使った。自分も死にかけたが20年以上も死にかけながら犯され続けた経験から良くも悪くも死にそうな状況でも意識を保って行動することが可能であったことが勝因。その後残り少ない魔力で自分を回復して倒れた。
地味に自分勝手であり、贖罪がどうこう言うのも自分の精神が救われたいため。リィロンに言い募って逆にキレられたあたりやっぱり自分のことを優先しがちである。こういう場面では自覚が薄いから性質が悪い。
エラトステネスXLIV(176):
エイリーク・フレデリクソン(751):
実はこの世界で一番美しいと言えるのはこいつ。祝福が"誰からも気づいて貰える自分になる"というものなのだが、かつての人生で小人症を患いフリークショーに売られた経験から見た目に大きなコンプレックスを抱いていたエイリークは"誰からも気づいてもらえる"="並ぶ者なき素晴らしい姿"であると認識し、それを受け入れたことで比類なく絶世の美を獲得したのである。ソレはソレとして単純な物理サイズでも比類ない存在になったので誰も性愛の対象としてみてくれなくなったのだが。見た目がワイヤーで出来たランジェリーのみをまとってちんちんブラブラさせているのも大分マイナスというか、そのせいかオナネタとかシコネタとしては超絶一級品という認定を受けている。
バーソロミューが懸想している相手。エイリークがそれを知ればそれはもうキュンキュンするのだが、仮にバーソロミューの研究叶ってエイリークに合うサイズのチンポを得られたとしても本体の大きさは変わらないため、事実上精液の出る肉ディルドーみたいに扱うセックスになりそう。でもまあお互い幸せなら良いと思います。まる。