性奴隷と長身巨乳リョナグロ背徳性癖倒錯ふたなりが純愛に堕ちるまでの話 作:PP→KP
東海林の捜査に力を入れ始めて半月ほど。捜査本部は急報によって集められた人員によってざわついていた。
「あー、既に聞き及んでいる者も居るだろうが……三重野の息子、龍太くんが行方不明になった」
本部長の言葉にやはりその事か、と多くの班員は渋面を作る。
白昼堂々、しかし警戒する人員が減っていたこともあり生まれた死角を突いての犯行。
監視カメラには下手人と思しき人の姿が少しだけ写っていたものの、帽子にサングラスを着用していたことで個人の特定が困難だった。明確に分かっているのは複数の目撃証言や頭部が写ったカメラの視野角的に身長が160cm後半~170cm前半程度だろう、ということまでだ。
「身長的には東海林殺害の犯人の可能性は高い。ただ誘拐前後の目撃証言を洗ったが、どうやら結構着込んでいたらしくてな……。人通りが少なかったこともあって遠目の目撃情報ぐらいしか無いし性別もわかっておらん。一応周辺のカメラから怪しい車両をリストアップしてはいるが……」
誘拐された辺りは住宅区域と郊外の境目とでも言えそうな場所であった。昭和~平成初期の土地開発から更新されていないためか結構入り組んでおり、視界を遮るものも多い。
とはいっても警戒中の私服警官らがある程度は配置されていることもあり、本来なら早々誘拐の現場を見逃すようなことはない……そう思われていた中での犯行であった。
「くそ、三重野を狙うにしても子供は関係ないじゃないっすか」
「静かに、本部長に聞こえるぞ。……坊主憎けりゃ袈裟まで憎いという言葉もあるんだ、何を考えていてもおかしくはない」
じろ、と本部長の目線が向いたので軽く頭を下げて口をつぐむ。後輩は弟妹も多いと言っていたので、子供が狙われたという事実が許せないのだろう。
……実際に誘拐した私だって、子供は関係ないとは思っている。だが三重野を誘導するには使えるというのも事実だった。
三重野が余計なことをせず、一人で行方を晦ませてくれれば子供に何かする必要はない。そうでない場合は……その場合も、まあ、何をするかは決めているから問題はない。とにかく警察に情報が入ってくるかどうかで今後の動きを変える必要がある。
その後、捜査も虚しく有力な手がかりもないまま一週間経ったある日。状況に進展が見られたのか、捜査本部に再度招集がかけられた。
「前回の行方不明事件の件だが、新たな情報が入った。全員、これを見て欲しい」
「────っ!」
そう言って本部長が見せたものは、「お前の息子は預かった」「返してほしければ追って指示を出すからそれに従え」「息子が大切なら警察には伝えるな」という内容が簡素に書かれていた手紙。
新聞のスクラップのような前時代的なものではないが、昨今のあらゆる端末で作れるような簡素なゴシック体のそれは所謂、脅迫状であった。
「恐らく犯人は三重野を1人で呼び出すつもりだったんだろう。警察に届出ようかと思ったらしいが、もしバレたら息子さんの生命が危ない。文面を勘案した三重野が足がつき辛い手段として、職場の同僚を介して我々に提出してきたものだ」
本部長の言葉になるほど、と一人納得する。
三重野の周りでの張り込み捜査をしていた中で、当人が警察に接触していた様子は無かったし郵便を出す素振りもなかった。なのに何故ここに私が送った脅迫状があるのかと疑問に思っていたが……自分以外にやらせたわけだ。
詐欺を働いて信用を大きく損なわせた前科があり、勤務先でも針のむしろだっただろうに、それでも必死で頼み込んだのだろう。犯人にバレないように警察に伝えるために。
(……まあ、どのような形であれ。素直に指示に従うとは考えていなかったが)
三重野の誤算はただ1つ。当の犯人が捜査本部の捜査員として今この場にいるということを想定できていなかったということだろう。
「これで犯人、出し抜けてると良いですね」
「そうだな……少なくとも宛もなく手を拱いている状況を打破するきっかけにはなりそうだ。あとは犯人からの連絡次第だな」
後輩にはそう言いながら、私は三重野だけを呼び出す手段を考える……いや、呼び出す手段自体は考えてあるがそれを実行することで三重野が応じるかということで僅かに逡巡する。
……可能であれば次は警察に伝えるような事をしないで欲しい。そうすれば、今考えていることまでやらなくてもいいのだから──そんな、身勝手なことを思っていた。
「やだ、やだ!やめて、ごめんなさい!痛いのやだよ、やめてよぉ……!」
脅迫状が署に届いた日の夜。
「体調を崩しているという親元に寄ってから帰るようになるかも」ということを1ヶ月ほど前から職場に伝えていた私は、マンションのある都内から遠い、周囲に人の気配もないような僻地に来ていた。
今でも色褪せない記憶として残っている、廃墟のような、倉庫のような建物。
その一角にある農作物の選別などに用いたと思われる大きな木の作業台の上に、小学校低学年ぐらいの子供──三重野の息子が、おむつだけを履かされ、手足首を手錠で固定された状態で仰向けに寝かされていた。
私は無言だった。マスクに帽子にサングラス、大きく張り出した胸を押しつぶして性別を誤魔化すようにと分厚い黒いコートを着た姿は、その子にとっては恐怖の象徴だっただろう。
監禁してからこっち、ずっと作業台に縛り付けられていた少年。毎夜毎夜誘拐犯が食事を与え、おむつを変え、そして去っていく。一週間の間そんな生活を強いられ消耗していた子供は今、明らかに恐怖していた。
小さな左手が、今は革手袋に包まれた女としては大きい私の手によってこじ開けられている。中指の付け根には幅広の鑿が押し当てられ、ぷつりと皮が切れて赤い血が垂れていた。
「っごめんなさい、ごめんなさい!助けて、ぼくの指を切らないで……!」
泣きながら懇願され、サングラスの向こうで僅かに眉をひそめる。不快なのではなく、申し訳ないという思いからだ。
だが──ここまですれば、この子の父親もちゃんと指示に従うだろう。お前の行動は読めていて、指示に従わないからこうなったんだと見せしめに出来る。
だから躊躇わなかった。せめて見ていてあげたほうがいいかな、と視界の端に泣き顔を映しながら──持っていた金槌で、鑿の柄尻を勢いよく殴りつけて。周辺に民家の1つもない寂れた廃墟に、子供の絶叫が響き渡った。
週が開けた月曜日。脅迫状が届いた日から数えて4日が経過した。
警察に何も情報が来なければ、私の指定したとおりに本人が動いて──三重野を殺してから通報して。息子は保護されるだろう。
そうなれば良いな、と胃が痛むような感覚の中でぼんやりと思う。痛みに気絶した少年の悲痛な顔を思えば、この程度の心痛なんてあってないようなものだろうが。
だが残念というか当然というか、そうはならなかった。その日の午後、今みたいに捜査案件を抱えてなければ定時を迎えるだろう時刻。そんな嫌なタイミングで、捜査本部に新しい情報と──物証が届けられたのだ。
透明なケースに入れられたそれは、殆どの人間は見たことがあるものだった。白く細長い安価な紙の化粧箱に入れられて、三重野の職場に送られてきたというもの。──それは、年齢一桁程度の子供の中指だった。
「現在DNA鑑定に出していますが、前後の状況を考えればこの指が三重野 龍太くんの指である可能性が非常に高いと思われます。また同封されていたポータブルレコーダーには2件の音声データ……1つは合成音声ソフトによる犯人の指示、もう1つは指を切断される前後の子供の、その、悲鳴が記録されていました」
「……っ!」
「落ち着け、力みすぎるな」
強く握りしめる余りに拳から血を流した後輩を宥めながら、私は4日前にこの手で切断した中指を見つめた。
同封したレコーダーには監禁場所に誘導するまでの待機場所とその間の食事等の購入場所の指示、そして次警察に伝えたら子供を殺す旨のメッセージを入れていたのだが……それでも、その証拠品や指示機材がこの捜査本部にあるということは。
「えー、これら物品は三重野が品物を受け取って中身を確認した後に時間休を取って退勤した、その机上にあったものです。昨今の事件を知っていた同僚が不審に思い、警察に通報したことで発覚しました」
なるほど、前回を踏まえて三重野は誰にも依頼しなかったようだ。机に放置して、勝手に職場の人間が報告しただけだから伝えていないと主張したいのだろう。
(……こんな凶行を起こす人間が、そんな理由で納得するとでも考えていたのか?)
或いは、己と息子とで、どうしても自分を優先してしまったのだろうか。真相は三重野本人に聞かないと分からないが、どうせ聞く必要はない。
どうにもムカつきが止まらない。子供を見捨てかねない選択をした三重野に自分の親を幻視しているのか、それとも見捨てられそうな子にかつての自分を重ねているんだろうか。
本部では今後の流れについて、三重野の待機場所周辺を張り込み、異動したら尾行するという流れに決まった。つまり──三重野が自分から伝えたかどうかなんて関係なく、監禁場所に警察も来ることになることが確定したわけだ。
なら、私がやることは決まっていた。
長々と走らせた車を停める。古い廃墟の中、手錠に四肢を固定されてた子供が居る。
「ひっ……お、お姉さん?誰なの……?助けにきてくれたの……?」
近づいてきた私を見た最初の反応は恐怖。そしてすぐに困惑へと変わり、何時も己を見に来る人間とは違う女性の姿にほんの僅かな希望を見せる。
そう言えばこの子相手には変装した姿しか見せていなかった。無事に帰せたときに私が誰なのか知られないようにするための手段だったが──それも、もう不要なことだった。
「お姉さん、か。そんな年齢でもないかもな、もう」
答えにならないようなそんなどうでもいい言葉を吐き、その身体に何枚も重ねて掛けられていた毛布を剥がしていく。万一にも指紋が残らないように、ニトリルゴムの手袋をはめていた。
やがて全ての毛布を取り去ると、おむつ以外何も付けていない子供の裸体が露わになる。私はその身を覆う最後の服であるおむつに手を掛けた。
「……お姉さん?ねえ、何してるの……?やめて、恥ずかしいよぉ」
「そうは言うが、汚れたままだと嫌だろう」
おむつを取り去ったあと、尻や肌、性器としての機能をまだ持たない陰茎などを濡れティッシュを使って拭いていく。恥ずかしそうに身を捩っていたがお構いなしだ。
排泄物が出されたおむつと清拭に使ったティッシュをまとめてビニール袋に入れ口を縛り、更にそれをゴミ袋に入れる。
そうして、生まれたままの姿の少年の前で──私も同様に、手袋とソックス以外の服を脱いでいって裸になった。
ぽかん、と口を開けている子供に苦笑する。やや顔を赤くしているのは、既に異性をある程度意識してしまう年齢だからだろう。
「なんだ、こんな年増の裸が気になるのか?最近の子供はマセているな」
「いや、えっとね……お姉さん、赤ちゃん居るの?」
そう言われ、逆に私が驚きに目を丸くする。そういえば柘植を殺してからもう4ヶ月。流石に全裸になれば外から見てもでもわかるか、とぼんやりと思う。
1週間前、最後に後輩とセックスした時にはまだ「太り気味」と言い張れていた。だがそろそろ誤魔化すにも限界で、通販か何かで掻爬出来る機材を買おうか──という時に、昨日ようやく個人輸入した薬が届いたのだ。
だからそれを昨夜に飲んで──ああ、だから今日は妙に胎が痛かったんだな、と今更気づいた。
「……ああ、まあ、な」
言葉を濁す。居る、とは言えなかった。
気分が悪くなっていたということは薬効が出ていたということだろう。──だから、「ある」ということになっていてもおかしくはない。
不思議そうにしている三重野の息子を放置して、汚れないようにと畳んだ服をかつて監禁されていた作業員詰所に置く。
そこには以前使用した鑿や指を入れるのに使った化粧箱の予備などがおいてあり──その内の、最後に使う1つを手に取った。
「お姉さん、どこに……ねえ、なんでそんなの持ってるの?」
戻ってきた私を見て、恐怖に震えた声を出す。
多分、漸く気付いたのだろう。目の前に居る妊婦が、今まで自分を監禁していた人間だということに。手に持っている白刃が、己を害するということに。
これから──その「お姉さん」によって殺されるということに。
「……やだ、だめだよ、やめてよ!お姉さん、ぼく何もやってないよぉ!」
「ああ、君は何もやっていない。君は何も悪くない」
私は手に持っていた大振りの牛刀を、痩せた白い腹に当てる。
服を脱いでいるから、返り血は私の身体にしか付着しない。凶器や手袋等の証拠物品は隠蔽しやすく処分しやすいものだけだ。事が済めば、私がやったとは証明できないだろう。
……替えの服を用意して、血の付いた服は何処かで破棄しても良かったのだが。この後のことを考えると、いっそ全裸のほうがやりやすいかなと思ったのだ。
「許さなくて良い、存分に恨んでくれて良い」
「いやだぁ、助けてよお!やだやだ、やめて!やめてよ!」
恐怖に泣き喚き、いやいやと首を振る。チョロチョロと小便を漏らしている姿も、ただひたすらに痛々しい。必死に生きたいと訴える姿を見て、体の奥から痛みが走るような気がして──私はそれを、薬の副作用だろうと割り切った。
そして、私は白く傷のない子供特有の柔らかなお腹に──ぞぶり、と牛刀を突き立てる。瞬間、何処からそんな声が出るのかと言わんばかりの絶叫が耳に突き刺さった。
「痛い……助けて……寒いよ……」
「痛いか、そうだろうな。もうすぐ終わるから、それまで我慢していてくれ」
先程までは絶え間なく私の耳を刺してきた悲鳴も、今はぽつりぽつりと零されるだけになってしまっている。
その小さなつぶやきに対し、私は聞こえていないだろうとは思いつつも言葉を返す。何の意味もないことだが、死にゆく中で誰も何も答えてやらないよりは良いだろうという只の自己満足だ。
私の目線の先には、大きく切開され血の真紅に染まる子供の身体。その小さな体に詰め込まれた内蔵を屠殺場の家畜のように引きずり出して、牛刀で切り分けた後に大きめのバケツへと移していく。
最初は勢いよく私の肌を、顔を赤く濡らした出血の勢いも今は失われ、血溜まりの広がる速度も大きく減じている。
細菌の多い腸などの消化器を切除し終えたところで、私は代わりに詰め物をして腹を縫い合わせる。そして小さな体や作業台を汚した血を拭きあげた。
「よく我慢したな、終わったぞ」
返事は来ない。当たり前だ。肉を切り開かれて内蔵を切り出された人間がそんなに長く生きられるわけがない。口の端からはよだれと血が流れた跡が残っており、光を失った目端には涙が湛えられたままだ。
「……痛かったよな。もう、何もしないから。顔も綺麗に拭いておくよ」
言葉は返ってこない。私はほんの僅かな時間だけ瞑目し、血色の失われたその顔を拭いて、表情を整え、瞼を閉じてやった。
先程までの凶行が嘘のように静けさを取り戻した作業台には、見た目だけはきれいに整えられた1人の少年の身体。生きながらにして切り開かれ解剖されるという責め苦を受け、そして骸すらも弄ばれた小さな子供の遺体だけが残された。
「……っ、ぐっ……ああ、お前もよく我慢したな。待っていろ、今、出してあげるから……っんぅ、は、ぁっ……!」
三重野の息子を殺して骸を繕い終わった時、もう待てないとでも言うかのように私の陰門から赤い血が流れ出てきた。次の瞬間に、ぶるり、と胎が蠕動するような感覚と突き刺されたような鈍い痛みに呼吸が乱れる。三重野の子を生きたまま切り裂き解体する間も幾度となく私の体に走った、子宮が収縮する痛み。
先程まで、私は中身が漏れないようにと膣や胎に力を入れていた。性器に意識を裂きながら子供を解体するのは色々な意味で堪えたが──それでも、それ以上に避けたいものがあったからしょうがない。
──死んだ胎児を産み堕としながら、子供を生きたまま解体するのは。如何に私が極悪人であっても、あらゆる面で負担が大きすぎると理解していていたから。
力を抜いたことで、性交で受け入れるモノとは比較にならないような大きな塊が、子宮の収縮を受けて胎から押し出される。昨晩、開きやすくなるようにと道具で奥までいじっていた子宮口がこじ開けられ、そのまま膣を外に向かって突き進む。
快感はない。感じるのは内蔵を締め付けるような圧迫感ばかり。思わず、作業台に倒れ込む。
直立していた足を広げ、肘を曲げて上半身が直角になるように手をついた。咄嗟に手をついた場所が死体の胴を挟んで奥になってしまい、その死体の顔に近い大きさの乳房が縫い目も新しい薄い腹にのしりと重みをかけてしまう。
苦しげに喘ぎ、子供に覆いかぶさり、下半身をだらしなく大股に開き──まるで子供を死姦しているような、そんな光景の中。
陰門が広がる。ずるり、と柔らかい肉塊が血とともに顔を出して外気に触れる。
やがて、私が再度腹に力を込めて膣を収縮させたことで、堪えきれないかのようにその全身がまろび出てきて。
そのまま、30cmほど落下して──私の陰唇から伸びるへその緒によってバンジーのように僅かに跳ね、首吊り死体のように吊り下がった。
「はぁ、ふぅ……。もう少しだ、から……んっ」
圧迫感が無くなったことで、私は自分の股に指を入れてへその緒を引っ張る。その間も、両脚の間には15cmくらいの人型がブラブラと揺れていた。
ちぎれないように慎重に、残りのへその緒と胎盤を子宮から引っ張り出して──片手で持ち上げ、その姿をしっかりと記憶に残して。何でも無いかのように、切り出した内臓とは別のバケツへと入れた。
はあ、と息を吐く。全身が痛い。薬の副作用なのか、或いは内臓が剥がれ落ちた痛みによるものなのか。
私の股から飛び散った血を拭き取り、洗い、死体についた私の汗も拭き取った。
「はは、本当に……何をやってるんだろうな、私は」
ぽつり、と自嘲の言葉を吐く。
子供の腹の中身を引きずり出して惨殺しながら、胎の中に殺した子供を閉じ込めた。
子供の腹の中身を空にしたら、自分の胎も空にするために殺した子供を産み堕とした。
どうしてこんな悍ましい夜にしてしまったんだろう。何で私は、今日にも三重野の子を殺す可能性があると分かっていながら薬を飲んでいたんだろう。
子供の腹を裂いて殺すのだから、自分の胎の中身も引きずり出して共感しようとでもしたんだろうか。薬で痛みを味わうことで、他の痛みを無視しようとでも思ったんだろうか。
当時の私が何を思っていたのか、最早思い出せない。だが、わかることはある。
2人分の腹の中身がそれぞれ分けて入れられている、2つのバケツ。それは、今日2人の子供が殺人鬼によって殺されたことを意味していた。
1人は血の気の引いた、眠っているような顔。詰め物をされた腹に痛々しい縫い目を晒す、仇の血を引いているというだけの何もしていない無垢の子供。殺人鬼の手によって生きたまま腹を切り開かれ、激痛と苦悶の中で死んでいった。
そしてもう1人は、私と仇の血を引いているだけの、同じように何もしていない、無垢の子供。半透明で、柔らかくて、小さくて──そして、真っ赤な血に染まった姿で、殺人鬼の手によって生まれる前に殺されて、死んだままで世界に産まれ堕ちた。
本当に、これっぽっちも悪いことなんてしていない。ただ単純に、殺人鬼にとって邪魔だったからというだけで。私にとって使えるというだけで。それだけの理由で、
疲労した身体を5分ほど休ませた後、私は三重野の息子に服を着せていった。丁寧に着せ直したため、見た目はただ寝ている子供に見えるだろう。
その後、取り出した内臓が入った方のバケツを持ち上げ、外へ運び出す。私はまだ服を着ない。ゴム手袋、ソックス、そして男物の多少大きめの革靴だけを身に纏って野外を大股で歩いていく。この一帯には民家もなく明かりも無いため、全裸同然の格好であったとしても深夜であれば見咎められることもない。
やがて敷地内に流れている小川にたどり着くと、私は先程も使った牛刀を用いて内蔵を細かく切り刻んで肉片を少しずつ川へと流していった。恐らく最終的には鳥か何かの餌になるだろうし、ここまで細断すれば専門家でもなければ人の一部として認識すらできないだろう。
一緒に持ってきたもう1人も同じように細断しようとして──止めた。荼毘に付せるとしたら私だけなのだから、せめてちゃんとした場所に埋めてやろう。そんなことを考えてしまった。
……結局、子供の悲鳴を聞いても、自分の手で生きたまま内蔵を腑分けしても、川に沈む肉片を見ても──私が自分の胎内で育て、そして殺した15cmの生命だったものを産み堕としても。私は僅かにも涙を流すことはなく、手を止めることもなかった。
ただずっと、身体を突き刺すような痛みがあるだけ。心の痛みではないだろう、どうせ全部副作用の仕業だと考えることを放棄する。
三重野を殺す準備は整った。例え警察が来ようと、私が警察として参加しようと対応可能な状況にはなった。ここからどう進んでも、復讐を完遂することは可能だろうとは思う。あとは終わったらどうするかな、なんて考え始めたところで──。
「──終わってもないのに考えることじゃないな」
取らぬ狸の皮算用なんて馬鹿らしいと首を振り、現実逃避気味に苦笑する。
……ずっと、彼の為に、彼の復讐の為にに生きてきた私に。終わった後に何が残るんだろうか。彼がいない世界で、彼が蘇るわけでもないのに多くの罪を重ねて、何の意味があったんだろうか。
そんな疑問に蓋をして、私は生まれたままに近い姿のまま、廃墟へと戻っていった。
その日は非常に慌ただしかった。
早朝に三重野宛に公衆電話からの指示があり、ここ数日車中で寝泊まりしていた三重野が車を走らせたのだ。
当然ながら三重野は警察が待機していることを知らない(予想できているかも知れないが)ため、何も言わずに出発したこととなり慌てて招集がかかったのだ。
「それで、三重野はどちらに向かっているんだ?」
「はい、ええと……指定された土地とはここを挟んで真逆の郊外の方──その、件の誘拐事件の……」
実家に泊まっていたために招集ギリギリのタイミングで到着した私が手早く防刃ベスト等を着用しながら後輩に確認すれば、答えの途中で気まずそうに口を閉ざす。
「気にしなくていい。今回の事件の犯人像を考えればそっち方面に拠点を持ってても不思議じゃない」
「っすか、んじゃ──件の誘拐事件が起きた家の方に向かってるらしいっす。ただあの家は県警に張ってもらってたけど、誰も近寄っちゃいないって話だったもので……」
そうか、と小さく息を吐く。もちろん私もその情報は知ってたし、だからこそ今回の最後の舞台に選ぶつもりは微塵もなかった。
いや、仮に県警が張ってなかったとしてもそこを選ぶことはなかっただろう。彼の家で暮らした思い出は何よりも大切で、だからこそ人の血で染めたくはなかった。それならまだ両親を追い出して自分の実家で事件を起こすほうがマシだ。
「まあともかく了解した。他に目星がつきそうな場所はないのか?」
「今のところは特に……。先輩に言うのはアレですけど……20年前の事件、被害者が助かったこと、犯人が粛々と罪を受け入れたこと、そんで身代金の支払いも起きなかったこととかもあってあまり深掘りした調査がされなかったみたいなんです」
根掘り葉掘り聞いて言行の矛盾から犯行内容や罪の有無を把握する、というよくある取り調べをするまでもなく犯人がおおよその所業を自供したということで、却って事件の詳細な流れの記録が今は残っていないということらしかった。まあ20年も前の事件である以上しょうがない話だが。
……時計を見る。時刻的には電話が入ってから30分といったところか。三重野が最初に指定した場所から多少飛ばして向かったとしても、署から目標地点までまっすぐ向かえば同じくらいの時刻で到着することは可能だろう。
「……一応、もしかしたらという場所はある。可能性の話になるが」
「本当っすか!?だったらその、本部長とかに話したほうが良くないですか?」
「ああ、行ってくるから少し待っててくれ」
心当たりがあるという私に驚き、次いで安堵するように笑う後輩。
そんな同僚に頷きを返し、私は本部長の元へ向かった。
「──古い工場だか作業場みたいな郊外の廃墟、か。監禁されていた家からの大体の方向も分かるとは驚いたぞ」
「無駄に記憶力だけは良かったんですよ、その時から。……まさかこんな時に思い出すことになるとは思いませんでしたけれども」
敢えてやれやれとでも言いたげな軽い感じに首を振る私の姿に、本部長は何処か痛ましいものを見る目を向けてくる。
「そうか……。だがしかし、三重野が向かっている方角的にも大体あっていそうではあるな。候補の1つとして人員をある程度先回りさせるか……お前達のほうが距離的にも近い、行ってくれるか?」
「了解」
優しさと言うか気遣いを僅かに滲ませたような声音に気付かないふりをして、即座に答えて踵を返す。
そのまま私は後輩のもとに戻り、同じパトカーに乗って現場候補の1つ──私が最初に監禁され、今は子供の死体が残されているだろう廃墟へと向かうことにした。
「……三重野は、まだ来ていないか」
「みたいですね。一応待機ってことにはなってますけど……先に中を見たりしたほうが良くないっすか?」
「警察に話をしていない体で三重野は対処している状況だからな。我々が姿を見せたことで人質を殺される可能性もなくはない以上、やるならせめて三重野と同時のほうが良いだろう」
本当は三重野が入ることも止めさせたいところだがな、なんて嘯く。
道や場所を明確に知っている私が乗っているこの車両が最初に到着するだろうから、件の廃墟の窓や戸と視界が通っていない地点にパトカーを止めて待機。現在確認できる限りでは三重野は同じ場所に向かっているということだったので、到着し次第合流、突入して欲しい。それが捜査本部からの指示だった。
本当はたった2人でこんなことやるべきじゃないし、被害者も同時に踏み込まなければならないなんてやり方は下策だろうとは思うのだが……私にとっては非常に都合が良かった。
「……三重野、来ましたね」
私達が到着して1分ほど待ったところで、三重野の車が到着した。草木に擦れることを厭わないような乱暴な運転で車を停めると、ドアを開けてすぐに走るように廃墟へと向かっていく。
「私達も行くぞ」
「……うっす」
三重野が先行した段階で一応警察の姿は見えていない、という状況ではある。あとは三重野が入る直前に合流し、一気呵成に突入すればおいそれと手出しはできない……という判断のもとに決められた作戦。
もっと三重野の到着が遅ければ多くの人員が加われたのだろうが、三重野自身なりふり構わずにここまで運転していること、警察が三重野の動向に気づいていることを悟られないようにすることを重視したことから多少距離を離していたこともあり、後続が追いつくにはあと1~2分は掛かるだろう。その間に殺される可能性は十分にあった。
「三重野さん!」
「ひっ……あ、ああ、警察ですか……。あの、息子が中にいるかも知れないんです!」
「分かっています、一緒に行きましょう。ただし離れないようにお願いしますよ」
入り口で合流した我々は、そのまま老朽化した廃墟へと踏み入った。
薄暗い施設は大型の農機を入れられるような広さがあるものの、今はそういったものは置かれておらずガランとしてる。そしてその奥の方には作業台が置かれており──1人の少年が寝かされていた。
「────っ!」
「あっ、三重野さん!っくそ、周りから誰か来ないか見ていろ!」
「先輩!?」
矢も盾もたまらずという勢いで走り出した三重野に虚を突かれたというように僅かに逡巡したふりをして、その後を走って追う。
その際に後輩には待機の指示を出すことを忘れない。万が一にも巻き込まれたら大事だからだ。
「あ、あ、あああ……嘘だ、嘘だ、そんな……っ!」
「三重野さん、っ、これは……!」
何が「これは」なんだろうか、自分でやったことだろうにと己の白々しさに呆れてしまう。
三重野が己の息子に縋りついている。息子「だったもの」に縋りついて泣いている。遠目には生きているか死んでいるか分からなかったからこそ希望を持てたのだろうが、傍に寄って血色の失われた死臭のする息子を見て死んでしまっていたと気づいてしまったのだろう。
「……三重野さん、一旦離れましょう。ここに呼んだということは犯人が……」
「いやだ、この子を、この子を──っ」
敢えて後輩にも聞こえるぐらいの声で話す。人質が手遅れだったことを伝えるために、そして──これから起こることを、万が一にも疑われないように。
後ろの方からざわつく声が聞こえてくる。恐らく三重野を直に追跡していた応援が到着したのだろう。十分だ、これで「目撃者」が大勢できる。
私が後輩の位置から見えないように、服の中に隠し持っていたスイッチを押して──その瞬間。ドォン、という轟音が響いた。
小さな体が一瞬で膨れ上がり、耐えきれずに破裂した。焼け焦げた血肉が辺りに飛び散り、人体が焼ける嫌な匂いがガソリン臭とともに満ちていく。
内からこじ開けられた身体から吹き上がった爆炎は、息子に縋るようにしがみついていた三重野を言葉を発する暇すら与えず焼き焦がし、そのまま三重野の後ろにいた私すらも焼き尽くさんとばかりに迫ってきた。
「ぐ、あっ……!」
来るタイミングは分かりきっていたののでとっさに身を引いたが、それでも爆風によって大きく身体が仰け反らされる。身を庇うように構えた左腕と上半身の一部を焼かれながら、それでも無理やり体を動かし三重野を引っ張り出そうとする……ふりをして、隠し持っていたスイッチを炎上する子供の腹に押し込む。
そのまま燃える三重野の肩をつかもうとしたところで──後ろから来た後輩や同僚によって外へと引っ張り出された。
「先輩!先輩っ!」
「わ、私はともかく、三重野、さんを──」
爆風にふっとばされたことと左腕の火傷が酷く、どうにか保とうとした意識が朦朧としていく。
消えかけた意識の中、息子共々荼毘に付されていく三重野が最後に目に映り──漸く全てが終わったのだと実感し、残った意識を手放した。
私(30):人間。女性。人間の屑。袈裟を憎むことはないが袈裟を破いて撚ってロープにして坊主の首を絞めることが出来る。子供を殺して平常に振る舞えるし内心で反省や後悔をしていても憎からぬ後輩との慰めックスで自分も慰められる人間の屑。仇をこき下ろすような発言が多いが多分こいつにだけは言われたくない。自己堕胎は罪に問われるのでどれほど嫌な理由であってもちゃんと産婦人科に相談したほうが賢明。
後輩(26):人間。男性。人間の鑑。長男で弟や妹が合わせて3人いる。子供好きで、子供を巻き込んで殺すような人間は碌な奴がいないと断言する。だいたい正しい。
三重野 龍太(享年7):人間。男性。犠牲者その4。三重野の息子。柘植の娘共々マジで何もしてないのに巻き込まれた純然たる被害者。将来の夢は飛行機のパイロットだった。夫と息子を一気に奪われた三重野の妻が非常に可哀想。やっぱ主人公は死んだほうが良いって。
-(享年-6ヶ月):人間。女性。犠牲者その5。主人公と柘植の間に出来た娘。死亡時刻的にはこの子がその4だとは思うが、外に出るまでは胎児は死体として扱われないので死者としては5人目。母が女優もかくやと言わんばかりの美女だったので将来性はバッチリだったが残念ながら産まれることは出来なかった。
三重野 俊仁(享年40):人間。男性。犠牲者その6。臆病で、かつての職場で詐欺の片棒を担がされた。家族を脅されて仕方なかった面はあったのだが、万が一を恐れる余りに必要以上に加担してしまうちょっと過敏なタイプの人間。「彼」を殺した時は柘植にパシられていた部分はあるが、これ以上暴力に晒されるのは可哀想だと思って庇うように抑え込んだら身体の使い方を知らなかったせいでやり過ぎてしまった。そのせいで息子共々殺される羽目になった。