「今日は何も痛いことをするわけじゃないから安心してね」
牢屋を出た私に、開口一番サディちゃんが言ったのは……そんな一言。
それが逆に、私に……余計にというか、ひどく嫌な予感をよぎらせた。
これまでの拷問で散々目にして知ってるけど、サディちゃんは私に……というか、囚人に痛みや苦しみを与え、それによって歪む表情を見たり、悲鳴を聞いたりするのが大好きだ。
だからこそこの『獄卒長』の職業が、天職と言っていいほど向いていて……彼女自身、毎度すごく楽しそうに拷問を行っている。
そんな彼女が、『痛いことはしない』なんて……普通に考えれば、ひどくテンションが下がりそうなもんなのに。
いやむしろ、自分で直接やろうとせず……部下の獄卒に任せるとかしたっておかしくない。
実際、私への拷問だって、最初の1回こそ自分で必ずやる――前情報がまだゼロの状態だから、一番新鮮な悲鳴が聞ける――けど、それ以降は結構獄卒に任せてるし。
彼女も『獄卒長』っていう役職持ちだからな、暇じゃないんだろう。
……その予定を調整してでもわざわざ初回だけでも自分で痛めつけに来るくらい、私は気に入られてるわけか…………嬉しくないな。
しかしそれなら、今回はなぜその『痛くない』拷問に、こんなうきうきした様子で同行しているのか……悪い予感しかしない。
『痛くない』というのが嘘なのか……それとも……
……『痛み』はなくても『悲鳴』はあがるのか……あるいは、『悲鳴』すらなくても彼女が興奮するほどの何かが起こるのか……
結論から言えば、後者だった。……人によっては前者もあるかもしれないが。
「うぅっ……畜生、見るんじゃねえよっ……!」
「うぅっ……もういやあ……見ないで、見ないで……っ!」
「……ふんっ……!」
(うわあ……ひどい光景)
拷問場所に連れていかれた私が目にしたのは……何人もの、全裸の女囚達。
彼女達は一様に、拘束されて動けない、体を隠せもしない状態で、そこにずっと立たされて、あるいは吊るすなり何なりして固定されている。
そして、
「ぎゃははははあ! いい眺めだなあ!」
「こんな役得があるなんて知らなかったぜ、海底監獄も捨てたもんじゃねえな!」
「おらもうちょっと顔上げてよく見せろよー! いいだろ、あそこは丸出しなんだからよ!」
あちこちから飛んでくる……男性囚人達の声。
裸体をさらしている女性囚人達の体を眺めて……これでもかってくらいに大はしゃぎ。
鼻息を荒くして下品なヤジをどんどん飛ばし、ズボンの前を膨らませている。
まあ、こんな監獄生活で女っ気が全然ないところに、こんなご褒美でしかないものをぶら下げられれば……そりゃ大盛り上がりになるだろうな。
そしてそれも、『女囚達に対しての』拷問の一環で……獄卒達の計画通りなわけだ。
今日の拷問は……『さらし者』。
説明することはあんまり多くない。ほぼほぼ言葉通りで、今見たまんまだからだ。
やることは簡単。
服を全てはぎとられて、人通りの多い、よく見える場所に拘束されて……そのまま放置される。
それだけだが……生まれたままの体を隠すこともできず、看守や獄卒、さらには他の囚人達――そのほとんどは男性である――の視線にさらされ続ける。
上から下まで、全部見られる。下品なヤジも飛んでくる。
しかも、この拷問が執行されている時……そういうヤジその他の下品な行為に対して、看守や獄卒は、ほとんど注意も何もしないようだ。好きなように言って、思う存分女囚達を辱めろ……ということなんだろう。
苦痛ほぼ0割、恥辱10割って感じ。尊厳も何もない、心に食い込んで傷ができる拷問だ。
拘束の仕方も様々あるみたい。鞭打ちの時みたいに腕を引っ張り上げられて宙吊りだったり、足を開く形で緊縛されたり、後ろ手に手錠をかけられて棒に括りつけられたり……。
私達が到着する前にそうなっていた女囚達は、実に様々な姿勢で拘束されていた。
共通しているのは、恥ずかしい所が全部丸見えだってこと。
そして、それらを隠すことが一切できないようになっていること。
手も足も何らかの形で拘束されてるから、どこか一部分だけでも隠すとか覆うってことができない。太股を寄せてオマンコやお尻をどうにかかばう……みたいなことさえ無理だ。
視線にさらされ、ヤジにさらされ、必死で耐えながらも……ほどんとは震えていたり、涙を流している者もいる光景を前に……私もさすがにちょっとたじろいでしまった。
「おっ、また次の女が来たんじゃねえか?」
「ほんとかよ……おっほぉ! こりゃまた別嬪だなおい! へへ……いいもんが見れそうだぜ!」
「おら獄卒共ォ! さっさと剥けー! 脱がせー! 見せろー!」
……脱ぐ前からこれだもの。
囚人に急かされて、じゃないだろうけど……そのとおりに獄卒達が、私の囚人服に手をかけて、さっさと奪い取り……全裸にしてしまう。
歓声がより大きくなる中……私は、今もうすでに『さらし者』にされている子達を見る。
両腕を上に吊り上げられ、両足を床に少し開いて固定され……胸もお尻もオマンコも丸出しで、涙を浮かべて目をつぶって耐えている女囚。
跳び箱みたいな台の上に仰向けに乗せられ、腕を頭の後ろで固定され、両足を吊り上げつつ左右に大きく開いた状態……M字開脚にされている女囚。顔を赤くして男性囚人達を睨み返している。
両腕を後ろ手に固定されたうえで、片足を大きく吊り上げられ……バレリーナみたいなポーズで、お尻もオマンコも丸見えにされ、泣いている女囚。
中腰の状態で大きく足を左右に開き、ちょっと下品なガニ股状態で固定されている女囚。……縄で吊り下げられてるから、恥ずかしいだけじゃなくて……少し痛そうだ。目を閉じて平静を装ってるが、口元や目元がひくひく動いてる。やっぱり恥ずかしいらしい。
どれもこれもひどいポーズだけど……果たして私はどんな形にされるのか。
「さ……スゥちゃんも彼女達の仲間入りをしましょう。こちらにいらっしゃい」
サディちゃんに促され、私が立たされるらしい場所に行くと……そこには、結構大きな何かの器具が置いてあった。
見た目だけだと、いまいち何に使うものなのかピンとこない。いやまあ、間違いなくこの『さらし者』に使うものではあるんだろうけど……具体的にどうするのかはわからない。
態度には出さずに首をひねっていた私に、サディちゃんは指示を出す。
その通りに私は、背筋をピンと伸ばし……少しだけ両腕を上にあげた。ばんざいまではいかなくて……『手を上げろ』って言われてあげるくらいの位置……かな?
その状態の……この時点で全て丸出しの上隠せない私の前で、サディちゃんが部下から受け取って見せてきたのは……長方形の、大きな木の板……?
しかも何だか不思議な形してる。一直線に並んだ丸い穴が3つ開いてて……真ん中の穴が、左右の穴より少し大きい。
サディちゃんはそれをさらに、ぱかっと割って上下2つに分けて……ってまさかこれって……!?
「動いちゃだめよ……よし、ぴったりね!」
―――ガチャン! カチッ!
その板の3つの穴に、ちょうど私の首と両手首が来るようにセットし……2つを1つに戻した。
そして、再び板が外れないように、金具でロックする。
結果、私は……1枚の板に空いた穴に、首と手首を並べて拘束された形になって……
(……こ、これ……ギロチン!?)
中世ヨーロッパとかで使用されていた処刑器具の名前が、私の頭の中をよぎる。
丁度あれも、こんな感じで首を、あるいは両手首も含めて、一枚の板で拘束するやり方だったっけ……それと同じだ。
この拘束の仕方自体も、たしか『ギロチン拘束』なんて名前がついてたような気が……
首の隣で両手首を固定されて動かせないから、手錠なんかより全然自由が効かない。
滅茶苦茶動きづらいし、体を隠せるはずもない。
戸惑っている私を引っ張っていって、サディちゃんは謎の器具の前に前かがみにさせ……私を拘束している板を、そこに上からスライドさせて、がちゃん、と固定した。
その状態で動けなくなった私を改めて見ると……まさしくギロチンにかけられているみたいな恰好で動けなくされている。
少し遅れて、両足首にも足環がはめられて、2つ離れた位置で動けなくされた。
姿勢そのものが中腰に近いせいで……どう頑張ってもガニ股になってしまう。
出来上がった私の姿は……ギロチン状態で上半身を全く動かせなくなり、
乳房が下に向けて丸出しで垂らされてぶるぶると揺れ、
お尻とオマンコが後ろに突き出されて丸見えになり、足を閉じることもできない。
器具自体が細め、小さめに作られてるせいで、前、横、後ろ……どこから見ても死角がほとんどないという状態になって……私の『さらし者』の姿勢が完成した。
男性囚人達の興奮も最高潮になり。前後左右……特に後ろの方から大きな声が上がる。
「うほぉぉお、すげー! なんてエロい姿だ!」
「見ろよあのオッパイ。まるで牛だぜ……ぶるんぶるん揺れてやがる。ああ、むしゃぶりつきてえなあ!」
「いい眺めだなおい! ケツの穴もマンコもよく見えるぜ!」
「おいおい何だよこっちに向けてそんな見せつけて来てよお! ぷるぷる尻も震えてるし、誘ってんのか!?」
「あー畜生、ちんこぶち込んでぶちまけてやりてえなあ! 看守! 獄卒おい! これで見てるだけはねーだろうがよ!」
「そうだそうだ、犯らせろォ! この子も物欲しそうにしてんだろォ!?」
……本当に、好き放題言ってくるな……これは、確かに痛みとかはほとんどないけど……心にくる拷問かもしれない。
尊厳も何も一切ない。全部を否定されてさらされて……欲望まみれの視線にさらされる。
屈辱に耐えきれずに泣いても、気丈に睨み返そうとしても、目をそらしたり目をつぶっても……何とでも解釈されて受け取られて喜ばれる。
しかも、このまま見られ続けるだけでもきついのに……何かサービス精神でも出してくれたのか……サディちゃんが私の隣に歩いてやってきた。
そして、体を前後左右に揺さぶって、垂らされてるおっぱいをぶるぶるゆらしたり、
お尻を左右に開いて穴がはっきり見えるようにしたり、つんつん、と穴を指でつついたり、
オマンコの穴を左右に開いて、中のピンク色の肉壁まで見えるようにしたりして……より一層恥ずかしい目にあわされた。
当然ながら周りは大盛況。
一体どれだけ多くの囚人達の目に、私の恥態は焼きつけられたんだろうか。
……けど同時に、それ以上に恐ろしい、あることにも気づいてしまう。
確かに今、この状態は死ぬほど恥ずかしい。
この状態がさらに、今日の拷問時間いっぱい……3時間も続くことを考えるともっと恥ずかしい。
ここは通路のちょっと開けただけの部分で、囚人はもちろん、看守も獄卒も普通に通る場所なので、終わりまでにどれだけの人に見られるんだろうと考えると……顔から火が出そうだ。
けど……裏を返せば……それだけなのだ。
この『さらし者』は……文字通り、裸で晒されるだけ。それ以上のことは、何もされない。
サディちゃんや、その部下である獄卒達によって、恥辱を割り増しにするような、乳房を揺らすのとか、お尻を広げて見せるのとか、そういうの以外は……ない。
恥ずかしい『だけ』の拷問だから……それに耐えていればそれまでなのである。
極端な話、『見られても全然何も気にならない』というような人であれば……気にしなければそれまで。苦痛に感じることはなく、面倒でうるさいだけの時間としてすごせてしまう。
こんな時代だし、女囚の中にはそんな人もいるだろう。
……しかし、もしこれが今以上に『酷く』なるとしたら……?
『見られるだけ』じゃすまなくなるとしたら……?
ふと、騒いでいる男性囚人達に目が行く。
一人残らず……ズボンの前が変形してテントを張り、その下にあるモノが、その存在を実に雄弁にアピールしていた。『使え! 使え!』とでもいうように。
ごくり、と喉を鳴らして顔を青くした私。
それを見て、どうやらサディちゃんは……私が何を考えているのかわかったらしい。
「大丈夫よ、スゥちゃん。怖がらなくても……
……『今日は』。
今明らかに、そこを強調して言った。
それはつまり……今日じゃないいつかの日に、あれらの『モノ』の出番が来るかもしれない、っていう……
「署長達は、そうなる前に賢い返事を期待する、って言ってるわ。でも私は、このままスゥちゃんが強情を張り続けてくれてもぜーんぜんOKよ! 安心して、その時は私が、責任もってん~~~~!! スゥちゃんを最高の『さらし者』にしてあ・げ・る♪」
3時間もの間、私の尊厳がずたずたになるまで放置された1日だった。
しかし同時に、それ以上の屈辱と絶望の日がいつか来るのだ、ということを嫌でも思い知らされ……そっちの『いつか』への恐怖が心の中に焼き付いてしまった日でもあった。