夏休みの思い出~田舎で いとこ とエッチするはなし~ 作:霧里
夏休みも真ん中。
丁度お盆の頃には、毎年親戚の家に行く事になっていた。
旅行だって言えば聞こえは良いが、結構な田舎に連れて行かれるのは、ほぼほぼ監禁されに行くようなもので、小さい時分には楽しめていた事も、今となっては退屈のほうが勝る。
見覚えはあるが馴染みのない家の玄関を上がり、居間に抜けると、彼女は退屈そうに卓袱台で頬杖をついていた。
「あ、和樹。元気だった?」
回る扇風機。チリンとなる風鈴の音。
袖の無いシャツに短パンと、いかにもラフな格好をした彼女は、パタパタと泳がせていた足を止めて、俺の方を見上げてくる。
「まぁまぁ。唯は?」
「んー。ふつーかなぁ」
唯。従姉の女の子で、一年に一度会う程度の関係は、正直なんて言って良いのか分からない。変に仲良くもし辛いし、かと言って、邪険にするのもまた違う。
何よりも、思春期故の違和感か。年の近い異性との付き合い方が、今の俺には良く分からなくなっていた。
「食べる?」
しゃくり…。
俺の目の前でアイスの先端齧った唯は、何の気なしに、欠けた先端を俺の方へと差し出してきた。
正直、目のやり場に困る。
差し出されたアイスもそうだけれど。胸元に、腋に、お腹に、太ももに。
扇風機の風は、ただでさえ薄い衣服を悪戯に揺らし、見えちゃいけない所までが見えそうになってしまっていた。
「食べるって、それ唯の食べかけじゃん」
「?」
間接キス。学校でそんな事しようものなら、絶対にからかわれそうな事なのに。けれど、唯は少し首を傾げた後、一つ遅れて「あぁ」と、声を漏らしただけだった。
「気にする方だっけ?」
合点がいったと、差し出したアイスを引っ込めて、再びしゃくりと齧り付く。
そんな唯の姿を、いつの間にか目で追っていた。
親戚の女の子が眼の前でアイスを食べているだけなのに、どうにもそれが気にかかる。間接キスだなんて、一人で盛り上がってしまったのもそのせいだ。
仮にもし、唯が実の妹だとか姉だったりしたら、こんな風にもどかしい思いをすることもなかっただろうに。
従姉だって言ったって、一年に一回会う程度なんかじゃ実感も湧かず、俺にとっては ほぼほぼ他所の家の女の子と変わらない。
「ぁ…」
唯が声を漏らすと同時に、溶けたアイスの雫が、ぽたりと彼女の胸元に落ちていった。それは、つぅっと肌の上を滑り、服の影へと流れていって、だからどうしたって、それだけの事なのに。
「ん…和樹も行くでしょ? がっこのプール」
「へ? あぁ…ゴメン、待たせてた?」
「少しだけ。そろそろ来るかなって」
一分か、一秒か。どれくらい見惚れてたのか。
気づけば、アイスを食べ終えていた唯は立ち上がると、ぐっと体を伸ばしていた。
だから、それ…。
唯が動けば動いた分だけ、チラリと肌色が目に入る。
腕を伸ばせば腋が見え、反った背中に引っ張られたシャツの隙間から見える可愛らしいおへそ。
そして何よりも、その日焼け跡が目に毒だった。
胸元に、脇の下、お腹に、太ももに、背中にまで広がった日焼けの跡。それはちょうど、唯の水着姿を想像させるには十分なもので、見ているだけでイラ立ちにも近い感情が湧いてくる。
自分でだって、訳が分からない。
気にしすぎている俺が悪いのか。そんな事言ったって、見えてるんだから、見えそうなんだから、どうしたって、ダメだって思っていても、視線が動いてしまう、それが何だか腹立たしい。
「和樹? もしかして水着忘れたの?」
「あるよ。プールでも行かなきゃ、やること無いじゃんココ」
「だよね、分かる。じゃ、早くいこ?」
やっぱり、イライラする。
そんな無防備な格好をしておきながら、まるで気にもしてない唯の事が恨めしい。
八つ当たりか。分かっていても わだかまった感情を解すのには随分と難儀をさせられてしまった。
ーーーー
まぁ確かに。楽しみなんてプール位のもんだろう。
自然があると言えば聞こえは良いが、整備されてない森の中なんて、都会の公園ほど無邪気に遊べる訳がない。
おまけに、強すぎる夏の日差しは、田舎といえど容赦がなかった。
結果、プール開きの日には、付近の子供達が集まるし、大人たちからすれば都合の良い託児所代わりになる。担当の教員にはまあ、ご愁傷さまといった所だろうが。
しかしだ。田舎ゆえの緩さ、なんだろうか。水着に着替え終わった俺が見た光景は、何とも刺激的だった。男子も、女子も、一緒くた。区画すら別れてない。
ドギマギする。
去年も同じ様に遊んだ場所なのに、今になってどうして恥ずかしいと思うのか。
「ね、入んないの?」
「え、あ…」
プールサイドで突っ立っていると、背中をちょんっと突かれた。
なんでも無いはずだった。去年と同じ、そう代わり映えがするもんじゃない。
突かれて、振り返って、そこには不思議そうな顔をした唯が立っていて。その水着姿に俺は固まってしまっていた。
少し、髪が伸びたせいだろうか?
短かった黒髪は、肩に届くまでになっていた。
以前は俺とそんな変わらない程度だったのに。身長はちょっとだけ低く見えて、体付きはちょっとだけ丸くみえた。
当然太ってるとかじゃない。
女の子特有の、胸だとか、お尻だとか、肩幅だってそう。手も、足も、全然細いのに、どこを触っても柔らかそうで、触りたいと、一瞬でも湧いてしまった邪な感情を慌てて振り払おうとしても、一年ぶりにみた唯の水着姿は、まぶたの裏に焼き付いたみたいに離れてくれなかった。
ピタリと、肌に重なるスクール水着。浮き彫りにされた体の線。
去年の記憶の中に残る印象よりも、少しだけ女の子らしくなった唯の姿。
ズレた水着を直そうと、肌と水着の隙間に細い指が入り込む。紺色の生地が指の形に浮き上がり、引っ張られて、ぱつっと、弾けた途端に俺の心臓が強く波を打った。
その仕草に目が奪われると同時に、水着の中が急に窮屈に感じ始める。
慌てた俺は、唯に促される振りをしながら、プールに飛び込むしかなかった。
水の冷たさに、少しは頭も冷えたんだろうか?
プールに入って体を動かし、男子連中に混じって遊んでいる内に、だんだんと唯の事も気にならなくなってくる。
「おい和樹。お前って結局、唯のことどう思ってんだよ?」
「どうって。いとこだぞ? 何を思えって」
話しかけてきたのは、去年も一緒につるんでいた男子の一人だった。
「いや、だって。唯って結構可愛いじゃん? 一緒の家に泊まってたら変な気も起きるんじゃないかってな」
「なんだよ。お前、唯のこと好きなのか?」
「いや、まあ可愛いとは思うけど。玉砕した連中も多いって話だし、中々なぁ。和樹が好きだって言うなら、諦めも付いたんだけど」
「俺を言い訳にするんじゃない、へたれめ」
一緒にプールで遊んだ仲。なのかは分からないが、一年ぶりという時間を感じさせず馬鹿な話が出来るのは、男同士故の気楽さだったのか。
けれどやっぱり、一年という時間は確かに俺達を変えていた。
馬鹿な話といっても、去年まではこんな話ししなかったのに。
女の子が気になる。いや、異性のことが気になるのか。
ついと、感じた視線に顔を向けると、女子たちの黄色い声が聞こえてくる。
まあ、都会から来ているってだけで物珍しさはあるんだろう。
見世物にされてるみたいで、あまり良い気はしないんだけど。そんなのを羨ましがる男子連中からしたら、贅沢な悩みなんだろうとは思う。
「羨ましい奴め」
「別に、そんなんじゃないって。面白がってるだけだよアレは」
「それでもだ。でも、唯じゃないってなら、どうなんだ? あの中だったら、誰が良いんだ?」
「しつこいなぁ、もう…」
流石に面倒くさい。辟易とさせられる。
女子からも男子からも持て囃されて。拒絶されるより良いとはいえ、慣れない距離感に居心地の悪さは拭えない。
それに拍車を掛けたのが、唯の存在だった。
逃げるように男子連中から離れた先で、ついと彼女の姿を見つけてしまう。
視線が重なり、何を思ったのか、俺に気づいた唯が小さく手を振ってきた。
これ以上、からかわれたくはない。
反射的に振り返そうとした手が止まり、遅れて顔が熱くなっているのに気づく。
何より。からかわれる事以上に、恥ずかしいと思ってしまった自分に気づくと、堪らず唯から顔をそらしてしまっていた。
きゃっ♪ と、聞こえる黄色い声。
目ざとい女子連中に絡まれた唯が、何を聞かれているのかは大体の想像がついた。結局、居心地の悪さに耐えかねた俺は、不満そうな唯の視線に気づきながらも、逃げるようにプールサイドに上がってしまっていた。