夏休みの思い出~田舎で いとこ とエッチするはなし~ 作:霧里
正月が明けた後、受験に、卒業にと、一気に忙しさがやってきた。
あれよあれよと、流されている内に気づけば入学式。これが終わればようやく落ち着けるかといえばそうでもなく。新しいクラスに馴染めるかどうか、最初の1ヶ月が勝負になると、本当に落ち着けるのはゴールデンウィークも過ぎた頃だろう。
今頃は、唯も新しい制服に身を包んでいるんだろうか?
少しだけ、大人になった彼女の姿を想像すると、胸がドキドキとしてしまう。
『見せて欲しい』と、当然送ったメッセージはだけど『入学式まで待って』と、お預けを食らってしまった。
ちょうど、今日がその日になるんだけど。
正直、これから始まる学校生活よりも、唯の制服姿のほうが気になって仕方がない。彼女に付き合う形で続けていた夜のおしゃべりの時間が、いつも以上に待ち遠しかった。
「それじゃ、行ってきます」
新しい制服に袖を通し、荷物を確認して部屋を出る。
「母さんたちも後から行くからね」
「良いって、別に」
「アンタは良くてもね?」
「なんの話?」
「別に?」
なんかはぐらかされてしまったような気になりつつも、おしゃべりに付き合うような暇もない。時間に押されるように家をでて、いつもとは違う方に足を向けた時だった。
「おはよ、和樹」
耳馴染んだ声に足が止まる。こんな所にいる訳がないと、ただの聞き間違いだと自分に言い聞かせながらも、今一番聞きたいその声を間違えるなんて有り得なかった。
「は? ゆい…なん、で?」
「なんでって? 見てわかんない? ほらっ♪」
振り返ったそこには確かに唯が立っていた。
その姿は、俺が見たいと言っていた制服姿で、その制服は俺が今日から通う学校の女子のもので。
くすっと、どこか楽しそうに微笑んだ唯は、両手を広げ、踊るように回ってみせた。
「ほら…じゃなくってさ。唯、なんでココに?」
「なんでって。だから、今日から和樹と同じ学校なんだって。一緒のクラスになれると良いね?」
良いねって、簡単に言うけれど。
唯の家からココまでって、そんな毎日通える距離じゃないはずだ。
それに、受験してたなんて一言も言わなかったし、勉強してる素振りさえもなかった。
「ああ、でも。家じゃいつも一緒だし、違うクラスなのも良いのかな? 一緒にいると甘えちゃいそうだし」
「家じゃって…は?」
「ふふっ…。じゃーんっ♪」
さっきから驚いてばかりの俺の姿に、満足そうに微笑んだ唯は、ポケットから取り出した鍵を見せびらかすように掲げてみせた。
「和樹の家の鍵。お揃いだね?」
「???」
理解が、追いつかない。いや、理解しようとした側から、追加される情報を飲み込みきれず、頭がフリーズしそうだった。
「おばさん達がね、合格できたらいいよって。和樹にも内緒にしてて貰ってさ。私頑張ったんだよ? 和樹ってば、すっごい難しい所行こうとするんだもん。知ってた? 受験の時にね? 私、和樹の少し後ろにいたんだよ?」
唯が楽しそうに種明かしをする間に、だんだんと状況が飲み込めてきた。
家を出る前、さっき、母さんがお茶を濁した理由。唯が制服姿を見せたがらなかった理由。合格発表のその前日。いつも以上に、唯が甘えてきた理由が今なら分かる。
スマホ越しで、出来ることはあんまりなかったけれど、唯が寝落ちしてしまうまで、甘やかしていたのをよく覚えていた。
「唯っ…」
なにか、言葉に出来ない感情が、俺の胸を埋め尽くしていく。
恋とか愛だとかって、口にしてしまえば きっと簡単な事なんだろうけど、そんな感情に突き動かされるまま、目の前の彼女を抱きしめてしまっていた。
「え、あ、ちょっ…和樹。恥ずかしいって…みんな見てるよ」
「ごめん…でも、うん。ありがとう、めっちゃ嬉しい」
「にひひっ。良かった…ほんとはちょっぴりね、迷惑がられたりしたらどうしようって、ね? ほんと、ちょっとだけさ、あったんだよ」
その不安をかき消すように、俺はさらに強く唯のことを抱きしめた。
春先とはいえ、まだ肌寒さの残る季節。抱きしめた唯の体温は、いつも以上に俺の胸を温かくしてくれる。
見られてるのは分かってた。
朝の通学路には、格好からして俺たちと同じ新入生も少なくはない。
もしかしたら、クラスメイトになる奴も混じっていたかもしれないけれど、噂になるならなれば良いって、そんな事すら気にならなくなるくらい、俺は舞い上がってしまっていたんだ。
「子供みたいって、私には言っといて…ね?」
「ごめん。でも、ちょっと、気持ち分かったから…」
「分かっちゃったかぁ。でもさ、そろそろ行かないと遅刻しちゃうよ?」
名残惜しいが、唯の言うことも正しい。
「ほら、手、繋いでこ?」
「…」
少し迷った。
人目はもちろんあるし、好きな女の子と二人、手を繋いで歩くのだって何回やっても慣れるものじゃない。
だけど、差し出された唯の手を前にして、他の選択肢なんてあるわけもなく。
彼女の手をしっかりと握り返すと、二人で一緒の通学路を歩きだしていた。
最後までご覧いただきありがとうございました。
これから先はもう、イチャイチャラブラブちゅちゅしたり。
場合によっては、ドロドロと愛し合っていくことでしょう。