エ駄死版のお陰で、こっちもお気に入り数が増えて嬉しいです!!
あっちにはこちらには無いイベントストーリーとかも投稿しているので、まだ読んでいない読者の皆様も、是非ともどうぞ!!
「……ここは、どこでしょう」
アリスは目を覚ました。
彼女はどこかに大の字で倒れていた。
「これは、お花畑……?」
草花特有の匂い、アリスはそこに囲まれていた。
起き上がると、見渡す限りの赤い花が広がっていた。
「……キレイです」
アリスはきょろきょろと周囲を見渡す。
「また知らない世界に来てしまいました……」
その確信が彼女にはあった。
風が彼女の頬を撫で、長い髪を揺らす。
彼女が感傷に浸っていると。
「こらー!!」
そんな怒声が聞こえた。
アリスは驚いて振り返ると、中年の農家らしき女たちが彼女に近づいてくる。
「おめえ、どこから入っただ!!」
「ひん、すみません、アリスは道に迷ってしまって」
「道に迷っただ?」
農家のおばさん達は、アリスの言葉に顔を見合わせる。
「どうするだ?」
「魔物でねーか?」
「こんな小娘がだがか?」
「しかしだぁ、あの峠を越えてきただぎゃ?」
おばさん達はこそこそ話し始めた。
「あッ、アリスは実はとっても強いんです!!
魔物にも負けません!! 勇者ですから!!」
アリスはそのように主張した。
「……とりあえず、村長に聞くしかあるめぇよ」
「んだんだ。もし本当なら村の助けになるかもしんねぇ」
「おい娘っ子、とにかくこっちに来るだ」
アリスはとりあえず、当てもないので着いて行くことになった。
花畑から少し歩いたところに、小さな村が存在していた。
「(今回は中世ファンタジーの世界観のようです)」
前回の世界は現代ファンタジーなら、今回の村の様子から見て取れる文化レベルはその程度だった。
「(でもミッドガルみたいな大きな町があって、ここはそこから出てすぐにあるカームの村かもしれません)」
絵に描いたような辺鄙な農村としか言えないこの場所を見て、アリスはそんなことを考えていた。
「村長、いるけぇ?」
「なんでぇ、お前ら。畑の様子を見に行くんじゃなかったんか?」
おばちゃんの一人が勝手知ったる村長宅のドアを開けると、中に声を掛けた。
すぐによぼよぼのおじいさんが出てくる。
「この娘っ子がぁ、畑に居たんだぁ」
「はぁ? あの峠を越えてかぁ? 間違ぇねえのかい?」
「は、はい、何だかよくわからない峠を超えてきてしまいました!!」
他にこの村への進入路は無いらしいのを察したアリスは、勢いで村長にそう言った。
「はて、こんな何も無い場所に……どの街を目指してたんじゃ?」
「当てもない旅です!! アリスは勇者ですので、魔王と戦う為の旅をしていました!!」
アリスの言葉に、村長は溜息を吐いた。
「魔王か……なんと無謀なことを」
その反応から、アリスはこの世界にも魔王が居ることを察した。
「娘っ子よ、お主もわかっておろう。
魔王は我々を滅ぼすつもりじゃ」
「ですが、アリスは魔王と戦う為に旅をしています!!」
「であるならば、最近この周辺に現れる魔物を対峙してはくれんかのぉ?
無論、報酬は出そう。この村に滞在も許可する」
「任せてください!! アリスはメインクエストを受諾しました!!」
そう言うわけで、アリスは魔物退治を請け負った。
「あれだ、あれだよぉ」
アリスは農家のおばちゃん達に案内され、赤い花畑に向かった。
「あれがオピウムイーターと呼ばれる魔物やねぇ。
魔王が各地にバラまいてるらしいんだわぁ」
彼女の指差す先には、巨躯の牝馬が赤い花をむしゃむしゃと食べていた。
「あいつに畑を荒らされちゃ、あたしらは食っていけないよぉ」
おばちゃんは悲壮な表情で言った。
「任せてください、討伐クエスト開始です!!」
アリスはレールガンを構えて、戦闘態勢に移った。
魔物──オピウムイーターはアリスの敵意に反応したのか、こちらを向いた。
「ヒヒィィィン!!」
「──光を!!」
白目を剥いて、涎を垂らしながら襲い掛かる怪物を、アリスは撃ち抜いた。
レールガンの威力に、魔物の身体は四散した。
「お、おおぉ、あの化け物が一瞬で!!」
「たまげたべ、これでおら達の村は助かっただぁ!!」
おばちゃん達は大喜び。
血飛沫と肉片になった怪物を見て、しかしアリスには何の歓喜も起きなかった。
「……ごめんなさい」
自分の意志で命を奪った。
アリスにとって、その事実だけが確かなモノだった。
その日の夜は、宴になった。
「ささ、アリス殿。好きなだけ食べてくんろ」
長老に薦められ、アリスはもりもりとご飯を平らげている。
その様子に、周囲の村人も驚いている様子だ。
「よく食うなぁ」
「やっぱ冒険者ってのはあんぐらい食うべか」
「はい、お料理美味しいです!!」
村人たちはどんどんとアリスに料理を勧めていく。
アリスは彼らの感謝の気持ちを感じていた。
「……アリス殿はこの後、どこに行かれるおつもりで?」
村長がアリスに問うた。
「はい、とりあえず、近くの街へ向かうつもりです」
「なるほど。では峠を越える必要がありますな。我らの若い衆に道案内させましょう」
「本当ですか!?」
「ええ、我らが受けた恩はそれほど大きいのです」
真面目な表情で村長が言った。
ありがとうございます、とアリスは応じた。
その時だった。
「……」
小さな女の子が、アリスを見ていた。
「どうかしましたか? 貴女は?」
「ああ、ポピーか。彼女にお酒を注いで差し上げなさい」
「イヤ」
少女の拒絶に、こらッ、と村人が りつけた。
「ポピー、お前恩人様になんて物言いを!!」
「イヤだからイヤって言ったの!!」
「こんの、なんてことを!!」
彼女の母親らしきおばちゃんが、顔を真っ赤にして怒り出した。
「あ、すみません、アリスはお酒は飲めないんです!!
えーと、故郷のしきたりみたいなもので……」
一応キヴォトスでは学生はお酒を呑んではいけないことになっているので、助け舟を出すアリス。
「へへぇ、すいやせん、恩人様」
「まったく、この子は!!」
大人たちはしつけの成っていない子供を隠すように家へ押し込んでいった。
彼女が家へと消える間、ずっとアリスを見ていた。
歓迎されて、気を良くしたアリスは自主的に村の見回りをしていた。
あの魔物が一体だけとは限らないと考えてだ。
「キレイです」
月夜に照らされる花畑は、美しく儚げだった。
すると、後ろの方で物音がした。
「誰です?」
アリスが振り返ると、そこには小さな人影があった。
「……もしかして、さっきの? たしか、ポピーちゃんでしたっけ?」
「恩人さん」
幼い少女は、アリスを睨みつけてこう言った。
「早く、村を出て行って」
「……え?」
「村の蓄えも少ないの。なのにあんなに食べて。迷惑なの!!」
小さな女の子の敵意に満ちた言葉に、アリスは呆然となった。
「それに、この村に居ると魔王に殺されちゃうよ」
「……なんで」
「早く、出て行って」
そう言って、女の子はある方向を指差した。
「あっちに進めば峠に出られる。
洞窟があるから、そこで朝を待ってから峠を下って。
二度と、この村には来ないで」
「……分かりました」
レトロゲームでは最初の村で主人公が邪険にされるのはよくあることだと、アリスは納得して彼女の指差す方向を向いた。
「ごめんなさい」
もしかしたら、自分は余計なお世話をしたのかもしれない。前の世界での経験がアリスをそう考えさせた。
「さようなら。お元気で」
アリスは、少女の指差す方へ去って行った。
少女の言う通り、峠の前には洞窟があった。
夜は視界が狭まるが、ロボであるアリスには関係の無い事。
彼女は朝を待たず、そのまま峠を登って行った。
峠は険しかった。
断崖絶壁と隣り合わせの場所も多々あった。
あの村がどれだけ世俗と離れているのか、それだけで想像が出来てしまう。
やがて、峠の頂上に辿り着いた。
振り返れば、村が一望できる。村は周囲の断崖に囲まれ、自然の要塞に囲まれていた。
「あれ、あれは、火?」
村の方で、何やら松明かなにかを持っている人影が複数人確認できた。
その動きは、まるで何かを探しているかのようだった。
「アリスを探しているんでしょうか。
やっぱり、黙って出てきちゃったから」
少しだけ罪悪感に苛まれながらも、アリスは進む。
その時だった。
「ヒヒィィィン!!」
漆黒の闇から、巨大な牝馬が飛び出してきた。
血走った頭部が、アリスの身体を突き飛ばす。
「あッ」
アリスは為すすべなく、断崖絶壁へと落ちて行った。
「機体に、甚大なダメージが発生……」
崖から落ちたアリスに、意識は無かった。
「自動修復……エネルギー残量不足……推定残存稼働時間……三時間四十分」
余りにも呆気ない、勇者の旅路の終わり。
アリスにはそれが訪れようとしていた。
まるでイベントシーンでファンブルを引いたように、運が悪かった。
誰も、アリスを助けることはできない。誰もアリスを治すことはできない。
ああ、勇者よ。死んでしまうとはなさけない。
尤も。
「あ、なんか落ちた音が聞こえたと思ったら……。おーい、隊長!!」
ここで死ぬのならば、どれだけ彼女にとって幸運だったことだろうか。
アリスの意識が、再起動する。
「どうだい、爺さん」
「とりあえず、応急処置はしたわい。
この機体を手持ちの道具で自由に弄繰り回せないのは残念じゃがな」
「余計なことはするな。そう命令したはずだろ」
「それぐらいわかっとるわ!!
まあええ、儂はそっちの兵器を弄らせてもらうとするか」
「(懐かしい、声がします)」
「隊長、これ、私が見つけたんだよ!! 壊れてるなら、私にちょうだい!!」
「壊れてないわ!! 儂の技術が信用できんのか!!」
女の子の声。老人の声。
セットアップが完了したアリスは、むくりと体を起こした。
「お、気づいたか」
アリスは周囲を見渡す。
そこは、テント中のようだった。
豆電球によって手術台みたいなテーブルに乗せられたアリスの身体が照らされている。
「あなたは……? まさかドワーフですか!?」
「いかにも」
老人のようなしわがれた声の主は、アリスと比べても大して変わらない身長の持ち主だった。
「メアリース様の製造するアンドロイドにしては見ないタイプじゃったが、儂ほどの技術者になれば修理くらいお茶の子さいさいよ」
「なーんだ、壊れてないんじゃん」
つまらなさそうな声に振り向くと、そこには翼と腕が一体の少女が居た。
足先がかぎ爪のようになっているその姿は、まさにハーピーとしか言えなかった。
「じゃからそういったじゃろ」
「つまんなーい」
「ピア、お主は隊長を呼んでこい」
「はーい」
ピアと呼ばれたハーピーは、テントの垂れ幕を翼で押しぬけると、まさしく飛び立って行った。
「……ここは、どこですか?」
「ここは我らがリーパー隊の駐屯地よ。
あのイカレハーピーがお主を見つけたんじゃ。あんなのでも一応感謝してやるとええ」
ドワーフはアリスにそう答えると、今度はアリスと一緒にテーブルに並べられていたレールガンに興味を向けた。
「ほほう、設計だけでも若さと挑戦が見て取れる。
若い、若いのぅ、兵器とは生産コストと実用性の折り合いだというのに」
「爺さん、ドワエモンの爺さん。あのロボ子が目覚めたって?」
「おう、そこにおるじゃろ」
ドワーフはもうアリスに興味を向けていなかった。
垂れ幕を開けて入って来た相手に、そんな投げやりの態度を取った。
「まったく、これだから爺さんは」
「え……」
その姿を見て、アリスが最初に抱いた感情は、親愛だった。
背の低い二足歩行の犬としか言えないだろう、獣人。
ファンタジー的に表現するなら、コボルトと呼ぶにふさわしい存在だった。
だけど、アリスの口から出た言葉はこうだった。
「……オオカミさん?」
「うん?」
犬獣人はアリスの反応に小首を傾げた。
「前に会ったことが会ったか? お前みたいな好みのタイプを俺が忘れるとはおもわないんだが」
「オオカミさんッ、オオカミさん!!」
「おーい、今の俺は犬畜生だぞ。狼なんて、高尚なもんじゃない」
「うわーん!!!」
「やれやれ、まずは服を着てくれ」
泣き付かれて、犬獣人は溜息を吐いて見せた。
「多分、そいつは別の世界の俺だろう。
確かに俺はアップルマンと名乗っている」
泣き止んで事情を聴いた犬獣人は、そう結論を下した。
「つまり、俺とは全く別人だ。たとえ魂が同じだろうとも、な」
「そう、ですか」
「つーか、お前みたいな完璧な美少女をモノにしないとか、向こうの俺は枯れてんのかね、ぎゃはは!!」
彼とあの男は別人だ。
だが、何気ない仕草や、言動。
見た目が違くとも、アリスには懐かしいものばかりだった。
「爺さん、あんた魂に関して詳しくないのか?
あのメアリース様の技術の温床、
「魂は専門外じゃ。儂は兵器開発専門じゃったからな」
「神に選ばれた頭脳の持ち主だったのに、やらかして今はこんなところにいるんだもんな!!」
彼はドワーフの境遇を笑い飛ばした。
ドワーフはふんと不機嫌そうに鼻を鳴らすだけだった。
「と、まあ、俺らは仕事の途中でな。
俺の事は隊長と呼べ。このリーパー隊、108名の長だ」
「隊長さん……」
「俺達はやることがある。お前の面倒を見る暇はない。
民間人として保護はしてやる。仕事が終わったら神官様のところに送ってやる。それでいいな?」
「……はい」
アリスに他の選択肢は無かった。
「おい、ピア!!」
「はーい、隊長、なになに?」
隊長が外に向かって呼ぶと、バサバサと翼をはばたかせ、ハーピーの少女がやってきた。
「見た目的に年齢は近そうだし、コイツの面倒はお前が見ろ」
「はーい、わかりましたー」
ハーピーの少女はおふざけの敬礼をして見せた。
「言っておくが、保護だぞ。保護。
他の全員にも通達しておくからな」
「わかってまーす」
隊長はそう言って、テントを出て行った。
「私、ピア。あんたは?」
「アリスって言います」
「そ、じゃあ駐屯地を案内してあげる」
名前を聞いておいて、ピアはアリスに興味はなさそうだった。
「あそこのエルフ達は、多分お前なら無害だと思う。
あっちのゴブリンとオークは近づかない方が良いよ。下ネタばかりしか言わないし。
あのサキュバスはあんたが近づくとうるさいくなると思うから近づかない方がいいよ。
あのキザったらしいヴァンパイアは比較的にうちらの中じゃまともで、一応紳士らしいから困ったら頼ると良いと思う」
ピアは翼の先っぽにある骨のような指先で、隊員たちを指差して注意事項を述べていく。
「こ、個性的ですね……」
アリスはちょっと引きつった笑みでそう言った。
この駐屯地に居る隊員たちは、キヴォトスの生徒達にも勝るとも劣らない個性の塊だった。
多種多様の種族が、ひとつの部隊として運用されている。
「まあ、隊長が居なかったら私らバラバラになると思うよ。
隊長が私達に居場所をくれたんだ」
「そうなんですか……」
別人だとは分かっていても、アリスはあの男と同じように誰かの居場所を与えているのだと、思った。
「……なんだか忙しそうですね」
「そりゃあ、明日作戦があるから」
「作戦ですか? 魔物退治ですか?」
「まさか」
魔物の少女は、アリスの言葉に可笑しそうにこう返した。
「この先の峠の奥にある村を攻撃するんだよ」
「……え?」
アリスは固まった。
隊長と言う存在が、その可能性をどこか頭から追いやっていたのだ。
「当然でしょ、うちら、魔王軍なんだもん」
「隊長さん」
「どうした、病人は寝てろ。
いや、お前の場合は病人って言うのか?
まあ重症には変わりないんだ、あまり体を動かすな」
隊長だというのに、彼はたき火を前にして寝ずの番をしていた。
慌ただしかった駐屯地は、明日に備えて眠り、皆静まり返っている。
「貴方が魔王軍だというのは本当ですか?」
「ああ、そうだ」
「どうしてッ、あんなにも魔王を憎んでいたのに!!」
「そりゃあ別の俺だって言っただろ」
隊長は愛銃のリボルバーを手入れしながらアリスにそう返した。
「まあ、魔王を憎んでいたのは俺も同じだったがよ。
面白いよな。同じ魂の持ち主は、似たような人生を歩む。才能ってのはまさに呪いに違いない」
「こんなこと、やめてください」
「止めてどうするよ」
隊長はアリスに顔を向け、言った。
「社会ってのは代替可能な個人の集合体だ。
俺がやらないとなれば、別の誰かが派遣される。そして別の誰かがやるだけだ。
それに、今回の仕事はいつもよりマシな汚れ仕事だ」
「いつもより、マシ?」
「ああ」
隊長は頷いた。
「明日、俺達の仕事を見せてやる。
その時にお前は判断すれば良い。
俺達に保護されるままでいるか、それを拒絶するか」
「……」
「爺さんにはお前の武器をメンテするよう言っておいた。その代わりといっちゃなんだが、お前と会った別の俺について聞かせてくれや」
「……いいですよ」
その日は、長い話になった。
§§§
翌日、リーパー隊による村攻めは一時間も掛からずに終わった。
当然だろう、隊長によって統率された軍隊が、ただの農民に負けるわけがない。
村人たちは中央に集められ、リーパー隊の軍勢に囲まれた。
「あー、よく聞け、罪人ども」
数十人の村人たちに、隊長は宣告した。
「魔王様の慈悲である。
強制収容所にて更生するのなら、生かしてやる。拒否すれば殺す」
「ふざけるな!!」
村長が叫んだ。
「誰がお前達の言うことなど聞くか!!」
「それが総意で良いのか?」
隊長は冷淡に村長に問うた。
「ま、待ってください!!」
同行を許されていたアリスが前に出た。
隊長が指示するまで決して手荒に扱わないというアリスとの事前の約束を、彼は守った。
だが、もうその段階は過ぎてしまった。
「お願いです、彼らを殺さないで!!」
「くくくッ」
「なぜ、笑うのですか……」
「いやいや、これが笑わずにいられるか!!」
なあ、と隊長は村人たちに肩を竦めて見せた。
「……なんで、なんで帰って来たの!!」
その時、大人たちと一緒に集められていたポピーがアリスに叫んだ。
「ポピーちゃん……」
「やっぱりあいつ、魔王の手先だったべ!!」
その時だった、村人の一人がアリスを指差した。
「おらは怪しいと思ったんだ!!」
「んだんだ、あれだけの量の幸福草を食ったのに、けろりとしてやがったんだ!!」
「あいつは魔物だぁ!!」
「……え?」
アリスは村人達が何を言っているのか、分からなかった。
「やっぱりな。アリス、お前の体内から人間五十人は殺せる量のモルヒネが検出されたって、爺さんが言ってたぞ」
「ど、どういうことですか……」
「お前まさか、知らないでこいつらを助けたのか?」
隊長は花畑に咲いていた赤い花を毟り取った。
「こいつは芥子の花だ。しかも品種改良され、モルヒネを精製できるようになった、スーパードラッグの元だよ。
この世界はな、こいつに七割の人間が汚染されている」
「芥子、これが……」
要するに、麻薬だった。
しかもアリスは、致死量の何十倍も摂取していた。
「お前、こいつらに殺されかけたんだよ。
この場所の事を知っている奴は、生かして帰せなかった。そうだろ?」
偶々アリスがロボットだから効かなかった。
これはただ、それだけの話だった。
「魔王様はこの世界の浄化の為に降臨なされた。
滅ぼす為じゃない。統治の為だ。お前達の更生させ、麻薬漬けの世代を無事に終わらせる為にな」
隊長は芥子の花を捨て、踏みにじった。
「この世界で麻薬は合法だった。
それ故に過剰に汚染が進んだ。この村はその原材料の生産の拠点の一つだ」
「貴様ら魔物に何が分かる!!」
村長が涙ながらに訴えた。
「こんな辺鄙な村が飢餓を乗り越えるには、芥子を売るしかなかった!!
外の連中はもうとっくに中毒者ばかり、我々の何が悪い!!」
「メアリース様は重度の麻薬中毒者は人間では無いと仰せだ。
じゃあ人間を、人間では無い者に変えた者、それを支援した者は人間なのか?」
なあアリス、と隊長は笑いながら言った。
「ズルいよな。こいつらには魂があるのに。お前には無いんだ。
お前には命が無いのに、こいつらには有るんだぜ!!」
「……ッ」
アリスには、どちらが正しいのか分からない。
ただ、涙が出た。どうしようもないほど、悲しかった。
「結局、お前達も中毒者なのだ。
楽に富を得る方法に浴して、人間であることを捨てた。
魔王様は一切の薬物から隔絶された強制収容所に入れと仰せだ。
もう一度は言わない。更生か、死か、だ」
「もう、我らは幸福草の無い生活には耐えられぬ」
「そうか。おい、ピア」
「はい、隊長」
ピアが飛び立つと、村人の一人を掴んだ。
「や、やめろ、は、放せ!!」
「いいよ」
ピアは村人を放した。上空約100メートルから。
「う、うあああああぁぁぁああ!!」
ぐしゃ。
村人は頭から真っ逆さまに落ちて、首があらぬ方向に折れ曲がって即死した。
「くけッ、くけけけけけッ!!!」
それを見て、ピアは笑った。ハーピーの少女は、魔物そのものだった。
「やっぱり自分が死ぬって確信した時の、恐怖に満ちた表情はサイコーだよね!!」
隊員の誰かが言った。流石は撃墜王ピアだ、と。
「次は誰が殺す?」
隊長は無感動に隊員たちにそう尋ねた。
「隊長、私あの男が欲しい、犯して殺して食べたいっす!!」
人喰い部族のエルフの族長が満面の笑みで言った。
「たいちょ、にんぎょ、こわしたい!!」
知的障害を患っているサイクロプスが無邪気に笑う。
「わ、若い女、殺すッ、醜く無残に殺す!!」
若さを憎む狂気のサキュバスが叫んだ。
「どうせこいつらも麻薬漬けだろ? 長く楽しめそうだ」
ライカンスロープの猟師が、マンハントを想像して舌なめずりする。
どいつもこいつも、
あらゆる世界から集められた最低最悪の極悪人どもの懲罰部隊。
それが、リーパー隊だった。
彼らが欲望のままに村人たちを惨殺するのに、あとは隊長の合図だけだった。
「で、どうするアリス?」
「……わ、私は」
「どちらの味方をするんだ、勇者よ」
隊長は、アリスに問う。
「お前の意志で決めろ」
アリスはどちらの味方をする?
-
村人たち
-
リーパー隊