※この作品はR-18です。

キヴォトスに墜ちた悪魔   作:やーなん

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エ駄死版の最新話のあとがきに、重要なおしらせを記載しました。
追加エピソード盛りだくさんなので、これを機にあちらもどうぞ!!




千年魔導王国

 

 

 

 アリスは中破した魔法ロボに乗って、ユズリハ達と共に王都へ凱旋した。

 

「ふう、やっと帰って来れたよ」

「死ぬかと思ったからね」

 

 がしゃんがしゃん、と二足歩行の魔法ロボは王都の門に辿り着いた。

 

 それを見て、アリスは強烈な既視感を抱いた。

 

「(ま、まさか……)」

 

 王都の門を守っていた衛兵が、敬礼をして門を開く。

 そこに広がっている光景に、アリスは絶句した。

 

「ようこそ、王都セミナルに」

 

 ユズリハがアリスにそう言った。

 

 同じだった。

 

 ミレニアムサイエンススクールの正面の門から、広場や家屋の配置。

 全て同じだった。冒険と称して隅々まで歩き回ったアリスは知っていた。

 そして、セミナーの本棟が存在した場所に、王城が聳え立っていた。

 

 アリスは余りの衝撃に、何も言えなかった。

 魔法ロボが通る道を、住人達は頭を下げて開ける。

 

 程なくして、王城に辿り着いた。

 

 そして、エンジニア部が存在した場所に、魔法ロボの格納庫が存在していた。

 

「おや、これはまた派手に壊したね」

 

 四人がロボから降りると、そんな声が聞こえた。

 それが誰だか、アリスはすぐに分かった。

 

「ホワイトストーン卿……」

「(ウタハ先輩だ……)」

 

 ユズリハは軽く会釈し、従者の二人は膝を突いた。

 作業服を着こなす男装の麗人としか言えない美女が、工具を片手に歩いてきた。

 

「あー、フラワーヒル卿、その子は?」

「……実は、彼女のお陰で魔獣を討伐できたのです」

「おや、どういうことかな?」

 

 ユズリハは彼女に事の経緯を説明した。

 

「うーん、やはり魔獣に通常兵装は火力不足だったか。

 ネルライト君は双剣で魔獣を討伐したらしいが、あれは例外と考えるべきだろう」

「はい、私もそう思います」

「だからこそ、この武器が気になるな。

 なぜだろう、初めて見たのに、そのような気がしない」

 

 ホワイトストーン卿はしげしげとロボが抱えているレールガンを見やった。

 

「アリス、と言ったかな? 

 君の処遇は女王が決定するだろう。

 魔獣の討伐は大変な名誉だ。女王様が直接褒賞の機会を与えるはずだ。

 その時に事情を説明するといい」

「はい、わかりました」

「なに。女王様は変わり者だが、この国随一の慧眼の持ち主だ。

 魔獣の討伐を手伝った君を、悪いようにはしないだろう」

 

 こくり、とアリスは彼女に頷いてみせた。

 

「ホワイトストーン卿、王城から通達がありました。

 どうせまたマジックポットを産廃にした馬鹿どもを連れて来い、と」

 

 その時だった、ヒビキっぽい犬獣人の女性が現われ、そう言った。

 

「ああ、わかった。

 どうやらそう言うことらしい。財務郷がお呼びだとさ」

「レッグフット郷ですか……」

 

 ユズリハは露骨に嫌そうな表情になった。

 それは顔を伏せている従者二人もそうだった。

 

「流石にかの御方も今回ばかりは賞賛するしかあるまい。

 それほどの戦果だ。フラワーヒル卿の名も国中に轟くだろう」

「恐れ多いことです。それでは……失礼します」

 

 ユズリハは居心地が悪そうに格納庫を立ち去った。

 アリス達もそれに続いた。

 

「まーたレッグフット郷だよ」

「どうせまた嫌味を言われるんだ」

 

 格納庫を出るなり、双子はそんな愚痴を言った。

 

「レッグフット郷ですか?」

「うん、レッグフット伯爵。女王様の右腕で、財務郷を担当しているんだ。

 忠臣だけど、王城の政務でレッグフット卿の絡まないモノは無いってくらい、権力を広げてるからよく顔を合わせるんだ」

「いつもユズリハ様にグチグチ嫌味を言ってくるんだよ!!」

「しかもユズリハ様を見る目が怪しいし。あいつ、奥さんいるのに!!」

 

 アリスの問いに、三人が順番に答えた。

 彼女らの不満がありありと伝わってくる。

 

 そんな風に普段の恨みつらみを吐き出していると。

 

「よう、ユズリハ!!」

「ネルラ君……」

 

「(あ、今度はネル先輩だ……)」

 

 向こうから小柄な少年が、片手をあげてやってきたのだ。

 龍の意匠のマントを羽織り、ダウナーな印象を受ける眼帯の少年なのだが、外見と反して性格の方は快活だった。

 

「お前ならいつかやると思ってたぜ!! 

 お前ほどの腕の持ち主が、騎士学校の落ちこぼれなんて風評を拭い去るのは時間の問題だと俺はわかってたぜ!!」

「は、はぃ」

 

 まるで男友達にするかのようにスキンシップを取る彼に、ユズリハはたじたじだった。

 

「ところで、そいつは?」

「……あッ」

 

 彼がアリスは見た。アリスはここで気づいた。

 

「もしかして、男の子なんですか!?」

「誰が女顔だテメェ!!」

「いや、これはこれでアリだと思います!!」

「ふざけんな!!」

「ま、まあまあ、ネルラ君」

 

 初対面の相手とは思えないくらい舐め腐ってる態度のアリスに、彼は激怒し、ユズリハがなだめる。

 

「えーと、この人は私の騎士学校の同期で、ネルライト君って言うの。

 独りで魔獣を倒せるくらい、強いんだ」

「独りじゃねえよ、チームの四人が一体になって勝てたんだ。お前もようやくその境地に達したか」

「そ、そのことなんだけど……私達が魔獣を倒せたのは、アリスのお陰で……」

 

 ユズリハの言葉に、ネルライトはまじまじとアリスを見やった。

 

「詳しくはちゃんと報告するから」

「まあいい、女王がお呼びだ。ついて来い」

「わ、分かりました」

 

 四人はネルライトに付いて王城に向かった。

 

「私、女王様になんて初めて会うよ!!」

「どうせ私達はお顔を見ることも無いと思うけど」

「ユズリハ様は叙勲の時に御会いしたんだよね?」

「う、うん、そうだね」

 

 三人は興奮気味にそう言っていた。

 

「女王との謁見……本当にファンタジーの世界みたいです……」

 

 ここに来るまでまともにファンタジーを味わえなかったアリスも、わくわくしていた。

 そして、一行は王城の中へと入り、奥へと進んだ。

 

 アリスはキョロキョロと周囲を物珍しそうに見ながら歩いた。

 

「ここだ」

 

 ネルライトに案内されたのは、謁見の間。ミレニアムであれば、セミナーの会議室だった。

 

「女王陛下、ネルライトが魔獣討伐の功労者を連れて参りました」

「──入れ」

 

 中からの女性の声に、彼は両開きの大きなドアを開ける。

 その瞬間から、二人の従者は頭を下げていた。

 

 謁見の間はずらり、と貴族が列を成して立っていた。

 

「……あれ?」

 

 奥にある玉座に座るのが、この千年魔導王国の女王だろう。

 だが、アリスは首を傾げた。

 

 玉座に座しているのは、金髪で中性的な美貌の持ち主であった。

 

「諸君、女王の御前にて頭を垂れよ」

 

 貴族の一人、レッグフット郷がそう言った。

 

 なぜかおどおどするユズリハに気づくことなく、ネルライトは玉座の前に跪いた。

 しかしすぐに周囲に気圧されるように彼女も前に進む。

 従者の二人も、それに続いた。

 

 だけど、アリスだけは違った。

 

 彼女は、貴族の列に並ぶ、瓶底メガネの作業着の女の前に傅いた。

 

「あ、アリスちゃん!?」

「なにやってるの!!」

 

 彼女の異常に気付いた双子が、慌てて小声でそう言った。

 

 だが、すぐに二人も気づいた。

 貴族たちがどよめいていたのだ。

 

「リオン様」

 

 玉座に座する麗人が言った。

 

「まさしく、預言の通りかと」

 

 そして立ち上がり、そそくさと玉座の脇へと移動した。

 

「諸君、鎮まりなさい」

 

 アリスの目の前に立っていた女性が、瓶底メガネを外し、髪を結んでいた紐を解いた。

 美しい黒い長髪が露わになる。

 すぐに、控えていたメイド達がドレスを装着するかのように着付けた。

 

「そう、余がこの千年魔導王国の十一代目女王、リオン・ムーントーン三世である」

 

 やぼったい作業員から、一瞬で女王に姿を変えた女が、玉座にて言った。

 

「先ほど、神託があった」

 

 女王はここにいる全員に言った。

 

「今宵、勇者を名乗る者現れる。

 それ即ち、破滅の刻限が来る時成り、と。

 遂に、預言の時が来たのだ」

 

 アリス以外の全員が、女王の前に跪く。

 

「汝が、勇者なりや?」

「はい、女王様」

 

 女王は、容姿がリオそっくりだった。

 面識のないアリスでも、彼女を間違えることはあり得なかった。

 

「余の戯れを見破ったそなたを信じよう。

 レッグフット郷よ、預言について話すのだ」

「はッ、女王様」

 

 彼は語った。

 この世界が創世の時より、女神によって予言がなされたと言う。

 それは即ち、この世界の破滅。

 

「我々はその破滅を、神話になぞり“サーシュウ”と名付けた」

「さ、サーシュウ……それが魔王の名前なのですか?」

「それすらも分からないのだ」

 

 破滅の手掛かりは、何一つないと言う。

 

「……やはり、気が進まぬが奴の知恵を借りる他あるまい」

 

 女王が不愉快そうにそう言った。

 

「これまではのろりくらりと躱されてきたが、勇者が現れた以上奴も口を割るだろう」

「奴と言うと、やはり大賢者様でしょうか」

 

 女王や側近は、その名を出しただけで心底嫌そうだった。

 

「創世の時より生きると言う、かのエルフの大賢者なら破滅の正体を知っているかもしれん」

「大賢者様、ですか!!」

 

 まさにRPG的な展開に、アリスは喜んだ。

 

「勇者よ。お前がこの世界の滅びから救うために遣わされたというのなら、我が国の東の果てに住む、あの女から破滅について聞き出してきてほしい。

 フラワーヒル卿。勇者の護衛を貴殿に頼みたい」

「お、お任せください、女王様!!」

 

 ユズリハは跪いたままそう言った。

 

「ところで、大賢者様の名前は何と言うのですか?」

「うむ、かの女の名前は」

 

 女王は答えた。

 

「明星の大賢者、東の宵の大輪。その名は──ヒマワリだ」

 

 アリスは思った。あ、ヒマリ先輩か、と。

 

 

 

 

 §§§

 

 

 こうして、アリス達一行は大賢者のもとへと向かうことになった。

 

 道中はひと月にも及ぶ行軍で、四人はその道中で様々な人助けを行った。

 それはまさしく輝かしい騎士物語そのもので、その道中で四人は絆を深めていった。

 

 破滅の予兆なのか、恐るべき魔獣が行く先々で立ち開かる。

 

 敵は魔獣だけではない。

 魔王の四天王を名乗る敵とも戦い、退けた。

 

 

 やがて、一行は辿り着いた。

 

 千年魔導王国の東の果て。

 大賢者が住まう、明星の塔に。

 

 その場所は、距離を無視するならば、位置関係的にミレニアムにおける特異現象捜査部の部室が有る場所に他ならなかった。

 

 

 四人は魔導ロボを降り、明星の塔に挑んだ。

 謎解き、仕掛け、魔物との戦い。

 塔の主の遊び心に満ちた試練に、四人は立ち向かった。

 

 そして、一行は頂上に辿り着いた。

 

 

「ようこそ、勇者様一行」

 

 塔の最上階で、本を読みながら白いエルフの女が四人を待ち受けていた。

 

「私が創世神より明星の称号を賜った、東の宵の大輪の花。ヒマワリと申します」

「(ヒマリ先輩だ……)」

 

 大賢者は言動からもう疑う余地もないほどヒマリそっくりだった。

 

「やっと終わったの?」

「もうくたくただよ」

「ホント、生身で戦うのは勘弁してほしい」

 

 アリス以外の三人は道中で疲れ果てて、そんなことを言っていた。

 

「大賢者様、教えて──」

「用件は分かっています。キヴォトスの勇者よ」

「えッ」

 

 アリスは驚いた。

 この世界で、その名前を聞くとは思わなかったからだ。

 

「驚くのも無理はありません。

 この世界の成り立ちはキヴォトスが深くかかわっているのです」

 

 大賢者は語り始めた。

 

「貴女はこの国を見て、どう思いましたか?」

「……そっくりでした。キヴォトスの、私の学校と……」

「ええ、そうでしょうね。

 この世界は、いえ、そもそも千年魔導王国とは、キヴォトスの姉妹都市なのです。

 より厳密に言えば、キヴォトスの再現と言うべきでしょうか」

「それは、どういうことですか?」

「この世界の造物主、メアリース様が望んだからです」

 

 大賢者は淡々と答えた。

 

「この世界はある目的の為に創造されました。

 この世界の破滅と言うのは、あらかじめ決められたこの世界の寿命。

 そもそも破滅を回避する手立てなど、我々には無いのです」

「ではその目的とは、何なんですか?」

「それは私の口からは何とも」

 

 彼女はアリスの問いに、誤魔化すように微笑んだ。

 

「……どうにか、この世界を救う方法を、破滅を食い止めることはできないのですか?」

「ええ、その為にも、キヴォトスの勇者よ。

 ────魔王に、会うのです」

 

 大賢者はアリスの目を見て、そう言った。

 

「この世界におわす魔王様こそ、女神の目的が熟したかを判断する者。

 そして、魔王様は己を打ち倒す勇者に、その英雄譚に褒美を与えるでしょう。

 かの造物主ならば、いや、かの女神にしか、この世界の存続を許すという判断は出来ない筈です」

「……魔王と、戦うしかないのですね」

「ええ、魔王様と戦うには、これよりあなた達の前に現れる四天王と戦い、打ち破る必要があります」

 

 そして、と大賢者は言った。

 

「私もまた、魔王様の四天王の一人。管理者ヒマワリ」

「ッ!?」

「外に出ましょう。ここは狭すぎます」

 

 

 大賢者ヒマワリは、巨大なゴーレムの腕で己を抱えさせ、四人の前に立ち塞がった。

 

 激闘の末に、四人は魔王の四天王のひとりを打ち破った。

 

「げほ、げほッ、お見事ですよ……」

「大賢者様!!」

「これぐらい、掠り傷です……」

 

 ゴーレムから投げ出され、地面に倒れた大賢者にアリスは近づいた。

 

「この世界を覆う、神々の外壁(マスタースクリーン)の奥へと行きなさい。これが、障壁を破る道具です」

 

 彼女はアリスの手に、アミュレットを渡した。

 

 

 ──アリスは、明星のアミュレットを手に入れた!! 

 

 

「行きなさい、勇者アリスよ……」

「はいッ……!!」

 

 アリスは進む。進むしかない。

 

 全ては予定調和。全てはシナリオ通り。

 

 

 四人は、世界の最果てに進む。

 

「王都には、伝令を送っておいたよ。もし私達が失敗しても、ネルラ君達がやってくれると思う」

 

 ユズリハが覚悟を決めた表情で言った。

 彼女もまた、魔王に挑むつもりだった。

 

「破滅が回避されたら、平和になるのかな」

「どうだろう、魔物が消えるわけじゃないし」

 

 ピンキーとユズリハは学が無いので平和な世界が想像できなかった。

 

「もし、破滅を回避できたとしたら、アリスは皆とゲームがしたいです」

「ああ、自動遊戯盤だっけ? あれ高いんだよね」

「私達の給料じゃ、手が届かないって」

 

 アリスのささやかな望みを、二人は苦笑するだけだった。

 

「いいえ、この世界とキヴォトスが姉妹都市なら、いつかきっとキヴォトスに行く方法もあるはずです!! 

 そしたら、皆で、あっちの皆とも一緒に遊ぶんです!!」

「向こうの私達、か。信じられないね」

 

 ユズリハは遠い空を見上げて言った。

 

「はい、きっと向こうの皆もびっくりします!!」

「向こうには獣人差別とか無いんでしょ? 

 私も学校とか、行ってみたかったな」

 

 グリーンベルがどこか羨まし気にそう言った。

 

「えー、勉強なんて、ユズリハ様の実家だけで十分だよ。

 向こうなら自動遊戯盤も安いんでしょ? 私もそれで遊んでみたいな」

「じゃあ、約束ですよ、ピンキー!!」

「うん。魔王を倒したら、今度こそ女王様から褒賞を貰って、騎士なんてやめちゃおうよ、ユズリハ様」

「流石にそれは実家を勘当されちゃうって……」

 

 そんな馬鹿話をして、皆は笑った。

 

「明日、魔王の下へと向かう」

 

 ユズリハが言った。

 

「この世界の破滅“サーシュウ”を回避する為に!!」

「この世界に住まう全ての人々の為に!!」

 

 双子が主人に続く。

 

「アリスも、この世界の皆がキヴォトスに負けないくらい好きになりました。

 この世界の冒険を、これで終わりになんてしたくありません」

 

 アリスも誓う。

 全ては、この世界を救うために。

 

 

 夜明けと共に、たき火を囲んでいた四人はこの世界の外側へ向かった。

 

 

 ……アリスの記憶は、そこでぱったりと途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここは、どこですか?」

 

 アリスは目を覚ます。

 彼女の目の前にはガラスのカプセルのようなものがあり、そこにアリスは眠っていたようだった。

 

 アリスの視界に、自己修復完了とウインドウが表示された。

 

 

「え、どういうことですか!?」

 

 アリスは混乱していた。

 自分はつい先ほどまで、仲間とと共に魔王へ挑もうとしていた筈だ。

 

「あ、あ、頭が、痛いです……」

 

 何かを思い出そうとすると、頭が割れるように痛む。

 

「だ、誰か、居ませんか……」

 

 

「お目覚めになりましたか、勇者様」

 

 アリスの眠っていたカプセルが開く。

 彼女の周囲には、白衣の男女が何人も囲っていた。

 

「誰ですか、あなた達は?」

「ここは東千年魔導王国の研究施設です」

「ひがし……?」

「勇者様にこれを伝えるのは心苦しいのですが」

 

 と、研究者らしい彼らは言った。

 

「勇者様達が魔王と戦い、貴女様が眠りに就いてから、百年以上経過しているのです」

「ひゃ、100年……」

「そして10年前ほど、千年魔導王国は二つに割れました。

 以来、東と西とお互いに呼び合うようになった私達は、戦争状態です」

「そんな、嘘です……」

 

 混乱するアリスの脳裏に、かつての記憶が断片的に蘇る。

 

 

 

 

『こんなにも魔物が居るなんて!!』

『どうしよう、完全に囲まれたよ!!』

『このままじゃあ、やられるッ』

 

 魔導ロボを囲む、無数の魔物たち。

 

『……ベル。あれを使おう』

『あれって、もしかして……』

『うん、大賢者の塔でこっそり拝借した、禁術の大魔法を使うんだ!!』

『……わかったよ、姉さん』

 

『二人共!!』

『ここは私達に任せて、先に進んで!!』

 

 アリスは見た。

 

 双子と言う、魂が限りなく近い者同士の、魔力の共鳴。

 彼女達二人の魂を燃やし尽くす、最期の切り札を。

 

 

『我が名は最後の四天王、竜騎士ケイン。魔王様の最側近なり。

 この先を通る者は、この我と決闘をして勝つほか無い』

 

 最強と呼び声高い種族、竜人の騎士が魔導ロボを隣に控えさせて待ち受けていた。

 

『ここまで辿り着いたる貴公は高名な騎士とお見受けする。

 ──剣を取れ。この先に、魔王様は居られる』

 

 魔王城を守護する騎士に、ユズリハは決闘を挑まれた!! 

 

『アリス、これは返すよ』

 

 ユズリハはレールガンを、足元に置いた。

 そして、脱出装置を起動して、アリスをマジックポットから追い出した。

 

『ユズリハ様!!』

『決闘を挑まれたからには、戦わないといけない。

 でもそれは、騎士じゃない貴女を巻き込むわけにはいかないから』

 

『その意気や良し!!』

 

 竜騎士ケインも、己の乗機に乗り込んだ。

 

 決闘が始まる。

 

 壮絶な戦いを経て、両者の剛剣がお互いのコクピットを貫いた。

 相打ちだった。

 

 

 アリスは進んだ。

 もはや持つこともできないレールガンを引きずりながら、魔王のもとへと辿り着いた。

 そしてアリスは見た、魔王の正体を。

 

『あ、あなたは、まさか──』

 

 そこで、アリスの記憶は途切れた。

 

 

「魔王城の最奥で、貴女様は倒れていたと記録に残っています。

 その後、あなたは保護され、これまでずっと治療ポットで眠っていたのです」

 

 研究員はそのように語った。

 

「……この世界の存続は許されたんですか?」

「ええ、我々がこうして存在している以上、そうなるのでしょう」

 

 百年前の当事者はもう、どこにも居ない。

 肝心のアリスは、メモリーが不安定だった。

 

「勇者様」

 

 彼女達は言った。

 

「どうか、我々を、この国を裏切った逆徒どもを討ち取り、この国に平和を齎してくださいませ!!」

 

 アリスは再び、勇者として望まれた。

 

 次の敵は、人間だ。

 

 

 アリスはどちらを味方する? 

 

 

 

 

 

 

 

今度はアリスはどちらの味方をする?

  • 東側(今アリスが居る方)
  • 西側(アリスの居ない方)
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