【オリキャラ生徒紹介】
元SRT特殊学園、Wolf小隊所属の兜衣トリコさんです。
真面目で実直な性格なので、クセの強い隊員たちの「お姉さん」。
でも隊長なのに潜入工作担当なのは、隊長を他のメンバーが出来ないと
言う理由の為、実力や信認でなったわけでは無いのを気にしているみたいです。
【固有武器】「トリウィア・ヘカトス」
武器種:ショットガン
トリコの愛用しているツインバレルショットガン。
潜入の際に持ち運びな便利で携帯性抜群のショットガン。
威力重視でツインバレルを更に切り詰めて使用している。
十字路の女神の名を持ち、その名の通り十字路で三方の敵に囲まれても、全てなぎ倒せる威力を持つ。
「随分と玩具にされたようだな」
地下室は女性特有の汚辱の臭いが満ちているのを、男は感じた。
懐かしい臭いだった。
戦場で、兵士は女子供をレイプするものだ。
捕虜を凌辱し、その尊厳を破壊する。
よくあることの、筈だった。
「…………」
「こっちを向け、お前が壊れていないことぐらいわかってる」
「もう好きにしたまえ」
一晩中弄ばれたカスミは、全てを投げやりにするくらいには十分な傷を負ったようだった。
「なんだ。純潔を失ったくらいで、この世の全てが終わったみたいな顔をして」
「……男性である貴方には理解できないだろうな」
「ふーむ、もしや理想の初体験の形でもあったか?」
「んなッ!?」
まさかそんなセクハラを受けるとは思わず、カスミは頬を赤らめた。
「おやおや、あれだけウズに遊ばれてまだ恥じらいが残ってたか」
「彼女は、女性だ。犬に嚙まれたとでも思っておくさ」
「ほう」
男はカスミの腹部を撫でた。
そしてゆっくり、その薄い胸板を撫でる。
「や、止めたまえ!!」
「じゃあ次は俺がお前の相手をすると言ったらどうだ?」
「……こ、これ以上、酷いことは止めて!!」
すぐにメッキが剥がれる。
所詮女子高生か、と男は内心笑みを浮かべた。
「わかった。もうお前には痛いことも酷いこともしない」
「…………ほ、本当?」
「ああ、隣に風呂がある。お前の為にお湯を沸かしておいた。
温泉ではないが、風呂に入れてやろう」
男の優しい言葉に、彼女は目を見開いた。
昨日あんなに脅され罵倒されたのに、そんな記憶はすっかり凌辱で吹き飛んでいたようだ。
「拘束は解けないがな」
「一先ずは十分だと言っておこうか」
風呂に入れるとなって、少しは余裕が出たらしい。
男はカスミの右腕の拘束を外し手錠を付けて、左の手に手錠を嵌めてから左手の拘束を外した。
その後に両足の拘束を外すと、彼女を風呂場に連れて行った。
「……なんで貴方は出て行かないんだ」
「いや。俺も一緒に入ろうかな、と」
「少し無神経じゃないのか!?」
「別にもうお前の全裸は見てるじゃないか」
「こっちがあなたの全裸を見たくないんだ!!」
「細かいことは気にするな。犬と一緒に入ると思えばいいだろ。
嫌なら風呂は無しだ」
「く、最悪な気分だ!!」
体液で体中汚れていて不快なカスミは、男の要求を受け入れざるをえなかった。
「ふう、いい湯だな」
「……」
「なにか言いたそうだな?」
「一人用の湯舟に、なんで我々は一緒に入っているんだ?」
「そうする以外に一緒に入れねぇだろうが」
体格的な都合上、男が先に入ってその上からカスミが入らざるをえない。
地下の浴室。
最低限のモノしか置かれていないそこに、身体を清める以外の機能は無い。
だから話題も続きようがない。
「もう出る」
「ダメだ、俺と一緒じゃなきゃ出さない」
「悪夢だ……」
カスミは天井を仰いだ。
そして無言が続く。
「あ、あの」
程なくして、カスミが口を開いた。
「やはり、男性は純潔を……処女を好むのだろうか」
「一般的にはそうらしいな。少なくとも嫌いな男はいないだろう」
「そう、か。そうだよな。……う、ううう、ぐす」
内股の痛みが、鈍痛が、カスミが内側に傷つけられたことを誤魔化すことを許さない。
その事実が、彼女を責め立てる。
「好きな人と、理想の温泉で、優しく抱かれながら愛を交わしたかったのに……」
そんな泣き言を言わせるくらい、彼女の心身は疲弊していた。
「俺は気にしねぇのにな」
「……え?」
「世間の男どもは処女に夢を見すぎなんだよ。
めんどくさいだけだぞ。こっちは早くヤリたいのに前戯をしっかりしないといけないし、初めて同士だと同時にイクなんてエロゲーぐらいしかありえないファンタジーの産物だ」
「そ、そうなのか」
「ああ、しかも童貞が処女を満足させるなんてほぼ無理らしい」
男はまるで彼女を慰めるようにそう言った。
「そろそろ出るぞ、これ以上はのぼせる」
「そ、そうだな。しかし一般的に風呂でのぼせるのは長時間の入浴以外にも熱湯に入ったり血圧の高さも原因なので、我々の場合はどちらも該当しないと思われるが」
「そんな小難しいことは聞いてないんだが」
カスミは急に恥ずかしくなって、早口で自分の知識を披露した。
二人が風呂から出ると、カスミの待遇は監禁からなぜか軟禁にまで緩和された。
彼女が拘束されている部屋内に限るとはいえ、手錠有りで歩き回ることを許された。
「く、スプーンのひとつでもあれば、穴を掘って逃げて見せると言うのに!!」
室内には脱出に使えるようなものは何もなかった。
風呂にも入って少しだけ余裕が出来たカスミは、色々と脱出の計画を練ろうとしたのだが。
「えへへ、えへ、カスミちゃん、ゴハン持って来たよ」
ぞくッ、とその声を聴いただけでカスミは背筋が凍る思いだった。
ドアが開いて、ウズがお盆に食事を持って来たのだ。
「今日も一緒に、愛し合いましょう?
とってもスゴイの、もってきたんだ。見て見て、DX水晶埴輪!!」
「い、いや、そんなの入らない……」
絶妙に気持ち悪い笑みで迫る彼女の手には、卑猥で太い大人のオモチャが握られていた。
「……カスミ部長。ここから逃げたいですか?」
しかし、急に彼女は真顔になった。
「な、なんだって?」
「実は今、私ひとりしか居ないんです。
今なら逃がしてあげられます」
「い、いいのか?」
普段の彼女なら、まず罠を疑うだろう。
だけど、この状況は異常で、彼女も正常とは言い難かった。
相手のメリットやデメリットを考えることぐらいしただろう。
「だって、カスミ部長はみんなに夢を与えてくれたじゃないですか。
それ自体は嘘じゃないって思って」
「……」
「これ、部長の携帯です。電池は抜かれちゃってるけど。
部長なら何度でもやり直せます、だってすごい人だから!!」
「は、ははは、そうだな!!
私はまだ見ぬ温泉を求めなければならない!!」
「ええ!!」
「そうとも、こんなところで閉じ込められているわけにはいかないとも」
「今、手錠を外しますね」
ウズは鍵で彼女の手錠を外した。
カスミは携帯を受け取り、ドアを開けた。
彼女の頭の中には、早くここから逃げなきゃ、という感情だけでいっぱいだった。
「なるほどな。反省の色は無し、と」
そして、案の定、罠だった。
「ごめんなさい、部長。
今日も好きにしていいからって言われちゃって」
目の前で待ち構えていた男と、左右を固める二人の部下。
硬直するカスミの身体を、背後から抱きしめ撫でまわすウズ。
「ち、ちが、これは、ちがくて」
「ボスと一緒にお風呂に入ったんですよね?
何もされませんでしたか? でもきっと穢れたと思うんです。
き、清めないと。私、頑張りますから!!」
「もういや、やめて……」
真っ青な表情で震えるカスミに囁くウズは、男の方を見た。
「ボス、メグ先輩も捕まえましょうよ。
私は先輩の豊満なボディに興味あります」
「調子に乗るな、サルみたいに盛りやがって」
男はカスミから携帯を取り上げ、手錠をかけて、今度は足枷まで付けた。
じゃら、と鎖に繋がった鉄球の重みが、彼女の今の全てを物語っていた。
「まあ、もうちょっとこいつに付き合ってやれや。
そうだ、今日は俺も混ぜてくれよ」
「えー。それじゃあ清めた傍から穢れちゃうじゃないですか。
女の子同士の間に挟まるとか死刑ですよ」
「安心しろ、お前の間に挟まる分には多分誰にとっても例外だ」
はははは、と笑う男がドアの奥へ彼女を押し込んだ。
がちゃり、とドアの鍵が掛けられる。
「出して、出してくれ、もうやだ、あんなのは!!」
「忘れていないか、カスミ。
もうお前の
どんどん、とドアを叩く音が、止む。
「これまで騙していた部員たちに詫びながら、一生そこで過ごすといい」
ドアの奥から、泣き叫ぶ声が聞こえた。
男は鼻を鳴らして、地下から地上に上がり、電話を掛けた。
「俺だ。カスミの
あとは懐柔に移る。子猫のように、可愛がってやるさ」
連絡を終えると、ウズ、と男は部下を呼ぶ。
「ボス、ここに」
カスミを撫でまわしていた人物と同一とは思えないほど硬い表情で、男の背後に跪く。
「トリコと共に、今日から温泉開発部の破壊工作を実行しろ」
「オーケー、ボス」
男は壊乱するテロリスト集団が絶望する光景を思い浮かべ、ゆっくりと笑みを浮かべた。
§§§
あの機密性の高い部屋での、作戦会議にはまだ続きがあった。
「──……このような段取りで、温泉開発部を壊滅に追い込みます。
委員長はその為の、演技をお願いします」
「素晴らしいわ」
アコが解説した作戦は実に悪辣で、戦うことなく相手を破滅に陥れるものだった。
「でも、この手の任務で私が戦う必要が無いと言うのも不思議ね」
「我が麗しのファム・ファタール。君が戦う姿なんて似合わないさ」
キヴォトスでも最強格の個人たるヒナの役目は、風紀委員会の長にして特攻隊長。
そのあり余る暴虐の力で、単身突入して敵を壊滅させることばかりだった。
「……組織の長が最大戦力で、戦わなければならない。
そんな脆弱な組織体制は終わりにしましょう。
組織とは、代替可能な個人の集合体。そうでないといけないんだ。
たった一人が抜けるだけで機能不全に陥るなぞ、それを組織などとは言わない」
「ええ、全く、耳が痛いわ」
男の提言に、ヒナは重々しく頷いた。
「オペレーションマニュアルの刷新が必要そうですね」
アコはそれの面倒さを思って、溜息を吐いた。
「あの、ボス。ひとつよろしいでしょうか」
「どうした、トリコ」
「どうか部員たちの処遇ですが、平にご容赦を」
トリコが頭を下げる。
「彼女達はただ純粋なだけです。
カスミ部長は悪党だとは思いますが、それでも彼女が与えた夢は本物です」
「銀行強盗すれば夢を叶えるカネが手に入る。
お前はそう言われて、銀行を襲うのか?」
「……」
「連中にもお灸をすえる必要がある。
お前達のように、善悪の区別ができて当然の年齢に、学校にまで通ってそれが出来ませんでは済まされない」
男の言葉に、トリコはうな垂れた。
どう言い繕うと、温泉開発部は罪を犯している。
それがキヴォトスの住人にとって真実なのだ。
「カスミをどうにかしても、彼女の植え付けた歪んだ思想は変わらない。
カスミを失っても、彼女達はそれぞれバラバラ行動するだけよ。
私達はそれを矯正しないといけない」
ヒナはそう言って、トリコの肩に手を置いた
「あなたの双肩に、彼女達の運命が掛かっているの。お願いできる?」
「……はい、委員長殿。学園を脱したとしても、この胸に宿る学園の理念は変わりません」
「そう。期待しているわ」
そして、作戦はカスミの目の前以外でも進んでいく。
『メグ先輩、メグ副部長』
『ん? なーに? えーと新入部員だったよね? たしか名前は』
『毒島 ウズと言います。苗字では呼ばないでください。
ちょっと相談が有ります』
『なになに? 何でも言って!!
次の現場のことで質問でもあるの?』
オペレーションルームで状況の推移をモニターしている風紀委員会の面々は固唾を飲んで見守っていた。
この時の為に、一週間以上前からウズは潜入をしていたのだから。
『私、情報処理が得意なので、予算や物資の管理を手伝っていたんですけど……なんだかお金の流れがおかしくて』
『うーん、ゴメン!! そういう細かいのは部長に相談してくれないかな!!』
『はい、相談したんですけど、気にするな、としか』
『じゃあ大丈夫なんじゃないかな』
『大丈夫、でしょうか。分かりました。ですが、少しだけ気に留めて置いてもらってもよろしいでしょうか』
『うん、わかった。お金が無いと建材も作業道具も買えないからね!!』
『はい、最近部長も体調が優れないみたいですし、これら全てをおひとりにお任せするのは忍びないですし』
『そうだね、こういう時こそ、みんなで頑張らないと!!』
『Wolf2からHQへ、今日の討論は終わった。次の日を待つ』
無色透明の液体に、一滴の毒を垂らす。
所詮は一滴。されど、毎日垂らせば毒の総量は増えていく。
「こちら作戦本部、Wolf1へ通達。
指定位置へ、“村人”たちを誘導せよ」
『了解、作戦を決行する』
カスミに扮したトリコが、アコの言葉に返答する。
『諸君、集まってくれ!!』
ぞろぞろ、と通信越しに部員たちが集まって来る音が聞こえた。
『実はアビドスにかつての伝説の将軍、トークナーガが湯治に使用した秘湯が存在していたと、とある古文書に記されていた!!
場所もおおよその範囲を特定済みだ、はーっはっはっは!!』
『秘湯!? じゃあ次はそこが現場になるんですね!!』
『うむ、しかしアビドスは広大だ。
簡単な開発にはならないだろう、しかし皆の協力が有れば不可能ではない!!
これまでの作業は切り上げ、こちらに全ての部員を集結させ、伝説の秘湯に全力投球するぞ!!』
了解でーす、と部員たちが撤収作業を開始する。
『こちらWolf1からHQへ、作戦通りアビドスにダウジングに向かう』
「了解、引き続き“占い”を続けてください」
アコは無線のスイッチを切った。
「どうやら、順調みたいだな」
イオリが安堵の息を漏らした。
「それにしてもよくアビドスの土地を借りられましたね。
この間、いざこざがあったばかりなのに」
チナツが疑問を口にする。
「あそこは砂漠ばかりだからな。どうせどこを貸しても大丈夫なんだろう。
こっちも誰にも迷惑を掛けずに作戦を実行できる」
「ヒナ委員長には交渉の為に骨を折って頂き、感謝しています。流石委員長です」
アコはずっと座って待機しているヒナをヨイショした。
作戦に使う砂漠がある土地の交渉はヒナが行ったのだ。アコ達もこの間のことなので顔を合わせずらかったのもある。
「構わない。それに面白い話を聞かせてもらった」
「面白い話?」
「もしかして、まだ分からないの、アコ」
「も、申し訳ありません。
非才の身で、委員長のお考えを察することが出来ず」
「そこまで遜らなくていい」
ヒナは首を振って見せた。
「報道を利用した人心操作。テロリズムへの深い理解と手法。
そんな相手を、我々は先日相手にしなかったかしら?」
「ッ、まさか、アビドスの!!」
そこまで言われて気づけないほど、アコは愚鈍ではなかった。
「ええ、あの男こそ、アビドスの悪魔の正体だった」
「なんてことでしょうか……」
ヒナの齎した事実は、アコに衝撃を与えた。
「なんですか、それは?」
イオリは話に付いて行けなかった。
アビドスの悪魔だなんて、ゴシップの域を出ない話であった。
「先日、情報部はアビドスで十数名ほどの、重傷を負った精神錯乱状態のヘルメット団を発見した。
報道はされてなかったけど、その殆どに苛烈な拷問や虐待の形跡が認められたそうよ」
「うわ」
苛烈な拷問や虐待、と聞いてイオリも顔を顰めた。
「あなた達をやり込めたあの手法、彼の教えの賜物だったみたいね」
「それが、今度は我々を味方している。因果なモノですね」
チナツはそれを聴いても驚かなかった。
もっと非実体的な概念的な怪物だとしても、驚かなかっただろう。
それくらい、あの男は常軌を逸していた。
「キヴォトスの生徒の誰も持ち合わせていない思考回路。
感情的でありながら並行的に合理性を有し、悪逆非道でありながら善性を失っていない。
実に興味深いと思わない?」
幹部たちは何とも言い難かった。
彼のせいで少しの間落ちぶれ、彼のお陰で風紀委員会は躍進を始めた。
あらゆる意味で狂ってるし、イカレている。
そう表現するしかない。
「前回の作戦で彼の有能さを見せて貰った。
今回の作戦では、彼の本質を見せて貰う」
ヒナはこの場に居ない男の姿を思い描き、目を細めた。
§§§
「い、いやだ、もうやめてくれ」
「よかったな、今日はウズは仕事だ。
だから代わりに俺がお仕置きをする」
カスミは地下室の台座に大の字で拘束されていた。
その上で、目隠しもされている。
「もう酷いことをしないって、言ったのに!!」
「お前が逃げようとしたのが悪い。
俺もこれ以上、手荒なことはしたくなかったんだが」
男は震えるカスミを見て笑う。
「さて、今日の風呂の心地よさをよく噛み締めておけよ。
なにせ、もう何か月は風呂に入れなくなるんだからな」
「ま、まさか!!」
「お前の想像通りだ」
男の冷酷な言葉に、カスミは泣き叫ぶ。
「いや、いやだぁ、お風呂に入れないなんて、死んだ方がマシだ!!」
「じゃあ死ねクソ女。
舌を噛む勇気はあるか? あれは舌の根元を噛み千切らないと出血死できず、苦しむだけだから気を付けろよ」
そんな度胸は女子高生に無いと分かっていて、男は助言をした。
「ぶ、部員のみんなには謝る、もう二度と迷惑を掛けたりしないからぁ!!」
「さて、どこに掛けようかな」
目隠しされたカスミには、いつどこに毒液を掛けられるか分からない。
それが恐怖をさらに搔き立てる。
「ここにしよう」
カスミの右腕に、焼けるような熱さが襲った。
じゅうううぅぅぅ、と肉が焼ける音と臭いが地下室に充満する。
「あああああああああぁぁぁぁ!!!」
激痛に、カスミの記憶が走馬灯のように流れる。
「参ったな、風紀委員会め本気だぞ」
風紀委員会の宣戦布告から三日、早くもカスミは焦りを感じていた。
自分たちの資金源を次々と特定され、もう既に十人以上の部員が検挙されている。
いつもの風紀委員会なら大兵力を動員してこちらに攻撃してくるのに、連中はやり方を変えた。
少数で隠密性を重視し、こちらから孤立した部員を集中して狙って行った。
これまでと行動パターンが違う。
事前に動きが察知できない。
真綿で首を絞めるように、少しずつ少しずつ追い詰められていった。
そんな折、こんな報道があった。
『温泉開発部の諸君。
風紀委員会は諸君らの建築技術を高く評価している。
我々と、諸君は和解が可能なはずだ。
その為に交渉の場を用意したいと思う。こちらの誠意を見せる為、部長の鬼怒川カスミを指名手配から解除し、逮捕した部員の解放を行う。
交渉に応じた場合、温泉開発部の正式な活動を認める。より良い返事を期待している』
と、棒読みでカンペを読んでいそうなヒナの姿が報道された。
罠である。
むしろ罠じゃない方がおかしい。
しかし、このままでは来週の温泉開発に60%の遅延が見込まれる状況だった。
カスミに選択肢は無かった。
だが彼女も馬鹿ではない。自分が帰ってこなかった場合や、自分を餌に部員たちに投降を呼びかけられた場合など、様々な指示を文章にして部員たちに周知させた。
ただ、あの男の悪意はカスミの頭脳を上回っていた。
ただそれだけの話だった。
「どうだ、焼かれたところの感覚は無いだろう?
お前の肌は醜く焼け爛れて、見るも無残な有様だ」
男はビーカーに入れた液体を、カスミの腹部に掛けた。
「あづいいい、あづいよぉぉ!!」
ぱたぱた。
ごぽごぽごぽごぽ。
ムツニが七輪で焦げたサンマの臭いを団扇でカスミに送っている。
ナバトは電気ケトルで沸かしたお湯の温度を測り、ビーカーに移し入れた。
「次は右足にしよう」
男は、そのビーカーを手に取り、カスミの左足に熱湯を掛けた。
その瞬間、ナバトは七輪に豚肉の切り落としを乗せた。
じゅううぅ、と肉の焼ける音がする。
「いだいぃぃ、もうごろじでぇぇえ!!」
「ダメだね」
熱湯を掛けられ、のたうち回るカスミ。
60℃くらいのお湯で、彼女は苦しみ悶えていた。
人間は想像力だけで、内出血を引き起こしたり、ショック死が可能だ。
目隠しをした被験者にナイフで腕を切ったと教え、血が流れていると言って水をそこから垂らすと言う実験を行った際、実際に死亡事故が起こっている。
「ほら、もうお前の身体は焼け爛れ、誰が見てもお前を愛そうとは思わないだろう」
「……」
カスミは動けない。
自らが想像する激痛に、彼女は疲れ果てていた。
「もう、おんせんがたのしめないなら、わたしに、いきるいみなんて」
「俺は愛してやれるぞ」
「……へ?」
「どんな姿になっても、俺はお前を愛してやれる」
男は心にも無い事を口にして、カスミの頭をバグらせていく。
「俺を愛すると言え。
そうすれば、俺も無償の愛をお前に与えてやる。
お前の醜い体を、恋人のように優しく抱きしめ、お前の苦痛に満ちた初体験の記憶を上書きしてやる。
お前が俺を愛するなら、その体を治療して、もう一度温泉を掘らせてやる」
「……ほんと?」
「ああ」
男はカスミを抱きしめた。
本来なら毒薬で焼かれて感覚が無いはずなのに、弱り切ったカスミはそんな矛盾に気づかず男の温もりに安堵した。
「あッ、愛してる!! 頑張って好きになる!! だからもっと優しくして……」
男はニヤリと笑った。
本当に女と言う生き物は度し難い、とでも言いたげに。
「勿論だ。お前が俺に従順になるなら、きっと愛してやれるさ」
身体は好みだしな、と余計な一言も忘れない。
「これはひどい……」
「やっぱりボスは撃ち殺した方が良いんじゃ……」
この悪魔の所業の一部始終を手伝う羽目になったムツニとナバトは、この女の敵に白い目を送っていた。
とりあえず二人は、恋人のように口づけを交わす加害者と被害者を尻目に、用済みになった七輪と電気ケトルを片付けることにしたのだった。
正直、前回の描写でもっと批難轟々になることは覚悟していましたが、R18で書いていたのもあってか、そこまで反響が無く安堵している次第です。
それより、二話で終わると確信していた温泉開発部編が三話構成になりそうなのがね。
自分の見通しの甘さがイヤになります。
だって、書けば書く程情報量が増えるんだもの!!
次回こそ、本当に最後になる、はず!!
では次回!!