※この作品はR-18です。

キヴォトスに墜ちた悪魔   作:やーなん

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伝説の武器

 

 

 

 アリスの武器を探しに、エンジニア部へと行くことになった。

 そして。

 

 

「お嬢さん、俺と一緒に夜のベッドで君の次世代型有機ユニットを作らないかい?」

「ははは、そんな直球に口説かれたのは初めてだな。意外と悪い気はしないね」

 

 部長のウタハを男は口説いていた。

 

 おい、と皆が思った。

 

「宇宙戦艦建造には途方もない時間と予算が必要だろう。

 ここは我が子に夢を託すと言うのも悪くない選択かもしれない」

「おっと、思いがけない好印象」

「だが!! それを成すにはまだ私は若い!! 

 十年後くらいを視野にプランニングをしておいておくれ」

「よっしゃ、じゃあ十年後な!!」

 

 男はウタハを口説き終えると、何食わぬ顔で一行の下に戻って来た。

 

「さて、欲しい武器は決まったのか?」

「“なにからツッコめば良いのかわからない……”」

「何を突っ込むって、……俺のナニ?」

 

 先生は手の裏で男をバシンと叩いた。いい音がした。

 見事な漫才であった。

 

「“子供たちの前なんだが”」

「俺が誰を口説こうが、俺の自由だろ!! 

 しかもちゃんと十年後に予約を付けたぞ!! あんたに文句を言われる筋合いは無い!!」

「“うぐぐ”」

 

 目の前でナンパを成功させてみせた男に、先生はウタハの自由意思なのもあって言い返せないでいた。

 

「今のって、体よく断ったんじゃないの?」

「いや、ウタハ先輩のことだからマジかも……」

 

 モモイとミドリはお互いに鏡合わせのように顔を見合わせ、困惑していた。

 

「これは、オオカミさんの部長さんルートのフラグが立った!! ということですね!!」

「うん、まあそうだね……」

 

 とりあえずユズは消極的な相槌をアリスにしておいた。

 

「わー、流石先輩!! モテモテですねぇ!!」

「とりあえず先生よ、俺に何か言う前にそこの痴女の着こなしを指導した方が良いんじゃないか?」

「“絶妙に指摘しづらいことを言わないでくれ……”」

 

 コトリに煽てられ、優越感マシマシのドヤ顔を披露するウタハ。

 そして彼女の後輩を示し、難しい顔をする大人二人だった。

 

「……部長、そろそろ彼女達を案内してあげよう」

「それもそうだね!!」

 

 ご満悦なウタハに対し、ヒビキが軌道修正を図る。

 

「お、こっちの子もなかなかに良いが、今日はもうウタハちゃんを口説いたしな。君は一年生だっけ? 三年後に予約するかい?」

「え、……いや、その、……困る」

「おっと、これはごり押ししたら行けるかもな……」

「“いい加減にしなさい”」

 

 ヒビキから男を引き離す先生。

 この数分で何度目か分からない溜め息を吐いた。

 

「俺が悪いんじゃない、彼女らが魅力的なのが悪いんだ」

「じゃあ、私も口説いてくれますか!!」

「ははははは、失せろ痴女」

「そんなぁ!?」

 

 コトリ、撃沈!! 

 

 

「“まったく……”」

「安心してください、先生!! 

 オオカミさんはちゃんと18歳まで待ちます!! 

 エロゲーを18歳未満がプレイできないのと同じです!!」

「“……そうだね”」

 

 それって女性をエロゲー扱いしているのと同じでは、とは言えない先生だった。

 

「保管庫はあっちだってよ、さあ行こうかマイフェアレディ」

「はい、オオカミさん!!」

 

 男とアリスは仲の良い親子のように手を繋いで保管庫に向かう。

 

「“マイフェアレディ、か”」

 

 彼の言う“マイフェアレディ”。それは同名のミュージカルにちなんでいるわけではないと、先生は思った。

 ミュージカル、その原作、元ネタと呼ばれるお話しが存在する。

 

 それは、戯曲『ピグマリオン』である。

 現実の女性に失望したピグマリオンという男が、理想の女性の彫像を掘った。

 彼はそれを人間のように扱い、そして恋をしてしまう。

 恋するあまりに男は衰弱し、それを憐れに思った美の女神が彫像に命を与え、男は彼女を妻に向かえる。そう言うお話だ。

 

 男は彼女達を見た。

 

「オオカミさん、アリスだけ特別扱いしていない!?」

「そうです、私達の扱いだけ雑じゃないですか!?」

「はあ? いつか劣化する憐れな生き物どもが、アリスこそ至高の美少女だろうが!! 特別扱いして当然だ!!」

「ふ、ふざけるなぁ!! このロリコン!!」

「私たちももっと女性扱いを要求します!!」

「あー、じゃあ三年後な」

 

 双子は男の雑な対応にカチンと来たようだ。

 

「先生、私達は私達でいちゃいちゃしよう!!」

「見せつけてやりましょう!!」

 

 先生の両脇を双子が固める。

 先生は遠い目をしながらなすがままになった。

 そそそ、とユズも控えめに先生に近づいてくる。

 

「はははは、愉快だな彼女達は!!」

「うぐぐ、いつか見返してやります……」

 

 そんなゲーム開発部と大人たちを、ウタハは笑って、コトリは歯噛みし見ていたのだった。

 

 

 

 §§§

 

 

 一行は保管庫にある武器を物色する。

 保管庫には所せましと無秩序に多種多様の物品が保管されていた。

 

「これは?」

 

 男は置いてあった拳銃を手に取った。

 

「それを手にするとはお目が高い。

 それはBluetooth機能付き拳銃だよ」

 

 ヒビキが作成したのか、事細かくその機能について説明してきた。

 コンビニ決済もできるだの、ファイルの送信も可能だの、凄まじいカタログスペックである。

 

「それ、銃弾をぶっ放した時の衝撃でイカレたりしないのか? 精密機械だろ?」

「あ、試作品だし、耐久試験はまだやってない」

「おいおい、大丈夫か。銃ってのはな、こう言うので良いのさ」

 

 男は己の愛銃を取り出した。

 

「漫画ブラックラグーンのヒロイン……ヒロイン? まあヒロインとしておこう。彼女みたいに銃は弾が出れば良い、だなんてのは言語道断だが、銃に求められるのは機能美。それに尽きる」

「まあ、武器として最低限の安全性を担保した上で、そう主張するのも理解できる。

 でも私達はミレニアム学園のエンジニア部、最先端を行く集団だから」

「ならその最先端技術で、ゴルゴ13に出てくる超一流のガンスミスみたいな、ゴルゴのクソ細かい要求を満たせるような銃も作れるのか?」

「当然」

 

 ヒビキは自信満々に頷いた。

 

「なら作って欲しいものがある」

 

 男は事細かくヒビキに己の要求を伝えた。

 

「出来るか?」

「余裕」

「今後ともミレニアム学園とは良い取引が出来そうだ」

 

 明日には用意できると、ヒビキは豪語した。

 

「ゲーム開発部の連中に会わなかったら、俺はお前たちに依頼しただろうな」

 

 ユウカの言う通り、その方が確実だったのかもしれない。

 だが、それだと男はただ客人のままで終わっただろう。

 実益では得られない価値を、男は既に手に入れていた。

 

 

「ん?」

 

 すると、アリスがなにやら一点を見つめていた。

 

「これは?」

「ふっふっふ、お客さん、お目が高いですね」

「コトリちゃん、これはなに? 大砲みたいに見えるけど」

 

 アリスが注目する物体を解説すべく近づくコトリ、同じく気になったミドリが尋ねた。

 

「良い質問ですね、ミドリ。これはエンジニア部の下半期の予算、その七割近くをかけて作られた、エンジニア部の野心作!! 

 ────宇宙戦艦搭載用レールガンです!!」

「レールガン!! では大型二足歩行ロボットに搭載して、どこからでも核弾頭を発射できるのですか!?」

「あ、いえ、宇宙戦艦搭載用ですので……」

「アリスが言っているのはこう言うのだ」

 

 男が携帯ゲーム機を起動して、元ネタを見せる。

 

「おお、こういう大型の二足歩行兵器もロマンがあっていいな!! 

 なになに、他にもレーザーやガトリング、ミサイルも搭載しているのか!! 

 わざわざ弱点があるのも可愛らしいじゃないか」

「“作れるの!?”」

「作ってみたいな!! デブリ迎撃用の搭載兵器としてなら活用できるな!!」

「“ぜひ作ってみて!!”」

 

 先生とウタハも大盛り上がりである。

 

「これがあれば、シャドーモセス島の猛吹雪の中でも狙撃戦ができますね、オオカミさん!!」

「ああ、牛の泣き声みたいなモーター音の二足歩行戦車も一捻りだな!!」

「アリス、これ欲しいです!!」

 

「そうか、欲しいのですか。この『光の剣:スーパーノヴァ』を!!」

 

 コトリがそのレールガンの名称を口にすると、アリスがもっと目を輝かせた。

 

「聞きましたかオオカミさん!! 

 これを装備すれば、アリスも手術無しで星辰奏者(エスペラント)になれるみたいです!! “勝つ”のはアリスです!!」

「総統閣下ごっこが出来るな!!」

「他にもバルザイの偃月刀とかありませんか?」

 

 アリスは他にも面白い武器が無いか探し始めた。

 

「“バルザイの偃月刀って……確実に悪影響を受けてる”」

「安心しろ、ちゃんと全年齢版をやらせた。デモベ主人公の股間のフランスパンと比べられたくないしな」

「“そう言う問題じゃない……”」

「くくく、その様子だとまだ気づいていないようだな、先生」

「“なに黒服みたいな笑い方を……”」

 

「アリスにやらせたエロゲー……デモンベイン、シルヴァリオヴェンデッタ、ランスクエスト、沙耶の唄、これらエロゲーに共通するのは何だ?」

 

 言われて、先生はハッとなった。

 

「“ッ、まさか!! メインヒロインがロリ属性!?”」

「やっと気づいたか。アリスは俺が真性のロリコンだろうと、もはや嫌悪感を抱くことはないのだ!!」

「“……どうやら君とは本格的に話し合いが必要そうだね”」

 

 先生は上着を脱いで、ワイシャツとズボンだけになった。

 

「良いぜ、来いよホワイトカラー、相撲でもプロレスでも相手になってやる」

 

 男も軍服を脱いで、上半身裸になった。

 

 そして始まる、お互いに譲れないモノを掛けた戦い。

 

 

「なにやってるの、あの人たち」

「さあ……」

「あ、あわわ、喧嘩はやめてください!!」

 

 なお、ゲーム開発部の面々は話に付いて行けなかった模様。

 

 男たちが信念を掛けた戦いをしてる横で、アリスとエンジニア部は本格的に持ち出しの話をしていた。

 

「光の剣:スーパーノヴァ」を気に入ったアリスだったが、エンジニア部の面々は難色を示した。

 キヴォトスではガトリング砲をぶっ放す生徒が珍しくない為忘れられがちだが、あんなのはヘリとかに搭載する兵器である。

 それと比べてもこのレールガンは個人携行するにはあまりにも重すぎる。

 

「持って行けるのならば、本当にあげたいところなのだけれど……」

「魔剣カオスのように、所有するには資格が必要なんですね!!」

「ああうん、まあ有り体に言えばそうだけど」

 

 そんな人間居るのかな、と思うウタハだった。

 

「大丈夫です、アリスのレベル限界は無限です!!」

 

 そう言って、アリスはレールガンに触れる。

 

「これで、無敵結界も怖くありません!!」

 

 ぐ、っとアリスは140キロの鉄塊を持ち上げた。

 それはまさしく、アーサー王が岩に刺さったカリバーンを抜くかのような、そんな光景だった。

 

「……も、持ち上がりました!!」

 

 自分の体積よりも大きな物体を、アリスは手にしていた。

 

「うそ、クレーンでもないと持ち上がらないのに……」

 

 ヒビキはその光景に絶句していた。

 

「えっと、これがBボタンでしょうか?」

 

 無邪気にアリスはレールガンの引き金を引いてしまった。

 

「待っ──」

 

 ヒビキが止める間もなく。

 

 轟音!! 

 

 レールガンから発射された飛翔体が閃光のような軌跡を描いて、エンジニア部の部室の天井が消失した。

 

 その爆音に、友情を深め合っていた男たちの手も止まる。

 

「すごいです、白色破壊光線みたいです!! 

 これは魔剣カオスではなく、クリスタルロッドだったのですね!! アリスはまそーさんになりました!! 魔法技能レベル2を獲得です!!」

 

 皆が呆然としている中で、アリスだけが無邪気に喜んでいた。

 

「まさか、本当に使えるなんて……で、ですが、それだけは、その!! 

 予算とか諸々の問題で、出来れば他のでお願いしたく!!」

「いや……構わないさ。持っていってくれ」

 

 本当に使えると思わずにコトリが動揺していると、それを遮りウタハは言った。

 

「ウタハ先輩、本当に良いんですか?」

 

 相当高価な代物をあげると言われて、ミドリも不安そうだった。

 

「ああ。どちらにせよ、この子以外には使えないだろうからね」

 

 そしてウタハはレールガンに取っ手と肩ひもを付けるようにヒビキに言った。

 

「……前向きに考えると、実戦データを取れるようになったのはありがたいかも」

 

 戦艦搭載用の武器なんて、そうそう使う機会に恵まれるわけもない。

 そもそも、試射するのにも毎回重機を使って持ち上げる必要がある。彼女たちはそこまで暇ではない。

 

 本当に貰えるということになり、モモイもアリスも大喜びだったのだが。

 

「ただし……条件がある。ヒビキ、以前に処分要請を受けたドローンとロボットを全機、出してくれるかい?」

「……うん」

 

「その武器を本当に持っていきたいのなら」

「私達を倒してからにしてください!!」

 

 そして早速、実戦データの採取が始まったようだ。

 

「先生、一時休戦のようだ」

「“……そのようだね”」

 

 先生にヘッドロックしていた男は技を解いて彼を放した。

 そうしている合間にも、次々と戦闘ロボやドローンが展開されていく。

 

「……おじさんも、私達に道具を作って欲しいのなら、それを使いこなせるというところを見せて欲しい」

「だそうだ、お前ら」

 

 ヒビキの言葉を受け、男が部室の入り口を振り返る。

 直後、Wolf小隊がドアを蹴破り、突入してきた。

 

「さて、状況開始と行こうかね」

 

 戦闘が始まり、男がニヤリと笑った。

 

 

 

 

 結果として、「光の剣:スーパーノヴァ」はアリスのモノになった。

 

「先生、気づいてるか?」

「“まあ、ね”」

 

 帰りの道中、子供たちが喜んでいるのを後ろから見ながら、大人たちは小さく会話を交わす。

 

「普通、あんな子供みたいなロボットにあんなデカ物を発射する姿勢制御装置や、武器管制システム、射撃統制システムが積んであると思うか?」

「“……いや”」

「恐らく、ウタハって嬢ちゃんも気づいてたはずだ。

 くくく、いったいどっちのデータを取りたかったんだろうな、彼女は」

「“……”」

「この世で唯一、機械では代替できない部品がある。

 それは、“人間”だ。人間の汎用性は、機械では再現できない。彼女が人間に似せられているとしたら、その用途は明確だ」

「“汎用的な戦闘兵器”」

「ああ、エヴァンゲリオンと同じだ」

 

 男は無邪気に喜んでいる少女たち、いやアリスを見やる。

 

「少なくとも、うちのガラテアに命を与えた存在は、アフロディーテのような美の女神ではないということだ」

 

 だと言うのに、男は笑っていた。

 ゲーム開発部はとんでもないモノを掘り当てたかもしれないと言うのに。

 

「まったく、モノにし甲斐があるぜ」

 

 そこまで分かっていて萎えない男に、先生は心の底から呆れたような顔を向けた。

 

「“彼女はもう、私の生徒だ。彼女を守る為に、そしてその周囲を守るために、私も全力を尽くそう”」

「良いだろう、俺も卒業までは待ってやる」

 

 保証はしないがな、と内心付け加える男だった。

 そうして話し合いが終わった大人二人は、楽しそうにしている四人の青春がずっと続くことを願った。

 

 

 

 





まさかレールガン獲得に一話つかうとは。
本当に、何話で終わるんでしょうね(遠い目

ところで読者の皆様におかれましては、クリスマスはいかがお過ごしでしょうか。
作者は女の子と一緒に過ごしますよ。バイトの仕事だがな!!

憐れに思うなら高評価とか感想とか下さると幸いです。
ではまた、次回!!
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