今回はWolf小隊の紹介回の第三回!!
AIイラストを使用していますので、ご留意のほどを。
【絆ストーリー:Wolf小隊随一の問題児?】
先生は派遣されてきた社員生徒たちに書類仕事など代行を出来る範囲を教えて、本格的に先生の仕事は書類に判子を押すだけになろうとしていたのだが。
──Alert‼ Alert‼
突如として、シャーレのオフィスビルに警報が鳴った。
派遣生徒たちはマニュアルに従い、避難を開始する。
『毒物を検知、隔壁を下ろします!!』
「“アロナ、いったい何が起こってるんだ!?”」
『居住エリアで毒ガスが発生したみたいです!!
只今換気中ですので、少々お待ちください』
「“ど、毒ガス……?”」
先生は頃合いを見計らい、毒ガスが発生した居住エリアに向かった。
シャーレの保全作業を担っている清掃ロボット達が消毒している中で、ヤクザのフロント企業である元マーケットガードの警備員がガスマスクを付けた下手人を取り押さえていた。
「あ、先生。この方たちに説明をお願いします」
誰あろう、今日の当番であるWolf小隊のムツニであった。
先生は警備開始初日から出動する羽目になった彼女達に何とか説明し、シャーレの関係者であると説明して何とか彼女は解放された。
「“……ムツニ、いったい何をしていたんだ?”」
先生は、このムツニこそWolf小隊で一番の問題児であると、男に聞かされていた。
先生としてはあのウズより上と聞いて戦々恐々としていたが、まさか初回からそれを思い知る羽目になるとは、と頭が痛い思いだった。
「それより先生、助けていただきありがとうございます。
お礼に後でナバトをファックしていいです」
「“え、遠慮しておくよ……”」
先生は自分でも頬が引きつるのを感じた。
割と冗談じゃなさそうなところが生々しかった。
「“それで、毒ガスなんて持ち出して、なにをしたんだ?”」
「実は、自決用の服用毒を調合していたんです。
それは終わったのですが、つい毒薬の調合に入れこんじゃって。
うっかり自室の密封が完全ではなかったみたいで」
たはは、とうっかりミスにはにかむムツニ。
先生は頭が痛くなるのを感じた。
「“……なんで、自決用の毒なんか作ってたんだい?”」
「それは、ボスがいざと言う時に私達を置いて行くつもりみたいだからですよ。
私達が死んだら自分も死んでくれるくせに、ズルくないですか?」
「“…………”」
重い。先生は何も言えなくなった。
つい先日のブラックマーケットの一件で、男はWolf小隊を置き去りにして死地に赴いた。
それについて彼女達は相当な抗議をしたと聞いていた。
彼女達と男は一心同体。
命を疑似的に共有することで、強固な絆としているのだ。
相変わらず、先生には認められないやり方であった。
「“とりあえず、毒は没収だよ”」
「えー」
ムツニは不満を漏らしたが、先生は譲らなかった。
そうして毒薬を没収すると、彼女は肩を落とした。
「取り扱いには注意してくださいね。
ちゃんとした業者に処分を依頼しないと大変なことになります」
「“……はあ”」
思わずため息が漏れる。
これについてはあの男に相談することにした先生だった。
「処分が面倒でしたら私に返して貰ってもいいですよ。
あ、今なら私の身体を好きにしても構いませんよ♪」
「“遠慮しておくよ……”」
ウズと言い彼女と言い、なぜこうも性に奔放なのだろうか。
先生は相談ついでに男に説教をすることも決めた。
「あッ、もしかして先生もボスみたいな性癖なんですか?
わかりました。私だけでなくナバトもつけましょう、これでどうです?」
「“……ナバトと君は恋人同士じゃないのか?”」
いい加減その話題から離れて欲しい先生は、そう言った。
「ええ。でも私達はお互いに愛し合う以外だと、私の日でもナバトが一緒なので。
ヒドイと思いません? ボスは私の身体じゃ興奮できないから、ナバトをイジメてから私とするんです!!」
聞きたくもない性事情であった。
思わず先生はムツニの容姿を確認する。
ショートカットの金髪で、Wolf小隊の面々の中では一番のプロポーションを誇っていた。
たしかにこれではあの男の琴線には響かないだろうな、と思ってしまう先生だった。
「“君も学生なんだから、自分の身体は大事にしようね”」
「はあ。なにパパ活おじさんが賢者モードのピロートークにするみたいな説教しているんですか」
流石に真剣に心配してるのに、この物言いには先生はカチンと来た。
「“もしもし、私だけど。うん、ムツニが毒ガス騒ぎを起こした”」
「あッ」
先生は彼女の保護者に電話を入れた。
直後、ムツニのスマホに電話が掛かって来る。
「み、三日間禁欲と猥談禁止だなんて、そんなぁ!!」
男からそんな宣告を受けたらしいムツニは涙目になった。
「て、貞操帯を付けてきます……」
そんなものが必要になるくらいには、彼女はやらかしてるらしい。
先生は何度目か分からない溜息を吐いた。
§§§
さて、事務仕事が大分簡略化されたことで、先生は各学園の依頼の解決を奔走することに集中することができるようになった。
後は、夕方にオフィスへ戻って二時間くらい書類の決裁をすれば仕事が終わる見込みだ。従来の場合、先生が現場に行かないと解決できない問題を解決をしていると、その間も書類は山積みになっていくのだから地獄極まりない。
そしてどうしてもすぐに先生に処理してもらいたい書類がある場合、電子化して観覧できるような仕組みも提案された。
派遣社員の元生徒たちは、優秀だったのである。しかも住み込みで働くだけあって、夜勤シフトまで組んで対応もしてくれるという。
「“もっと早くやればよかった……”」
先生は教師なので、組織の運営は専門外だった。
そんな彼が後悔するぐらい、今日は快適だった。どこかの誰かが毒ガス騒ぎさえ起こさなければ、もっと楽だったに違いない。
特に外回りが終わっても、書類が山積みでは無いという精神的な余裕があるというのが素晴らしい。
「はあ、貞操帯が食い込んで痛い……」
先生はムツニの声を無視した。
鉄製らしく、これ鍵です、なんて言われて渡された時なんて卒倒しそうになった。
彼女は無駄に律儀だった。
「うちのボスは多芸でしょう?
先生はもっと他人に頼ることを覚えた方がいいと思いますよ。
ボスは大人と子供の違いを、他人を頼れるかどうかだって言ってましたし」
「“急にまともなことを言われると、脳がバグりそうになるんだけど”」
「でも、先生の知っている生徒にも、他人を頼れない子って多いでしょう?」
「“それはそうだけど”」
何だか彼女に指摘されると釈然としない先生だった。
今日の仕事を終え、車でシャーレのオフィスに戻ろうと、先生が運転をしていると、信号待ちになって停車した。
すると、バックミラー越しに後部座席のムツニがドアガラス越しに何かを見ていた。
「先生、ちょっと出て良いですか?」
「“え、うん、いいけど”」
ムツニは先生に許可を取ってからシートベルトを外し、車から外に出た。
気になった先生はハザードランプを点灯し、路上駐車をして彼女を追いかける。
「こらー、アリさんをイジメちゃダメでしょ!!」
「お姉ちゃん、誰?」
「ちぇ、つまんないの。行こうぜ」
ムツニはすぐそこの公園に居た。
どうやら、子供たちがアリの巣にイタズラをしているのを見咎めたようだ。
子供たちが年上の人間の登場に退散すると、当人は水浸しになっていたアリの巣を見下ろしていた。
優しいんだね、と先生が声を掛けようとした時だった。
ぎゅ、ぎゅ、とムツニはアリを踏みつぶし始めた。
「バカみたい。アリの巣は構造的に水攻めに強い。水を流し込んでも、表面の入り口が無くなるだけなのに」
ムツニは拠点破壊・爆破のスペシャリスト。
そんな彼女には子供のイタズラが滑稽に見えたのだろう。
だが、今日一日の印象から先生はその彼女の様子が異様に見えた。
「“止めるんだ。ムツニ”」
先生の言葉に、ぴたりと彼女はアリを踏みつぶすのを止めた。
「はい、先生。帰りましょう」
先生は頷いた。すぐに二人は車に戻った。
車が発進してすぐ、彼女は口を開いた。
「私は幼い頃、気味の悪い子供だったらしいです」
「“……”」
「らしい、と言うのは私の主観的な伝聞で、実際にはどの程度真実と乖離しているのか分かりませんけど」
ムツニはまるで言葉を探すように、少しの沈黙が流れた。
「先生は、男性が股間を蹴り上げられる映像を見て、共感して身震いとかしてしまいますか?」
「“まあね”」
「私はそう言った、他人の痛みに共感が出来ないんです。
普通、人を殴る時って、忌避感が先行するらしいんですけど、私の場合そう言うのが無いそうなんです」
「“……そう言う話を、聞いたことはある”」
ヒトは約2%の確率で、殺人への忌避感を抱かないまま産まれるという。
百人に二人。それを多いと見るか、少ないかと見るか。
「“でもそれは、別に君だけじゃない。君は特別おかしいとか、そう言うわけじゃない”」
「ええ、私もそう思います。
毒薬の調合とかは、まあそう言った共感性を得る為の趣味と実益みたいなものです」
「“……”」
そう言われては強く言えない先生であった。
「昔は、さっきの先生のようにナバトが私を引き留めてくれました。
トンボの羽を毟って遊んだり、毛虫を触ってどうなるか試していた私をよく叱ってくれたんです。
変わった子だった私を、孤立させまいといつも一緒に居てくれた。
だからSRTに入ったのも、あの子の為でした」
正義感の強い子ですから、とムツニは淡々と振り返った。
「共感性の無い私でも、そこでの訓練の挫折と、落ちこぼれになった劣等感は理解できました。
笑ってしまいますよ、私達の成績は後輩にすら劣っていたんです。
ナバトは、それに耐えられなかった。ウズはともかく、トリコ姉さんが赤点を取ったのをきっかけに、私達はSRTから身を引きました。
それから私達は身を寄せ合うように生きてきました」
「“そして、彼と出会った”」
「ええ」
ムツニが恍惚の表情になったのを、先生はバックミラー越しに見えた。
「ボスは私達に愛し合うことを教えてくれました。
最初は恥ずかしかったけど、すぐに私とナバトはお互いにのめりこみました。恋というほどではなかったですけど、ずっと意識していたので。
ある種の共依存、そう捉えて貰っても構いません」
それを聴いて先生は思い出す。
共に死を選べるほど、完成された二人を。
ある意味で、彼女が自分の身体の価値を軽視しているのは、相方へのポーズのようなものなのかもしれない、と先生は思った。
相手が心配し、想ってくれることを確認する為の、歪んだ確認作業。
「ああ。ナバトは私やウズと違って普通なので、明日は安心してください」
「“そう願うよ……”」
それが壮絶な前振りだったことを、この時の先生は知る由もなかった。
本当にナバトが普通なら、小隊でも戦闘力に優れた彼女が隊長になったはずであると、この時先生は思い至らなかったのである。
そんな雑談が終わる頃になって、車はシャーレのオフィスビルに到着した。
「ちょっと喉が渇いたので、自販機に寄ります」
ムツニはシャーレの入り口の横に設置されている自販機の前に行った。
そして彼女は天然水を購入し、気になる性質なのかラベルを外した。
そして、一口で半分以上中身を呑んだ。
「ごくごく……知ってましたか? 実はペットボトルの容器って毒薬の保管に便利だったりするんですよ?」
「“あまり知りたくない事実だ”」
ペットボトルと毒薬の組み合わせなんて、毒殺以外に考えられない先生だった。
「えーと、今日は他に何か話忘れてなかったでしょうか。
あ、そう言えばボスが私に欲情できないの割と気にしてるって話しましたっけ?
割と気にかけてくれてて、この軍帽もプレゼントしてくれたんですよ」
「“猥談は、禁止中だからね”」
「ええ、でもナバトはベッドでは可愛らしいんですよ。
これをボスと小隊の皆だけしか知らないってのは世界の損失ですよ。やっぱり先生も機会が有ればご一緒しますか?」
「“…………”」
ムツニの物言いに、先生は先ほどの考えは気のせいだと確信したのだった。
こうして、今日のムツニの当番は無事に終わったのだった。
【オリキャラ設定:門戸 ムツニ 】
名前の元ネタはトリカブト。彼女とナバトは変化球で、トリカブトの別名であるモンクスフード+アコニツムから。
モチーフは三匹の子豚の狼+スルクカムイ。
ナバトもそうだが、ムツニは獣耳を持っていない。
これは全員付け耳のRABBIT小隊と、全員自前の獣耳を持っているFox小隊の中間である二年生であるという表現である。
強襲や拠点破壊担当であることを、三匹の子豚に登場する子豚の家を破壊するところから、そしてアイヌのトリカブトの女神であるスルクカムイから。彼女の固有武器の元ネタでもある。
この女神は毒矢でヒグマを仕留めたという伝承が有り、そこから毒使いのイメージを捻出した。
ちなみに、ナバトはその仕留められた方のヒグマをモチーフにしており、ムツニが絶対的な攻めである。
性格はサイコパスな変人。
バディにして恋人のナバトに歪んだ愛情を抱き、自分にあまり価値を見出していない。
彼女の行動原理はナバトであり、殉じる理由でもある。
二人は幼馴染であるが、ムツニの奇行は無意識にナバトの気を引くためであった。
ゲーム的にはストライカー。ポジションはフロント、クラスはアタッカーだと思われる。
ナバトを強化し同時編成すると一度だけ復活するパッシブを持ち、敵に異常状態を付与する毒薬を投げるスキル、相手の防御力を下げてダメージを与えるグレネードを投げるEXスキルを持っていそう。
実はムツニの容貌は、昨日の時点まで作者も定まっていませんでした。
他の三人は朧げにイメージがあったというのに!!
そこに彗星の如く現れた天啓、それが最近ミームになった通称「戦犯ちゃん」です。
彼女の容貌はそれをモチーフにしました。
元々AI作品であるそれをモチーフに、更にAI作品で作り上げるという連鎖反応ですね。
彼女のキャラクターを皆さんも気に入ってくれると幸いです。
全員出揃ったら、Wolf小隊の四人の中で誰が人気かアンケートを取ってみるのも面白いですね。
ではまた、次回!!