今回でWolf小隊の紹介は終わりになります!!
勿論、今回もAIイラストを使用していますので、ご留意のほどを。
では本編どうぞ!!
【絆ストーリー:Wolf小隊の暴走車両!?】
『先生、ちょっとこの座標まで来てくれません?』
シャーレの固定電話に、そんな連絡が入った。
知っている声だったので、先生は車を出してそこに向かった。
「あ、先生こっちこっち!!」
先生が到着すると、今日の当番であるはずのナバトが手を振っていた。
「“ナバト、これは一体……”」
「いやぁ、ムツニと散歩してたら、ヘルメット団のアジトを見つけてさ。
朝飯後の準備運動てがらに、こいつらを始末したんだ」
ナバトの横には十人近くの不良生徒が気絶して山積みにされていた。
「“ムツニは?”」
「それがアイツ、ヴァルキューレに引き渡しに行くって、交番に行ってるんだよ。
散歩のつもりだったからスマホも持ってきてなくてさ、そこの公衆電話でシャーレに連絡を入れたわけ」
「“話の意図がよくわからないんだけど……”」
「あんな張り子の虎どもに、任せてらんないってことですよ」
だから先生を呼んで矯正局に送り込んでもらおうかと、とナバトは言った。
「“……とりあえず、彼女らの事は警察に任せよう”」
「えー、先生までそんなことを?
じゃあしばらくの間、シャーレの居住区に閉じ込めるってのはどうです? ボスが先日考案した、テイルズ・サガ・クロニクルを完全クリアするまで出さないってごうも──更生プログラムを課すんですよ!!」
「“今拷問って言いかけたよね!?”」
しかもさらっと拷問に転用されている初期版のテイルズ・サガ・クロニクル。
先生は昨日のムツニの言葉を思い出した。
彼女が普通? ああムツニの色眼鏡だったんだな、って。
「“とりあえず、彼女達を警察に護送しよう”」
「まあ、そこまで仰るのなら」
ナバトは先生の乗ってきた車の後部座席に、不良生徒を詰め込み始めた。
……十人全員、ぎゅうぎゅう詰めにして。
「“……”」
「さ、行きましょう。
私が車両操縦担当なのはご存じですよね?
安全運転をさせていただきます」
なぜか先ほどより心の距離が空いたような気もするが、先生は頷いて助手席に乗った。
「それでは、向かいましょう」
ナバトが運転席に乗り込む。
そして彼女らを乗せた車が発進された。
「“今のところを右だったよ”」
「ああ、そうでしたね、うっかりしてました」
「“…………”」
「この先の道は渋滞するんです、回り道をしましょう」
これで三度目である。先生は彼女の意図に気づいていた。
「く、くるしい……」
「早く出してぇ」
「みうごきが……」
後部座席から聞こえるヘルメット団たちのうめき声。
三人乗れればキツイ後部座席に、十人が押し込められている。その圧迫感は筆舌にしがたいだろう。
「“ナバト、君は彼に似てると言われないかい?”」
「ああ、ボスにですか?
ええ、皆からは私がボスに一番似てると言われますね。
ボスはスゴイ御人です。無力な私に、正義を執行する力を与えてくれました」
あの男に対する、ある種の憧憬が彼女にはあった。
「“彼を見本にするのは、少々いただけないと思うけどね”」
「先生に、それを言う資格があるのですか?」
「“……”」
「少なくとも、ボスは成果を提示した。キヴォトスのテロリストどもを片っ端から恐怖のどん底に突き落とした。
銃を持っていない生徒より露出狂の方が多いこのキヴォトスで、露出狂の方が少なくしてみせた」
「“その例えはちょっと……”」
「私はなぜ、ボスが先生に目を掛けるのか理解できません。
悪党は滅ぶべきです。情けや容赦で、連中が改心するわけもない。
私の理想を体現してくれるボスが、なんであなたのような……」
ナバトの言いたいことは、先生にも分かった。
先生も、なぜあの男が自分にここまで良くしてくれているのか、まだその理由の全てを理解できていない。
「“ひとつだけ、聞いていいかい?”」
「なんでしょう」
「“君の理想は、本当に彼と同じなのかい?”」
「…………」
その沈黙が、答えだった。
「“確かに、悪は簡単に赦されてはいけない。
でも、同時に更生の機会を与え、過度に苦痛を与えてはいけない。それとこれとは、まるで別の筈だよ。
君の理想を、他人の理想を正当化する為の言い訳にしちゃいけない”」
「なるほど、分かりました。私は先生のような大人が嫌いです*1」
嫌いだ、と言った割には、ナバトの表情には憂いがあった。
「理想と現実は、嫌と言うほど違います」
「“君たちが、落ちこぼれだったように?”」
「ええ」
ナバトは頷く。
「ボスは言っていました。正義とは結局、暴力が下地にあるのだと」
「あのブラックマーケットの災厄は、物事を都合よく動かす方便だと言っていたね」
先生は思い起こす。ブラックマーケット消失事件。
カルト宗教まで誕生し、関係者全員から禁句となったその二文字で言い表せる邪悪の権化を。
「それについて議論をするつもりはありません。
正義、自由、どちらも実体がないくせに、狂ったように人々は求めるもの。
求めた果てにあるのは、矛盾そのもの。
ええ、ムツニには悪いけど、私の理想にも実体は無かった」
「“皆、そういうものだよ”」
夢を叶えてみれば、その実態が違ったということは多い。
夢は夢のままで終えることが良い場合もある。
「私は、ただ憧れてただけ。ヴァルキューレに入らなかったのは、あの連中は私が子供の頃から失態ばかりで失望してたから。
だから、私はSRTの門を叩いた」
そして挫折した。
世界は無情だった。
「私は、小隊のリーダーは自分がふさわしいと主張しました。
でも、先輩達から選ばれたのはトリコ姉さんでした。
今でも納得いってません。戦闘訓練の成績だけなら、私が小隊で一番だったはずなのに!!」
「“彼はなんと?”」
「なら俺に従え、と」
最初、男は彼女らについてこう述べた。
メンタル面に不安があるから、落ちこぼれたのだと。
先生はこうして四人全員を当番にして、それを痛感した。
彼女達の個々の能力は決して低くない。
だが、先日男が言ったように、ラーメン屋に行って同じメニューを頼み、毎回別の味だったなんて、許されない。
彼女達は同じ任務で、毎回別の結果を出すだろう、そんな不安を抱かせる。
落ちこぼれたのは、必然だったのだろう。
「私はボスに徹底的に、屈服させられました。
実力でも、ふふ、ベッドの上でもね」
自嘲するように、ナバトは笑った。
先生としては非常に同意しかねるが、男が彼女達を恋人同士に仕立て上げたのは最善だったのだろう。
そして情愛で、彼は四人を管理しつくした。
「そう言えば、SRTですがヴァルキューレに編入することに決まったらしいですね。
今もあそこに残っていたらと思うと、ゾッとします」
ヴァルキューレに部員が居る先生としては、何とか彼女らを擁護しようとして、やっぱり言葉が思い浮かばなかった。
「……ええ、何から何まで、ボスには感謝しかありません」
だというのに、ナバトの目からは一条の涙が流れ落ちた。
それは感謝か、それとも屈辱か。
先生には、分からなかった。
その時だった。
「先生」
「“どうしたの?”」
「さっきから付けられてる」
先生はギョッとした。
ただ単にすし詰め状態のヘルメット団を苦しませたいだけだと思ったら、どうやらこの車は追跡されているようだった。
「後部座席の荷物のお仲間だろうぜ」
ナバトは肘で座席の後ろをつついた。
それで届くぐらい、後部座席にはぎゅうぎゅうに詰まっている。
「なかまに、れんらくしたぞ!!」
「だから早く解放しろ!!」
「動くなよ、いきが、くるし」
直後、バックドアガラスが銃撃で割れた。
追跡車両が攻撃を開始したのだ!!
「先生、忠告しとく。対ショック姿勢を維持した方がいいぜ」
ナバトはアクセルを全開にした。
先生は言われた通り、対ショック姿勢になった。
加速し、運転席のドアガラスを肘打ちで破壊し、ナバトは曲がるのと同時に急ブレーキを切った。
彼女は割れた窓ガラスから愛銃を突き出し、片手打ちした。
思わぬ反撃に、追跡車両がハンドルを横に切った。
その勢いで、大回りしながらこちらの車に追従する。
だが、幾ら加速しても引き離せない。
「ちッ、推定七百キロの荷物がある分、速力で劣るな」
「わ、私はそんなに重くない!!」
「いて、いてて、さっきから後ろの奴、当たってるって!!」
「やばい、はきそ」
「んんん──!!!」
後部座席の苦情もなんのその、ナバトはカーアクションさながらの運転テクニックで、追跡車両を引き離そうと試みる。
「よし、そっちに入るか」
「“ええッ!?”」
ナバトが車を突っ込んだのは、裏路地だ。
しかも、この車がギリギリ通れるような狭いところを最高速を維持したままだ。
ガンッガタッガンッ、と車はゴミ箱や室外機などを破壊しながら進んでいく。
「ほーら、どすこーい!!」
追跡車両がこちらを見失ったのをいいことに、わき道から相手の方に出て、ナバトは体当たりを敢行した。
重量だけならこちらが上だ。
二つの車は致命的にお互いを破壊しながら、道を外れる。
「先生、こっちだ!!」
かちゃ、とナバトは先生のシートベルトを外すと、作動したエアバックを銃弾で引き裂いて、運転席側のドアから先生を自分ごと引っ張り出した。
そして、二人は地面に投げ出される。
「“あ……マズい”」
先生は見た。
二つの車は一緒に、道を外れた先の川へと落ちて行った。
幸い浅い川だが、水が入ってくるのは時間の問題だろう。
「ふ、子ヤギを丸のみにしたオオカミは、代わりに石を詰められ溺れて死ぬってか。笑えるねぇ!!」
「“言っている場合じゃない、助けを呼ばないと!!”」
結局大騒ぎになってしまったので、先生は関係各所に矢継ぎ早に電話する羽目になった。
「“次からは、もっと安全運転を頼む”」
「分かってるって」
結局車が無くなってしまったので、二人は歩いて帰る羽目になったのだが、途中でムツニが車を調達してくれるらしいので、その地点まで移動することにした。
「先生」
その声に、先生は隣を歩く彼女を見た。
「ボスがあなたに何を見たのか。
これから私も見定めさせてもらうからな」
「“……ああ”」
先生はそれだけ返すと、ナバトは少しだけ微笑んでこっちを見た。
「それで、私の運転テク、どうだった?」
「“映画みたいだった”」
先生は率直な感想を述べた。
あれは見る側だからドキドキワクワクできるのであって、乗っている方は何も考える暇なんて無いと、実感した先生である。
「おう、ヘリでも装甲車でも、運転なら私に任せな」
できれば、そんな機会が無いと良いなと、思う先生だった。
【オリキャラ設定:風登 ナバト】
名前の元ネタはトリカブト。ムツニと同じでトリカブトの別名であるモンクスフード+カブトバナから。
モチーフは狼と七匹の子ヤギの狼+キムンカムイ
ムツニと同じく、獣耳は無い。
ムツニのモチーフの童話である三匹の子豚と同じように、狼と七匹の子ヤギの狼も、家を襲撃する。それを拠点襲撃担当として表現している。
彼女が車両操縦担当なのは、その童話で狼は腹に石を詰められ移動するから、運搬を担当するという感じである。
キムンカムイとはアイヌの言葉でヒグマを意味し、ヒグマも人間の家に侵入することで有名である。彼女の固有武器の元ネタでもある。
性格は暴走しがちな正義漢。
自意識が高く、またプライドも高い。
Wolf小隊で一番戦闘能力に優れているが、それ以外に突出した技能があるわけでもない。
そのプライドの高さや暴走癖ゆえに、小隊のリーダーには選ばれなかった。
本編でムツニとの関係には言及しなかったが、お互いに大切な恋人同士。
彼女はムツニを自分の夢に巻き込んだと思っており、その償いの意味もあって無条件でムツニを受け入れている。
ムツニの共依存という言葉は、的を射ている。
ゲーム的にはストライカー。ポジションはミドル、クラスはアタッカーだと思われる。
ムツニと同じパッシブを持ち、自分の攻撃等を上昇させるスキルを持ち、車両で突撃して直線範囲にダメージを与えるEXスキルを持っていそう。
さて、いよいよ次回からエデン条約編になります。
二章と同じように、そこまで原作から変化はないと思われます。
補習授業部の前半は特に。勿論、突然インスピレーションが降りればその限りではないですが。
ただ、一言言えるとすれば。
主人公とハナコの相性は、最悪で最高です。
補習授業部編は彼女と主人公の関係性とか、暗躍がメインになりそうですね。
では、また次回!!
あと、前回言及したWolf小隊のアンケートをします。
特に何かあるわけでも無いですが、得票数一位はそのうち何か考える予定です。暇潰し程度に、ご協力くださると幸いです。ではまた!!
Wolf小隊が実装されるなら誰がほしい? 或いどのキャラが好き?
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生真面目なトリコ
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舌打ちをしてくれるウズ
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サイコな毒女のムツニ
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正義の暴走車両なナバト