五十話まで毎日更新行けたら行きたいですね!!
対美食研究会編が遠い昔のようです。
あと、今回のあとがきはこの先の展開について言及しますので、ご留意のほどを。
「これが、合宿所か。
流石金持ちの学校。これひとつで小さな学校が運営できるじゃないか」
車で合宿所に到着すると、男がそう呟いた。
先生も頷くほかない。
遠目からにも宿舎と一体になった校舎、体育館にプールまで見える。
これをまるまる合宿所として貸し出すのだから恐れ入る。
しかも部活などで使用し管理されているわけではなく、しばらく使われていないものらしい。
まさしくブルジョワ学校の金銭感覚なのだろう。
「お前ら、荷物を置いたらそこに届いている物資を体育館に運んでくれ」
とりあえず第二次特別試験までの七日、ここに滞在する面々は着替えや勉強道具、各自の装備などの荷物を持ったまま車から出ていた。
そんな彼女らに、男は呼びかける。
合宿所の前に、積み重なったコンテナが山積みになっていた。
「なによこれ、武器に弾薬?」
「食料も大量にあるな。これだけあれば、この人数で一か月は戦える」
中身を開けて見てみたコハルとアズサがそう言った。
「これだけの兵器類……何と戦うつもりですか?」
「何って、お前は聞いてるんじゃなかったのか?」
引きつった笑いを浮かべているヒフミに、男は小さく語り掛けた。
「それは……」
「おまえら、座学だけじゃ気が滅入るだろ?
演習や訓練の時間割りを先生は取ってくれた、たっぷりと俺が可愛がってやるよ」
男は彼女らにそのように説明した。
「“そう言うわけだから、皆お願いするね”」
「か、可愛がるって、いったい何をするつもりなの!?」
「それは勿論、先生方の銃で私たちをひいひい言わせるつもりなんですよ♡」
「応とも、たっぷりとゴム弾を用意しておいた。てめえらの未使用の子宮にガンガン命中させてやるよ」
ハナコは冗談のつもりが、男は会心の笑みを浮かべてそう返すモノだから、彼女の額に汗がタラリとながれた。
「え、エッチなのはダメ、死刑!!」
「私は望むところだ」
「あ、あはは、お手柔らかにお願いします……」
四者四様の反応を示す中、私は見学しますね、とウズはちゃっかり病弱設定を理由に逃げていた。
その後、彼女達は使用する部屋を決めた後、コンテナの荷物を運んでから掃除することになった。
そして、彼女達は掃除の為に着替えてくることになった。
合宿所の正門前の、入り口の前に彼女らは集合した。
「先生方、お待たせしました!!」
「おおう」
ジャージにハーフパンツ姿のヒフミに、男は感嘆の息を漏らした。
「先生、ミレニアムの体操着はブルマらしいが、個人的にはハーフパンツの健康的な美の方が素晴らしいと思う。どうだ?」
「“わかる”」
男の言葉に先生は深く頷いた。
「特に屈んだ時に見えるチラリズムが……」
「一体なにを想像してるの!? エッチなのはダメ!!」
「おやコハル君、もしやお前は新体操のコスチュームにいやらしさを感じるタイプか?」
「はぁ!? 違うし!!」
「なら問題無いだろう? さて、合宿の思い出に俺がお前たちの青春のカメラマンを引き受けよう」
そう言って男はスマホで遠慮なく二人を撮影する。
「ふう、これで今夜は“おかず”に困らんな」
「お、おかずって、やっぱりいやらしいこと考えて!!」
「いや。夜食を食べながらお前たちの笑顔を楽しむだけだが?」
「絶対嘘よ!!」
そんな風にコハルが男に突っかかってると。
「じゃあ、私もお願いします♡」
「ちッ」
男はハナコを見た瞬間、舌打ちをした。
「はい、撮影お願いします♡」
「アウトー!! なんで掃除するのにあんたは水着なのよ!!」
コハルに並んで笑みを浮かべるハナコ。
彼女は、スクール水着を着ていた。
「あとでモザイク処理が必要だな」
「モザイク……それはそれで、なんとも淫靡ですね♡」
「は? 無修正が至高だろ」
「チラリズムは理解できるのに、モザイクの風情は理解できないんですか?」
「他人に指摘する前に、自分の格好を修正したらどうだ?」
「……」
「……」
「あの、エッチなのは、ダメで……」
お互いに見つめ合って火花を散らせる二人の間に、なんとかコハルが入ろうとしていた。
「とにかく、この写真は削除させてもらいますね」
「あッ、くそ」
素早くハナコが男のスマホをかっさらい、二人の画像を次々と削除していく。
「“はあ、写真は私の方で撮るよ。必要なら言ってほしい”」
「先生も大変だな……」
そんな二人を見て溜息を吐く先生を、アズサは憐れむように見ていた。
§§§
男が無遠慮にカメラを向けていたのは、勿論意味があった。
合宿所を清掃する子供たち。
時折ツーショットだったり集合写真だったり、撮影を依頼される先生。
「ごほッ、ごほッ」
「ウズ、大丈夫か? 無理はしないでくれ」
「……はい。ありがとうございます。
あまりこうして病院の外に出る機会はないので。
あッ、そうですわ。折角ですし、アズサさん、記念に一緒に写真を撮ってもらいましょう!!」
「ああ、構わない」
先生に目配せをするウズ。
その意味を察し、先生は頷く。
どこかのロリコンのお陰で誰にも違和感を抱かれること無く、先生は二人を撮影し、そのデータをシッテムの箱にアップロードする。
「“アロナ、頼んでいた資料と比較してくれ”」
『はい、分析します』
先生はこっそりと、アロナに依頼する。
すぐに分析結果が表示される。
『やはり、アズサさんには骨形成不全が認められ、骨密度が部分的に低い傾向がみられます。
先生の言う通り、幼少期に栄養が不十分な環境で育った可能性が見られます』
「“ありがとう、アロナ”」
先生は思い返す、男の言葉を。
「テロリストってのは何の罪もない、身寄りのないガキを利用するもんだ。
偏った思想で洗脳して、訓練を施し聖戦士に仕立て上げる。そうやって、次世代に狂った思想を繋げていく」
だから男は容疑者である四人が子供である時点で、裏切り者は元孤児やストリートチルドレンの類であることと睨んだ。
幼少期に栄養が不足すると、骨が歪に成長する。
そして、その条件でアズサが合致した。
「“……”」
そう考えると、アズサの言動の見方が変わって来る。
一般常識を教えられず、戦い方だけを仕込まれる。
まるで、余計なことを削ぎ落された、兵器であるかのように。
「ほう、窓ばかり見てどうしたんだ、アズサ」
「窓から見える高い建物を確認している」
「ここから見える背の高い建物は全てトリニティの所有だ。
トリニティ学園が敵にならない限り、狙撃の心配はない」
「なるほど、ありがとう」
「気にするな、生徒の不安を解消し勉強に集中できるようにするのも大人の仕事だ」
そして、男は積極的にアズサに話しかけている。
それは、彼女のロジックを解剖する為だ。
彼はこう言っていた。
「俺はゲヘナ学園で風紀委員会の戦術を指導する時、学園のカリキュラムを忘れさせた。
相手がそれを手に入れ分析すれば、どういう行動パターンをするか簡単に分かるからだ。
つまり、アズサの戦術、思考パターン、戦闘理論、その全てを理解すれば、同じ教育を受けたテロリストの尖兵の戦術も理解できるということだ」
逆に言えば。
「つまり、アズサを寝返らせれば、戦闘面では勝ったも同然だ」
そしてそれを、先生に期待している。
「先生、あまり気負わないでください」
「“と……リコ”」
「ボスからの連絡です。
怪しまれないようにある程度の段階で離脱すると。
以降、対象の発言は全て記録してほしい、と」
「わかった」
監督生として掃除の指揮を執っているトリコが、こっそりと先生に言った。
「リコさん」
「はい」
「プールの清掃をしても良いですか?」
「プールですか? 今回の合宿には使用しないと思いますが」
「ええ、掃除と言う名目で、初日くらいは水遊びでも、と。
……問題あるでしょうか?」
「いえ、学習に支障が来さない程度ならば」
「だそうです、皆さん聞きましたか?」
ハナコがトリコに確認を取って、プール掃除の音頭を取った。
「ほう、水着ですか。実は俺、鼠径部フェチでな」
「貴方は入場禁止です♡」
「わかった。今までの事は全部謝ろう、足を舐めればいいかな、ハナコ様」
「……プライドを捨てるのがあまりにも早くないでしょうか?」
「ささ、俺の事は椅子とでも思って、その贅肉に塗れたケツを置いてくださって結構ですよ」
「皆さーん、この人を追い出すの手伝ってください」
「後生、後生だから水着姿を一目だけでも──!!」
「ダメッ、皆をエッチな目で見るのは禁止!!」
男はコハルとアズサとトリコに、プールサイドから追いやられた。
「“……”」
先生は思った。
もうちょっと、マシな離脱の仕方は無いのか、と。
§§§
プール清掃は、水張りもしたため夜まで掛ってしまった。
結局、彼女達は遊ぶことは叶わなかった。
「明日から本格的に勉強合宿が始まってしまいますし、そろそろ寝ないと明日に支障が出てしまうかもしれません」
コハルがうとうとしているのを見て、ヒフミがそう言った。
その時である。
「……ちょっと待ったぁ」
プールの怨霊……いや、水着姿を見れなかった男が這いずるようにプールサイドに現れた。
「ぎゃー、オバケ!?」
その気持ち悪い動きに、うとうとしていたコハルが悲鳴を上げた。
「浦和、ハナコォ、貴様に勝負を挑む!!
お前のせいで、俺は彼女達の水着姿を逃したんだぞ!!」
「いいでしょう。明日からは時間も取れなくなるでしょうし、そろそろ貴方とは決着を付けるべきだと思っていました」
なんだこれ、と先生は思った。
「覚悟しろ、浦和ハナコ!!」
「こちらこそ、アップルマンさん!!」
二人の男女が、プライドを掛けて戦いを始めた。
「け、喧嘩は良くないです──」
ヒフミが慌てて二人の間に入ろうとしたのだが。
「最初はグー、ジャンケンポン」
「私の勝ちです」
二人はジャンケンを始めたので、ヒフミはずっこけかけた。
プールサイドと言う場所なので危険であった。
「では私が先行です。話題は初体験にしましょう。
私は以前、礼拝の授業の時、初めて水着で授業に参加しようとしました。しかし残念ながらシスターの方々に追い出されてしまいました。
その時の解放感と言ったら、もう……授業が終わるまで、自室にこもってしまいました」
「俺は風俗だった。最初の相手は三十代半ばの豊満な風俗嬢だった。
当時俺はまだムチプリが至高だと思っていた。彼女が悪いわけじゃない。その街では評判の女性で、気立ても良く初めての俺を導いてくれた」
だが、と男は涙を流す。
「俺の本当の初体験になったのは、ある紛争地域のスラムのガキだった。
そこのコハルみたいな体型と見た目のガキでな、弟たちを養う為に自分を買ってくれと言ったのだ。
憐れに思った俺はビールの酌をしてもらうつもりでそいつを買った。
だが、そのガキはそこのコハルみたいに耳年増でな、自分を抱けと聞かなかった。汚いガキだったが、洗ってみればそこそこ美少女だった。……死ぬほど出た」
そんな話を聞かされる外野は思った。どっちも最低だ、と。
「俺は幼い果実を貪り尽くし、そこで気づいたのだ。デカチチなぞ腐った果実だと!!
それにむしゃぶりついていたと自覚した瞬間、吐き気が俺をおそったのだ!!」
「ま、まさか、あなたの巨乳に対する拒否反応は、トラウマ!?」
「或いは、そうなのかもしれん」
お互いの話が出そろったところで、二人はコハルを見た。
「審判、どっちが勝ちだ?」
「インパクトならこっちも負けませんよ?」
「誰が審判よ!! エッチなのは死刑!! 打ち首、獄門!!」
コハルは真っ赤になって二人に叫んだ。
「どうやら、引き分けらしいな」
「そうみたいですね」
そして二人は、再び対峙する。
「知っているか、オナニーが禁止だった時代、女性は医者にバイブを使ってイカせてもらっていたそうだ。そう、バイブとは元々医療器具だったのだ!!
お前もそのピンク色の脳みそを医者に診て貰ったらどうだ?」
「精液には亜鉛とカルシウムが含まれているのは知っていますか?
なので小じわや虫歯に効くとされているんですよ?
そんなに出すのが好きなら、ご自身で飲んでみたらどうでしょう」
「セックス、所謂交尾は動物が外敵から狙われる最大の瞬間の一つだが、賢者タイムとは性欲を抑制するホルモンが分泌されるのが原因とされている。
お前も常日頃からそのホルモンを注入して貰ったらどうだ?」
「イヌ科の陰茎にはこぶ状に膨れる亀頭球と呼ばれる部位があるそうですね。犬は交尾の際、精液が膣内からこぼれないようにそこが膨れ上がり抜けないようになるそうですが、オオカミさんはどうでしょうか? 犬の交尾は30分近く続くとか、そこまでの持続力をお持ちですか?」
「ふッ、俺の相手をする女どもには、勘弁してくれっていつも懇願されるな」
「なん、ですって!?」
勝ち誇る男の顔に、ハナコは驚愕に打ち震える。
なんだこの無駄に高度な罵り合いは、と皆は思った。
「“じ、実際はどうなの?”」
「の、ノーコメントで……」
セクハラになると分かっていても、先生はこっそりトリコに聞かずにはいられなかった。
男の陰茎は、男の象徴。アイデンティティなのだから!!
トリコもウズも真っ赤になって俯いている。
本当なのか、と先生は戦慄した。
「審判、これは俺の勝ちだな!?」
「うるさい、エッチなのはダメだって言ってるでしょ!!」
「まさか、疑うのか? どれ、実際に見せてやろう!!」
「死刑執行!!」
ズボンに手を掛け始めた男は、コハルに殴られプールに突き飛ばされた。
「何するてめぇ、これ一張羅なんだぞ!!」
誰もが思った。お前が悪い、と。
「はあ、はあ、夏場とは言えプールに突き落とされるとは」
「どうぞ、この手を取って下さい」
「お前は……」
なんと、今まで言い争っていたハナコが男に手を差し伸べたのだ。
「どうやら私、あなたの事を誤解していました」
「お、俺こそ、まだぴちぴちの女子高生相手に、酷いことばかり……」
「もう良いんですよ」
男がハナコの手を取った。
────歴史的和解の瞬間だった。割と冗談抜きで。
男はハナコに引っ張り上げられると、何を思ったのか自分の手を見てから無造作にハナコの胸を揉んだ。
「あッ」
数秒ほど、揉まれるがままになっていたハナコだが。
「…………ごめん、やっぱ無理だわ」
「えい☆」
今度は、ハナコにプールに突き飛ばされた男だった。
後日。
「おーい、クリームパイを買って来たぞ」
勉強をしている補習授業部の面々に、男が差し入れを買って来た。
「あッ、このお店知っています!!」
ヒフミがパイの入っている箱のロゴを見て、声を上げた。
「ああ、なんでもミラクル5000とかってケーキで有名なとこなんだって?
ここから遠かったんだぞ、謹んで食べろよ」
はーい、と生徒たちは返事してクリームパイを頬張った。
男はなぜかハナコに目配せした。
ハナコは意味深に微笑んだ。
「知っていますか、クリームパイとは“中出し”の隠語だそうですよ」
「げほッ、げほッ」
急なハナコの雑学に、コハルが咽せた。
「なんでも女性の膣をパイに、男性の精液をクリームに見立てるのだとか」
「え、エッチなのはダメ!!」
「じゃあコハルちゃんの分も貰っちゃいますね」
「あッ、それもダメ!!」
絶妙に食欲の失せた面々だった。
他には。
「アズサちゃん、いろんな道具を持ってこられたのですね」
「うん、いつ襲撃されても大丈夫なように。用意はしないと」
ハナコは荷物を広げて整備しているアズサに声を掛けた。
「でもコンドームはありませんね♡」
「こんッ!? わ、私にコンドームの使用予定はない!!」
「知らないのか、アズサ」
横からにゅっと男が口を挟む。
「多くの軍隊では、サバイバルの際にコンドームの持参を推奨している。
コンドームは本来の用途以外に水筒代わりにもなるし、土嚢の隙間を埋めるのにも使える。
水を入れて凍らせれば、即席のハンマーにもなるのだ」
「止血や、銃の防水や防塵にも使えるそうですよ」
「わ、わかった、今度購入を検討する」
恥じらって真っ赤になるアズサの姿を堪能する、二人のソムリエ。
「“まるで悪友同士みたいだ……”」
手に負えないセクハラの怪物二人を、先生は呆れたように溜息を吐いて見守る他なかったのであった。
もし期待している読者様が居たら申し訳ありませんが、主人公はゲマトリアの面々とは戦いません。
彼の敵はテロリストであって、怪人どもではないからです。
ゲマトリアは先生の敵ですしね。住み分けみたいなものです。
だって主人公に、アリウススクワッドの面々を活用できても、救うことはできません。それは先生の役割です。
それになにより、あのおもしれー奴らと仲良くなった方が絶対楽しいですし(ベアおばを除く)。
そう言うわけですので、ご了承ください。
ではまた、次回!!
出来ればまた明日!!
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