でもこの小説では大浴場は存在する、多分覗きイベントの為にどこからか生えてきたのでしょう。だからこれはガバではない、いいね?
結局五十話まで連続更新できなかった、無念です……。
「なるほど、そう言うことでしたか」
先生は一通りの事情をハナコに話した。
ちなみに今はちゃんと寝間着代わりの体操着である。
ヒフミが次の模試などの打ち合わせなどに、先生の元にやって来て、スクール水着姿のハナコを見て一悶着あったからだ。
「まさか、退学だなんて。アレには複雑な手続きや会議が……」
そう呟いてから、ハナコは先生を見た。
「なるほど、先生の権限を利用した形でしょうね。
となると、あの一件がナギサさんの心に深い疑心暗鬼を齎したということでしょうか」
「あの、どういうことでしょうか?」
ヒフミがハナコに尋ねた。
「先生、セイアちゃんについてティーパーティーのお二人は何と?」
「“セイア?”」
「今のティーパーティーの各派閥のトップ、最後のひとり。お前があと一人の生徒会長は誰だって聞いただろ、そいつの名前だ」
なるほど、と男の解説に先生は頷いた。
「“ただ、入院中だとしか”」
「実は、何者かに襲われ負傷したんですよ。セイアちゃんは」
「“何だって!?”」
「その事実は伏せられ、現在ヘイローを破壊され療養中と言うことになっています」
「だから、ナギサ様は……」
ヒフミは普段、ティーパーティーのトップ同士は仲が良いと聞いている。
だからこそ、そんな相手が負傷し気が気でないのだろう。
次はいつ自分になるか、わからないのだから。
そんなナギサの有様に、ヒフミは心を痛めていた。
「おい、俺は聞いてないぞ、そんな大事なこと」
「トリニティの内部情報ですし、機密ですから。恐らく、他のティーパーティーの二人にも正確な情報は行っていない筈です」
「そして、そんな最重要機密をお前は知っている、と」
「ええ、ちょっとセイアちゃんとは縁が有りまして」
それが、彼女が安全な病院を探していた理由だった。
「つまり、裏切り者の件はナギサさんの早とちりでも何でもない、と」
「疑心暗鬼による暴走ではなく、明確な危機意識に基づいた防衛反応ってところか」
「“ナギサ……”」
ヒフミと男の言葉に、先生はその心中を慮って目を伏せた。
「……裏切り者は、アズサちゃんですか?」
「だろうな。今も外出中だ。俺の部下に追跡させている」
「……信じたくはありませんね」
「だが、お前の話が本当なら、セイア襲撃の実行犯は恐らくアズサだぞ」
「そうでしょうね」
「そんな筈、ありません!!」
ハナコと男の会話に、ヒフミが割って入った。
「アズサちゃんは今回の合宿でも一生懸命で、あんなにもモモフレグッズを喜んでくれました!!」
「ヒフミちゃん、落ち着いてください」
ハナコがいつもと変わらない笑みを浮かべると、ヒフミは何とも言えない表情になり、思わず立ち上がっていたことに気づいて座り直した。
「“私も、アズサを信じたい”」
「先生……」
「“ヒフミが信じたアズサを、私も信じたいんだ”」
「ありがとう、ございます」
ヒフミが先生に深々と頭を下げた。
「アズサの扱いは、先生に任せた。
ハナコ、お前もそれに異論は無いな」
「ええ、それについてはお任せします」
「問題は、アズサを手引きした奴か」
「それについては、大丈夫だと思います」
「なに?」
ハナコの言葉に、男は思わず眉を顰めた。
「私が黒幕なら、この辺りで先生とあなたに接触します。
連邦生徒会長の残した変数と、ゲヘナ躍進の立役者……その眼でちゃんと確認したいと思うのが人情でしょう」
私ならそのついでに偽情報を渡して情報攪乱して時間を稼ぎますね、とハナコはすらすらと語った。
「……テロリストどもは仕留める相手を間違ったな。
俺だったら真っ先に、お前を殺す。ヘイローを破壊するまでも無く、コンクリートに詰めて海に沈める」
「それはお互い様だと思いますよ? 私がナギサさんの敵の立場なら、先生とあなたがどれだけ脅威になるか、測る必要に迫られます。そしてあなたという人物を知れば、大部隊を投入してでも必ず殺すと思います」
お互いの意見をぶつけた両者は、笑みを浮かべた。
それがお互いに対しての最大の賛辞だったからだ。
「では、黒幕とやらが現れたらバカを演じるとしよう」
「“ちょっと待ってほしい”」
「なんだ、先生」
二人の会話が終わるのを見計らって、先生が待ったをかけた。
「“その件に関して、私に任せて欲しい”」
「……どうするつもりだ?」
「“まだわからない。でも、一度は話し合いで終わるはず。その時に決めるよ”」
「まあ、この依頼のボスはお前だ。あんたに従おう」
一先ず、アズサの件に加えて、黒幕も先生に任せることにして話し合いは決着がついた。
だが、まさかこの判断が、この一件に関わる全ての人物の思惑を狂わせるとは、この時点で誰も知り得なかった。そう、神算鬼謀とすら言える知性を持つハナコでさえも。
「それじゃあ、先生。丁度いいタイミングだし面談の時間にしようじゃないか」
「“そうだね”」
「はい?」
「ハナコ、お前なんだあのテストは。ふざけてるのか?」
「それについては、本当に申し訳ないです」
ヒフミが困惑する間に話は進み、ハナコは素直に頭を下げた。
「所詮、この合宿が失敗に終わっても落第するだけ。
たとえ落第しても、まだ終わりじゃない。そんな甘い考えでした。本当に反省しています」
「“……いや、ハナコは悪くないよ”」
彼女は知らなかったのだ。落第ではなく、退学になるというその情報を。
テロリストと生徒会の陰謀の渦中にいるだなんて、そんな狂った状況を想像しろと言う方がどうかしている。
「……そうです、ハナコちゃんは悪くありません。部長として、私が言わなければならなかったんです」
「ヒフミちゃん、それは違いますよ」
「もういいだろ、このまま謝り合ってても話は進まん」
落ち込むヒフミを慰めるハナコ。
このままではお互いに謝り続ける無限ループに陥りそうなので、男が話題を叩き切った。
「今回の事は、コハルちゃんには?」
「あれに演技が出来ると思うか? 一人くらい道化が居た方がいい」
「それもそうですね。ちょっと可哀想ですけど」
残念なことに男の言葉に同意見のハナコだった。
「ところで、そろそろ言及しても良いですか?」
「なんだ?」
「あの二人はどういう関係ですか?」
ハナコが四人が顔を突き合わせて座っている二つのベッドから、後ろのベッドに視線を向ける。
そう、ここには今、六名が室内に存在していた。
会話に参加していない、トリコとウズ。
その二人が何をしているかと言うと。
「あうう、意識しないようにしていたのに……」
普段ツッコミ役のヒフミが顔を赤らめる。
「ね、ねえさん……こっち見てる」
「黙ってて」
四人が真面目な会話をしている後ろで、二人は身体を抱き合わせ、お互いに舌を絡め合わせていた。
「は、ハナコお姉さま……実はわたし、トリコ姉さんのモノなんです、ハナコお姉さまとは、身体だけの関係だったんですぅ」
「あらあら、まぁまぁ♡」
状況によっては一人の人間の脳を破壊する光景なのだが、ハナコはいつものように微笑ましそうな笑みを浮かべるだけだった。
「特に体の関係になった覚えはないのですが、これが百合寝取られと言うものでしょうか?
新しい扉が開いてしまいそうですね♡」
「“すぐに閉じて!!”」
そんな性癖に目覚めたら、トリニティ中が大変になる未来が見えた先生が慌てて止めた。
「すみません、先ほどと言い、皆さんにはお見苦しい所を見せました」
「もっと見せつけてぇ、トリコ姉さんのモノだって、みんなに見せつけ――あぎゃ!?」
トリコはウズの舌を絡め、噛んだ。
堪らずウズは悲鳴を上げる。
「軍人として、あってはならないことでした。
兵士に作戦の詳細の全てが説明されるわけではないのは、当然の事です。そんな基礎も疎かにした上で、上官を疑うなんて恥ずべきことです」
「“実際覗きの指令だったけどね”」
「そんなこと、言い訳になりません」
トリコは大真面目に言った。体勢は不真面目だったが。
「作戦の詳細全てを知った兵士が捕虜になった場合、拷問の結果全て情報を取られてしまいます。
だからこそ、ニードトゥノウの原則があるのです。だというのに、この大馬鹿は敵に篭絡されるなどと!!」
「もっと、もっとトリコ姉さんのモノだって傷をつけてぇ」
ごんごん、と音が聞こえるほど頭突きを繰り返すトリコだったが、ウズはもう全てが快楽か何かに変換されているようだった。
「親近感が湧くのは分かるが、そこの脳みそド腐れピンク頭の事は気にするな」
「サラッと私を罵倒しましたね? 後で覚悟しておいてください♡」
「そろそろアズサを揺さぶってみようと思う。どうだろうか?」
「“それに関しては任せる”」
凄みのある笑みを向けるハナコを無視して、男は無線に話しかける。
「こちらオオカミ。“軍鶏”は今何している?」
『こちらWolf4、昨日と同じ、例の廃墟で密会中。会話からするに、定時連絡っぽい。
ねえボス、本当に密会相手を追跡しなくて良いの?』
「余計なリスクを負うな。全てはアズサ次第だ」
男はそう言って、無線機とはまた別の、電話の受話器のような物体を取り出した。
「さて、見張りの名目で外出しているアズサが密会中の今、こんなことが起こったらとても困ると思わないか?」
男はその受話器のような物体のボタンを押した。
どごーん!!!
「ッ、爆発音!? まさか襲撃!?」
「私達の方ではないぞ」
「分かっている!!」
アズサは即座に密会場所から離れ、合宿所に戻る。
正門の方から煙が上がっている。
彼女が合宿所に辿り着くと、もう既に全員がそこに集まっていた。
「よう、アズサ。遅かったな? 買い食いでもしに行ったのか?」
男は白々しい笑みで、アズサを出迎えた。
「一体、何事だ?」
「ここに目を付けていた不良どもよ!!
この合宿所をアジトにしようとしてたのを、私達が来たから腹いせに爆弾を投げて来たの!!」
と、そのように説明されたコハルが憤っていた。
「少し撃ち返したら逃げて行った。
本当に嫌がらせだけらしい」
「まったく、こっちは気持ちよく寝てたのに!!」
男の説明に、コハルは引き続きぷりぷり怒っていた。
「残存兵が居ないか、見回りをしてくる」
「おう、あまり無理するなよ」
すぐに踵を返し、アズサは周囲の探索に出かけた。
男はそんな彼女に手を振って見送る。
「……さて、俺ならこの時点で逃げるな」
「少し乱暴すぎですよ」
男とハナコが小声で言い合った。
「“私は、アズサを信じるよ”」
どこか祈るように、先生は言った。
ここで逃げ出すようなら、ムツニとナバトが追跡しアズサを捕縛する手筈になっている。
捕縛した後は、先生が面談することになっていた。
だが、アズサは戻ってきた。
「悪い、俺はお手上げだ。
俺にはアズサが何を考えているのか分からん」
ほぼ黒の筈のアズサは、どう考えても言い訳が出来ない状況で戻って来たはずなのに、逃げなかった。
仮にアズサが何らかの理由で逃げなくても、彼女の仲間が疑われたら引き揚げろというはずである。そういう命令が下るはずなのだ。
だが、アズサは帰って来た。
こんな相手を、男は理解できるはずもなかった。
「“気にしないで良い。前に君が言ったように、私の仕事が必要とされているということだと思う”」
「ああ、任せた」
「これ以上アズサちゃんを刺激するのは危険だと思います」
「言われなくたって分かってる」
ハナコに釘を刺され、男は何もできない状況に歯痒さを覚える他なかった。
§§§
翌日、先生はコハルが間違えて持ち出してしまって、男の所持品ということになったエロ本を正義実現委員会の保管庫へ戻しにいくことになった。
別にそんな大した用事ではなかったのだが。
「万が一の為にも、私も護衛に参加いたします」
と、トリコが名乗り出た。
「“別に大丈夫だと思うけど”」
「先生にもしもの事があれば、トリニティの名折れですので」
「まあ行ってくればいいんじゃね?
こいつらは俺が見てるからよ」
別に何もしないくせに、太鼓判を押す男だった。
「“じゃあ、お願いするね”」
「では行きましょう、コハルさん。
私と一緒の方が目立たないと思いますし」
「わ、わかってるわ。ありがとう」
いえ、とトリコは生真面目にコハルに返した。
そうして正義実現委員会の教室で、ハスミと出会い、コハルに用事があると別室に移動した。
先生とトリコの二人きりになると。
「先生、以前頼まれていたことの報告をいたします」
「“うん、お願い”」
トリコは小さく頭を下げた。
「知っての通り、ボスはなかなか自分の事を話してくれません。
自分の事を話すのはピロートークの時だけ、という言葉の通りでした」
「“なんだか、色仕掛けを頼んだみたいでゴメン”」
「先生が気に病む必要はありませんよ」
先生は、シャーレの部員としてのトリコに、彼女の上司について探りを入れさせていた。
あの男の先生への態度は、トリコ達からしても異様だった。だからトリコもその依頼を引き受けた。
「先生は、ボスが一番嫌いなものを知っていますか?」
「“テロリストだろう?”」
「いえ、どうやら違うみたいなんです」
その言葉に、先生は瞠目した。
あれほどまでにテロリストを憎んでいる男が、最も嫌いなモノがそれではないというのだ。
「ボスが先生に入れこんでいるのも、自分の望みを叶えるためです。
先生、これはWolf小隊の隊長としてではなく、兜衣 トリコとしてのお願いです。
ボスの望みは、――自分のような存在を滅ぼすこと」
そう言ってから、トリコは深々と頭を下げた。
「どうか、この先何が有っても、ボスと敵対しないでください」
「“それが、彼の望みなのか……”」
先生に自分を殺してもらうこと。
男の思考回路はイカレている。それが真実であると、先生は受け取ることしかできなかった。
「ボスはヒナ殿のような理想の女性に、自分を処断してもらうことを望んでいました。
その対象が先生でも、全くおかしいとは言えません」
「“そう、なんだね……”」
「お願いです、ボスには生きていてほしいんです」
「“それは私も同じだよ”」
何だかんだで、先生はあの男に助けられている。
同じ大人としても、友人としても、自らの手で決別をするなんて考えたくもなかった。
「“それで、さっきの話は?”」
「はい、ボスが一番憎んでいるのはテロリスト、それに間違いはありません。
ですがボスがテロリストを憎むのは、一番嫌いなモノの延長に過ぎないのです。
なぜそこまで嫌悪するのかまでは、教えてくれませんでしたが」
トリコは、先生の顔色を伺いながら、言い難そうにしていた。
「ボスにとって、このキヴォトスは地獄で、同時に楽園でもありました。
過去の経験からボスを苛む女子供ばかりで、同時に、最も嫌う存在が存在しないからです。
……つい、この間までは」
まさか、と先生は息を呑む。
トリコは言った。
「はい、先生。
ボスが最も嫌悪する存在。それは、“教師”。
このキヴォトスで唯一存在する、あなたなのです」
矛盾に満ちた、男の言動。
その真意とは?
この章では、先生と主人公との関係も深堀しようと思います。
あと次回こそ、本当にターニングポイントに至ります。
原作との明確な相違点が始まるタイミングと言いましょうか。
彼女が黒幕だと分かった状態で居る為に、ハナコが必要だったわけです。
では、また次回!! お楽しみに。
Wolf小隊が実装されるなら誰がほしい? 或いどのキャラが好き?
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生真面目なトリコ
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舌打ちをしてくれるウズ
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サイコな毒女のムツニ
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正義の暴走車両なナバト