合宿も、早くも五日目。
しかし、この日は天候に恵まれなかった。
外は大雨。雷はゴロゴロ。風はビュービュー。
洗濯物も台無しになり、寝間着にしていた体操着は洗濯物を取り込む際にびちゃびちゃ。
「お前らそれでも女子かよ。
連泊するのに他に着替えが無いとか」
先生と一緒に事情を聞いた男は呆れたように四人にそう言った。
「俺でも部屋着は三枚は用意してるぞ。
もっと女子高生ってのはオシャレに気を遣う生き物じゃないのか?
それとも女子高に通ってるとお前らみたいにズボラになるのか?」
停電して薄暗い中で、スクール水着姿の四人に男の言葉が容赦なく突き刺さる。
「……あうぅ、面目ないです」
ヒフミは恥ずかしそうに俯いている。
ハナコはアズサとはしゃいているし、コハルはそれに文句を言っている。
「私は予備が有りますので、皆さんの洗濯物をコインランドリーに持って行って乾かしてきます」
「“じゃあトリコ、お願いできる?”」
「勿論です、雑用はお任せください」
トリコは先生に頷いて見せた。
「じゃあ、俺が車を出すか」
「あんた達が一緒に行くのはダメ!!」
なぜか、コハルが男を睨みつける。
「ほう、良いのか?
俺は見ての通り犬畜生だ、夜目が利くからお前らの水着姿もくっきり見えるんだが?」
「じゃあ私もついて行く!! あんたは存在がエッチなんだから、見張ってないと!!」
「そうかそうか。ウズ、お前は予備の服は有るか? あったらコハルに貸して差し上げろ」
「ええ、構いませんよ」
トリコと同室な為、外には出なかったので濡れなかったウズは頷いた。
「確か、黒いビニール袋が食堂にあったはずだ。
各自、その中に洗濯物や下着を入れろ。
トリコとコハルに洗濯させる」
はーい、と生徒たちは返事をして行動に移した。
そう言うわけで、三人はコインランドリーに向かった。
「トリコ、お前シーツはちゃんと持って来たのか?」
「は、はい……」
「お前びしょびしょにしやがったからな」
「……」
男の運転する車の中で、コハルは唾を呑んだ。
「そう言えば、びしょびしょにしやがったのはトリコだけじゃなかったよなぁ、コハル?」
「ぴぃ!?」
「言っただろ、俺は犬畜生だって。
部屋の前の匂いくらいわかる。しかもドアの前で……悪い子だ」
「わ、私を脅す気!?」
「相変わらず想像力が豊かだな。そんなことをして何になる?」
「私の、身体が目的とか……」
「あと半年経ってもう少し成長してから言えや」
「じゃ、じゃあ、きっとキープしておくつもりなんでしょ!!」
「お前どこからそんな知識を仕入れるんだよ」
男は呆れて溜息を吐いた。
「こいつとウズは俺の女だ。
お前に何か言われる謂れはないぞ」
「で、でも、おかしいじゃない!!
現実でハーレム物なんてありえないんだから!!」
「ハーレム物ねぇ。ああいう面倒なのは興味無いな。
むしろ行きずりの方が興奮しねえか?」
「不健全よ! 死刑よ死刑!!」
「なら他人の行為を覗き見してオナってるのは不健全じゃないのか?」
「そ、それはッ……」
「くくくッ」
男はコハルの初々しい反応が可笑しくて堪らなかった。
「実は今日はウズの日でな」
「ッ!?」
「せっかくだし、見学してくか?」
ごくり、とコハルは男の提案に生唾を呑んだ。
「絶対、絶対おかしいわよ……」
「俺達は納得している。俺も二人の面倒も最期まで見るつもりだ。責任もな」
「ボス……」
コハルは、あんな真面目を体現したようなトリコが男を潤んだ目で見ているのを見て衝撃を受けた。
「別にお前に手を出したりしねぇよ。女には困ってないしな。
ただ、お前とはエロスについてとことん語り合いたいとは思ってたんだぜ、絶対楽しいからな」
「ほ、本当に、何もしない?」
「ウソだったら先生に言いつければいい。
俺達の関係は先生も知ってるしな」
「そ、そうなんだ……」
先生がごにょごにょ、と言葉にならない何かを呟くコハル。
「じゃ、じゃあ、この正義実現委員会のエリートがあんた達の関係を審判してあげるわ!! だから、その……」
「別にハナコみたいにおっぴろげになれとは言わんが、今のお前はお前で生きづらくないか?
女子同士の猥談は割とエグイって聞くし別に普通だろ」
「余計なお世話よ!! このスケベ大魔王!!」
「おっと、テイルズシリーズではお馴染みの称号だな?」
「知らないわよ、そんなの!!」
§§§
嵐のような雷雨は、午前中には治まった。
だが結局、その日は設備の点検や荒れた施設周辺の簡単な清掃に終始し、まともに勉強する時間が取れずに終わった。
その間、男はムツニとナバトを引き連れ、単独行動をしていた。
最初に訪れたのは、シスターフッドの本拠地である大聖堂に来ていた。
「お話しは伺っています。どうぞ、こちらへ」
案内役のヒナタを二度見した男は、気を取り直して教会の告解室に入った。
「俺とあんたらは違う神を信仰しているが、ここに入っても良かったのか?」
開始早々、格子ごしに見えるシスターにいじわるなことを言う男だった。
「些細な事です」
彼女は意味深な笑みを湛え、そう応じた。
「お手元に、お望みの資料を用意しました」
「助かる」
男は目の前に置いてあった資料を手に取った。
それは、あるモノの図面だった。
「失礼ですが、なぜ今更そのようなモノを?
わざわざハナコさんの紹介まで受けてまで」
「先生が望んだからだ」
「具体的には、どのような?」
「トリニティ風に言うなら、愛を知らない生徒たちに愛を教えようとしている、とでもいうべきか」
「──素晴らしいことです」
シスターは笑みを深める。
「先生は御会いしたのですね。今もどこかに息をひそめる、
「まあ、こんなものを要求しておいて、無関係とは思わんか。無論、告解室の出来事だ。他言無用だぜ、シスター」
「ええ、勿論。例えティーパーティーの方々に問われても、守秘義務は守ります」
「そう言う姿勢は大好きだぜ。
そう言えば、シスターフッドはかなり古い部活だと聞いた。
じゃあお前たちが、こんなことを言ったら、
そう言って、男は己の計画のほんの一部を諳んじた。
「なるほど、それがあなた方の、愛を与える方法、ですか」
「口裏を合わせてくれるかい?」
「分かりました。先生がそれを望むのであれば、彼女達にも神の恩寵はあるでしょう」
微笑むシスターに、男は凶悪な笑みを返した。
「なるほど、同類か。俺とあんたは」
シスターは何も言わず、笑みを湛えるだけだった。
「先生が我々を必要とする時、我々もまた傍に居るでしょう」
「先生こそ、我が神の神意の体現者。
ならば共に、祈る神は違えど共に手を握ることはできるだろう」
「ええ」
そして、男は告解室から外に出た。
外に待っていた護衛と合流し、大聖堂から去って行った。
「な、なんだか怖そうな人でしたね。サクラコ様……」
ヒナタが告解室から出てきたサクラコに不安そうに言った。
「そうでしょうか?
非常にユーモアに富んだ敬虔な人だと思いましたよ。
あれが、ゲヘナの人喰い狼ですか。正直親しみやすくて意外でした」
「ええぇ……」
非常に機嫌の良さそうなサクラコに、ヒナタはドン引きしていた。
「流石キヴォトス。シスターではなく、死す多ーだとはな。
ロアナプアの暴力教会みたいな連中に違いない。
きっと金ぴかのデザートイーグルをぶっ放す奴とか居るぜ。
あのシスターも、きっとヘルシングのアンデルセン神父みたいに豹変するに違いない」
「いや、一体どんな会話してたんすか、ボス」
ツッコミどころしかない男の言葉に、車を運転しているナバトが言った。
「聖職者が信仰の違いを些細なんて言うものか。
流石はトリニティの諜報機関と言われるだけあるな。
あの案内役のシスターも、ブラックラグーンのエダみたいな性格なんだろうな。あのキャラもあそこまでシスター服を改造してなかったしな。所詮、信仰なんてポーズで、ガチガチの諜報機関なのだろうな」
「そうなんすかねぇ」
「予定変更だ。アリウスの処遇は別の連中に頼もう」
そう決めた男は、次の行き先に向かった。
場所はトリニティ学区から少し離れた、工場地帯にある学校だった。
出迎えの生徒が現れた。
「ようこそ、春命服飾専門学校へ。
シャーレの先生からお話は伺っております」
「ああ、世話になる。早速だが、これを作ってくれ」
男はシスターフッドから貰った図面を渡した。
「どれどれ……ああ、これはアリウスの制服ですね」
その生徒は図面を見るだけで、すぐにそれが何か悟った。
「分かるのか?」
「ええ、トリニティのかつての分派ですので、古いカタログには載ってるかと」
「じゃあ作れるか? 出来れば今日中に四着は欲しい」
「お安い御用です。当学校は服の制作に関してはミレニアムにも負けないと自負していますので」
「なら九日後までにこのリストの制服を作ってくれ」
「どれどれ。ゲヘナの制服もですか?
しかしこれは……失礼ですが、先方に確認を取ってもよろしいでしょうか」
「ああ、大丈夫だ」
男は専門学校生に頷いて見せた。
彼女はスマホで電話を掛けた。電話越しにヒナらしき声が聞こえる。
「……確認が取れました。
大変失礼しました。九日後までに、うちの工場で生産いたします」
「アリウスの制服はこの後の用事を済ませたら取りに来る」
「はい、お待ちしております」
そうして、男は次の目的地へと向かう。
「師匠、待ってたわ」
「ようアル」
「おじさーん!!」
「むちゅきちゃーん、今日も可愛いねぇ~」
「どうも」
「カヨコも元気そうだな。この後デートするか?」
「こんにちは、教官」
「ハルカ、元気そうだな」
昨日の時点で、男はモモトークで連絡をしておいた。
アビドス付近で、便利屋の四人と合流した。
のだが。
「……なんでお前たちも居るんだ?」
合流地点のファミレスで、便利屋の四人が座っているテーブル席の隣に、アビドスでお馴染みの五人が座っていた。
「ん、昨日アルに自慢された。仕事を頼みたいって言われたって」
「仲良しかよお前ら」
シロコが代表してそう言ったので、男は思わずツッコミを入れた。
「ち、違うわよ師匠!!
我々便利屋は只今資金を貯めてる途中で、長期の仕事を頼まれるとなると今の雇い先に説明しないとじゃない?」
「そうそう、アルちゃんってば、師匠に頼られたって得意満面の笑みで自慢してたよね?
お前にしか頼めない仕事だ、って最高にウキウキするって!!」
しどろもどろになるアルに被せるようにムツキが笑顔で言った。
「だから、抜け駆けは良くないってことになったんです☆」
ノノミが良い笑顔でそう付け加えた。
「お前ら、もう自由に身動きできる立場じゃないだろ」
「私もそう言ったんだけど、先輩達が聞かなくて」
「だって、ねぇ? みんな?」
「急に便利屋の皆さんを呼びつけるなんて、どうせまた厄介ごとを抱えてるって思ったんです」
セリカの言葉に、ホシノとアヤネがそう答えた。
「教官。我々では力不足ですか?」
「……いや、丁度良すぎるタイミングだ。
そうだな、お前たちなら……お前たちしか居ないか」
男は本格的に彼女達に頼る為に、周囲を気にした。
「良いだろう、場所を変えるぞ」
男は改めて人気のない場所に移動することにした。
そうして、十人の大所帯はカラオケの大部屋を取った。
「ねえ、何を注文する? とりあえずフライドポテトと唐揚げバスケットでいいよね?」
「さっき散々食べたでしょ。飲み物ぐらいにしておきなよ」
ノリノリのムツキを、カヨコが諫めた。
彼女らはさっきのファミレスでガッツリ食事をしていたのである。
「この話を聞いたら、引き返せん。
なぜなら、これは機密事項だからだ。協力してもらうほかなくなる」
「覚悟の上です」
ノノミが即答した。
アビドスの面々でなく、便利屋の四人も頷く。
「あなたは私達に恩返しをしたつもりかもしれないけど、おじさん達はそれでは済まないくらいの居場所を貰ったつもりなんだよ。
困ってるなら、頼ってくれないとねぇ」
「ありがとう、俺の天使よ」
今日も美しい、惚れ直した、などと付け加えてホシノを称える男だった。
「今、俺と先生が抱えてる案件を説明する」
そうして、男は初めから語り出した。
最初の時間の延長を問う電話が来るほどの、長い話を。
「そう、あんたはまた、居場所のない連中に手を差し伸べようとしてるのね」
「勘違いするな。俺は皆殺しにしてやろうと思った。先生に根負けしたんだ」
「どうだか」
セリカは先生について言及した際に事細かく状況を説明して高ぶっていた男を、半眼で見ていた。
「それで、アリウスって人たちを私達は受け入れればいいの?」
「まあそうしてくれると助かる。どれだけの人数になるかは分からんが、流石に千人は超えんだろう」
「うふふ、一気に賑やかになりますね」
「そうなったら、トリニティの方からも人員の管理の為に誰か回してほしいわね」
アビドスの面々は既に乗り気だ。
頼られて嬉しいのだろう。
「あとアヤネ、ちょっとした映像を撮影してほしい」
「わかりました。どのようなものですか?」
男の要求をメモしていくアヤネ。
「それで、師匠。私達は何をすればいいの?
私達が興味があるのは条約やらトリニティやらじゃない。仕事よ」
「それについては、本当にお前たち四人しか出来ない仕事を持ってきた」
アルの催促に、男はニヤリと笑った。
「最高のアウトローに相応しい、真にアウトローな仕事をな」
「ッ!? 待ってました、よね!!」
そうして、心躍っているアルに仕事内容を説明する男。
「なにそれ、最高にカッコいいじゃない!!」
「相変わらず、えげつない……」
満面の笑みのアルと反対に、カヨコはドン引きしていた。
男の語った策略は、それほどまでに悪辣だった。
「お前たち四人が、トリニティとアリウスの命運を決める」
「うふふ♪ 元々ゲヘナにいた私達が、トリニティの命運を握る仕事をするなんて、なんて皮肉な運命かしら!!」
「なんだか想像するだけでワクワクするね!!」
「アル様の為に、ハルカは全てを捧げます!!」
アルだけでなく、ムツキとハルカもやる気満々だった。
「じゃあ、お前たちはこの後トリニティに入って、この場所で待機してくれ。
その後、支給した制服を着て、トリニティとは全く関係ない第三勢力として今夜から動いてもらう」
「任せて♪」
ムツキはニヤリと笑った。
「カタカタヘルメット団の連中の時も思ったけど、教官は本当に敵勢力への破壊工作が上手い。
特に、防ぎようが無いってのが……」
これからこの便利屋四人に振り回されるであろう、アリウスの面々にシロコは同情していた。
「いったいどこからそんな発想が出てくるんだろうねぇ」
「ただ単にイカレてるんでしょ」
心底呆れているホシノに、セリカは辛辣に返した。
「私は、勉強になりましたけど」
「頼むからあんたはこいつみたいにならないでよ?」
対して、本当に感心している様子の男の愛弟子のアヤネにセリカは不安そうだった。
「あ、そうだ!!」
そこで、ホシノは突如として閃いた。
「ねえねえ、折角だからさ、もっとアルちゃん達の設定を詰めた方がよくない?」
「まあ、そうだな」
「と言うわけで、アルちゃん達」
「なに?」
首を傾げるアルに、ホシノはシロコに目配せする。
彼女は頷いて、バッグからそれを取り出した。
──四つの覆面と、学生証を。
「ねえ、四人も覆面水着団の一員にならない?」
「えッ、うそうそッ、私も覆面水着団に入っていいの!?」
「うん。だからこれを受け取って欲しい」
「やった、やったわよみんな!! 私、念願の覆面水着団の一員になったわ!!」
ちゃっかり学生証を渡しているアビドスの面々。
アルはそんなことを気にせずに大喜びしているが、ムツキとカヨコの顔は引きつっていた。
「まあ、顔は隠しておいてくれた方がいいわな」
男はとりあえずそう言うことにしておいた。
「お前ら、どうしてそんなに乗り気なんだよ……」
「教官、ヒフミがピンチなんでしょ?
彼女は私達の友達なの」
「なんだって?」
シロコの言葉に、男は目を剥く。
いったい何故、トリニティの生徒と、アビドスの面々が知り合いなのか、と。
「ええ、友達の為ですから。私達も助力を惜しみません」
「私達も水面下で、便利屋の四人を支援するわ」
「そうか。あいつも、いい友達を持ったな」
ノノミとセリカの言葉に、男は感じ入るように目を瞑った。
「それじゃあ、今夜から頼むぞ。お前達」
男は改めて、彼女達に頭を下げた。
その後、全員はこれからアリウスに降りかかる恐怖の犯罪集団の設定を語り始めた。
そして、その日の深夜。
この日の夜もまた補習授業部の面々はドタバタに巻き込まれたが、それはまた別の、次回の話にしておこう。
「定期報告の時間だ」
「こちらに異常はない」
「本当にか? この間の爆発の件で、疑われていないか?」
「撤退命令は出ていない。引き続き、機会を伺う」
「わかった」
今は、深夜に密会する彼女達の話をしよう。
アズサが廃墟を去る。
一人残されたサオリの背後に、新たな影が現れる。
「ねえ、信用できるの?」
「上の命令に従う他ない」
「……」
ミサキは無言で不満を示した。
「や、やっぱり裏切ってるんじゃ……」
「ヒヨリもそう思う? 姫はどう?」
後ろから更なる二人が現れる。
ヒヨリと、アツコの二人だ。
そんな彼女達に、ミサキは感情の読めない視線を向けた。
私は信じる、と手話でアツコは答えた。
「そう。なら様子見──」
ミサキは一旦答えを保留しようとした、その時であった。
「なるほどね。あなた達が今のアリウスの精鋭なのね?」
「誰だッ!!」
アリウススクワッドの全員が、即座に武器を構える。
「誰か? そう問われたのなら、名乗りましょう」
薄暗い闇夜に紛れたその声の主は、靴音と共に窓から差す月明りで照らされ、明らかになる。
「私達は、かつてあなた達と袂を分かった存在。
トリニティの弾圧から散り散りになったアリウスが、ゲヘナへと落ち延びて結集した、あなた達の同胞だったモノたち」
顔を覆面で隠した、四人の少女たち。
「そうね、“グリゴリ小隊”とでも名乗っておきましょうか」
「その、制服は!!」
サオリは驚愕した。
彼女達は間違いなく、古いアリウスの制服を纏っていた。
「姫、何か知ってる?」
ミサキが振り返り、アツコに尋ねる。
彼女は首を横に振るだけだった。
「ま、まさか、ゲヘナに私達の仲間が居たんですか!?」
「仲間? 笑わせないで!!」
リーダーらしき少女が、ヒヨリの言葉に嘲るように笑った。
「私達はあなた達のようにどこかに縮こまって隠れ過ごしていたわけじゃない。
私達はゲヘナ、時には最盛期を誇ったアビドス、そしてトリニティの影として、存在しない者として暗躍してきた。
ふふふ、どうしてトリニティの為に動いているかって聞きたそうね?
それは、私達のリーダーは代々、トリニティの何の変哲もない学生として潜伏しているからよ」
彼女は聞いてもいないことをべらべらと喋る。
まるで、それを語ることこそが目的だというように。
「そして、我らのリーダーが、あなた達の動きを感知した。
ずっとどこかで息をひそめているだけだったあなた達の存在を!!
あなた達は、今のアリウスの最精鋭なのでしょう?
なら、どっちが上か、証明したいと思わない?」
「なにを馬鹿な!! 何が目的だ!!」
「今言ったじゃない。目的はひとつ」
ちっちっち、と指を振る覆面の少女。
「勝者の歴史を辿った私達アリウスと、敗北者であるあなた達のアリウスの序列を確かなものとする。ただそれだけ」
「私達のリーダー、“ファウスト”がそれをお望みだよ♪」
「そして、そのあかつきには我らのリーダーに屈服し、従え」
「ファウスト様、万歳!!」
「ッ……我々の任務を邪魔することは許されない!!」
「そう。でもそんなのは知らない。あなた達の目的も興味はない。
そうだわ、追いかけっこをしましょう。ルールは簡単。どちらかが根を挙げるまで続けるの。さあ、おしゃべりはここまで」
覆面の四人が、銃を構える。
「どちらが真のアリウスか、証明しようじゃない」
“68”と額に書かれた覆面の少女が、唇を釣り上げて笑ってそう言った。
そして、アリウススクワッドの受難の日々が始まった。
本当なら今回のお話は裏で進めて、第三試験前日のアリウスの襲撃にアビドスの面々を介入させるドッキリを仕掛けようと思ったのですが、それだとアリスクの面々の存在をミカから聞かされた主人公がなにも手を打たないのはあり得ない、と思って、便利屋の四人に襲撃させました。
便利屋と言うクソ強集団と連日戦わされるアリスクの四人に合掌です。
それでは、次回。今回省いた例の夜のドタバタになります。
ではまた!!